テムジン(MBV-04)とは、SEGAから発売されている電脳戦機バーチャロンシリーズに登場する機動兵器であるバーチャロイドの一機種である。
この項目ではシリーズ内の各世代・派生機について同時に紹介する。
概要
MBVとは主戦闘バーチャロイド(Main Battle Virtualoid)の頭文字。
バーチャロンシリーズにおけるパッケージを飾る機体であり、頭部の箱型のバイザーと2本の耳のようなアンテナ、大剣を模した兵装を携えた姿が特徴の巨大ロボット。
登場陣営でカラーリングが変わるが、概ね青基調の姿が有名であろう。
バーチャロンというゲームにおいて最も標準的な性能の機体として初心者に推奨されやすい機体である。
装甲値は全機体でも標準的で、転倒耐性も「簡単によろけはしないが、過度なダメージにはちゃんと転倒する」適度なレベル。
足回りも、横・前、地上・空中のどれも速度・距離共にバランスよく配分されている、機体特性から後進はあまり使用しない傾向にあるので後進が遅いという欠点はほぼ体感できない。
また、敵の再捕捉のために必要なジャンプキャンセルの硬直が小さいという特徴からストレスも小さい。
火力は剣先をビーム砲にして放つRW、敵の弾丸に対する遮蔽を作り出すLW、敵の弾丸を消すカッターを飛ばすCW、リーチに極めて優れた近接攻撃群など、近距離になるほど命中しやすいというバーチャロンの特性を踏まえつつも、隙となるような間合いが存在しないような幅の広さも持つ。
それらを用いた牽制射撃と優秀な足回りで敵機を追い回して追い詰め、伝家の宝刀とまで言われる前ダッシュRW(通称:前ビ)や近接攻撃で仕留めるガン攻め戦術に適しており、非常に分かりやすい機体といえる。
欠点はバランス型らしい器用貧乏……というべきだが、この器用貧乏さのデザインも巧み。
各武装は弾道が素直なので搦め手に乏しく、牽制のプレッシャーが弱い。更に、決め手となる攻撃は前述の前ビや足を止めるターボ攻撃、近接攻撃といったリスクのある攻撃に限定されるため、敵機に読まれ・対策されやすい。
そのため、初心者はストレスなくゲームに集中できるが、決定力の薄さを読み勝ちで補う上級者だからこそ立ち向かうべき欠点があるという奥深さを兼ねている機体と言える。
電脳戦機バーチャロン
最強に近い機体。バグ技の大玉4発さえ使わなければ弾切れしないRWの幅広いレンジ対応力、近接攻撃のリーチ等、一撃離脱に優れた性能で初心者にも扱いやすい。
LWがあまりに強すぎるため、一部大会のレギュレーションでは禁止されることも。
全ての攻撃を防御する相殺性能、当たればライフル1発に相当する大きなダメージに加え、あまりの回転性能の良さに爆風をバリアとすれば試合時間の3割は完全無敵となる。
一度ダメージを与えたらLWを利用したガン逃げをする通称“ボムジン”という悪評が立った時期でもある。
空中前移動CWでグライディングラムという特殊な突進技が使用可能。
オラトリオ・タングラム
背部のブースター等、非常に外連味が増し、主役機としての貫禄が出た。
初代テムジンと同様の牽制で追い詰め、必殺の前ビでダメージを取る戦術はそのまま。
しかし、各種ターボ攻撃で無誘導の置き攻撃や長時間誘導するボムなど、先代で欲しいと思われていた武器が追加され、裏技とも言うべきサブウェポンが充実した。
多彩な武器を得た他の機体に火力面で水を開けられがち。特に強みを簡単に押し付けられるダイヤグラム上位陣に苦戦しやすいが、それらの対策を詰め、そのうえで相手に食らいつくように走り回ることで腕の差で以て相性差を覆し得る中堅良機体というポジションとなった。
ボムは当然弱体化。残当。
特殊技が二つ存在し、旋回中CWでメガスピンソード、空中前ダッシュ中CWでブルースライダーが発動可能。
10/80sp(テンエイティ スペシャル)
初代電脳戦機バーチャロンのテムジンの量産モデルという名目の機体が使用可能。
アンテナが削除され、携行するものも小型になっている。
第二世代型独自のバーティカルターンや空中ダッシュ、Vアーマーといった機能を持たない。
火力面も連射性は増したが射程が短くなり、射程面での牽制力は悪化。正規のテムジンに比べて弱体化というべき性能をしている。
