日本国憲法第27条とは、日本国憲法第3章(国民の権利・義務)に存在する条文である。
概要
日本国憲法第27条は、「勤労の権利と義務」「勤労条件の基準」「児童酷使の禁止」を以下の通り規定している。[1]
19世紀、資本主義経済が発展する中で、労働者は低賃金、長時間労働などの劣悪な労働条件や失業のために厳しい生活を余儀なくされた。現在は、福祉国家の理想に基づき、経済的弱者となる労働者を保護し、人間に値する生活を実現するために労働基本権が保障されるようになった。日本国憲法第27条で勤労の権利を、第28条で労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を保障している。
解釈
勤労の権利と義務
第27条第1項は、国民は、勤労の権利を有し、義務を負うと規定している。
勤労の権利(労働権)は、国家に対し、雇用が保障されるような措置、就職できないときは雇用保険制度などの措置を講ずるよう要求する権利である。
勤労の義務は、教育を受けさせる義務、納税の義務と併せて、日本国民の三大義務である。ただし、勤労の義務を根拠として強制労働を課すことはできない(第18条より、国民は意に反する苦役に服させられない)。なお、かつての大日本帝国憲法では勤労の義務は規定されておらず、同法第20条で兵役の義務を規定していた。[2]
当時の革新側が労働の義務(本来の意味は資本家も働け)を盛り込むよう提案し、保守側は戦中の勤労奉仕の勤労(お国のために働け)を提案、高度に調整され勤労の義務に定めた。世界の国のなかで憲法典に勤労の義務(お国のために働け)を定めているのは日本と韓国のみと言われている。日本共産党は資本主義体制下で労働の義務を定めるのは強制労働につながる恐れがあるとのことで独自草案に盛り込んでいなかった。
勤労の義務に関する規定は、ソビエト社会主義共和国連邦や朝鮮民主主義人民共和国の憲法においても見られず、あくまでも労働の義務である。それでも一部では、1936年に制定されたソビエト社会主義共和国連邦憲法第12条を参考に盛り込まれたため、勤労の義務を削除すべきだとする意見もある。
勤労条件の基準
第27条第2項は、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定めると規定している。
経済的弱者である労働者を保護し、人間としての生活を実現するため、これらの勤労条件に関する基準は労働基準法によって定められている。企業は、この基準を下回って勤労条件を決定することは出来ない。
なお、休息権についても、ソビエト社会主義共和国連邦憲法の影響を受けているとされる。
児童酷使の禁止
第27条第3項は、児童を酷使してはならないと規定している。
児童とは、たとえば教育基本法では初等教育を受けている概ね6歳から13歳までの者をいうが、ここでは年少の人間と解されるべきだろう。労働基準法では15歳未満の者を労働者として雇用し働かせることを原則として禁じている。[3]
関連項目
日本国憲法 | |
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第1章 天皇 | 1 2 3 4 5 6 7 8 |
第2章 戦争の放棄 | 9 |
第3章 国民の権利及び義務 | 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 |
第4章 国会 | 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 |
第5章 内閣 | 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 |
第6章 司法 | 76 77 78 79 80 81 82 |
第7章 財政 | 83 84 85 86 87 88 89 90 91 |
第8章 地方自治 | 92 93 94 95 |
第9章 改正 | 96 |
第10章 最高法規 | 97 98 99 |
第11章 補則 | 100 101 102 103 |
脚注
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