ATOS(Autonomous decentralized Transport Operation control System)とは、東京圏輸送管理システムの略称である。JR東日本が首都圏を中心に導入している。
ATOS接近音 |
概要
列車運行管理システムの一つで、JR東日本が東京圏の各路線に導入を進めているものである。
ATOS導入以前は、列車の運行が駅長権限(=場内/出発信号機)で決まり、天候などによる運転見合わせも全て駅長が決定を下していた。しかし、この方法では、駅間で起きた事象について把握することが難しく、すみやかに列車の遅延回復や運転再開ができなかった。そこで、情報を一か所にまとめ、信号機からポイント切り替えなどを総括・自動化することとなった。それがATOSである。いわば、私たちが普段目にする旅客向け案内(電光掲示板や案内放送)はおまけである。
旅客向け案内
電光掲示板
ATOS導入区間の駅のほとんどに電光掲示板が設置されており、次発の発車時刻/種別/両数/ドア数/グリーン車のあるなし/行先/遅延時間 などいろいろな情報が表示され、普段鉄道を使わないような人でも、一目見てわかるように工夫されている。現在、ほとんどが緑・橙・赤の3色LED式である。
主に、駅コンコースや、ホームに設置される。なお、段数は1~3段であり、横幅はたくさんの種類がある。
例)
(当記事の掲示板より)
種別 | 両数 | ドア数 | 備考 | 発車時刻 | 行先 | 発着番線 |
普通 | 10両 | 3ドア | 始発 | 14:13 | 上 野 | 1 |
特急 | なすの | 6両 | G | 遅れ45分 | 新 宿 | 2 |
【湘南 | 新宿ラ | イン | 遅延 | 】 | 湘南新 | 宿ラインは |
なお、ATOS導入区間外でも、同じ型電光掲示板を使っている場合があるが、表示方法が異なる。例えば、ATOS導入区間は原則行先が橙である(例外として、宇都宮線(東北線)の久喜駅では湘南新宿ラインの行き先を赤字で示している。)など、いくつか異なる点がある。(一番数字のフォントがわかりやすい。特に「4」)
案内放送
ATOS導入区間の駅では、次発案内・接近案内・利用時の注意などが放送される。なお放送は、あるパーツの組み合わせ(下では/でパーツを区切っている。)によって出来ており、ダイヤ改正などがあっても、すぐ対応できる。
案内放送の声には男声と女声の2種類があり、男声を津田英治(更新後は田中一永)、女性を向山佳比子が担当している。導入当初は放送のパーツの継ぎ接ぎが目立っており、しばしば「AHOS」とも揶揄された。現在では改良が進み比較的自然なアナウンスが流れている。この、改良版は常磐線から導入が始まったので、便宜上「常磐型」と呼ばれることがある(下の導入路線一覧では、初期型が常磐型に更新されることがあり、アナウンサーも同一であることから、まとめて「標準型」としている)。
なお、2014年11月より、宇都宮線を皮切りに上野東京ライン開業による更新作業が行われ、男声アナウンサーのみ田中一永に変更されている。これは津田英治が高齢化したことによって初期に収録した音声と後期に収録した音声でまるで別人であるかのような状態になってしまったためである。今後の既存線区の更新および新規線区への導入により、津田英治版のATOSは減少していくものと見られる(最悪、全てのATOSが更新されれば津田英治版は消滅するであろう)。なお、男声変更版のATOSは宇都宮線から導入が始まったことから、当記事では便宜上「宇都宮型」とする(ちなみに「宇都宮型」は宇都宮線しか導入されてなかった頃に、Twitterで一部ユーザーが使い始めたものである)。
「宇都宮型」はアナウンサーの変更のほかに、列車到着時の駅名連呼が語尾を伸ばさない形に修正されているほか(語尾を伸ばさない駅でも録り直しているようである)、「スワローあかぎ」が合成音声になっていたのが録り直されている。2018年1月から、海浜幕張駅にて詳細英語放送が追加された「宇都宮改良型」が登場。また接近放送における「黄色い線まで」の文章がJR西日本と同じ「黄色い点字ブロックまで」の言い回しに変更されている(ATOS区内外の駅の放送(旭型や巌根・館山型放送)でも「黄色い点字ブロックまで」の言い回しに変更されている)。
- もっとも有名と思われる放送
当駅では、(喫煙所を除きまして、)終日、禁煙となっております。皆様のご協力をお願いいたします。 - 接近放送I
♪~ まもなく/1番線に/普通/上野行きが/参ります。危ないですから、黄色い線(黄色い点字ブロックまで)、まで、お下がりください。/この列車(電車)は/3ドア/10両です。/グリーン車が付いております。 - 接近放送II(回送)
♪~ まもなく/5番線に/当駅どまりの/列車(電車)が参ります。危ないですから、黄色い線まで(黄色い点字ブロックまで)、お下がりください。/この列車にはご乗車になれませんので、ご注意ください。 - 次発放送
今度の/2番線の/列車は/1/4時/3/2分/発/特急/なすの/新宿行きです。/この列車は/2つドア/6両です。/この列車にご乗車の際は、/乗車券のほかに/特急券が/必要となります。/足元の/特急/6両/乗車口でお待ちください。/次は/大宮/に停まります。 - 遅延放送