……のだが、各種運動が高速化・硬直軽減しているため、バーティカルターンに匹敵するキレで動ける地上ダッシュでの追い能力や近接攻撃の能力は第二世代型を凌ぎ、その軽快な運動性は一部のプレイヤーをやみつきにさせている。
フォース
エッセンスの部分がそのまま、むしろオラタンの時の主力武器の殆どがそのままなので、左ターボ攻撃が削除された結果、弱体化を強いられた他の機体に対して相対的に強化されている。
第三世代型に関しては本体装甲に付随する追加装備を使用することができるようになった。
反面、2on2というゲームバランスゆえに、1on1が強いテムジンの強みに対して相方へ手軽に送れる援護攻撃に乏しいという新たな欠点が浮上し、単体ではシンプルだが、チームで運用するのは一癖ある機体となった。
また、第三世代型の指揮官用モデル限定で、装甲を排除し、耐久力を犠牲に軽量化する機能がある。
MBV-707-J (第二世代)
M.S.B.S.ver7.5期のテムジン系初期支給モデル。
概ねオラタン時代のモーションを継承。
747-Aとほぼ同じ武装で、硬直やVターン速度などの小回りがメリットとなるが、装甲や火力、移動速度などの分かりやすい部分はおおむね敗北しているため、分かりづらいレベルの硬直の少なさでどう差別化するかという渋い機体であり、一般的には下位互換的な立場となっている。
707-J+(第二世代)
背部にホワイトフリートから供与された翼型の「グリンプスタビライザー」が追加された改良モデル。
全体的に機動力が向上し、特に空中機動力がアップしている。
RWが燃費が落ちる代わりに威力が上がっており、特に前ダッシュRWは単発だが4割のダメージを奪う大威力化。
装甲が甘くなっていたり、貴重なRWの手数が減るなどピーキーな仕様となっているが、そのハイパワーゆえの逆転性により、747-Aよりもこちらを大会向けとするプレイヤーも少なからず存在している。
707-J/c(第二世代)
指揮官型モデルであり、耳のアンテナが片側のみの大型のものに交換されているほか、大型のスライプナー(俗称:冷凍マグロ)へと武装が変更されている。
装備重量が増して機動力が落ちており、装甲も若干落ちている。
ちなみに、指揮官型という設定だが、一般階級でも支給される。
J+とは対照的に手数重視のRWとなっており、回転率が向上している。また、前ダッシュRWが威力は低くなったが3連射となっているのも特徴。(ただし、3連射のために硬直が増えているのでむしろ改悪とするプレイヤーも多い)
それ以上に特徴的なのはターボRWの威力がライデンのレーザーに匹敵するという浪漫重視モデルといえる。
747-A (第三世代型)
『707-J』の設計を最も忠実に現代化した「A(アサルト)アーマー」を装備した第三世代モデル。
M.S.B.S.ver7.6からテムジン系列の初期機体となる。
平均少し上の装甲に地上での機動力は707-Jからむしろ強化。射撃はほぼ変わらずだが高速発生とリーチを兼ね備えたターボRW近接(通称:牙突)による張り付きでの脅威度もアップ。
まさに走攻守どれをとっても水準以上で、作中の中量級最強という呼び声も高い。
ただし、2on2の適正の低さもそのまま継承しているため、自分の役割をこなせないと相方に負担を強いる。
ちなみにVO4では登場しないが、MARZではTRWを片手撃ちから第二世代型と同じ両手撃ち方式に改めるなどの改修を施した『747-AⅡ』という派生モデルが存在している。
MARZではCPU専用でチートを使うことで使用できるようになる。ステータス設定が雑だが。
747-F (第三世代型)
火星での兵站事情を考慮して『テムジンのまま偵察機を作れないか』というニーズに応えたモデル。
「F(フレックス)アーマー」を装備し、腰周りなどが大胆に軽量化されているが、全身の翼型パーツが特徴。
“テムジンのフレームを流用した偵察用バーチャロイド”という開発経緯から実は第三世代仕様のバイパーⅡと言っていいためかテーマソングがかつてのバイパーⅡのものである「S.L.C」である。バイパーⅡシリーズファンからお怒りの声がある。
地上の巡航力や装甲は747-Aから落ちているが空中機動力は向上。
武装はむしろ10/80に近いものであり、RWがマシンガン、TRWが射角調整するレーザーとなっている。
