トライマイベスト(Try My Best)とは、1975年生まれの
アメリカ生産・
アイルランド調教の競走馬。鹿毛の牡馬。
El Gran Senorの全兄で、競走馬としては大成できず種牡馬としても決して多くの活躍馬を出したわけではないが、欧州で細々と繋がった直系が21世紀になって大躍進を果たしており、またその系統は日本競馬にも大きな影響を残した。
主な勝ち鞍
1977年:デューハーストS(
G1)、ラークスパーS(
G3)
1978年:ヴォクスホールS(
G3)
父Northern Dancer、母Sex Appeal、母父Buckpasserという血統。
父は言わずもがな、現代競馬でこの馬の血が入っていないサラブレッドを探す方が難しい大種牡馬。
母は不出走だが、その母Best in Showの牝系には現代まで山ほど活躍馬がおり、彼女も名繁殖牝馬として3頭の重賞馬を産んだ。トライマイベストが初仔。
母父はアメリカの史上最強馬候補の1頭で、種牡馬としても特に母父として多大な影響を残した。
1歳下の半妹にG3レイルウェイSを勝ったSolar(父Halo)、そして6歳下の全弟にNorthern Dancer産駒最強格の名馬El Gran Senorがいる。さらには日本に輸入された半妹*ロッタレース(父Nureyev)がフサイチパンドラを産み、そのフサイチパンドラからアーモンドアイが産まれている。
1975年4月28日、カナダの名ブリーダー、エドワード・プランケット・テイラーが所有するウインドフィールズファームのメリーランド分場で誕生。弟と同じく、イギリスの大馬主ロバート・サングスターの所有となった。
馬名の「Try My Best」は日本語に訳すと「頑張る」ぐらいの意味。「I'll try my best」だと「まあ頑張ってみるよ」ぐらいの、ちょっと自信なさげなニュアンスが伴うようだ。
アイルランドのヴィンセント・オブライエン厩舎[1]に預けられたトライマイベストは、芝5ハロンのデビュー戦を勝利すると、続いてレパーズタウン競馬場の芝7ハロンのG3・ラークスパーSを3/4馬身差で勝利。イギリスに渡り、ニューマーケット競馬場の2歳王者決定戦・デューハーストSに参戦、Sexton Blakeを1馬身半差で下し3連勝で欧州2歳王者に輝く。
明けて3歳も今は亡きフェニックスパーク競馬場の芝7ハロンG3・ヴォクスホールSを2馬身差で完勝。4戦4勝でニューマーケット競馬場の2000ギニーステークスへと乗りこんだ。
しかしトライマイベストは生まれつき前脚の膝裏の骨(副手根骨のことか?)が薄いという欠陥があったらしく、2000ギニーのレース中、最後尾を追走中に故障発生。そのまま最下位19着に終わり、現役復帰できず引退、種牡馬入りとなった。通算5戦4勝。
種牡馬としては自身の引退の原因となった前脚の骨の形が産駒にも遺伝してしまうという問題があり、産駒から大物はそれほど出なかったが、408頭の産駒のうち30頭がステークスウィナーとなった。特にイタリアで成功を収め、1990年と1992年にイタリアリーディングサイアーに輝いた。
1986年のBCマイルなどG1を3勝した*ラストタイクーンが代表産駒である。
1992年、17歳にして日本に輸入されたが、1993年6月25日、18歳で死亡。日本では僅か2年間の供用、初年度500万円と種付け料も高かったためそれほど牝馬は集まらず、高齢のため受胎率も相当低下しており、2年間で50頭に種付けして産まれた産駒は10頭だけだった。1995年のクローバー賞(OP)を勝ち、翌年の皐月賞(13着)、東京優駿(14着)にも出走したオンワードアトゥが日本での代表産駒となった。
数々の名種牡馬を擁するNorthern Dancer産駒としては、決して種牡馬として多大な成功を収めたわけではない。しかしトライマイベストの系統は、片や母系に入って日本競馬に多大な影響を残し直系はオセアニアで発展し、片や直系が非常にしぶとく繋がって欧州で大きな広がりを見せている。
まずは代表産駒*ラストタイクーンの系統。日本でもリースで供用され、桜花賞馬アローキャリー、オースミタイクーン、オースミブライトなんかを輩出したが、欧州を始めシャトル供用された豪州などでも活躍した。日本でおなじみのところでは、サセックスSやクイーンエリザベス2世Sなどを勝ったBigstoneがメイショウドトウを輩出している。
その中でも最も成功した産駒は、やはりセントジェームズパレスSを勝ったMarjuだろう。名牝Soviet Songや香港の名馬Indigenousなどを輩出し、日本ではサトノクラウンの父として知られる。そのサトノクラウンが2023年のダービー馬タスティエーラを出し、日本でも直系がもうしばらく続きそうである。
だがそれ以上に、*ラストタイクーンの名前は日本の競馬ファンなら血統表で親の顔ほど見たはずである。そう、キングカメハメハの母父だ。キンカメが日本競馬に不動の地位を築いたことで、トライマイベストの系統は日本競馬に多大な影響を残すこととなった。
