レッドディザイア(Red Desire)とは、JRAに所属していた元競走馬・繁殖牝馬である。
品種 | サラブレッド | 中央後ろの“赤地に白星”の勝負服がレッドディザイア |
性別 | 牝 | |
出生日 | 2006年4月19日 | |
出生地 | 北海道千歳市 社台ファーム | |
毛色 | 鹿毛 | |
調教師 | 松永幹夫(栗東) | |
馬主 | ㈱東京ホースレーシング | |
主戦騎手 | 四位洋文 | |
馬齢 | 6歳 | |
総賞金 | 3億2811万6000円 +18万USドル (最終更新日時点) |
父は2001年の菊花賞馬マンハッタンカフェ。種牡馬としては以後ヒルノダムールやグレープブランデーなどのGⅠ馬を輩出しており、母父として現在も血統表にその名前を見る事が出来る。母は関西でその名を知らぬ者はいない豪傑・やしきたかじんが馬主として所有していたグレイトサンライズ。その父は90年代初期にサイアーランキングを賑わせたカーリアン、母父にはニジンスキーがいる良血。
主な勝ち鞍
2009年:秋華賞(GI)
2010年:アル・マクトゥームチャレンジラウンド3(G2)
グレイトサンライズの06として、東京サラブレッドクラブで200口を募ったのだが……集まったのはたったの4口。残りはオーナーサイドの山本英俊氏が買い取るという、およそ後のG1馬とは思えない前評判だった。
開業間もない松永幹夫厩舎に所属。現役時代は甘いマスクと穏やかな人柄で知られ、"牝馬の松永"の異名をとった人物である。
また、厩舎の斉藤崇史調教助手にとって、初めて全て担当した馬がこのレッドディザイアだったという。
2歳の春に調教中に転倒し外傷を負うなど、調整は順調にいかなかった。
そのためデビューは遅めで、3歳1月の京都開催となったがまずここを快勝。次走には格上挑戦となるエルフィンステークスを選択。
新馬戦の勝ちっぷりもあり、某F騎手からシーザリオ級と吹かれた実績馬ワイドサファイアなどを差し置いて1番人気に推される。
後方からの競馬となるも、直線で馬群を割って豪脚一閃、ワイドサファイア以下をハナ差で差し切り一躍クラシックの有力馬に推される。
しかし、 この年のクラシックにはトンデモない奴がいた。後に牝馬にして古馬総大将を張る名牝ブエナビスタである。
最初に彼女と対決することになったのは桜花賞である。休み明けのチューリップ賞で豪脚を唸らせ、他馬を切り捨てて圧倒しやって来たブエナビスタが圧倒的一番人気に推され、ブエナビスタと勝負付けがついておらず、負かすなら未知のこの馬と本馬は二番人気に推されたが、単勝オッズは10倍を超え1.2倍のブエナからかなり離されており、若干消去法的な推され方であり実力差は明らかと思われていた。
レースはブエナビスタが16番手から33.3の末脚で撫で切る圧倒的内容だったが、本馬も一歩も退かず半馬身差に食い下がった。
そして迎えたオークス、桜花賞の内容が評価されたからか、ブエナより長距離向きと思われたからかオッズの差は縮まり一騎打ちムードとなった。ブエナが1倍台の圧倒的人気なのは変わらなかったけど。
例のワイドサファイアが放馬で大暴走し開始が遅れるアクシデントもあった本番、前走で瞬発力勝負では勝ち目なしと踏んだ鞍上四位の積極的競馬で直線半ばで抜け出し、例年のオークスならばまず負けない完璧なレース運びだったが、直線で進路を迷うロスをしてなお外をぶん回して上がってきたブエナにゴール前僅かに差されてしまう。
桜花賞に続き3着だったジェルミナル以下には3馬身差をつけ、同期の中では飛び抜けた実力を持つこと示しつつも、僅差とはいえねじ伏せられ再び苦汁を嘗めることとなった。
前走の負けはポジティブに受け止めていた松永師も、この負けには「勝ち馬が強かった」と認めつつ悔しさを滲ませていた。
夏は放牧に出され英気を養い、秋は秋華賞トライアルのローズステークスから始動。ここでは誰も敵うまいと1.4倍の圧倒的人気に推されたが、春に順調さを欠いた素質馬ブロードストリートを差し切れず2着に敗れた。
そして迎えた3歳牝馬三冠最終戦秋華賞、例のごとく2番人気に推されたが、単勝オッズは1.8倍と3.2倍で、かなり差を縮めていた。ファンも本馬を唯一互角のライバルと認めたのだろう。ブエナが海外遠征頓挫したり順調さを欠いたこともあったが。