だが、LWが防御兵装ではなく相手をスタンさせる補助兵装となっていたり、ターボCWではマイザーΓのような4本のホーミングビームを射出。かなり攻撃的なラインナップとなった。
総じて747-Aよりも援護に向いた武器が揃っているが、援護に適した武器がターボ攻撃に集中しており、タイマン戦でまとまったダメージが取れる武器が減っているなど、器用貧乏なきらいがある。
747-H (第三世代型)
火星での主脅威は最も生産されているVOX系列の飽和攻撃であり、それに対抗できる制圧射撃力を持つ機体が必要とされた。
そこでアファームド・ザ・ストライカー的な発展をした「H(ホールド)アーマー」を搭載したのが本機である。
右肩部にランチャー、合体分離可能な2本のビームライフル:クラウド・スラップを搭載。各所が肉厚になっているなどそのシルエットはまさに重量級機体といって差し支えない。
機動力を犠牲に装甲・火力を強化していることから念願の“フルアーマー・テムジン”と呼称したほうが良いだろうか。
見た目やコンセプトこそ派手だがその扱いは繊細で、特に攻防一体の兵装であるCWのカッターを失ったため、強気に撃てる武装が少なくなった。また、転倒耐性は他のテムジンよりも悪くすぐダウンする。
ただし主戦機としては弱体化したが、支援機としてはLWのナパームや緩く誘導するCWといった援護や垂れ流しに有効な牽制射や、自分から当ててゆけるRWなど、支援とタイマンを両立できる武装に。ダッシュ距離は短くなったものの、中量級相応の移動速度が出るのも見逃せない。
近接攻撃もビームソードなので引っ掛ける能力の高い。CW近接のクラウド・スラップ二刀流も見所。
747-T (第三世代型)
まったく装甲を付けていない素体状態の747テムジン。アーマー換装システムのテスト機体。
元々流通に乗らない機体だったはずが、何とかスライプナーだけは持たせてもらって戦場に出たもの。
基本的には747-Aと同等の攻撃性能に加え、軽量級に匹敵する機動力と、LWのナパームで747-Aよりも攻撃面で優れていると評価されるが、それを台無しにするのはライデンのレーザーで一撃昇天する紙装甲。
一瞬でリードが覆されるリスクはチームにとって大きな負担であることはいうまでも無い。 ご利用は計画的に。
10/80adv (改修第一世代型)
バーティカルターンや空中ダッシュが可能になって機動力は第三世代の軽量級に匹敵するが、その軽量級よりも脆い装甲は機動力と近接でカバーできる範囲を超えてしまっている。
マーズ
第三世代型747系列はPS2のグラフィック描画能力との相性の悪さ故にリストラされ、第二世代型707-J型が参戦。
チャレンジモードのみ、非プレイアブルで747-A2型が登場する。
プレイヤーが所属する組織から支給される(魔)改造テムジンが支給されるため、一般兵用の他のバーチャロイドとは比較にならない性能を誇る。
とくにドラマティックモード(シングルプレイ)においては支給されたテムジンでなければ攻略難易度が急上昇するため、テムジン以外のゲーム攻略の楽しみを奪っている(テムゲー)と非難される傾向にある。
設定集
バーチャロンの顔として知られたテムジンであるが、けして明確な敵がいたわけでも華々しく期待されていたわけでもなく、ただ人の諦念と保身が作り出した英雄。それがテムジンである。
第一世代型 | 10/80 | 第二世代型 | 第三世代型 | MARZ保有機 | 白虹騎士団機 | その他 |
第一世代型
DN社が月面地下から発掘した、異星人の遺跡”ムーンゲート”内部のオーバーテクノロジーを解析するために設置された研究機関”0プラント”は、解析が難航した結果、予算を使い切ってしまう。
研究費を捻出すべく解析できた技術で以て採算性のある事業を作る必要に迫られたため、電脳歴で最も巨額が動く「限定戦争」で活躍させるべく人型機動兵器という形で世に出すことが決定し、そのために開発されたのがこのテムジンである。
テムジンの試作型であるXMU-04が初めて実戦投入された際には、未だこの機体の戦術的価値を疑問視する声も多く、与えられていた評価は最低レベルだった。そのため、この機体の開発元である0プラントとしては、早急にテムジン(この時点で機体名称は決定されていた)の有用性を実証する事が存続の絶対必要条件となっていた。
