主な勝ち鞍
2015年:香港カップ(G1)、毎日王冠(GII)、エプソムカップ(GIII)
2016年:イスパーン賞(G1)
概要
父ディープインパクト、母*キャタリナ、母父Storm Cat。ディープインパクトは説明不要の日本競馬の主役。母父Storm Catはアメリカで一時代を築いた大種牡馬。この2頭はニックスにあると言われ、「父ディープ×母父Storm」配合からはダービー馬キズナ、桜花賞馬アユサンなどの活躍馬が出ている。母はアメリカで3勝にとどまったが兄にGI馬がいる。半姉に地方でGRANDAME-JAPANに2年連続で選ばれたエーシンクールディ、その子にフェアリーステークス(GIII)優勝馬のスマイルカナがいる。かなりの良血である。
調教助手が初の騎乗で物の違いを感じるなど早くから素質の片鱗は見せていたが、体が弱かったためにデビューは3歳4月までずれ込む。到底春のクラシックなんて間に合わない。ということで坂口正則調教師は地道に使っていく方針を立てた…が、デビューから破竹の4連勝。2戦目以降は逃げ切りで、つけた着差は合計13馬身半。この時点で競馬ファンはざわつき始めていたが、5戦目のアイルランドTでその名は一躍全競馬ファンの知るところになる。
抜群のスタートから大逃げを打ったエイシンヒカリ。直線に入っても差は縮まらず、これは5連勝もらったか!?・・・と思っていると、直線半ばで突如外によれ始めた。鞍上の横山典弘が右ムチを入れ修正を図るが戻るどころかさらに外によれ、コースを斜めに渡るように外ラチに突っ込んでいく。結局軌道修正はままならず、外ラチ間際でゴール入線。あまりにも破天荒な走りに観客席からはどよめきの声が上がった。
え、結果?逸走で競走中止?内からかわされ惨敗?何をおっしゃる。3馬身半差の完勝です。
この狂走劇は大きく取り上げられ、遅れてきた大物として競馬ファンに知られることとなった。しかしこの後、初の重賞挑戦となったチャレンジCで9着に惨敗。ショックを受ける人と「ほら見ろ所詮このレベルだ」とあざ笑う人との声が混ざる中休養に入る。
元々体質が弱かったこともあり、ゆっくりと英気を養い4歳5月の都大路Sで戦列に復帰。鞍上に武豊を迎えると、グランデッツァを破って快勝。続くGIIIエプソムCでは初めて1番人気を奪われるが、差のない逃げから最後は1番人気サトノアラジンとの一騎打ちを制し重賞タイトルを獲得する。
休養して秋は毎日王冠から始動。スーパーGIIの名に違わず強力なメンバーが揃ったが、スロー気味の逃げから直線で粘ってディサイファ以下の追撃を封じ勝利。この年の毎日王冠と天皇賞(秋)が1998年と同じ日付だったこともあり、一部マスコミやファンは武豊を鞍上に98年の毎日王冠を逃げ切って圧倒し、そして天皇賞(秋)で夭折した超快速馬サイレンススズカの勇姿をエイシンヒカリに重ねていた。もっともユタカは決してそうは思っていなかったようだし、現実もドラマの筋書きのようにはいかないもので、天皇賞(秋)はクラレントに鈴をつけられて逃げられずリズムを崩したか、直線で全く踏ん張れず9着惨敗。あの日の無念を晴らす勝利、とはならなかった。
次走には招待された香港カップを選択。9番人気で単勝オッズは38倍と決して人気サイドではなかった。そりゃ香港の人はこの馬の強いところは見てないだろうし、香港の強豪Blazing Speedや愛国代表Free Eagleなど強力なメンツが揃ってたし仕方ない。しかし本番、「迷いなく行く」と決めていた武豊が上手く先手を奪うと、絶妙なペースで後続に脚を使わせていく。直線も脚は衰えず先行勢をノックダウンさせ、最後は内を突いてきたヌーヴォレコルトを1馬身振り切って勝利。初GIを海外で挙げ、その実力を満天下に示した。武豊はアドマイヤムーン以来8年ぶりの海外GI制覇。香港国際デーの勝利は2001年のステイゴールドで制した香港ヴァーズ以来であった。
武豊はレース後、「先代オーナー(エイシンヒカリを所有する「栄進堂」の先代会長である平井豊光氏。2013年逝去)は香港競馬に力を注がれていた。『豊』で『光』が勝てば喜んでくれると思った」とこのレースにかけていた思いを明かした。そして香港カップといえば、覚醒前のサイレンススズカに武豊が志願して初騎乗し、その才能を確信した、いわば「伝説の始まり」のレースであった。そしてエイシンヒカリがそのレースを逃げ切り、新たな「伝説の始まり」を告げる。こじつけと思われるかもしれないが、縁というのは、どこでつながっているかわからないものだなぁ…と思うのである。
休養し春の香港GIクイーンエリザベスII世Cを目指していたが調子が上がらず回避。日本ではしばらく適距離の1800~2000mの大レースがないし、どうするのかと思ったら、なんと仏→英とGIを転戦する驚きのプランが発表され、実行されることとなった。欧州の強豪相手にどれほど歯が立つのかは未知数だが、11戦9勝とまだ底を見せていないところもあり、期待もまた大きい。超特急の快走はまだまだ始まったばかりである。
