概要
著者の商業デビュー作である。掲載誌はコミックビーム、2002年1月号~2006年5月号までが本編にあたる。2006年9月号より番外編の連載が開始され、2008年3月号にて完結。単行本は本編相当分が7巻までで、8巻から10巻までが番外編にあたる。
19世紀末期の英国を舞台に、上流階級出身の青年・ウィリアムと労働者階級であるメイドのエマ、この二人のラブ・ロマンスを主軸に、ヴィクトリア朝末期から20世紀初頭にかけての人々の暮らしを描く作品である。
歴史的メイド好きという著者の趣味を色濃く反映し、英国の階級社会としての一面の描写や当時の労働・生活の描写に強いこだわりが発揮されている。画風が安定してきた連載中盤以降は著者の作品の特徴である精緻な描き込みも現れている。本編部分の単行本は雑誌連載分の内容の後日談や幕間劇的な内容の「Sequel」が各話毎に描き下ろしで追加され、また単行本挟み込みのアンケート葉書も後の著者の作品同様に著者手書きの文字や大量のカットを載せたデザイン性の高いものであり、雑誌連載と単行本購入の二度美味しい作品であった。
2005年と2007年に、それぞれ「英國戀物語エマ」「英國戀物語エマ 第二幕」としてアニメ化されている。原作連載中漫画のアニメ化に頻発する原作からの改変点への評価が別れるところはあるが、原作同様の19世紀末の英国の雰囲気の再現に努めた点や「十二国記」を手がけた梁邦彦担当のクラシカルかつ優美なBGM、豪華な声優陣への評価は安定したものがある。
主な登場人物
- エマ
- かつてウィリアムを教えた元家庭教師(ガヴァネス)、ケリー・ストウナーの家に仕える雑役女中(メイド・オブ・オールワーク)。ファミリーネームも持たないストリートチルドレンだったが紆余曲折を経てケリーに仕えることとなり、ケリーの「前から思ってたのよ、教育ってのがどれほどのものなのか」という発案で、当時の雑役女中としては異例なほどの教養を身に付けることとなる。落ち着いた物腰と鋭敏な知性、穏やかで控えめな性格に目立たないがなかなかの容貌にも恵まれケリー宅の周辺では人気の高い女性だが、本人は男女のことに対してはあまり興味がなかった様子。しかしウィリアムに見染められたことから少しずつ彼女自身も変化、いや成長していくことになる。勤め始めた当初にケリーに買ってもらったメガネを非常に大切にしている。
- ウィリアム・ジョーンズ
- かつてのケリーの教え子で、ジェントリ(爵位を持たない上流階級)の豪商・ジョーンズ家の長男。上流階級にふさわしい教養と知性を持ち、実家の仕事の一部を取り仕切りつつ華やかな社交界に出入りする若き英国紳士……のはずなのだが、イマイチどこか抜けていて頼りない印象の青年。しかしケリーにとっては引退後もずっと自宅に写真を飾っているなど思い出深い教え子だった。引退後のケリーとは久しく顔をあわせていなかったが、はじめてケリーの自宅を訪問した際にその応対をしたエマに一目惚れしてしまう。階級の壁や周囲の思惑によって彼の想いは何度も危機に晒されることとなるが、その中で彼もまた少しずつ紳士として成長していく。
- ハキム・アタワーリ
- 英領インド帝国のジャイヤプール藩王国の第二王子で、ウィリアムとは幼少の頃からの友人。現在ロンドンに「お忍びで」滞在中であり、ジョーンズ邸に居候している。奔放な性格の自由人として振る舞っておりエマにも一目惚れして求婚するがあっさり断られた様子。以降は英国階級社会の外側に居る人間として、想い人のエマと親友のウィリアムの恋路の背中を押すスタンスで物語に関わっていくこととなる。美女軍団「ハキム・ガールズ」を常に側に従え、英国の科学文明とインドの伝統文化の両方を満喫する日々を送る美青年。
- ケリー・ストウナー
- 快適な隠居生活の一助にとエマを雇った元家庭教師の女性。18で結婚し20で夫と死別、以後はずっと寡婦を通している。ウィリアムの想いにふれてエマが少しずつ変わっていくのを好ましく思う、二人の最初の理解者であった。威厳と茶目っ気を兼ね備えた老女。
- リチャード・ジョーンズ
- ウィリアムの父でジョーンズ家の当主。上流階級の紳士としてイマイチ腰が定まらないウィリアムを心配しているのも確かだが、規律や伝統に対して厳格でもある、典型的な「英国紳士」といえる人物。商売の手腕も社交界での交流にも長け、ジョーンズ家を社交界でも名の知れた地位に押し上げた有能な人物だが、ウィリアムの恋路にとっては最初の、そして最大の障害となる。
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関連項目
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