レースでは中団から早めに前に進出する積極策で押し切り、三度豪脚で猛追するブエナが並んだ所でゴール板前、長い長い判定の末にレッドディザイアの先着が認められ、遂にブエナビスタを封じ悲願達成、GⅠ初制覇と相成った。松永幹夫師も”牝馬の松永”に相応しく調教師として初のGⅠ勝利を得意の牝馬で達成。さらに馬主の東京ホースレーシングにとってもこのレースがGⅠ初勝利であり、初物尽くしで大変めでたい勝利となった。
一方ブエナはスティルインラブ以来となる牝馬三冠の栄誉を逃すわ、最終コーナーで斜行し3着降着をやらかすわ散々な結果に終わった。やらかし癖は父のスペから遺伝したのだろうか。
秋華賞でついにGⅠ馬となった彼女は、当初はブエナの出るエリザベス女王杯を想定していたが外傷を負ったため予定変更。
万全に調整できない限定戦よりも混合戦だと強気にジャパンカップへの出走を選択。秋華賞の反動もあってか、斉藤調教助手曰く体調はさほど良くなかったとのことだが、ここでは中団から末脚を繰り出し、早めに抜けだしたウオッカと猛烈に追い込んだオウケンブルースリに及ばなかったものの3着を確保。
ライバルであるブエナが有馬記念で先行勢が壊滅する中先行し2着に粘ったこともあり、古馬一線級に引けを取らなかった彼女の評価は高まるばかりであった。
翌年、鞍上オリビエ・ペリエでのドバイミーティングへの遠征を表明。ドバイシーマクラシックを目標とし、前哨戦に現地のGⅡアルマクトゥームチャレンジラウンド3を選択。引退レースのドバイワールドカップを目指すウオッカと出走した。
この年よりメイダン競馬場はコースをオールウェザーに変更していた。松永師もレース前からオールウェザー適正を確かめた上でワールドカップへの出場選択をすると述べていたが、日本馬にとって全く未知の条件となるこのレースで、Gloria de Campeaoが逃げ切りを図る前残り展開で、後方からブエナの如き豪脚で差し切り勝利。
日本馬にとって初めてのオールウェザー重賞勝利となり、陣営も目標を芝のシーマクラシックから当時オールウェザーのワールドカップに変更した。
当初はウオッカやブエナに比べて注目されていなかった彼女が、一躍ドバイの有力馬に推されることになり、競馬場が変わったとはいえ、日本の競馬ファンはホクトベガやトゥザヴィクトリーといった名牝、その他数多の有力牡馬が成し遂げられなかったドバイワールドカップ制覇への期待に胸を高鳴らせた。
しかも前哨戦をペリエが斤量ミスって0.5余計に背負ったのにあの末脚で圧勝、期待しないほうが無理であろう。
なお、8着に敗れたウオッカは鼻出血を発症しており、ワールドカップ参戦を断念し引退。
彼女とは遠征中の帯同で仲良くなり、時にはディザイアがウオッカを慰める場面もあったとか。
そのため引退したウオッカがアイルランドに向かって以降はディザイアは寂しがって落ち着きがなくなってしまったため、陣営は苦肉の策で原寸サイズのウオッカ顔写真をウオッカの馬房に貼り付けて落ち着かせようとした。
結局それだけでは騙しきれなかったらしく、ブエナビスタがドバイに到着後はブエナの見える馬房に移動させてようやく一段落ついたとのこと。
ブエナとは帰りの輸送ストールでも隣同士で、同じ桶で飼い葉を食べていたなどの微笑ましいエピソードもあり、レースでは宿敵でも馬同士は仲良しだったようだ。
JC・マクトゥームチャレンジでの状態はさほど良くなく、にも関わらずあの好走、対してワールドカップは万全の調教を行ったとのことで松永師は非常に自信を覗かせていた。
ウオッカの無念も背負うこととなった彼女は、この瞬間においてはともすればブエナビスタ以上に注目を浴びていた。
…しかし、本番ではパドックから落ち着きを欠き、今回の鞍上スミヨンと相性も悪かったのか始終ひっかかり11着に敗退。前走で負かしたGloria de Campeaoがブラジル産馬初勝利を達成する様を後ろから眺めるハメになった。
陣営は敗因を多くは語らなかったが、一説によるとレース直前のイベントで打ち上げた花火の大音量にディザイアが怯えてしまい、イレ込みに繋がったとも。母馬や兄馬も気性に問題があったらしく、前述の寂しがるエピソードから伺える繊細な面が悪く出てしまったのかもしれない。
