E5系/H5系新幹線電車とは (イーゴケイエイチゴケイシンカンセンデンシャとは) [単語記事]

東北新幹線では、E5系新幹線電車投入前の時点で200系・E2系・E3系・E4系が運用されていたが、速度が統一されておらず非常時にはダイヤ編成に苦慮していた。このため東日本旅客鉄道（JR東日本）は、全線開業（新青森駅延伸開業）に合わせる形で東北新幹線の高速化を進める事となり、新形式車両が開発されたのがE5系である。

E5系は、ネコミミ新幹線こと高速試験車両「FASTECH360S(E954形新幹線電車)」で得られたデータを基にして開発された。N700系と基本構造が異なる片持ち梁の全周幌をはじめ、台車に最大1.5度の空気ばね式車体傾斜装置の設置・中央締結式ブレーキディスクによるブレーキ機能の強化、全車に動揺防止制御装置として電気式フルアクティブサスペンション、空力・騒音対策として全長15mにもわたる、アローラインと呼ばれる有機曲線で構成された鋭い先頭形状をはじめ、多段式すり板のシングルアーム式パンタグラフ（2台。ただし通常稼働は1台のみ）・防音壁・台車を全面的に覆う防音カバーなどの装備に反映されている。

E5系のカラーリングは車体上部を「常盤グリーン（トキワグリーン）」、下部を「飛雲ホワイト（ヒウンホワイト）」、帯を「はやてピンク」としている。

車両は10両編成。編成記号はJR東日本E5系が「U」、後述のJR北海道H5系が同社にちなみ「H」となっている。新青森・新函館北斗方の10号車は「グランクラス」車。グランクラスは、鉄道車両として航空機のファーストクラスと同様のサービス提供を目的としたものとなっており、2011年 3月5日からの提供開始されている。

車体断面こそ居住性優先で四角くなっているものの、先頭車全長の半分を超える長さのロングノーズを有するその姿は、JR西日本が500系新幹線電車で示した新幹線の進化の方向性が決して間違ってはいないことを満天下に示すものである。・・・が、その製造費は500系をも軽く上回る、10両編成1本45億円（500系は16両編成で46億円）。後述の増備計画が遅々として進まず、JR北海道車に至っては最初の4編成で打ち止めになっている理由は、ほぼ間違いなく他形式の増備が優先された以外にもあると思われる。

E3系の後継車両であるE6系新幹線電車を併結しての運転を2013年 3月16日より開始。当初のE6系併結時の最高速度は300km/hで、2013年 3月16日の時点ではE5系単独列車のみが最高速度が320km/h、2014年 3月15日現在でE6系併結列車も最高速度が320km/hとなっている（宇都宮駅～盛岡駅間）。

JR北海道では、北海道新幹線の車両はE5系ベースの新車両「H5系」の投入を発表（詳細）。「H5系」は、4編成・40両が製造される予定で、デザインの帯（「彩香パープル」）、シンボルマーク（詳細）、内装（カーペットの柄、扉の色等）以外ではE5系と同一仕様となっている。特筆すべき事項としては、内部照明を発光ダイオード（LED）に変更することで消費電力が削減されることから、E7系と同様に普通車の全席コンセント配置が可能となった。

本系列の外装･内装の変更点としては、E5系の量産先行車ではプラグドアが量産車では引き戸へ、E5系U28編成では諸事情から片持梁全周幌をゴム幌に、H5系及びE5系U29編成以降では普通席の全席コンセント配置、社内LED化、トイレのウォシュレット化及び車椅子マークの設置が主な点としてあげられる。また、JR東日本・JR北海道ではインバウンド対策として、本系列をE7系で導入した社内荷物置場を設置することとし、E6系とともに施工することとなった。

鉄道博物館にE5系のモックアップが置いてある。車体は実際の車両と同じものだが、機器類は搭載せず、台車はE2系の物を流用しているとの事。

2022年 3月に発生した福島県沖地震でH5系H2編成とE6系で組成された「やまびこ223号」が脱線した。

車体の歪みや曲がり、床下機器カバーの曲がり、台車部品の曲がり、モーター破損など、脱線によって車両に大きな負荷がかかった。10両中4両（4～7号車）は廃車になり、残った車両（1～3・8～10号車）で6両に組成しなおし新函館北斗に回送、訓練機械として扱い、2025年 4月1日以降は「H296 ふくろう」として教育・訓練用編成として運用される（営業はなし）。代替新製は無く、不足する分はJR東日本のE5系を借りて運行している。

2024年 9月に315km/hでE6系と連結状態で走行中の「はやぶさ」にて編成分離を起こす事故を起こした。現在は原因究明中。おそらく世界最速の連結開放となったものと思われる。また、翌2025年にも西日暮里駅付近で走行中に編成分離を起こしている。

※なおFA STECHの目玉装備、「猫耳」こと空気抵抗増加装置は、320km/hまでの営業運転ならば台車のブレーキ等で対処できることから省略された。但し研究は継続されており、試験車両「ALFA-X」にも空気抵抗板ユニットとして搭載されている。構造はかなり簡略化されているが・・・。

愛称「はやぶさ」

2010年 12月4日の新青森駅開業がE5系の投入に先行する形で行われる為、E5系投入までの間はE2系「はやて」が新青森駅までを担当した。

当初、E5系には愛称が決められておらず、公募が行われた。東北本線の伝統的な特急列車の名前である「はつかり(第1位)」や車体色から「はつね(第2位)」、東北を率直に表す「みちのく(第3位)」などが人気だったが、最速の鳥として「はやぶさ(第7位)」が選ばれた。

これにより、シロハヤブサをモチーフとしたロゴもあわせて公開された。2011年 3月からE5系は「はやぶさ」（当初最速達列車、最高速度 300kmでの運用）として使用されてきたが、2011年 10月の体育の日が絡む三連休には上りのみだが臨時「はやて」にも使用されている。また、2011年 11月19日からは「はやて・やまびこ」の定期運用に就いており、2012年 3月17日のダイヤ改正によりE5系「はやて」や「なすの」が増便された。

2014年11月20日JR東・北海道は、北海道新幹線部分開業に伴う運用名称については、東京－新函館北斗間の直通運用を「はやぶさ」とし、盛岡－新函館北斗及び新青森－新函館北斗間の運用を「はやて」とすることを発表。

※「やまびこ・なすの」運用上及びE3系併結の場合、最高速度は275km/hである。

置き換えによる動向

2024年 10月1日現在での在籍数は、E5系が量産先行車 U1（元S11）及び量産車 U2～U51編成の計510両。所属は、JR東日本仙台支社内の新幹線総合車両センター。一方、北海道新幹線向けのH5系は2018年 9月1日現在でH1・H2～H4編成がJR北海道函館新幹線総合車両所に所属していたが、2022年 3月16日の地震による脱線事故でH2編成が損傷・除籍となりH1・H3・H4編成の3本30両が在籍している。

投入による置き換えとE5系は、在来線直通のE3系以外（→E6系で置き換え）の東北新幹線運用の車両を置き換えられ、200系が車齢の関係で廃車となり、E2系及び余剰となるE4系を上越新幹線での運用が検討されたが、E4系がすべて上越新幹線へ転入し、E2系0番台J編成の一部が上越新幹線で運用されている。E2系については、E5系が所定編成をそろったことで、盛岡以北での定期列車運行から撤退となった。