これを(憲法)単語

コレヲ
5.3千文字の記事
  • 7
  • 0pt
掲示板へ

これをとは、日本国憲法に時々入る語である。

※厳密には憲法以外でも見られる場合がある。詳しくは後述。

概要

例えば下記のような文に含まれている。

第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

この文は「これを」がくても、「思想及び良心の自由は、侵してはならない」として成立する。しかし、日本国憲法には文法上は不要な「これを」が多数含まれているため、憲法独特の表現とみなされることもあり、インターネット上でも稀にパロディにされることがある。

「これを」が使われている経緯

戦前の法の条文では文語体が使われており、その時に「之ヲ」が使われていた。例えば大日本帝国憲法では下記の通り。

一条 大日本帝国万世一系天皇之ヲ統治ス

日本国憲法でもそれを引き継いで使用したため、「これを」が多数残っている。しかし口語体の文では「これを」は不要であるため、日本国憲法の制定より後である1948年1949年ごろからの条文では「これを」が省略されるようになった。

明治期の文語体(文語文)は漢文書き下し文の文体を基礎としており、「之/これ」の多用も、漢文文字をなるべく落とさずに読もうとする訓読法のを受けている。この傾向は安期には見られないもので、江戸期以降の新訓読の大きな特徴の一つだとされている。

だが江戸期の儒者は、原文の文字はなるべく落とさないほうが忠実な読みかただとして、「之」をも読むことにした。そこで和文としては妙な表現が生まれたわけで、言わば一種の翻訳口調になるのだが、皆が使っていると妙だとは思わなくなり、ついには現代でも、

児童は、これを酷使してはならない。(憲法第二十七条)

というような文章が書かれるに至ったのである。

前野直彬『精講 漢文』(ちくま学芸文庫2018年[1966年刊書籍の復刊]、p.90)

ちなみに当時制定・改正された条文が今に至るまで改正されていなかったり、元の表現を極力改変しないように口語体にしたり等の事情で、憲法以外でも見られる場合がある。例えば民法では下記のようなものがある。

一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

(2は省略

3 権利の濫用は、これを許さない。

七百二十六条 等は、族間の世代数を数えて、これを定める。

(2は省略

日本国憲法の「これを」の一覧

現在(2025年)の日本国憲法では、「これを」が条文中では72回、前文を含めると74回、上諭を含めると75回使用されている。

(上諭から抜

朕は、日本国民の総意に基いて、新日本建設の礎が、定まるに至つたことを、深くよろこび、枢密顧問の諮詢及び帝国憲法第七十三条による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを布せしめる。

(前文から一部抜

そもそも政は、民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は民に由来し、その権力は民の代表者がこれを行使し、その福利は民がこれを享受する。

二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする平和実に希し、権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、際紛争を解決する手段としては、永久これを放棄する。

2 前項の的を達するため、陸空軍その他の戦力は、これを保持しない。の交戦権は、これを認めない。

第十条 日本国民たる要件は、法律これを定める。

第十二条 この憲法民に保障する自由及び権利は、民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第十四条 すべて民は、法の下に等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

2 族その他の貴族の制度は、これを認めない。

3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、民固有の権利である。

(2・3は省略

4 すべて選挙における投票秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し的にも私的にも責任を問はれない。

第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

(2・3は省略

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

第二十三条 学問の自由は、これを保障する。

第二十六条 すべて民は、法律の定めるところにより、その力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

2 すべて民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを償とする。

第二十七条 すべて民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律これを定める。

3 児童は、これを酷使してはならない。

第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。

2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律これを定める。

3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

第三十五条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する状がなければ、侵されない。

2 捜索又は押収は、権限を有する法官が発する各別の状により、これを行ふ。

第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、裁判所速な開裁判を受ける権利を有する。

(2は省略

3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、これを附する。

第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

2 強制、拷問若しくは脅迫による自又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自は、これを拠とすることができない。

(3は省略

第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。

第四十三条 両議院は、全民を代表する選挙された議員でこれを組織する。

2 両議院の議員の定数は、法律これを定める。

第四十四条 両議院の議員及びその選挙人資格は、法律これを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育財産又は収入によつて差別してはならない。

第四十七条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律これを定める。

五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要があれば、会期中これを釈放しなければならない。

五十二条 国会の常会は、毎年一回これを召集する。

五十六条 両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。

2 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

五十七条 両議院の会議は、開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。

2 両議院は、各々その会議記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを表し、且つ一般に頒布しなければならない。

3 出席議員の五分の一以上の要があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。

第六十四条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。

2 弾劾に関する事項は、法律これを定める。

第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の務大臣でこれを組織する。

(2・3は省略

第六十七条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを名する。この名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。