日本に帰国し、ドバイシーマクラシックを2着したブエナビスタと四回目の対決となったヴィクトリアマイル。両者ともに遠征の疲労により状態は良いとは言えず、ディザイアも挫跖を発症するなどしていた。
レースでは早め抜け出しを図るがそれもあってか伸び切れず4着、ニ強決着とはならず三度ブエナビスタに屈する事になった。
このレースの後宝塚記念へ調整されたが直前に鼻出血を発症し休養。秋は鼻出血防止薬が使えるアメリカへ遠征。
ただ、陣営にとって初めての海外挑戦だったため、豪雨によって追い切りを万全に行えなかったアクシデントがあり、そのためか前哨戦のフラワーボウル招待では1番人気に推されるが3着に惜敗。
ブリーダーズカップフィリー&メアターフはその反省を生かして良い状態で挑めたとのことだが、伸びきれず4着と大負けもしないが勝ち切れもしない中途半端な結果に終わった。
日本に帰国し有馬記念に出走するが、そもそも状態からしてボロボロだったため見せ場も作れず惨敗。ライバルのブエナが後にドバイワールドカップ制覇を成し遂げるヴィクトワールピサと激戦を繰り広げたが加わることすら出来なかった。
その後じっくり休養し立て直しを図り、復帰したのは夏の札幌記念。ここではトーセンジョーダンの3着に入り復調をアピールするも次走に選んだ天皇賞(秋)は除外の憂き目に遭い、エリザベス女王杯に向けて調整された…が、またも直前で鼻出血を発症したため、もう無理はさせずに次代に賭けようとなり引退。 ドバイワールドカップでケチが付いて以来、あまりいいことがない競走馬生であった。ドバイからの帰国後は馬込みを嫌うような癖が出始めたらしく、メンタル面で悪影響を負ってしまったのだろうか。あの時の花火を恨む。
繁殖牝馬としても期待されたものの、第四子を出産後体調を崩し2016年に他界。ハービンジャーとの初仔レッドディヴェルが調教中に事故死し、第二子で母の没後に名前を受け継いだビッグディザイアはブエナの仔であるコロナシオンとの対決が密かに話題になるもののそのレースで予後不良、命と引換えに生んだキングカメハメハとの第四子は早世したのか消息不明とその仔までもが不幸に見舞われている…。
ノヴェリストの第三仔のノスタルジアは繁殖牝馬として残っており、彼女がレッドディザイアの血を継いでくれることを祈ろう。
その後、松永調教師はディザイアでのアメリカ遠征の経験を活かし、ラニで日本馬初となるUAEダービー勝利を達成。同じ世代に歴史的名牝がいたせいで苦労するというどこかで聞いたような経歴のラッキーライラックでG1・4勝を挙げるなど、確実に調教師としての実績を詰んでいる。
斉藤調教助手は後に独立し、グランプリ三連覇という偉業を成し遂げた秋華賞馬クロノジェネシスを育て上げるなど、こちらも調教師として大成している。
斉藤調教師は「ふたりの恩師」として松永調教師と、初めて自分が全て担当した馬であるレッドディザイアを挙げている。不運にも見舞われたレッドディザイアの馬生だが、彼女の遺したものは馬だけではなく人にも受け継がれていくののだろう。
中央 10戦3勝 海外 4戦1勝
2009 | 競馬場(国名) | レース名 | 距離 単位:㍍ |
人気 (単勝) |
騎手 | 負担 重量 |
タイム | |
1/4 | 京都 | メイクデビュー京都(新馬) | 芝1800 | 1着 | 1(3.4) | 四位 | 54 | 1:48.9 |
2/7 | 京都 | エルフィンステークス(OP) | 芝1600 | 1着 | 1(2.2) | 四位 | 54 | 1:36.0 |
4/12 | 阪神 | 桜花賞(JpnⅠ) | 芝1600 | 2着 | 2(14.4) | 四位 | 55 | 1:34.1 |
5/24 | 東京 | 優駿牝馬(JpnⅠ) | 芝2400 | 2着 | 2(6.0) | 四位 | 55 | 2:26.1 |
9/20 | 阪神 | ローズステークス(GⅡ) | 芝1800 | 2着 | 1(1.4) | 四位 | 54 | 1:44.7 |
10/18 | 京都 | 秋華賞(GⅠ) | 芝2000 | 1着 | 2(3.2) | 四位 | 55 | 1:58.2 |