2番線の/列車は/約/45分/遅れで運転中です。到着まで、しばらくお待ちください。
なお、実はATOSには接近メロディ(入線メロディ)が存在しており、接近放送が流れた後に上下線で別々のメロディが電車・列車が到着・通過するまでエンドレスで流れる。横浜線導入時に試験的に使用された後(2016年時点では横浜線では常用されていない)、常磐線導入時に新木場駅で使用を開始している。
導入路線
標準型(津田英治版)
前述した通り、ここでは「初期型」と「常磐型(改良版)」をまとめて「標準型」として列挙する。
「移行時期」はATOS更新による宇都宮型(後述)への移行時期である。
路線 | 区間 | 導入時期 | 移行時期 |
---|---|---|---|
中央本線(中央快速線)(※) | 東京駅~高尾駅~甲府駅 | 1996年12月 | 2014年12月~ |
総武線各駅停車(中央・総武緩行線) | 三鷹駅~御茶ノ水駅 | ||
御茶ノ水駅~西千葉駅 | 1999年5月 | ||
山手線 | 全線 | 1998年7月 | 2015年11月~ |
京浜東北線・根岸線 | 全線 | 2014年12月~ | |
総武快速線・横須賀線 | 稲毛駅(※)~東京駅~大船駅 | 2000年9月 | |
大船駅~久里浜駅 | 2009年11月 | ||
東海道本線(東海道線) | 東京駅~湯河原駅 | 2001年9月 | 2014年12月~ 2015年1月 |
常磐線(常磐快速線)(※) | 上野駅~羽鳥駅 | 2004年2月 | |
常磐線各駅停車(常磐緩行線) | 綾瀬駅(※)~取手駅 | 2014年12月~ | |
東北本線(宇都宮線) | 上野駅~古河駅 | 2004年12月 | 2014年11月~ 2015年1月 |
古河駅~那須塩原駅 | 2005年10月 | ||
高崎線 | 大宮駅~神保原駅 | 2004年12月 | |
湘南新宿ライン | 池袋駅~大宮駅 | 2014年12月~ | |
大崎駅~池袋駅 | 2005年7月 | ||
埼京線・川越線 | 大崎駅~大宮駅~川越駅 | ||
川越線(八高線直通)(※) | 川越駅~武蔵高萩駅 | ||
南武線 | 川崎駅~立川駅 | 2006年3月 | 2015年1月~ |
武蔵野線 | 全線 | 2012年1月 |
※中央本線については、梁川駅・笹子駅の戸閉放送と東山梨駅・春日居町駅の放送はATOS音声ではなく巌根型放送が使われている(東山梨駅は巌根・館山型放送。春日居町駅では後に、梁川駅・笹子駅と同じ簡易型ATOS音声に変更された)。
※総武快速線については、下りは幕張車両センター分岐まで、上りは稲毛駅から機器が設置されている。このため、稲毛駅の下り線は自動放送のみATOS仕様と言う形になっている。
※常磐快速線の北千住駅については、2番線のみ放送がATOS音声とユニペックス型の自放音源を併用している。
※常磐線各駅停車の綾瀬駅については、ATOSの機器は設置されているが、自動放送は東京メトロ仕様となっている(綾瀬駅が東京メトロ管理のため)。
※川越線の西川越駅については、放送はATOS音声ではなく巌根・館山型放送が使われている。
宇都宮型(田中一永版)
前述した通り、「宇都宮型」は当記事で区別するために用いている便宜上の名称である。
路線 | 駅 | 導入時期 |
---|---|---|
東北本線(宇都宮線) | 上野駅~那須塩原駅 | 2014年11月~2015年1月 |
高崎線 | 大宮駅~神保原駅 | |
東海道本線(東海道線) | 東京駅~湯河原駅 | |
常磐線(常磐快速線)(※) | 上野駅~羽鳥駅 | |
常磐線各駅停車(常磐緩行線) | 松戸駅、柏駅、我孫子駅~取手駅 | 2014年12月~ |
京浜東北線・根岸線 | さいたま新都心駅、浦和駅、蕨駅、 有楽町駅、新橋駅、川崎駅 東神奈川駅、桜木町駅、大船駅 |
|
総武快速線・横須賀線 | 新橋駅、品川駅、横浜駅、 戸塚駅、大船駅 |
|
中央本線(中央快速線) | 新宿駅、八王子駅、西八王子駅 | |
湘南新宿ライン | 新宿駅~大宮駅 | |
埼京線・川越線 | 新宿駅、池袋駅、赤羽駅 | |
南武線 | 川崎駅 | 2015年1月~ |
上野東京ライン | 東京駅~上野駅 | 2015年3月 |
横浜線 | 全線 | 2015年7月 |
山手線 | 有楽町駅、新橋駅 | 2015年11月~ |
京葉線 | 全線 | 2016年9月(※) |
※常磐快速線の北千住駅については、2番線のみ放送がATOS音声とユニペックス型の自放音源を併用している。
※なお、京葉線の蘇我駅に関しては2016年7月にATOS音声に更新されている。
導入予定路線
自動放送のみATOS仕様の駅
ニコニコ動画内でのATOS
ニコニコ動画においては、その素材の豊富さからATOS放送の音声がMAD動画の素材として幅広く使用されている。特に音MADでの活躍は著しく、アナウンスの大胆な加工により様々なネタ列車が生み出された。
関連動画
関連項目
関連リンク
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