概要
ゲーム&ウオッチは、5年早く出そうと思ったら10万円の機械になっていた。
量産効果でどんどん安くなって、3800円になった。それでヒットしたわけです。これを、私は"枯れた技術の水平思考"と呼んでいます。
技術者というのは自分の技術をひけらかしたいものだから、最先端技術を使うということを夢に描いてしまい、売れない商品、高い商品ができてしまう。
値段が下がるまで、待つ。つまり、その技術が枯れるのを待つ。枯れた技術を水平に考えていく。
垂直に考えたら、電卓、電卓のまま終わってしまう。そこを水平に考えたら何ができるか。
そういう利用方法を考えれば、いろいろアイディアというものが出てくるのではないか。
「枯れた技術」とは"最先端ではないが、すでに広く使われて、ノウハウも固まり不具合も出し尽くして安定して使える技術"のこと。「水平思考」とは"今まで無かった使い道を考える"ことである。良い例に「電卓(枯れた技術)」から「ゲーム&ウオッチの案(水平思考)」を出したのがその1つである。
ちなみこの哲学は横井軍平が設立した「株式会社コト」のホームページの上部にも記されている。
2chの携帯ゲームソフト板のデフォ名無しが「枯れた名無しの水平思考」なのだがこれが元ネタである。
「古い技術のみに頼る」という意味ではない
「枯れた」という言葉の語感から時たまこの言葉が独り歩きして、「役目を終えた古い技術のみに頼る、保守的な思考・哲学」という間違った解釈をされる場合があるが、この言葉の本題はそこではない。
本題はありふれた材料や技術を、誰も思いつかなかったような画期的な使い方や組み合わせで使うことで、全く新しいものを生み出すということのほうで、予想の斜め上を行く先進的で斬新な思考・哲学であると言える。
「枯れた」というのは「役目を終えた」という意味ではなく「多数回利用・検証されて、こなれた」という意味合いであり、古いものより新しいもののほうが洗練されていて使いやすいし安価にできる、というのもよくあることである。今の時点で安定しているならば、古いものだけでなく最新の技術や製品だって遠慮なく使うのである。
長年に亘って実社会で現役で使用され続けている技術、最新鋭に近いが社会に広く普及しているために安定性が確保できている技術、などのほうが良く使用される傾向がある。
例えばNintendo Switchはスマホの普及で急速に発達した最新だけど量産されてこなれた技術や部品で出来た本体に、wiiリモコンと同様の分割可能なコントローラー、TV出力用のドックを組み合わせることで、幅広いプレイスタイルが可能なゲーム機を作り出した例である。
枯れた技術の水平思考の例
ラブテスター
ファミコン以前に任天堂が発売したおもちゃの一つ。そしてヨコイズムの原点の一つ。
要するにウソ発見器のおもちゃへの転用。
「感情の変化で汗が出て電気抵抗が変化する」を「男女の親密さを測るおもちゃ」に転用したものである。
最近はメイドインワリオなんかにも収録されているが、これで知った現代っ子も少なくないはず。
ゲームボーイ
ゲームギアやATARI Lynxなどの他社の携帯機が表現力で差別化を図るためにカラー液晶を採用する中、あえて燃費重視でモノクロ液晶を採用。
それ故、どこでも遊べるという携帯機というジャンルの競合製品の中でも、当時の電池事情で桁が一つ違うスタミナを実現して他社を突き放した序に爆撃にも耐える耐久性まで手に入れた。
その後、新開発されたカラー液晶を採用したゲームボイーカラーでは、より少ない単三電池でゲームボーイと同等の稼働時間を実現。ゲームボーイアドバンスへとつながっていく。
ニンテンドーDS・Wii
ニンテンドーDSはATMやPDAなどで既に採用されていたタッチスクリーン操作を、Wiiは携帯電話で広く普及していた加速度センサーをゲーム操作に取り入れることで新感覚のゲーム体験を実現。
特にタッチスクリーンに関しては「ゲームという(生活必需品に比べれば)ある程度なら失敗や不便が許される環境で、みんなでよってたかって遊び倒して操作体系を研究した」「DSが売れまくったことで人々がタッチパネルの操作に慣れた」などの社会現象が発生し、iPhoneと共にタッチ操作を爆発的に進化・普及させた。
逆転裁判シリーズ
「一枚絵と選択肢で構成される」という、80年代のスタイルのアドベンチャーゲームに現代では常識となったボイスなどの様々なエフェクトを追加することで、迫力とスピード感のあるゲーム性を実現している。
魚群探知機
海中に超音波を発射し、反射波が返ってくるまでの時間を測定することで海底や魚群までの距離を知ることができる装置で、これによって勘と経験頼みだった漁業を変革することができたが、ベースになったのは海軍の放出品にあった音響測探機だった。[1]
東海道新幹線・0系新幹線電車
「世界初の本格的な高速鉄道/列車」として知られるが、実はこいつも「枯れた技術の水平思考」的な思想で作られている。
そもそも0系の開発コンセプトの一つには、「新技術開発ではなく既にある技術だけを組み合わせる」という物があった。
主電動機は在来線で使われていたものの拡大発展版、駆動装置のWN継ぎ手や或いは台車の構造などは既に私鉄で多数実績のあるもの…と。
結果、1964年の登場から2008年の退役まで44年間もの間使われ続ける現在までの新幹線最長寿車輌となったが、一方で技術的な革新は1990年の300系登場まで長らく停滞期にあった。
これは国鉄の労使紛争や民営化などがあり、度々新型車両の計画が持ち上がるも、古い0系を新しい0系で置き換える状態が1985年まで続いていた。基本設計が確立していた0系の高い信頼性が伺える事例である。試験車輌としては961形電車などで寝台車などが模索され、全室食堂車のように実用化されたものもある。寒冷地向けの設計とした200系や直接的後継車輌の100系は技術的には0系とは大差なく、実質的には0系のモデルチェンジ扱いで、設備面でのグレードアップが主だった目的だった。一時期グランドひかり向けの100N系で270km/h運転も模索されたが、騒音問題をクリアできず断念している。
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関連項目
脚注
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