太平洋戦争が激しさを増す昭和19年、18歳で故郷の広島から20km離れた軍港都市・呉の北條家に嫁ぐことになった少女・すず。物資不足に悩まされながらも、工夫をこらしながら新しい場所で日々暮らしていくすずと、すずの夫・周作をはじめとする北條家を中心に、すずを取り巻く人達の日常を描いた作品。
こうの史代の代表作であり、2009年には第13回文化庁メディア芸術祭のマンガ部門優秀賞を受賞している。執筆にあたっては、戦争で失われた呉・広島の風景や、今や多くの人が体験したことのない戦時中の生活について綿密なリサーチが行われ、その再現が試みられている。
双葉社『漫画アクション』にて、2007年1月23日号から2009年2月3日号まで連載された。これに先立ち、同誌で2006年2月から翌2007年1月にかけてすずの幼少期を描いた3編の読切短編「冬の記憶」「大潮の頃」「波のうさぎ」が発表されている。
単行本は2008年1月から2009年4月にかけて、双葉社アクションコミックスより上中下巻の3巻構成で刊行。読切3編はプロローグとして上巻に同時収録されている。また後述のドラマ化を記念して、2011年に新装版が刊行された。こちらはB6判の前後編2巻構成となっている。
2011年8月に日本テレビ系列、2018年7月にTBS系列でドラマ化された。2016年には片渕須直監督により劇場アニメーションが公開されている。
2011年8月5日に「終戦記念ドラマスペシャル」と銘打って日本テレビ系列で放映。
主演に北川景子、また脚本を『ラブジェネレーション』『神様、もう少しだけ』『大奥』『ラスト・フレンズ』などで知られる浅野妙子が手がけた。
2016年、片渕須直監督・脚本によりアニメ映画化される。2016年11月12日公開。アニメーション制作はMAPPA。配給は東京テアトル。
寡作で知られる片渕監督にとって、4作品目の監督作品にあたり、新作映画は『マイマイ新子と千年の魔法』以来実に7年ぶりとなる。原作者のこうの史代はもともと片渕監督の大ファンであり、監督から直々に映画化の申し出を受けたときには感激したという。
2012年8月に関係者のTwitterで制作発表があり、広島県・山口県を中心に告知ポスターが展開された。その後、告知前からを含めて4年の準備期間を経て、シナリオ・絵コンテが完成。これを受けてクラウドファンディングが展開され(詳細後述)、国内映画作品としては記録的な3900万円以上を調達。6月3日に製作委員会が発足、東京テアトル配給での映画制作が正式に決定した。
2015年7月、クラウドファンディング支援者ミーティング東京会場にて第1段の特報映像が初公開。YouTubeでも配信されたほか、ユーロスペースなどいくつかの劇場で上映された。また、支援者ミーティングの広島・大阪会場では作品冒頭にあたる「冬の記憶」の映像も上映された。2015年11月の広島国際映画祭では続く「大潮の頃」も特別上映が行われている。
2016年8月5日、劇場公開日が11月12日に決定したことが発表される。8月23日には、主演を女優の「のん」(元・能年怜奈)が務めること、楽曲をシンガーソングライターのコトリンゴが手がけることが発表されるとともに、予告編映像が公開された。
2016年11月12日、全国63館にて劇場公開(順次拡大予定、累計100館以上での公開が決定している)。公開直後から反響が相次ぎ、「ぴあ映画初日満足度ランキング」「Filmarks初日満足度ランキング」でともに1位を獲得、小規模な公開ながら週末の興行収入ランキングにおいても2週連続で10位にランクインした。劇場公開と時を同じくして開催された広島国際映画祭2016ではヒロシマ平和映画賞を受賞。第71回毎日映画コンクールでは、日本映画優秀賞、大藤信郎賞、音楽賞(コトリンゴ)の3部門を受賞。また、第41回報知映画賞の作品賞と監督賞にノミネート、第40回日本アカデミー賞では優秀アニメーション作品賞、優秀音楽賞(コトリンゴ)にノミネート、第26回東京スポーツ映画大賞では作品賞、主演女優賞にノミネートされている。
インターネットでの動画配信は2017年5月17日より開始し、Blu-ray・DVDは2017年9月15日に発売され初週合計5.7万枚の売上を記録している。