このために実戦投入の時期を急ぎすぎた本機は様々な初期トラブルを頻発させ、実際に稼動していた機体は配備された内の僅か20%に過ぎなかったとされる。しかし、その20%の稼働機体があげた戦果は素晴らしく、従来の戦闘兵器の常識をはるかに凌駕した機動性能、戦闘性能を発揮。兵器としての有効性を実証し、「バーチャロイド」と呼ばれるロボット兵器の新たなる戦術的カテゴリーを生み出した。
その後、MBV(主戦闘バーチャロイド)の型番を与えられDN社に採用されることとなった。
MBV-04 テムジンはその後に開発された全てのバーチャロイドの基本となった機体である。
信頼性の高い駆動系、クセのない機動性能、使い勝手の良い武装、程よい防御性能、といったバランスのよさからくる兵器としての有用性は、最初期に開発されたVRであるにもかかわらず、長らく本機が一線級の兵器として使用され続けた事実によって知られている。
テムジンの武装は大剣に似た形状の砲、「M.P.B.L-7」とハンドグレネードしか無い。
しかしながらこのM.P.B.L-7こそテムジンが多彩な攻撃バリエーションを獲得するに足る逸品である。
当初は弾種の変更できるビーム砲に過ぎなかったのだが、在来兵器の常識を塗り替える俊敏性は、仮想シミュレーターや実戦テストで近距離戦闘の遭遇を明示していた。
そのため、砲身にビームを纏わせ、それを剣として振るう機能を与えた結果、これが大当たり。
元々のビーム砲としての幅広い射程に加え、密着距離でも隙の無い攻撃が可能になったこの砲を携行したテムジンはまさにバーチャロイドとしての黄金律を示す機体となったと言える。
欠点としてはM.P.B.L-7が巨大にして大重量であるため、テムジン以外はこの武装を用いえない。事実としてテムジン本体は内蔵武装ほぼ無し、追加武装が本体という兵器としてはかなりイロモノであるといえる。
結果的に重量級の機体であるライデン(HBV-05)や取り回しに優れたアファームドといった機体の開発につながることとなった。
第一世代量産型
制式番号:MBV-04-10/80
テン・エイティと呼称されるシリーズ。ファンの間ではテンパチとも。
電脳戦機バーチャロンの事件であるムーンゲート暴走事件の結果、DN社は倒産・解体された後、元DN社の直属の軍事興行団DNAはスポンサーである旧DN社傘下プラント、フレッシュ・リフォー(FR-08)の勧告でバーチャロイドを使った限定戦争を行うことが制限され、装備もほとんど更新できない苦しい状況にあった。
その最中、突如後にRNAを名乗るバーチャロイド運用組織が戦争に介入。彼らが扱う第二世代型アファームド系バーチャロイドに様々な第一世代バーチャロイドで対抗するも、キルレシオ1:3の大敗という状況にあった。
バーチャロイドを売り込む最大の投機ながら、旧DN社傘下は(名目上)バーチャロイドへの研究を自制していた経緯からすぐには互角に対抗できる第二世代型バーチャロイドに相当する機体の開発は不可能であった。
そのため、FR-08陣営は第二世代型が登場する間繋ぎとして第一世代型の増産を決行。その命令を受けたのはFR-08の次席ともいえる規模のプラント、ムーニー・バレー(MV-03)であった。
そして、最初期に使い潰されるように数を減らし、死蔵されていたベルグドルよりもコスト対・効果に優れた機体として、テムジンが挙げられ、その簡易設計版がこの10/80(テン・エイティ)である。
武装は小型のC.G.S.type.a1に改められ、RWに相当するビーム弾の出力が下がっている。
書籍媒体ではビームソード形成機能の無い時代の旧型のM.P.B.Lを携行していたようだ。
流石に第二世代型バーチャロイドを相手取るには力量不足なのは否めないが、ほぼ同コストの千鳥足のベルグドルから比べれば飛躍的に操作性の良い機体であったため、DNAの現場での声は良いものであった。
事実、スペック差をものともせず第二世代型アファームド3体を相手取り、逆転勝利したエースパイロットであるハッター軍曹の当時の愛機もこれであった。
しかし、生産者たるMV-03としてはあまり作りたくない機体であった。
