刻命館とは、1996年7月26日にテクモ株式会社から発売されたPS用シミュレーションゲームである。
本作のトラップシステムのみを継承し、発展させた続編に「影牢~刻命館 真章~」「蒼魔灯」「影牢Ⅱ Dark illusion」があり、これらのシリーズを「影牢シリーズ」「トラップシリーズ」と呼ぶことがある。
ストーリー
古の伝承に曰く、
“神代に封印されし魔神の館、求める者の願いを得、汝の仇を引き寄せん。
敵の魂を焼かんがため、汝に全てを引き渡さん。汝の命を刻めし罠で、汝の敵を引き裂くべし。
刻命館の闇の子らよ。血の盟約に従い、この呪われし館の主となれ”
長旅から戻った第一王子は、父である現国王ゼメリスに会うために城を訪れる。
しかし、王子との謁見中に国王が突如、何者かの手にかかり暗殺されてしまう。第二王子ユリウスと大魔導士ザムールの策略にはまり、
王子は国王殺しの濡れ衣を着せられ処刑の身となってしまった。しかし、処刑執行の日、奇跡が起こる…。
王子の無念な魂は、邪悪な魔神の力を借りて現世に甦り、暗黒の館へ降臨する。
その館は、かつて世界を震撼させた魔神が眠る“刻命館”だったのだ…。
概要
主人公は“刻命館”の主となり、館(とそこに眠る財宝『魔導器』)の噂を聞きつけてやってくる商人・盗賊や、口封じのために現れる暗殺者・騎士、そして魔神復活を阻止する勇者一行を相手に、熾烈なトラップ戦を仕掛けることになる。
全ての人間を魔神に捧げる血も涙もない殺人者と化すか、人間の心を捨てきれぬ悲劇の主人公として善と悪の狭間で苦悩し続けるか、すべてはプレイヤーの行動次第である。
このゲームの大きな特徴が、主人公は武装しておらず、登場人物を直接攻撃する手段を持たないことである。そのため、侵入者を消すためにはMPを消費して館内に自在に仕掛けられるトラップを駆使するしかない。
ただ侵入者を攻撃トラップで殺していては所持金(Warl)は手に入るもののMPは手に入らず、やがてMPが尽きて詰む(クリアボーナスやベッドの休息などの救済手段はある)。そこで捕獲トラップによって侵入者を捕え、生贄に捧げてMPを搾り取らなければならない。
しかし、ただ相手を捕獲トラップにかけても捕獲する前にトラップを破壊されてしまう。そこで落とし穴や飛び出す針などの攻撃トラップで相手の生命力(HP)を奪い、もしくは妨害トラップで状態異常を発生させ、あるいは後述のモンスターを召喚してけしかけ、侵入者を弱らせて抵抗力を奪う必要がある。
もちろんそのまま敵を殺すことも可能だが、すべての敵を捕らえてシナリオをクリアすれば大きなクリアボーナスが入るため、その点でやりこみ要素がある。
生贄に捧げずに殺すと手に入るWarlにも使い道がないわけでもなく、HP回復アイテムや毒消し、モンスターを召喚する際の触媒などを商人から購入する際に必要になり、また館の増改築にもWarlが必要になる。この増改築は文字通り刻命館を増築・改築するものであり、廊下を延々と伸ばしたり部屋を書斎まみれにしたり、ベッドルームをガンガン増やしてラブホみたいにすることも可能。
さらに後々「開発室」を増築するとWarlを消費してトラップの強化や新モンスターの開発ができるようになる上、話が進むにつれてどんどん敵が強化されるのでトラップも強化しないとまともに敵を捕まえられないため、MPを集めてばかりでは立ちいかなくなる。
しかも後述のモンスター合成のために人間を生かしたまま棺に保存するとその人物からWarlもMPも手に入らない。
と、主人公は一般的な経営SLGとは別の意味で刻命館の経営に頭をひねることになる。
荒削りながらも後の影牢や蒼魔灯で強化されたシステムの大半は刻命館で既に完成されており、グラフィックも荒い分泥臭い暗さが存分に生かされており、刻命館にして既に基礎は完成しているといっていい。
また6種類に分岐するエンディングもそのほとんどが暗く、ダークサイドに落ちれば落ちるほど悲劇的な結末が待っている。
一応グッドエンディングらしきものはあるのだが、それでも王子が日向に出ることはない。
登場人物
ストーリーモード中に現れる敵には簡単なプロフィールが設定されており、性格や刻命館に訪れた目的、置かれている立場等が分かるようになっている。
ゼメキア王国の“もと”第一王子。ゲーム開始時点でフィアナとの結婚と王位継承を控えていたが、実弟ユリアスと大魔導士ザムールの陰謀により父王殺しの濡れ衣を着せられ、火刑に処される。だが、死の直前の呪いとも言うべき願いを聞き届けた謎の力によって刻命館へと飛ばされ、新たなる館の主となって暗黒の儀式を行う。
前述の通り直接攻撃する手段を持たないのだが、これはストーリーに深く関わっている要素でもある。
魔神の使い魔と名乗る、某魔将軍アスタロットばりに戦闘力が高いムチムチ青肌美女。主人公に館の秘密とトラップを仕掛ける方法を教え、封印された魔神を復活させる為に必要となる「魔導器」を集めさせる。その正体は…?
