ゴーストザッパー(Ghostzapper)とは2000年生まれのアメリカの競走馬。
元々短距離路線を走っていたが、10ハロン戦でも快速を見せつけた2000年代米国最強馬の一頭。
馬名は直訳すれば「幽霊退治人」といったところか。ゴーストバスターズ
概要
生い立ち
父Awesome Again、母Baby Zip、母父Relaunchという血統。
父はカナダ生まれでBCクラシックを制した名馬であり、種牡馬としてデピュティミニスター系を引っ張る活躍を見せている。母は16戦4勝、母父は米国で芝重賞を2勝した程度だが、数少ないマンノウォー系種牡馬として活躍した。
母は優秀な繁殖成績を残しており、半兄に米GI馬City Zip等重賞馬を多数出している。
米国最大の馬産地ケンタッキー州はアデナスプリングスにて誕生。同牧場の所有者名義で走ることとなり、ロバート・フランケル調教師(英国の怪物Frankelの名前は彼から)に預けられることとなった。
若駒時代
デビューは2歳11月、ハリウッドパーク競馬場の未勝利戦。ここは6番人気だったがこれに逆上したように4角先頭、直線ぶっちぎり。ダート6.5ハロン戦で9馬身差をつけて快勝。しかし続く一般競走ではスタート不利から4着に敗れてしまい、2歳シーズンは2戦1勝で終えた。
復帰戦は6月、三冠路線行かないの? と思われるだろうが距離が長いと思われたことや、元々の脚部不安があった為、余裕をもって復帰戦に臨んだ。騎手はカステラJ.カステリャーノに乗り替わり、以後彼が主戦を務めることとなる。
復帰戦の一般競走を勝利して、次戦も勝利。ここで陣営はGI・キングスビショップステークス(ダート7ハロン)への挑戦を決めた。このレースは真夏の短距離王者決定戦とも言える名物競走で、相手関係も重賞馬が多数やって来た。ここはハイペースで逃げる馬を後方から追い込んだが、僅かに追い込みきれず3着に敗れる。
次戦にBCスプリントの前哨戦・ヴォズバーグステークス(ダート6.5ハロン)に挑むと、他馬のハイペースでの逃げにより縦長の展開となる。道中最後方に位置し直線入口でも後方だったが、外に持ち出すと先頭集団を一気にぶっこ抜き。勢いは衰えず6馬身つけて快勝。スプリント戦です。因みに2着馬は単勝60倍強の最低人気馬で、中々の波乱になった。
BCスプリントの優勝候補か? と思われたが回避して休養に充てることとなった。
距離延長のベニヤ板
古馬となったゴーストザッパーは7月の7ハロンGIIから復帰。ここを難なく勝利すると、次戦は9ハロンのGIII競走。今まで7ハロンより長い距離は走った事が無く、距離長いんじゃないの? と考えるのも道理だが、フランケル師はいけると踏んでいたらしい。
4頭立てのこのレースは不良馬場で行われたが、後続に10馬身の大差をつけて圧勝。タイムは1分47秒66。参考までに稍重・芝の1800mで行われた2016年毎日王冠は1分46秒6である。
BCクラシックの前哨戦・ウッドワードステークス(ダート9ハロン)では1番人気を背負うが、ここでSaint Liamという馬が先手を奪い、それに追走する形でレースを進めると4角で既にマッチレースの様相を呈し、ベルモントパークの直線を一杯に使った競り合いになる。両者とも譲らなかったがゴール前でゴーストザッパーが競り勝ち優勝。GI2勝目を挙げ、堂々とBCクラシックの門を叩く事となった。
なお、この競り合いで2着となったSaint Liamは翌年同レースを制し、またBCクラシックを優勝。種牡馬としてウッドワードS父娘制覇を達成したHavre de Graceを出したが、僅か1世代のみ残し夭逝した。
2004年ブリーダーズカップ・クラシック
2004年のブリーダーズカップ・クラシック(ダート10ハロン)はテキサス州北部、ダラス郊外のローンスターパーク競馬場で開催された。この年のBCクラシックは豪華メンバーが揃っており、
- 前年王者、前々年ドバイWC優勝馬の世界最強ダート馬Pleasantly Perfect
- Smarty Jonesの無敗三冠を阻止し、トラヴァーズSを優勝した3歳馬Birdstone
- 前年二冠馬でジョッキークラブ金杯を勝ってきたFunny Cide
- 5連勝の上がり馬で後にドバイWCを優勝したRoses in May(後に日本で種牡馬入り)
- 3年連続で牝馬チャンピオンに輝いた女傑Azeri(後に日本で繁殖入り)
- 日本でダービーグランプリをレコード勝ちし故郷に錦を飾りにきた*パーソナルラッシュ
他にも実績馬多数の豪華メンバーである。いないのは二冠達成後故障引退したSmarty Jonesくらい。
Pleasantly Perfectと並んで1番人気を背負い出走。
レースははっきり言おう。本馬の独壇場である。最内枠から好スタートを決めるとずっと先頭に立ち、ハイペース上等のアメリカ競馬で馬群を引き連れてハイペースで逃げる。そのまま先頭で直線に立つと、引き離す引き離す。後続も並びかけようと必死に追いかけるも脅威の勢いで伸び続ける。
結果2着馬Roses in Mayに3馬身つけ圧勝。タイムはBCクラシック史上最速の1分59秒02。
因みに*パーソナルラッシュは約12馬身離された6着に敗れたが、出走していた3歳馬の中では最先着している。何が言いたいのかというと、もっと彼を褒めてあげて。
鞍上のカステリャーノはブリーダーズカップ初制覇、調教師のフランケルはBCクラシックは初、ブリーダーズカップに限定しても3度目の栄誉を得た。