なにしろ、これの生産している裏では第二世代型バーチャロイド……後のグリス・ボックが設計の最中であり、それがリリースされれば型落ちして不良在庫となるのは明らか。というか実際そうなった。
グリス・ボックがお披露目して以後、FR-08はグリス・ボックのセールスによる体力の削減という嫌がらせの目的で10/80のグレードアップを命じた。オラトリオ・タングラム劇中で使用できるのはこの嫌がらせに(表面上)真摯に応えたモデルであり、「10/80sp(テン・エイティ スペシャル)」と呼称される。
それでも結局オラトリオ・タングラム戦役で捌ききれず、MV-03の不良在庫として残った10/80はFR-08陣営から離れた後、火星での運用実験機「10/80adv(テン・エイティ アドバンス)」として改造され、その中の一部が闇市場に流出。
第三世代と比較すればそのスペックは比べるべくもないものだが、あまりに広大ゆえに無秩序状態の火星にとって貴重かつ安価なバーチャロイドとして出回るというAK-47のような兵器になりつつあるようだ。
第二世代型テムジン
旧DN社直属の軍事興行団DNAの現盟主、フレッシュ・リフォー(FR-08)は対RNA……ずばり第二世代型バーチャロイド製造にあたって、親FR-08である3つのプラントにその発注を掛けた。
中でも戦術の基幹となるMBVに関しては肝入りとなるリファレンス・ポイント(RP-07)へ発注した。理由は親FR-08陣営において最も影響力が小さく、MBVのセールスによってしてもFR-08を下剋上するようなことはなく、むしろRP-07の隆盛により間接的にFR-08の発言力を高めたいという政治的なもの。
しかし、RP-07はあくまでプラント同士の中継点を担ういわば運送会社から発展してきた新興。いくら親会社の鶴の一声とはいえ、いきなり最新鋭の兵器を作れだのと言われて納期を守れる道理もなし。結果的にFR-08の無茶振りは遅れに遅れ、先述のグリス・ボックからリリースは2年も遅れた。
最終的にDN社からFR-08が引き継いでいた白檀艦隊(ホワイトフリート)が研究し続けてきた最新型のバーチャロイドのマイナーモデルという形で本機はリリースされることとなった。奇しくも、初代テムジンの正当後継機であるそれはMBVを違和感なく世襲するものだったと言える。
第一世代型との大きな違いは背部の左右一対のユニット、「マインドブースター」
実はバーチャロイドがダッシュの時に背部から噴き出している青白い噴射炎は推進剤ではなく動力炉の排熱がプラズマ化して放出されているに過ぎない。機体の推力は小説媒体で”斥力”と表現される反作用の伴わない謎の加速力によって生じている。
その排熱を制御OSがパイロットの能力に応じて制御することで、搭乗者に最適な出力でテムジンは動くことができるため、機体のレスポンスは極めて高い。
そして携行する大剣型複合兵装「スライプナー」もとんでもない代物。
内部に人工Vクリスタルが内蔵されていて、スライプナーの構造はそれに付帯されており、そのVクリスタルが命じるまま、構造を度外視した変形を可能とし、高出力を発揮。
通常形態の「ニュートラルランチャー」や「ブリッツシールド」から、ターボRWの「ラジカル・ザッパー」、特殊攻撃の「ブルースライダー」といったド派手な変形はVクリスタルの働きによるもの。
シンプルな主役機のようで実はスーパーロボットばりのトンデモ兵装が詰まったテムジン。
しかし、オラトリオ・タングラムの戦端が開かれた時の「707-G」型モデルはマインドブースターにリミッターが課せられ、フルスペックで動かない。
……というのも、ホワイトフリート時代のマインドブースターの試作実験に、マインドブースターで出力を高めすぎた結果、パイロットがシャドウ化(パイロットが機体に乗っ取られる)現象を誘発する事故が起こりかけた。
そのため、ホワイトフリートでは各所にシャドウ化抑制装置を搭載することで第二世代型テムジンを運用しているが、「707-G」型はそれをオミットしている分、性能に上限が設けられている。そのため、第二世代型テムジン開発チーム曰く、『完成度は60%。まさに裸で戦場へ送るようなもの』とまで言わしめた。