Animatsu Entertainmentにより、英仏独墨など世界14カ国での配給も決定している。英題は "In This Corner of the World"。なお先だって公開された海外向けのトレーラーには、劇場公開された本編ではカットされたシーンが含まれている。海外でも多数の映画祭のアニメーション部門、長編作品部門にノミネートされ、第41回アヌシー国際アニメーション映画祭では、長編部門審査員賞を受賞している。
高い評価と大きな反響を集めたことを受けて、2018年には約30分の新規映像を加えた別バージョン『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が制作中であることが発表された。追加された新規映像によって作品の一部の主題も変わってくることから、別の題名が付けられたという。当初は2018年12月公開予定とされていたが制作に時間を要したため、後に延期が決定。2019年12月20日に公開された。
以下、すべて歌唱はコトリンゴ。
2015年3月、4年の準備期間を経てシナリオ・絵コンテが完成したことを受け、「この映画はみんなと一緒に作りたい」という片渕監督の思いの元、作品のプロデュースに名乗りを上げたジェンコの真木太郎プロデューサーが提案した、近年様々なジャンルで活用されているクラウドファンディングによって製作資金を調達するという、国内映画作品では珍しい手法が取られた。
3月9日にクラウドファンディングサイト「Makuake」上で開始された資金調達(当該ページ)は僅か9日後の3月18日に目標額2000万円を達成、5月末の締切時には3374人の支援者から3900万円を超える資金が集まり、当時における国内クラウドファンディングの過去最高人数、また当時の国内映画クラウドファンディングにおける最高金額を更新した。なお、集まった資金はスタッフの確保、パイロットフィルム制作等にあてられた。
当初本格的な映画製作の為の資金調達を目的として作られる予定だったパイロットフィルムであったが、このクラウドファンディングの反響を受け、配給を務める東京テアトル他複数社が出資に名乗りをあげ、締切直後の6月3日に早々に映画製作が決定されることとなる。
映画公開後の2016年11月には上映が決まっている海外諸国(同月現在15か国)の現地上映に片渕監督を送り、監督本人に世界の人々がどういった感想を抱いたか、日本へどういう感情を残すかを感じてもらうために2度目のクラウドファンディングが行われた。11月22日に始まった資金調達(当該ページ)はわずか8時間で目標額の1080万円を達成。この事態に対し急遽支援額の上限を設ける、実行内容の強化を行うなどの対策が取られた。
映画は非常に綿密な取材と時代考証、および現地調査を下に製作されており、片渕監督の尋常ではない拘りが随所に著されている。
マンガ版は「正方形のコマ」で描写される場面については、キチンと風景に馴染むように左右を加筆するのは当たり前として、戦中当時の地図や現存する建物から当時の呉の街並みを限り無く再現(これには、当時の記憶を持つ人々への聞き込みも大きい)、写真も残っていない建物は地図上の記述から当時の記録を頼りに新規に作成、さらに呉港に戦艦大和が登場する場面は、原作漫画の年月に史実で大和が寄港した実績があるのか、そもそもその場面が時代として正しいのかどうかを徹底的に調査し、原作になかった「日付」と「正確な天候」までも再現してみせたほか、劇中に訪れる重要事項では呉から見えたであろう雲の大きさ形そのものまで計算して表現したという。
予告編が披露された2016年の8月以降も、本作の宣伝はほとんど行われず、主演の配役によって旧所属事務所による圧力があったのではという説もある。(まともな特集で宣伝を行ったのは、自社で出資を行ったTBSラジオ及び芸能事務所の意向に左右され辛いNHK、出資者のひとつである朝日新聞をはじめとする紙メディアやインターネットメディアなど限られた媒体で、主要キー局ではあまり大きな宣伝は成されなかった。)
これは大手スポンサーがあまり付いていなかったという事情で、事務所の軋轢が無関係な『君の名は。』の公開前においても同じように大々的な宣伝はうたれていなかった。
その一方で、監督のTwitterでの情報発信や、クラウドファンディングでつながった支援者や『マイマイ真子と千年の魔法』から続くファンなどによる草の根での宣伝が広く行われていたことも明記しておく。