(2は省略

第七十六条 すべて法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。

(3は省略

第七十八条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲処分は、行政機関これを行ふことはできない。

第七十九条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官これを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣これを任命する。

(2・3は省略

4 審に関する事項は、法律これを定める。

(5は省略

6 最高裁判所裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第八十条 下級裁判所裁判官は、最高裁判所名した者の名簿によつて、内閣これを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。

2 下級裁判所裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第八十二条 裁判の対審及び判決は、開法廷でこれを行ふ。

2 裁判所が、裁判官全員一致で、の秩序又は善良の風俗する虞があると決した場合には、対審は、開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを開しなければならない。

第八十三条 の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。

第八十七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣責任これを支出することができる。

(2は省略

第八十九条 金その他の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又はの支配に属しない慈善、教育若しくは博の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

第九十条 の収入支出の決算は、すべて毎年会計院がこれを検し、内閣は、次の年度に、その検報告とともに、これを国会に提出しなければならない。

2 会計院の組織及び権限は、法律これを定める。

第九二条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律これを定める。

第九十三条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。

2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

第九五条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを布する。

第九八条 この憲法は、の最高法規であつて、その条規に反する法律、命、詔勅及び務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを実に遵守することを必要とする。

条 この憲法は、布の日から起算して六箇を経過した日から、これを施行する。

2 この憲法を施行するために必要な法律の制定、参議院議員選挙及び国会召集の手続並びにこの憲法を施行するために必要な準備手続は、前項の期日よりも前に、これを行ふことができる。

二条 この憲法による第一期の参議院議員のうち、その半数の者の任期は、これを三年とする。その議員は、法律の定めるところにより、これを定める。

関連リンク

関連項目

関連記事

親記事

子記事

  • なし

兄弟記事

【スポンサーリンク】

  • 7
  • 0pt
記事編集 編集履歴を閲覧

ニコニ広告で宣伝された記事

対魔忍アサギ (単) 記事と一緒に動画もおすすめ!
提供: 井河アサギの旦那
もっと見る

この記事の掲示板に最近描かれたお絵カキコ

お絵カキコがありません

この記事の掲示板に最近投稿されたピコカキコ

ピコカキコがありません

これを(憲法)

20 ななしのよっしん
2025/04/20(日) 20:18:17 ID: NivSKkujlS
これおっ( ^ω^)
👍
高評価
2
👎
低評価
0
21 ななしのよっしん
2025/04/20(日) 20:19:07 ID: XuSHw527jX
>>13
またXのバズに便乗した立て逃げ記事かぁと思ったら結構しっかり書かれててだった
👍
高評価
4
👎
低評価
0
22 ななしのよっしん
2025/04/20(日) 22:13:49 ID: K4ebODs1H9
しっかりした記事から繰り出されるクソみてぇな1レス
👍
高評価
7
👎
低評価
0
23 ななしのよっしん
2025/04/20(日) 22:28:45 ID: OK8xrOxxmd
1コメは、これを許されない
👍
高評価
19
👎
低評価
0
24 ななしのよっしん
2025/04/20(日) 22:30:18 ID: R5iiMB6klo
コンマイ語と同じで、シンプルな書き方だとどうにでも解釈できるから敢えて回りくどい書き方してるんだと思ってた。
👍
高評価
1
👎
低評価
0
25 ななしのよっしん
2025/04/20(日) 22:44:03 ID: f4N2+XmRcG
サスケェ!はこれを取っ手の新たなになるとす!
👍
高評価
1
👎
低評価
0
26 ななしのよっしん
2025/04/20(日) 23:06:42 ID: Pr8P0MRWdu
日本国憲法をしっかり読んでみる気持ちにさせる良記事
👍
高評価
4
👎
低評価
0
27 ななしのよっしん
2025/04/20(日) 23:33:18 ID: ohII4A8tsG
ミリタリーと言うか軍隊っぽい表現な感じもする
これを迎撃する、とかこれを撃滅する、とか
いちいち部隊と言うとくどいし抜くと自軍が行動する対物がはっきりしないというか
👍
高評価
3
👎
低評価
0
28 ななしのよっしん
2025/04/21(月) 00:28:35 ID: QMtCB7+Zd+
何なんだこの「1コメ残に踏みにじられた」感は
👍
高評価
6
👎
低評価
0
29 ななしのよっしん
2025/04/22(火) 01:51:26 ID: PcsYQD5l8q
1コメが最悪すぎてニコニコって感じがする
👍
高評価
0
👎
低評価
0

ニコニコニューストピックス