結果的に第二世代型バーチャロイド最後発のモデルとなったわけであるが、それだけに第二世代型のあらゆる技術を総括した機体であり、リミッター込みにしてもそのポテンシャルは同じ第二世代型の枠内に収まらないものとなった。グリス・ボックの絨毯爆撃が主力のDNAにあってその初陣は鮮烈かつ華美であったという。
その後、改良が重ねられ、マインドブースターのリミッターも最適化された結果、「707-J」にて完成を迎える。
その性能は他の第二世代型を大きく引き離し、地球圏最強機体と称されることとなった。
第三世代型
第二世代型テムジンのリリースにより潤ったリファレンス・ポイント(RP-07)は、たとえ地球圏最強と言われた「707-J」であっても、それに慢心せず、次世代機の開発に取り組んでいた。
しかしオラトリオ・タングラム戦役の限りなく主催に近い立場にあったフレッシュ・リフォー(FR-08)は傾きかけた経営を回復し、その中で復権した役員達は、有能なれど外様だったリリン・プラジナーを罷免し、かつての官僚主義・大企業的悪癖を復活させてもいた。
そしてそれは権力的優位を保つためのRP-07の体力削ぎという内ゲバへと発展してゆく……
そしてFR-08によるDNA次期主力機体のコンペティションが開始される。
ちなみに、かつての親FR-08陣営の残り2社はFR-08から手を切っていたため、実質FR-08との一騎打ちの様相であった。
RP-07は真摯に、そして良く応えた。コンペに出したのは以下の機体。
- XBV-717-H 707テムジンの強化外装キット。
- XBV-727-F C.I.S(電脳虚数空間…つまり異次元空間)での運動能力を強化した新型フレーム。
- XBV-737-A 上記2機種がMBV-707の強化キットならば、こちらは完全新規設計の機体。
しかし、FR-08はまともに戦闘できないXMV-810……即ち第三世代バルシリーズを勝たせてしまう。
こうして、出来レースは終わり、FR-08は意気揚々と火星から広がってゆく商機に胸を躍らせていた。
……のだが、それは第二世代型テムジンがマインドブースターの性質から火星のジャミング下でも活動できることに由来した慢心であり、先に火星の現地モデルである第三世代型機ことVOXやアファームドに対して優位性を失っていたことに気付かなかったためである。
結果、火星に乗りこんだ707テムジン部隊は艱難辛苦を味わう。性能的優位は失われている上に、DNAの再三の要求は理解のない上層部から突っぱねられ、地球から遥か彼方の火星への補給や兵站が文明が隅々まで行き渡った地球の理論で通用するはずもなく、壊滅的被害を蒙ってしまう。そう、「地球圏最強」は火星に持ち込まれた時点で只の皮肉の言葉となっていたのだ。
そしてそれらの事実が浮き彫りになるにつれてFR-08は戦慄する。
XMV-810系の新型は未だ動きすらしない。されど火星への戦力供給は限界であったのだ。
結局、盛大なブーメランはFR-08の後頭部を直撃し、RP-07にかつてのコンペ機体3つを統合した新規MBVの製造の依頼という形で頭を下げさせる結果となった。
結果、新たなテムジンはMBV-747の型番を与えられ、前述の3つの機体特性に加え、火星の兵站を考えられた外見は似ても内部は全く違う新規機体となった。
火星のVコンバーターのジャミング内において最適化されたマインドブースターにより、707系よりも高い出力供給を可能としている。
前時代のテムジンと異なる点はグリス・ボックやライデン等を踏襲した素体に機能を追加してゆくことができる設計にある。
歴代のテムジンを踏襲した「A(アサルト)アーマー」はあくまで”テムジンらしさ”を追求したモデルに過ぎず、偵察機である「F(フレックス)アーマー」や砲撃型「H(ホールド)アーマー」といった派生モデルで大きく仕様が変わっても破綻なく動作することが可能。
また、指揮官機にはそのアーマーをパージしてフレームだけで戦闘する機能もある。
更に言えば設計面でかなり余裕を持たせているため、いわば共食い整備や現地改修を想定しているという点で用兵側に優しい設計になっていることもゲーム内では現れないが特筆すべき項目と言えよう。
結果、第三世代型テムジンはかつての栄光とまではいかないが、戦場の華として返り咲くことに成功したと言える。
MARZ保有機