そして休養明けで挑んだフランスGIイスパーン賞ではなんと2着に10馬身差をつける圧勝。
初のフランスの競馬場、絡んでくる馬を捌き切り、さらに不良馬場を克服し地元勢のNew Bayやジャパンカップにもやってきたイラプトが轟沈する中スイスイと走りきって圧勝する、どこに出しても恥ずかしくない圧倒的勝利で海外GI連勝を達成した。それと同時にディープ産駒牡馬としてはリアルインパクトに続く2頭目のGI複数勝利馬になった。ちなみに日本馬が日本以外の複数の国でGIを勝ったのはアグネスワールド以来2頭目である。
次走は予定通りイギリスに移動し、女王陛下が毎年観戦に訪れる6月の名物開催・ロイヤルアスコットの中距離GIプリンスオブウェールズステークスに出走。
イスパーン賞の勝ちっぷりから圧倒的一番人気を背負い、様々な理由はあったがFound、The Gray Gatsby以外の有力馬が軒並み回避し6頭立てとなった。
レーシングポスト紙ではMonster from The East!(東洋より怪物来る!)と一面で大特集を組む程であった。
しかしアスコットは不良馬場であった(有力馬の回避も主にこれが理由)。ここまでならイスパーン賞と変わりなかったのだがアスコット競馬場のアップダウンが激しく、ゴール前直線は全て上り坂というシャンティイの比ではないタフなコースであり、圧倒的一番人気ということもあって積極的に逃げることも叶わず、直線で完全にスタミナを失い6頭立ての6着に敗れてしまった。
とはいえ、タフさ比べになった展開になったため最下位とはいうがそこまで離された負けではなかったのはせめてもの救いか。
馬場の悪さはかなり酷いものであり、ロイヤルアスコット開催に大雨がぶつかり、しかも馬場回復前にPoWが開催された運の悪さも多少はあったと思われる。
秋は天皇賞(秋)から始動。2番人気に支持されいつも通りの逃げを打つが、マイペースというよりやる気のない走りを見せ、直線ではあっさり沈んで12着と生涯最悪の大敗。引退レースとして香港カップで連覇に挑んだが、今度は逆にハイペースで飛ばし過ぎたか直線でまたも沈没。前走に続いてモーリスの後塵を拝した。イスパーン賞の衝撃を思えば物足りない最後だったが、クセ馬だったのは元々だし、仕方ないといえば仕方ないのか…。今後は種牡馬入り、さらに数年後にはフランスに渡るプランもあるらしい。SSの血脈がそれほど根付いていない欧州を、怪物の子孫が席巻する時代がいつか来るんだろうか。
ちなみに、言われないとわからないがエイシンヒカリは芦毛である。パッと見真っ黒だがメンコを外した写真を見ると何となくそれっぽく見える。年を食うと芦毛は白くなっていくものだがヒカリは年を食っても真っ黒であるため勘違いをされる。5歳になって、芦毛だと知っていればそうかもね、と思える程度にはほんのわずかだけ白くなってきた(尾の付け根に近いところの毛色はわかりやすく白くなっている)。
この世代のディープインパクト産駒の芦毛はエイシンヒカリただ1頭だそうで、出走頭数が少ない割に好成績を上げる「芦毛のディープ」のジンクスもまだ続く…かもしれない。
血統表
ディープインパクト 2002 鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
*ウインドインハーヘア 1991 鹿毛 |
Alzao | Lyphard | |
Lady Rebecca | |||
Burghclere | Busted | ||
Highclere | |||
*キャタリナ 1994 芦毛 FNo.16-g |
Storm Cat 1983 黒鹿毛 |
Storm Bird | Northern Dancer |
South Ocean | |||
Terlingua | Secretariat | ||
Crimson Saint | |||
Carolina Saga 1980 芦毛 |
Caro | *フォルティノ | |
Chambord | |||
Key to the Saga | Key to the Mint | ||
Sea Saga | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Northern Dancer 4×5(9.38%)
関連動画
大暴走?いいえ、圧勝です。
関連コミュニティ
関連項目
- 競馬
- 競走馬の一覧
- 2014年クラシック世代
- ディープインパクト
- 武豊
- サイレンススズカ
- コダマ(競走馬)(超特急つながり。ただしコダマの方は新幹線ではなくその前身の特急「こだま」)
- エイシンプレストン(同じ「エイシン」の冠で香港GIを勝った馬。人呼んで「香港魔王」)
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