11/29 | 東京 | ジャパンカップ(GⅠ) | 芝2400 | 3着 | 6(9.6) | 四位 | 53 | 2:22.6 |
年間成績:7戦 3勝 2着3回 | ||||||||
2010 | ||||||||
3/4 | メイダン (UAE) |
アル・マクトゥーム チャレンジラウンド3(G2) |
AW2000 (タペタ) |
1着 | - | ペリエ | 55 (55.5) |
2:02.6 |
3/27 | メイダン (UAE) |
ドバイワールドカップ(G1) | AW2000 (タペタ) |
11着 | - | スミ ヨン |
55 | 不明 |
5/16 | 東京 | ヴィクトリアマイル (GⅠ) |
芝1600 | 4着 | 2(5.7) | 四位 | 55 | 1:32.5 |
10/2 | ベルモントパーク (米国) |
フラワーボウル招待 (G1) |
芝2000 | 3着 | - | デザ ーモ |
54.8 | 不明 |
11/5 | チャーチルダウンズ (米国) |
ブリーダーズカップ フィリー&メアターフ(G1) |
芝2200 | 4着 | - | デザ ーモ |
56.2 | 不明 |
12/26 | 中山 | 有馬記念(GⅠ) | 芝2500 | 14着 | 11(47.2) | 四位 | 55 | 2:34.0 |
年間成績:6戦 1勝 | ||||||||
2011 | ||||||||
8/6 | 札幌 | 札幌記念(GⅡ) | 芝2000 | 3着 | 2(6.2) | 四位 | 55 | 2:00.5 |
※アル・マクトゥームチャレンジラウンド3は55.0kgで出走予定だったが、ミスで55.5kgとなってしまった。
※海外の場合、距離と斤量は“およそ”の数字です。
レッドディザイア |
父 マンハッタンカフェ |
父父 サンデーサイレンス |
Halo |
Hail to Reason |
Cosmah | ||||
Wishing Well |
Understanding | |||
Mountain Flower | ||||
父母 サトルチェンジ |
Law Society |
Alleged | ||
Bold Bikini | ||||
Santa Luciano |
Luciano | |||
Suleika | ||||
母 グレイトサンライズ |
母父 Caerleon |
Nijinsky |
Northen Dancer | |
Flaming Page | ||||
Foresser |
Round Table | |||
Regal Gleam | ||||
母母 グレースアンドグローリー |
Sadler's Wells |
Northen Dancer | ||
Fairy Bridge | ||||
Grace Note |
Top Ville | |||
Val de Grace |
マンハッタンカフェ | グレイトサンライズ | ||
代表産駒 | 産駒成績 | 父名 | |
2003年生まれ | - | サンライズダンス | ダンスインザダーク |
2004年生まれ | マンハッタンスカイ | オメガバリュー | ステイゴールド |
2005年生まれ | メイショウクオリア | - | - |
2006年生まれ | レッドディザイア ジョーカプチーノ |
レッドディザイア | マンハッタンカフェ |
2007年生まれ | ヒルノダムール | - | - |
2008年生まれ | グレープブランデー | ジョイライド | サクラバクシンオー |
2009年生まれ | - | - | |
2010年生まれ | グレイトサンライズの2010 | チチカステナンゴ |
過去のレースについては戦績のレース名をクリックしてください。
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最終更新:2024/12/24(火) 00:00
最終更新:2024/12/24(火) 00:00
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