前述のフレッシュ・リフォー(FR-08)においてその組織の立て直しを成功させた敏腕女社長(※ティーンエイジャー)であったリリン・プラジナーは裏切りに近い形でFR-08から追い出されてしまった。
聡い彼女はその中に不自然な金の流れ、人の流れがあったことを察知し、その原因究明に独自に乗り出すこととした。その中で判明した事実は発掘される以前のムーンゲートに残っていた残留思念が、地球のネットワークに入り込んで金や人の扇動によって人類の破滅を目論見ているという事実であった。
その悪性の知性体「ダイモン」に対し、リリン・プラジナーは私財をなげうってその対抗組織「MARZ」を設立。名目上は「火星の犯罪を取り締まる私設団」であるが、その真相はダイモン討伐のための物であったことは伏せられていた。
理想としては白檀艦隊(ホワイトフリート)が所有する非商用ベースの高性能機だったのだが、個人でそれに匹敵するバーチャロイドの開発ラインを整えるのは人・時・金のどれも足りなかった。そのため、商用機体を高性能なパーツでチューンナップする方針で賄われている。
最初はVOX系列で賄う予定が、その設立理念に難色を示したメーカーのアダックスによって拒否されてしまう。アダックスこそ火星の闇市場へバンバカとバーチャロイドを送って儲けていることは10/80の項目の通り。
結果、かつてのFR-08のコネからなんとか第二世代型テムジンを引っ張り出し、これを改造して運用することとなった。
そしてある程度の成果・運営が軌道に乗ったところで第三世代型へと移行。この第三世代型がMARZにおける決戦兵器という位置づけとなっている。
特にこの三世代型ベースのモデルは、ダイモンが潜んでいるであろう電脳虚数空間(異次元空間)内での戦闘力維持のために贅を尽くした改良が施されている。
- MZV-707-S
払い下げられた第二世代型テムジンをチューンナップした一般捜査官向けモデル。
軽量級相当まで機動力が強化されているが装甲値も同程度にダウングレードしている。
上位機体として「707-S/V」が存在し、前ダッシュRWが3発に変更されている。 - MZV-747-J
上級捜査官向けに、本格的なダイモンとの交戦を想定した決戦向け改造品と言っていい代物。
747-A2型ベースに、その拡張性の高さが見事に性能へと反映されている。
選りすぐりの動力炉で24倍もの出力を強度と速度に反映するモンスターマシンである。
チーフ(スパロボ)の搭乗機としてゲスト出演したのはこれ。
上位機体として「747-J/V」が存在し、前ダッシュRWが3発になり、機動性が向上している。 - MZV-747-H2
上級捜査官向けの機体として重装甲を必要とした戦況に対応すべく製造されたもの。
ダッシュ時間こそ747-H型程度だが、スピード、ブレーキングのキレは軽量級に匹敵し、装甲値は商用最高クラスのライデンをも凌ぐ。
上位機体として「747-H2A」が存在し、装甲値に更に磨きがかかる。 - MZV-747-FF
プラモデルのみの機体。 純粋にはMARZ所属機ではない。
プラモデル付属のテキストによると、リリン・プラジナー罷免後の白檀艦隊はFR-08の腐敗体制に悪影響され、後述の機体ごと脱走する事件が増加しつつあった。
自浄作用の望めないFR-08に代わり、リリンが騎士団員の嘆願を受けてMARZの製造ラインから組み上げるよう指示して完成した機体がこれ。
第三世代型テムジンをベースに、MARZの高級改造資材を投入した上で、化物ともいうべき白虹騎士機に対抗すべく近接戦闘に絞って限界を超えてスペックを引き出しており、機体各所に歪が存在しており、動作安定性に不安を残す代物。
白檀艦隊所属機
発端は初代開幕前に遡る。
DN社が秘密裏に0プラントで研究させていた技術の出自は、月面地下のオーバーテクノロジーであった。そのオーバーテクノロジーが暴かれた後にそのオーバーテクノロジー由来の正体不明の現象も世に放たれることとなった。
その中でも、バーチャロイド成立後、そのバーチャロイドの動力炉たるVコンバーター(背中のセガハード)がパイロットの意識をOSを超えて浸食・掠奪した上で、人間が引き出せる以上の出力で機体ごと暴走してしまう「シャドウ現象」はDN社がバーチャロイドを運用する上で極めて問題視された。そうでなくても既存の兵器ですら足蹴にする性能のバーチャロイドの限界値で動くシャドウという災害の対処……それもまた、対シャドウのために十全な装備が施されたバーチャロイドによってのみなし得るものであった。