後述のフィアナよりもべっぴんであり、ともすれば(同時期に発売された闘姫伝承とともに)テクモにお色気という重要な要素を持ち込んだ革命的人物であり、テクモゲーにおける美女たち(モンスターファームのピクシーやDoA・零など)はアスタルテ(と没キャラのイヴ)が源流であるといっても過言ではない、かもしれない。
フィアナ
ゼメキアの隣国であるエンゼリオ帝国王女。健気に主人公を慕う婚約者であり、主人公が処刑された後にユリアスに結婚を強要され幽閉されるも拒絶。その後、主人公が刻命館で生きているという噂を聞き、危険を承知で刻命館へとやってくる。
なぜか手紙が高額で売れる上、手紙は読んでも読まなくてもEDに関係ないため、まず間違いなく叩き売られる。
ゼメキア第二王子。主人公の実弟である。ザムールと共に父王殺害の罪を主人公を着せて処刑に追い込み、その後は自らが国王となり民に圧政を強いる。もともと兄弟仲は良好だったのだが…。
ザムール
ゼメキア王国の大魔導士。己の野望の為に魔神の力を手に入れるべく、王家を利用する。
接近してボコれないために魔法使い系全員がそうなのだが、特にザムールは遠距離攻撃をガンガン使うためトラップにハメる前に丸焼きにされることも多い。この傾向は後の作品でも受け継がれており、おしなべてザムールのような大魔法使いはトラッパーの脅威になっている。
六勇者
未だ覚醒していない勇者の末裔。勇者エリオウスを筆頭に6人おり、魔導器を破壊するために現れる。
5人しか集められなかった上、結局未覚醒のまま刻命館に突っ込んだせいで悲惨なことに…。
だが、あるシナリオで過去の勇者に出会える。というか、彼らが封印しようとした魔導器をちょうだいする。
このイベントは不可避なため、ラストでアスタルテの願いを叶えると確実にバッドエンドになる。
モンスター召喚とモンスター合成
刻命館の象徴とも言えるシステム。特定の職能を持つ人間を生け捕りにし、合成する事でゾンビやワーウルフ、レッドドラゴン等のモンスターを生産出来る。合成したモンスターはアイテム“封龍石”と引き換えに召喚され、侵入者を攻撃したり混乱させる事が可能。
かかるまで待つ罠と違って主人公から能動的に仕掛けられ、回避されず即座に攻撃できる利点がある。
素材となる人間が足りない時は、人間狩り(8話以降のミッションクリア後に任意で選択出来るゲームパート)で不足した素材を補うことができる。中には本編中は登場せず、人間狩り時に特定の条件を満たさないと現れない職能も存在する。ただし合成に使う人間は“捕獲”しなければならない上、生かしておく選択はトラップ設置費用等でもあるMPやWarlとの二択である為、事前に合成レシピを把握しておく事が不可欠である。
ぶっちゃけ、館の増改築同様趣味の領域である。
仮面
ゲーム序盤で手に入れる事が出来る5つの仮面。侵入者をおびき寄せたり遠ざけたりする。
対象の職業によって効果がいちいち違う上、仮面を使わずとも姿を見せればほとんどの敵が寄ってくるため費用対効果は微妙。
助けを呼ぶ悲鳴 | 正義感の強いものを呼び寄せ、小心者を遠ざける |
誘う笑い声 | 好奇心が強いものを呼び寄せ、用心深い者を遠ざける |
当主のあざ笑い | 当主を狙うものを呼び寄せ、当主に怯える者を遠ざける |
断末魔の声 | 勇気ある者を呼び寄せ、勇気無き者を遠ざける |
モンスターの声 | 力ある者を呼び寄せ、力無き者を遠ざける |
伝説のセーブ・ロード
陰鬱な世界観や、狭いエリア内でトラップを使用して敵を倒すという斬新なシステムと共に刻命館の知名度を高めたのが、その長いセーブ・ロード時間である。本作はPS発売の2年後とまだ若い時期に制作されたためか、初期状態でもセーブ・ロードに1分強を必要とするだけでなく、館の拡張に併せて9~15ブロック(PS用メモリーカード容量は15ブロック)を使用する為、プレイヤーに“セーブ・ロードの長いゲーム”として強い印象を残した。現在でもその時間の長さはプレイヤー間の共通の話題として十分に通用する。
自社パロ
刻命館と同じテクモから発売されたゲーム『モンスターファーム(初代)』で刻命館のディスクから先代館主の「アルデバラン(マジン種)」が、また刻命館サウンドトラック(NACL-1243)からピクシー種の「イヴ」を誕生させられる。イヴはアスタルテの使い魔という設定だが、本編での出番は殆どなく、隠しサウンドテストモードに出るのみである。
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関連項目
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