4戦4勝、BCクラシックで圧勝の成績から年度代表馬、古牡馬チャンピオンに輝いた。レーティングもこの年1位の130ポンドを獲得した。
BC以後
翌年も現役続行。5月末のメトロポリタンハンデ(ダート8ハロン)から始動し、半マイル44秒とかいう超ハイラップの中でも圧勝するも、ここで左前脚に骨折が判明。現役続行を断念し種牡馬入りする事となった。なお、本馬が遠征しなかったこの年のドバイワールドカップの優勝馬はBCクラシック2着のRoses in Mayであった。
通算11戦9勝、6.5ハロンのヴォズバーグSと10ハロンのBCクラシックという距離の異なるGIを圧勝し、快速とスタミナを併せ持った稀代の名馬である。2000年代のアメリカ競馬において、彼を最強馬の1頭に挙げない人の方が少ない。
ドリーム・ブリーダーズカップがあれば十分選出されうるだろう。スプリントとクラシックの両方にいてもおかしくはない。
2012年にアメリカ殿堂馬に選出された。また、本馬の功績を讃え、生産所有者であるフランク・ストロナックが経営しているガルフストリームパーク競馬場で2021年からゴーストザッパーステークス(GIII)が開催されることになった。
種牡馬入り後
生まれ故郷であるアデナスプリングスで種牡馬入りし、初年度産駒は2009年にデビュー。
初年度の種付け料は20万ドル。同年2006年で日本最高額のアグネスタキオンが1200万円である。
流石に翌年、翌々年は15万ドルに減額されたが、それでも高いことには違いない。
当然期待されていた……のだが産駒の成績は今一つ。決して悪くはないのだが高額に見合わないのだ。
種付け料は一時2万ドルまで減額された。
しかし2009年生まれの産駒からBCF&Mスプリント優勝馬Judy the BeautyをはじめGIホースが5頭以上出現。現在では8万ドル程度まで回復し、北米の上級種牡馬として確固たる地位を築いている。牝馬の活躍馬が多いフィリーサイアーの傾向にあり、また自身同様3歳以後から本格化する傾向にある。
因みに半兄City Zip(父Carson City)も種牡馬として成功しており、兄弟揃ってリーディング上位にいる。つい最近ではCollectedがArrogateやGun Runnerと激闘を繰り広げた。
そんな中種付け料が高かった時に産まれたStage Magicという牝馬から、Scat Daddyを父に持つビッグレッドの如き巨漢の栗毛馬が誕生。何を隠そう無敗の三冠馬Justifyである。
種付け料が高かった時に種付けした名牝や良血牝馬の娘が、繁殖牝馬として大成功。ゴーストザッパーをはじめとしたヴァイスリージェント系種牡馬は総じて母父としても優秀であり、いずれ世界に羽ばたく名ブルードメアサイアーとして活躍を見せてくれるだろう。
血統表
Awesome Again 1994 鹿毛 |
Deputy Minister 1979 黒鹿毛 |
Vice Regent | Northern Dancer |
Victoria Regina | |||
Mint Copy | Bunty's Flight | ||
Shakney | |||
Primal Force 1987 鹿毛 |
Blushing Groom | Red God | |
Runaway Bride | |||
Prime Prospect | Mr. Prospector | ||
Square Generation | |||
Baby Zip 1991 鹿毛 FNo.23-b |
Relaunch 1976 芦毛 |
In Reality | Intentionally |
My Dear Girl | |||
Foggy Note | The Axe | ||
Silver Song | |||
Thirty Zip 1983 黒鹿毛 |
Tri Jet | Jester | |
Haze | |||
Sailaway | Hawaii | ||
Quick Wit |
主な産駒
2007年産
2009年産
- Better Lucky (牝 母 Sahara Gold 母父 Seeking the Gold)
- *コンテスティッド (牝 母 Gold Vault 母父 Arch)
- Judy the Beauty (牝 母 Holy Blitz 母父 Holy Bull)
- Molly Morgan (牝 母 Capitulation 母父 Distorted Humor)
- *スターシップトラッフルズ (牝 母 Bobbie Use 母父 Not for Love)
- ワイルドフラッパー (牝 母 *スモークンフローリック 母父 Smoke Glacken)
2010年産
2012年産
- *エイシンバランサー (牡 母 Mayomast 母父 Mizzen Mast)
- Greenzapper (牝 母 Colina Verde 母父 Know Heights)
- Paulassilverlining (牝 母 Seeking the Silver 母父 Grindstone)
- Shaman Ghost (牡 母 Getback Time 母父 Gilded Time)
2016年産
2017年産
2018年産
2019年産
2021年産
関連動画
BCクラシック、ひたすらに強い
関連項目
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