他にも*ラストタイクーンの系統はシャトル供用されたオセアニアで発展しており、オーストラリアでは名馬Mahoganyを輩出したほか、産駒Iglesiaから2021年の豪州リーディングサイアーのWritten Tycoonが登場、多数のG1馬を輩出して大活躍している。
ニュージーランドでも4度のリーディングサイアーに輝いたO'Reillyの系統が現在も一定の勢力を誇っており、このラインからは香港でKa Ying Risingが出ている。
もうひとつ、トライマイベストの系統で現在、非常に大きな存在感を示しているのが*ワージブの系統である。このワージブはイギリスを中心に20戦7勝、重賞3勝を挙げたがG1での目立った実績はなしという地味めのマイラーで、1990年から種牡馬入り。マル外として走った*プレストシンボリが95年のラジオたんぱ賞を勝ったためか、1996年から日本に輸入されたが、日本では3年間の供用で特に目立った産駒は出せなかった。
しかしこの*ワージブが欧州に残してきた産駒から、1995年のミドルパークSと1997年のスプリントカップと6ハロンのG1を2勝、重賞6勝を挙げたRoyal Applauseが登場。このRoyal Applauseが後継として種牡馬入りし、GⅠ馬はアメリカンオークス馬*ティッカーテープを出したぐらいだったが、G2を勝っただけの産駒Acclamationが種牡馬入りしたところ、短距離種牡馬として大活躍。日本でもおなじみの香港の歴史的名馬Romantic Warriorを筆頭に、多くの活躍馬を出した。
Acclamationの後継種牡馬は既に10頭以上を数えるが、特にミドルパークSを勝ったDark Angelは、現在欧州トップクラスの種牡馬として活躍中で、2024年にはついに英愛リーディングサイアーに輝いた。日本でもマル外として*マッドクールを輩出している。他にもHarbour Watchが2022年のキングジョージを制したPyledriverを輩出するなど、Acclamationの血は現在の欧州競馬で大きな存在感を示している。
Northern Dancerの後継の中でも、大種牡馬となりながら現在はすっかり衰退した系統がある一方で、決して大成功したとは言えないトライマイベストの系統が、細々と繋いでいった結果40年以上経って大躍進しているというのは、競馬の血統の面白さと言えるのではないだろうか。
| Northern Dancer 1961 鹿毛 |
Nearctic 1954 黒鹿毛 |
Nearco | Pharos |
| Nogara | |||
| Lady Angela | Hyperion | ||
| Sister Sarah | |||
| Natalma 1957 鹿毛 |
Native Dancer | Polynesian | |
| Geisha | |||
| Almahmoud | Mahmoud | ||
| Arbitrator | |||
| Sex Appeal 1970 栗毛 FNo.8-f |
Buckpasser 1963 鹿毛 |
Tom Fool | Menow |
| Gaga | |||
| Busanda | War Admiral | ||
| Businesslike | |||
| Best in Show 1965 栗毛 |
Traffic Judge | Alibhai | |
| Traffic Court | |||
| Stolen Hour | Mr. Busher | ||
| Late Date |
クロス:War Admiral 4×5(9.38%)、Hyperion 4×5(9.38%)、Discovery 5×5(6.25%)
*トライマイベスト 1975
|*ラストタイクーン 1983
||Marju 1988
|||Indigenous 1993
|||Martino Alonso 1994
||||Ramonti 2002
|||||*マクマホン 2014
|||サトノクラウン 2012
||||タスティエーラ 2020
||Bigstone 1990
|||*メイショウドトウ 1996
||O'Reilly 1993
|||Shamexpress 2009
||||Ka Ying Rising 2020
||オースミブライト 1996
||アローキャリー 1999
|*ワージブ 1983
||Royal Applause 1993
|||Acclamation 1999
||||Dark Angel 2005
|||||*マッドクール 2019
|||||Charyn 2020
||||Harbour Watch 2009
|||||Pyledriver 2017
||||Romantic Warrior 2018
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最終更新:2025/12/16(火) 10:00
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