Y・H・V・Hとは、ユダヤ教、およびそこから派生した宗教における唯一神のことである。
概要
ユダヤ教における唯一神の名を現すヘブライ語「יהוה」の4文字を、「י(ユッド)」をY、「ה(ヘイ)」をH、「ו(ワーウ)」をVとしてラテンアルファベットに転訳したものである(ヘブライ語は右から左に書く)。ただし「ו(ワーウ)」は古くは V で転写されることが多かったが、近年では古代ヘブライ語ではVよりWに近い発音をされていたと推測されており、国際的にはWと転訳してYHWHと記載される場合の方が多いが、日本ではこの記事のタイトルのように古風なYHVHの方が根強い。
以上の転訳のように、全て子音で成り立っており、発音の基本となる母音が含まれていない。この事からもわかるように、「ヤハウェ」という呼称も仮のものであり、この名前の本来の正確な読み方は失伝してしまっている。
ユダヤ教の聖書「タナハ(キリスト教でも旧約聖書として少しの変更とともに取り入れられている)」に、この神について記載されている。また、ユダヤ教から派生した宗教(アブラハムの宗教)であるキリスト教、イスラム教においても、その唯一神は教義上ユダヤ教の神と同一とされる。
よって、キリスト教の聖書「新約聖書」、イスラム教の聖典「クルアーン」などにおける神に関する記述についても、この神について述べているとも言える。
なお、この4つの文字は「神聖四文字(テトラグラマトン 、ギリシャ語で『四つの文字』の意)」と呼ばれる。特にキリスト教においては、固有名称としては訳されず、「主」として書かれる事が多い。
近年、本来は神聖視される神や天使の固有名詞を安易に使われるケースが増えたと憂慮され、バチカンの教皇庁から、「ヤハウェ」や「エホバ」といった名指しを避け、「主」としての名称を使う(訳す)よう、見解・指示が出された。そのため、その傾向は今後強くなっていくと思われる。
読み方
先述のように、本来の読み方は不明である。Yahweh(ヤーウェ、ヤーウェー、ヤーウェイ、ヤハウェ、ヤハウェー、ヤハウェイ)、Yahveh(ヤーヴェ、ヤーヴェー、ヤーヴェイ、ヤハヴェ、ヤハヴェー、ヤハヴェイ)、Yehovah(エホバ、イェホバ、エホヴァ、イェホヴァ、イェホーヴァ、イェホーヴァー)、Jehovah(ジェホバ、ジェホヴァ、ジェホーヴァ)など、多彩な表記や読み方をされる。
「יהוה」は4つの基本となる文字(字母)のみであって、見ただけで詳細な発音が判る文字ではない。また、預言者「モーゼ」が「יהוה」から授かったとして、ユダヤ教の聖書中に記載されている「十戒」には、「主の名をみだりに唱えるなかれ」という戒律があった。そのため、「יהוה」の名を口に出す必要がある際には「アドーナーイ(我が主)」や「エローヒーム(神)」と読み替える習慣が生じ、その結果、元々の発音が不明となってしまっている。
ヘブライ語では、特に発音を表記する必要がある場合には字母に対して注釈的な発音記号も付けられるのだが、現存する最古のヘブライ語聖書完全写本(レニングラード写本)においてすら、場所によって「יהוה」の発音記号が異なっているのである。しかもその発音記号は単に読み替えのために「アドーナーイ」「エローヒーム」の発音記号を付けているだけであり、本来の「יהוה」の発音を示すものではないと考えられる。
ちなみにアドーナーイ(אדני)は「א(アレフ)」「ד(ダーレス)」「נ(ヌン)」「י(ユッド)」から成り、仮にラテンアルファベット転訳するとADNYとなる。 一方エローヒーム(אלהים、またはאלוהים)は「א(アレフ)」「ל(ラーメド)」(「ו(ワーウ)」)「ה(ヘイ)」「י(ユッド)」「ם(メーム)」から成り、仮にラテンアルファベット転訳するとAL(W)HYMとなる。そしてそれらの母音をYHWHにあてはめればイェホーワーあるいはイェホーウィー YeHoWaH/YeHoWih 、つまりエホバとなるわけだ。
(ヘブライ文字の Y, W, H 等には半母音の他に二重母音・長母音などを表す記号的な用法があり、単純にそのままヤ行、ワ行、ハ行等で発音できない場合も多い。また無アクセントの短いAは曖昧化しアともエとも表記し得る)。
現在ではヤーウェーと読んでいたのではないかという説が有力であり、聖書の他の記述から「存在させる(者)」という意味とされている。他にはキリスト教プロテスタントの第七日安息日再臨派(SDA=Seventh-Day Adventist)が別の記述を根拠にイェフーダー(ヤコブ(イスラエル)の子ユダのヘブライ語読み)と関連づけて Yahuwah(ヤフーワー)と呼んでいる。
元々は複数の神であるとする説
上記のようにさまざまな異名を持つ神であるがゆえに、「元々はそれぞれの名前は別の神だったが、それらの神話が融合して一つの神と見なされるようになったのではないか」という説もある。
タナハ(旧約聖書)内の「YHVH」と呼んでいる箇所は神「YHVH」を崇めていた集団由来の神話の部分、そして「エローヒーム」と呼んでいる箇所は神「エローヒーム」を崇めていた集団由来の神話の部分で、それらの集団が合一した際に、神話も一つとしてまとめたのではないか、というわけである。
YHVHに対する批判
神はいかなることも知り尽くし、いかなることに対しても公平・全能である。
……という一般的なイメージとは裏腹に、聖書の中での神は言っていることが前後で矛盾している事も見受けられる。
また、一神教の記述であるが故、苛烈な思想・言動を記している部分もあり、聖書に対する批判者から、YHWHについて非難する声があるのも事実である。
関連動画
関連項目
- エルシャダイ … 「アドーナーイ」や「エローヒーム」のように、この「יהוה」を言及する際のヘブライ語の言い換え語の一つである雅称で「全能なる神」を意味する。
- デジタル・デビル物語 女神転生Ⅱ、真・女神転生Ⅱ、真・女神転生IV FINAL … RPG。ルートによってはラスボスとしてYHVHが登場する。詳しくはYHVH(女神転生)を参照。
- 機動警察パトレイバー … 漫画・アニメ作品。劇中に「帆場暎一(E.HOBA)」という人物が登場する。劇場版では「バビロンプロジェクト」という国家的事業に関して、ある大事件を引き起こす。
- るくるく … 天使と悪魔が登場する漫画作品。劇中で天使がてるてる坊主を神にみたてて「やはうえさま」と呼びかけて一人ごちる。元ネタはアニメ一休さんのエンディング曲「ははうえさま」。
- BLEACH … 漫画・アニメ作品。ラスボスであるユーハバッハはかつて「Y(ユー)H(ハー)V(ヴェー)H(ハー)」と呼ばれていた。
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