本作の高い完成度に多くクリエーターが称賛し、公開前の試写段階からSNSを起点に様々なネット媒体、メディアを通してファンからの絶賛の声が広まっていった。
全国上映とはいえ初日公開スクリーン数は63館と小規模(特に都市部はミニシアターが多い)、大手映画会社や代理店が関わっておらず前宣伝も少なかったものの公開後はネット上を中心に口コミが広まり、劇場によっては、全回満員で立ち見も出るほどの盛り上がりとなっている。
公開二週間目にはNHKのクローズアップ現代プラスをはじめ、様々な民放ニュース番組で特集として本作が取り上げられている。
なお、余談ながらこの映画のクラウドファンディングをさらに盛り上げたイベントのひとつである『マチ★アソビ』で、片淵監督による詳細なメイキングを交えたトークショーを企画した徳島県では、元々上映できる映画館そのものが少ない事情(県内の映画館は2つのみ)もあるものの、上記の63館に入っておらず、県内初回上映が県下で最小規模の映画館において12月末に入ってからと大幅に遅れる形となっていた。
映画評論家の町山智浩は前述の本作の扱いについて、各種メディアに対して旧所属事務所からの圧力が(噂や単なる憶測といった陰謀論ではなく)明白に存在したことを公にしており、彼によれば「『タブーなき』といわれる東京MXですが、大川プロデューサーが『この世界の片隅に』の"のん"こと能年玲奈を番組に出そうとしたんですが旧事務所から抗議があって断念しました。テレビの片隅のMXくんだりまでマメに圧力ご苦労様です。」と呟いているほか、安易なテレビ局の"自主規制"に対して「のんこと能年玲奈への旧事務所および音事協の放送メディアへの圧力は「彼女を出演させるな」につきるので『この世界の片隅に』という作品そのものはいくら取り上げてもかまわないのに、テレビが全然扱わないのは単なるビビリの自主規制ですね。」と批判している。
このほか、投資家の山本一郎は「MXからは、東京テアトルから営業があり、映画の宣伝を依頼されるにあたり、能年玲奈の出演の件になったので、レプロ担当者と話し合いを持ち、契約問題についての事実関係を確認して、それであれば出演は問題が落ち着くまで見送るという結論になったと言っています。」と前述の町山のツイートに対しての事情を明かし、ジャーナリストの津田大介は「町山さんが言うようにまさにこれこそが「圧力」では。「この進言は御社のリスク回避のためです」って言えば、テレビ局側も「あくまでリスク回避のための自主規制であって圧力に屈したわけじゃない」という形で面目が立つ。でも、動いた当事者からすればそれは忖度の名を借りた「圧力」と映るわけで。」とやはり各社の本作に対する取り扱いについて批判的に述べている。
2018年7月15日 - 9月16日にTBS系列の日曜劇場枠で放映。ドラマオリジナル展開で2018年の現代を舞台にしたパートが描かれた。
掲示板
480 ななしのよっしん
2024/05/10(金) 21:35:17 ID: 2B2YInyaNy
481 ななしのよっしん
2024/05/31(金) 19:15:17 ID: XLCfYNR4O6
そういう風にしか見えんのは分かるが、むしろ当時の女の人生が結婚か遊女かしか無いくらいに描かれてることもちゃんと見て…男も男で選択肢なんてほぼねぇじゃん
あんな濃密な人間関係に耐えられる奴ばかりじゃないし俺には無理だし今って良い世の中だなと思ったよ心底
物語としては微笑ましいけど人生として考えたらおぞましいことこの上ない、そこもちゃんと描いてると思うわ
482 ななしのよっしん
2024/08/27(火) 09:07:24 ID: Tf78eAW4SV
>>463
亀レスだけど、作者は広島の出身で出世作となった『夕凪の街 桜の国』で原爆作家と見られることに抵抗を感じたらしく、別に作者にアフガニスタンやイスラムと接点はないぞ
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最終更新:2025/02/08(土) 01:00
最終更新:2025/02/08(土) 01:00
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