そのため、限定戦争のための軍ではなく、純粋な抑止力としてのバーチャロイドを運用する部隊、それが白檀艦隊(ホワイトフリート)であり、その所属機体……俗に白虹騎士(ホワイトナイト)と呼ばれる隊員が駆るバーチャロイドであった。
白虹騎士団員が駆るバーチャロイドは伝統的にテムジンがベースの物。
ただし、動力炉の品質から消耗品に到るまで厳選された高性能機であり、見た目こそ白塗りのテムジンに過ぎないが、その性能のピークは商用品とは最早次元が異なる代物である。また、シャドウ汚染に最大限の対策が施されている。
なので、ホワイトフリートが運用するテムジンの型番は「MBV」ではなく「VR」。即ち、一般兵が使用することを想定しない純粋な意味で理想的なバーチャロイドであるということも示している。
初代バーチャロンのムーンゲート事件の後、DN社が解体された後も遺跡からの脅威が去ったわけではなく、むしろアジムなる結晶戦闘体が異次元から侵入してくるなどむしろ忙しくなってゆく。
そのため、旧DN社所属プラントがシャドウ現象を嫌ってバーチャロイド関連技術の研究を自粛する最中も白檀艦隊はテムジンを研究。彼らの研究が下賜された結果、第二世代型テムジンが完成することとなる。
他、資料集・歴代に登場した機体は以下の通り
- VR-04 type.94
電脳歴94年製モデル。 第一世代型ベースながら、性能は最早第二世代型に匹敵する - VR-707 試作二号機
変形盾「レディオスプライト」や「マインドブースター」等を搭載。
第二世代型テムジンの先祖だが、シャドウ誘発事故により封印されている。 - VR-707 type.a3
電脳歴a3年製モデル。 第二世代型の原型の完成型。
背部には翼型のシャドウ抑制装置「グリンプスタビライザー」が装着されているのが印象的。
武装は左腕に防盾「レディオスプライト」と右腕に「リキッドディクテクター」を装備している。 - VR-707 type.a5
外伝「FRAGMENTARY PASSAGE」にて登場。 第二世代型ベース。
第三部隊筆頭インター・バスケス氏の専用機。スライプナーが大型化している。 - VR-747 type.a8
MARZに登場した電脳歴a8年製モデル。 第三世代型ベース。
ゲーム内での使用には最高難易度の攻略が条件であるため、事実上ゲームコンプリート記念といえる。
まず携行するスライプナーからVOXの64倍ものお値段がする。更にVクリスタル質の純度にもこだわった動力炉は通常状態で商用機の384倍 、 最大出力なら6144倍というとんでもないカタログスペックを持つ。
クリアリア・バイステンが搭乗するそれは一応ゲームに収まるスペックまでリミッターで押さえつけてあるらしく、それに準じた驚愕されたプレイアブル機の性能でさえ全力の片鱗に過ぎないとは……
その他
テムジン四之影
「One-Man Rescue」劇中に登場する機体。
プラジナー博士の主導によって本来なら制御不能であるはずのシャドウVRの制御に成功した7つの機体の一つ。
元は第一世代型テムジンながら、シャドウ化済みバーチャロイドらしく異次元の性能を誇り、遠隔操作ながら稼働限界までの90秒間に8機の第二世代アファームドを殲滅している。
第一世代型 | 10/80 | 第二世代型 | 第三世代型 | MARZ保有機 | 白虹騎士団機 | その他 |
関連動画
関連商品
- 1/100 MBV-04-G テムジン(Ver.1P) | KOTOBUKIYA(コトブキヤ)
- 1/100 MBV-707-G テムジン | 株式会社ボークス
- 747-FF “テムジン[ファイアフライ] ” | 株式会社 ハセガワ
- MZV-747-J “テムジン 747J” [ラジカル・ザッパー] | 株式会社 ハセガワ
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- なし
- 5
- 0pt
- ページ番号: 2780093
- リビジョン番号: 3318572
- 編集内容についての説明/コメント: