格差社会とは、人類が形成する社会の一形態である。反対の概念は平等社会である。
概要
定義
類似語と反対語
格差社会の類似語は階級社会である。格差社会と階級社会は密接な関係があると考えられる。
格差社会の反対語は平等社会である。平等社会に類似した言葉は無階級社会であり、平等社会と無階級社会は密接な関係があると考えられる。
格差社会を生み出す税制
所得税累進課税の弱体化
所得税の累進課税を弱体化させ、低額所得者に対する税率を上げて高額所得者に対する税率を下げ、一律課税(フラットタックス)に近づけると、高額所得者がそのまま高額所得者のままになり、格差社会となる。
所得税累進課税を弱体化させることを極めて熱心に支持する思想というと新自由主義(市場原理主義)である。
相続税・贈与税の累進課税の弱体化、相続税・贈与税の廃止
相続税・贈与税の累進課税を弱体化させ、低額相続者・低額受贈者に対する税率を上げて高額相続者・高額受贈者に対する税率を下げ、一律課税(フラットタックス)に近づけると、「親が富裕層で子も富裕層」という社会が実現し、格差社会となる。
ちなみに日本の税制では、議員がその子どもに資産を相続させるときに、親の政治団体から子の政治団体へ寄付するという方式を使うと簡単に相続税・贈与税を回避できる[1]。日本に世襲議員がやたらと多いのはこのためである。
日本は、議員に対して特別に相続税・贈与税を免除している国であり、議員が免税特権を享受している国であり、議員が特権階級を形成している国であり、典型的な格差社会・階級社会の国である。
日本の格差社会化のデータ
階層意識
「下流ショック」
『下流社会』という本が売れた当時、「下流」と称した階層、中の下は1996年時と比べると4ポイント程度上昇していた。内閣府の調査ではその階層はむしろ減少、中の中が増える結果となっている。
自分の所得階層感(%) | |||||
上 | 中の上 | 中の中 | 中の下 | 下 | |
1996年 | 0.4 | 10.8 | 57.4 | 23.0 | 5.2 |
2004年 | 0.7 | 9.6 | 52.8 | 27.1 | 6.5 |
2005年 | 0.8 | 8.8 | 54.2 | 25.1 | 7.3 |
内閣府 HP |
階層意識の動向
「社会階層と社会移動全国調査」という、1955年より10年ごとに行われている社会調査によると、日本の階層意識は有職男性において、1995年と2005年の間に大きく変化した。具体的には下層意識が増えている。これは1955年の調査以来、下層意識が低下傾向を示していたのに対し、初めて起きた現象である。とりわけ、低収入層で強烈な「下」方シフトが起きた。
時代ごとの意識の変化は以下の通りである。
1965年:中の下と下の上の2つに山が見られる
1975年:一億総中流意識、階層意識と所得には関連が見られない
1985年:高収入者に中の上意識へのシフトが見られる
1995年:高収入者は更に中の上意識へのシフト、絶対数では全体が中流意識
2005年:高収入層(上約1/4)は相対的に高い階層帰属を答える、高収入者以外の下層意識が顕著に増える
全体で絶対的な「下」方シフトを起こしつつ、その内部では収入の高低による相対的な「上/下」乖離がさらに拡大、「階層化」の感覚は高収入層とそれ以外でかなり温度差がある。高収入層ではそれほど「階層化が進んだ」という実感はない。そういう形で「階層」感がいわば二重化している。この「上/下」乖離は全体の絶対的「下」方シフトとちがって、85年で兆しがみられ、95年で明確になり、05年でさらに強まった。長期的な傾向性がはっきり見られる。
経済指標
家計調査
総務省調査、一世帯当たりの家計資産(土地、建物、預貯金、株式、自動車等)によると2005年末時点での平均は3900万円。前回調査(1999年)と比べると11.1%減少している。
所得階層別に見ると、世帯を年収別に10の階層に分け、最高所得階層の資産額を最低所得階層の資産で割った倍率はバブル期の1989年調査時点では4.3倍、バブル崩壊後の1994年では2.8倍に減少、その後1999年時点の3.1倍と若干拡大し、その後も2005年で3.3倍に拡大している。
相対的貧困率
平均世帯所得の半分以下の世帯数が、全世帯数に占める割合は、1984年時には7.3%、94年時には8.1%、2000年には15.3%に急上昇している。またOECD(経済協力開発機構)が2006年7月に発表した報告書では生産年齢人口における日本の相対的貧困率は13.5%。調査した17カ国中、アメリカの13.7%に次いで高い水準になっている。ここには勿論、中国、インド等は入っていない。あくまで「先進国」と言われる範囲内、その多くは欧州地域、北米地域である。
先進各国の生産年齢人口における相対的貧困率(2000年 %) | |
アメリカ | 13.7 |
日本 | 13.5 |
イタリア | 11.5 |
イギリス | 8.7 |
ドイツ | 8.0 |
フランス | 6.0 |
スウェーデン | 5.1 |
OECD Economic Surveys of Japan 2006 |
ジニ係数
全員の所得が同じならゼロ、誰か一人が所得を独り占めし、残り全員が所得ゼロだった場合は1。つまり係数が小さいほど平等、大きいほど格差社会となる。
これは当初所得、税込所得と再分配所得、社会保障給付を受けた後で大きく違う。
当初所得の時にジニ係数は1990年には0.4334、その後毎年上昇し、2002年には0.4983になった。
再分配所得のジニ係数は、0.3643から0.3812と当初所得と比べて格差拡大に歯止めが掛かっている。
それでも、格差拡大傾向にあるのは間違いない。
また先進諸国で比較すると、OECD加盟25カ国平均は、2004年で0.308、日本は0.314で、欧州地域特に北欧中欧等福祉型国家と比べると平等ではない。
先進各国における再分配所得に対するジニ係数(2004年) | |
デンマーク | 0.225 |
スウェーデン | 0.243 |
オランダ | 0.251 |
オーストリア(1999年) | 0.252 |
チェコ(2002年) | 0.260 |
フィンランド | 0.261 |
ノルウェー | 0.261 |
スイス(2001年) | 0.267 |
フランス(2002年) | 0.273 |
ドイツ(2001年) | 0.277 |
ハンガリー | 0.293 |
カナダ(2002年) | 0.301 |
スペイン(1995年) | 0.303 |
アイルランド | 0.304 |
オーストリア(1999年) | 0.305 |
OECD25カ国平均 | 0.308 |
日本 | 0.314 |
イギリス | 0.326 |
ニュージーランド(2001年) | 0.337 |
ギリシャ(1999年) | 0.345 |
イタリア | 0.347 |
ポルトガル | 0.356 |
アメリカ | 0.357 |
ポーランド | 0.367 |
トルコ(2002年) | 0.439 |
メキシコ(2002年) | 0.467 |
OECD、Income Distribution and Proverty in OECD Countries in the Secound half of 1990s |
男女格差
雇用においては、男女格差は残存している。背景に、長時間労働がもたらす女性の育児・仕事の両立困難や夫の育児分担の難しさ、昇進の可能性がある(職種・コースでの女性採用抑制、業務配分・配置転換・昇進における男女格差等)。男女の雇用格差是正には、「仕事と育児の両立支援」と「機会均等施策」充実が関係する。
男性 | 女性 | ||
就業率 |
15~64歳 | 82% | 64% |
25~39歳 | 91% | 70% | |
平均勤続年数 | 1000人以上企業 正社員 |
16.7年 | 11.7年 |
40~44歳の平均年収 | 1000人以上企業 大卒正社員 |
843万円 | 652万円 |
雇用者に占める正社員比率 | 15~64歳 | 82% | 45% |
管理職に占める男女比率 | 1000人以上企業 | 93% | 7% |
過去の格差議論の意識
格差問題とはその国の社会・経済状況による人々の意識に起因する。常に平等化への希望が根底にあるものの、時代によって問題意識は異なってきている。
時期 | 問題意識 | 政策的対応 |
1960年代~1970年代 高度経済成長期 |
大都市圏と地方圏の 所得、経済格差 |
国土の均衡ある発展 地域産業の振興 |
株価上昇、地価高騰の 中での資産を持つ人と 持たない人の格差 |
地価抑制策 |
|
2000年代半ば 失われた10年 |
小泉構造改革の下での 所得や雇用の格差 (非正規雇用の増加) |
再チャレンジ政策 |
2010年代半ば アベノミクス |
アベノミクス下の 所得や雇用、 地域の格差 |
賃上げによる好循環形成 地方創生 |
格差拡大の一つの見方
2006年1月、内閣府は「ジニ係数の上昇は見かけのものだ」と発表。ジニ係数が大きくなって格差拡大しているように見えるのは、実際には社会の高齢化と核家族化の進行による部分が大きいという。
高齢者が増えれば、年金収入以外の所得がない世帯が増加。また年齢が高くなるにつれて、同世代間でも収入の格差が広がり、これが格差拡大という数字に表れるという。
また核家族化は、以前までは年収の大きい家長、父親と年収の小さい若年層、息子、娘が同居し、結果として世帯収入が一つ(つまりその家計内では「格差ゼロ」)だったが、息子、娘が独立し独立した別の家計を持てば、従来よりも「収入の小さな世帯が増えた」、つまり「格差が拡大した」という事になる。
この二つの構造変化が格差拡大の一つの見方である。
また夫婦の仕事形態の変化が収入格差を大きく見せているという意見もある。
1980年代までは、低所得の男性配偶者ほどフルタイムで働く割合が高く、逆に高所得の男性の配偶者は専業主婦かパートタイム労働者である傾向が高かった。これが結果として世帯収入で見れば差を小さくしていた。
1990年代になると、男性の所得が高くても、配偶者がフルタイムで働く割合が高くなった。その為世帯収入で見ると格差が開いたという。
日本国内の世論において「格差社会」はおもに所得格差およびそこから派生が予想される機会の格差(子弟の教育など)など経済社会的な視点で用いられる。
ニコニコ動画内では切実感がないのかそれをもシャレのめす精神ゆえか上記とは異なる分野で用いられることも多い(関連項目参照)
『21世紀の資本』
トマ・ピケティが出した『21世紀の資本』は、先進国で格差拡大が生じている事を、税務資料から分析したものである。そこでは、戦争による経済の破壊―例えば、家や土地などの破壊による富裕層の相続財産の消失―や、富裕層への課税強化で第二次世界大戦後の一時期は各国で格差が現在より小さかったが、1970年代を過ぎた頃から、課税の累進性の減少等により、再び格差拡大が始まったとしている。また高所得者への減税による消費行動の変化は統計的には認められない―一般にはトリクルダウン理論の否定―ことも示している。
最も本書を有名にしたのは下の一節である。
r(資本収益率)>g(経済成長率)
この意味は、資本―この場合金融や不動産―運用益が、経済成長率―この場合賃労働の所得増加率―を常に上回るという事であり、それを各国の資料から証明したことにある。
このピケティの理論の前提となる資本主義の基本原則は、
第一原則:資本が蓄積されβ(資本所得比率)が高まると、α(資本分配率)がさらに大きくなり、労働所得との格差が拡大
α(資本分配率)=r(資本収益率)×β(資本所得比率)
※α:(資本収益/国民所得)、r:(資本収益/資本)、β:(資本/国民所得)
第二原則:長期的にはβ(資本所得比率)が貯蓄の成長に対する比率に等しくなるため、貯蓄率が高いほど、また、経済成長率が低いほど、β(資本所得比率)が上昇β(資本所得比率)=s(貯蓄率)/g(経済成長率)
β(資本所得比率)=s(貯蓄率)/g(経済成長率)
関連動画
関連項目
- 経済
- 経済学
- 社会学
- ワーキングプア、底辺、ニート
- ノブレスオブリージュ
- 胸囲の格差社会(アイドルマスター)
- やよいおり(アイドルマスター)
- ※ただしイケメンに限る
- この格差!この優越感!!
- 恋愛格差
- 貧困
- 富裕
- 社会問題
- 新自由主義(市場原理主義)
- トリクルダウン
- 小さな政府
脚注
- *『税のタブー インターナショナル新書(集英社インターナショナル)三木義一』 では44~48ページにて『世襲議員のからくり 文春新書(文藝春秋)上杉隆』の69~70ページを引用し、小渕恵三の政治団体から小渕優子の政治団体へ大量の資金が流れたのに相続税がかからなかったことを紹介している。
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