ハンド・オブ・スローン二部作(The Hand of Thrawn Duology)とは、『スター・ウォーズ』サーガの小説シリーズである。
「レジェンズ」作品群に属する。全2作。著者はティモシイ・ザーン。
なお、当記事における人名・役職名など固有名詞の日本語表記は、原則的に本書邦訳に基づく。
舞台は『エピソード6/ジェダイの帰還』の15年後。帝国軍の伝説的戦略家スローン大提督の復活という衝撃的事件を通して、政治的内紛に割れる新共和国と衰退した銀河帝国の姿、長い戦いの終わりとルーク・スカイウォーカーの人生の節目を描く長編小説。
スローン三部作で生み出されたシンボリックな強敵スローン大提督やヒロインのマラ・ジェイドといった魅力的なキャラクターを、生みの親ティモシイ・ザーンがふたたび描いた作品。ザーンがスローン三部作によって切り拓いたEP6後を描くスピンオフ小説群に自ら新共和国と帝国の和平終戦とルークの結婚という区切りをつけるとともに、続くニュー・ジェダイ・オーダーシリーズに向けた種蒔きの役割を果たした。
本作より、「スター・ウォーズ」サーガの大人向け邦訳小説はソニー・マガジンズからの刊行に移行した。なお、三部作が多いレジェンズ小説群にあって、シリーズ単体で連続する二部作をなしているのは本シリーズのみである[1]。第二作のページ数は第一作の1.5倍くらいあるが。
スローン大提督が新共和国に完勝する寸前に命を落として10年。残存帝国軍を統率するペレオン提督は、衰えた帝国ではもはや新共和国打倒は不可能だという現実を認めた。だが彼の提案した和平に反発するモフ・ディズラは、グロディン・ティアス少佐と謀り、過去の亡霊を蘇らせて趨勢をひっくり返そうとする。ひそかに新共和国への使者を捕え、ペレオンが交渉のため通信を絶って帝国を留守にする隙に、変装した詐欺師フリムを立ててスローン大提督を「復活」させようというのだ。
対抗すべき新共和国は昏迷の渦中にあった。かつて惑星カーマスで起きた大量殺戮にボサンのスパイの関与が判明したのだ。ただでさえ政治対立が絶えない新共和国はボサン全体への懲罰を強硬に望む側と彼らを擁護する側に二分され、ボサンの母星ボサウイには両派の艦隊が集まり睨み合いはじめる。内戦を防ぐには、スパイを特定できる帝国の文書、カーマス・ドキュメントの正確なコピーを手に入れるほかない。しかも次第に「スローン大提督」が姿を表し、トラウマを抱える新共和国中枢を混乱に陥れてゆく。
同じ頃、ルーク・スカイウォーカーは、帝国に繋がる不審な海賊を調査していた古馴染みの密輸業者でジェダイのマラ・ジェイドが連絡を絶ったことを知る。彼女は偶然遭遇した謎の船を追い、未知領域の惑星ニラーンに向かっていたのだ。不穏な予感を得た彼は、マラを救援すべくニラーンへ向かう……。
使者が残した通信を受けたレイア・オーガナ・ソロはペレオンと会見し、和平に合意した。だがその前に、両者の持つ問題を片付けねばならない。「スローン大提督」は瞬く間に新共和国の加盟惑星を切り崩しているのだ。ペレオンはバスティオンに舞い戻って陰謀の証拠を掴み、レイアはボサウイに駆けつける。ボサウイではすでにディズラの工作員と帝国軍が火付けの時機を待っていた。だがあわや開戦というとき、ハン・ソロが隠れた帝国艦を発見し、旧敵を前に両派は一致団結、新共和国の分裂は回避された。
いっぽう新共和国艦隊は、帝国の情報部が基地を置くヤガ・マイナーを襲撃する。所属を偽ったスター・デストロイヤーを送り込んでカーマス・ドキュメントを回収しようというのだ。だが基地には「スローン大提督」が待ち構え、新共和国軍を見事な罠に絡め取る。事態を覆したのはペレオンの到着だった。彼はディズラを逮捕し、ティアスを破滅させ、偽装を暴いたフリムに最後の仕事として停戦を命じさせる。
ニラーンでマラと合流したルークが見たのは、かつてのスローンの部下たちとその要塞「スローンの手」。彼らは10年後に帰還すると言い残したスローンを待ち、未知領域に一大勢力を築いていたのだ。そして要塞地下の洞窟に潜入したふたりは、誰にも知られることなく目覚めの時を待つスローンのクローンを見つける。スローンの言葉の真実、巨大な脅威になりうるが無辜無力な生命を前にして対処に戸惑うふたりだが、現れた歩哨ドロイドとの戦いのなかで洞窟は崩壊し、クローンも破壊される。
協力して戦うなかで、ふたりはフォースを通してつながりあっていることに気づいていた。ルークはマラに結婚を申し込む。ニラーンから得られた情報でカーマス・ドキュメント危機も収束し、新共和国と銀河帝国の間には正式な平和協定が結ばれた。エンドアで皇帝が斃されて15年、長い戦乱はついに終わりを告げ、いまや新共和国と帝国の双方が争うことなく共存する未来への展望が開けようとしていた。
原著は長篇小説全2作(ハードカバー)で1997年および翌1998年に刊行。邦訳にあたっては両作とも文庫版上下巻構成で1999年にソニー・マガジンズより出版された。日本語訳はともに富永和子で、邦訳本表紙イラストは長野剛が担当した。長野剛表紙絵によるスター・ウォーズ邦訳小説シリーズの最初の作品であり、以後『スター・ウォーズ 忠誠』までのほぼ全作で長野による表紙絵が用いられることとなる。
我らが主人公国家。反乱同盟軍の後身。帝国軍残党や他の侵略者との多くの戦いを経て銀河規模の大国へと成長し、その軍事力は衰退しきった帝国とはもはや比べ物にならない。
しかし目下「成長期の苦しみ」のなかにあり、加盟惑星の急拡大や帝国の脅威の減少を受けて惑星間の対立や地域紛争が顕在化。帝国への反動から権力集中に不足がある元老院では実行力を欠くため、レイアのような名高い政治家や新共和国軍が駆り出されて各地で調停や紛争抑止に追われる状態にある。
中央政府の求心力が低下する中で生じたカーマス・ドキュメント危機は、単なる政治スキャンダルだとかボサンの根本的な不人気といった問題を越えて諸惑星がそれぞれに抱える星間対立を表面化させ、国論の分裂とボサウイ軌道上での武力対峙をもたらすこととなった。
皇帝パルパティーンの貯蔵庫があった惑星ウェイランドから発見された、破損したデータカード「カーマス・ドキュメント」に端を発する新共和国の内政危機。皇帝の特別ファイルだったらしいデータカードには、かつて惑星カーマスが破壊的な攻撃を受け住民カーマシの多くが殺戮された事件にパルパティーンが関与していたこと、そしてその事件にボサンのスパイが手引きしていたことが記されていた。
このことが知れ渡ると、新共和国の政界では星間政治で辛辣な姿勢をとってきたボサンへの反感が爆発し、種族全体に責任を問う動きが生じた。事態を穏便に収めるにはスパイ個人を特定するしかないが、当のボサン自身の懸命の調査はすでに徒労に終わっており、データカードの破損は回復不能、各地の記録保管所にも残されていなかった。正確な情報があるとすれば、当の残存帝国軍が持つものだけと考えられた。
このところちゃんとした帝国軍以外ばっかり相手してたけどやっぱり新共和国の敵は銀河帝国に限るねェ!とばかり久々カムバックをキメた銀河帝国の残党。
皇帝死後の内部分裂と打ち続く敗北のすえ辺境にヤガ・マイナーやムウニリンストなど1000の居住星系を領有する程度の地方国家まで縮小。もはや新共和国にとって大した脅威ではなく、ハンでさえリーダーが誰かを把握していなかったくらいには放置されている。それでも間違いなく、かの銀河帝国の統一された正統の残存勢力である(他はだいたい滅んだ)。
様々な情勢変化を経て皇帝時代のような圧制や皇帝死後に分裂した時期の軍閥的な無秩序はなりをひそめ、かつての人間至上主義もエイリアン差別もない。実行力を欠く新共和国の混乱に巻き込まれることを肯んじず、かつて帝国が掲げた新秩序の理想を支持する国家といった観が強くなっている。傘下に残る諸惑星も、おおむね自ら望んで帝国に留まっている惑星である。
各宙域を統治するモフからなるモフ評議会による寡頭合議政体をとっており、帝国軍最高司令官であるペレオン提督が実質的な国家元首としてモフ評議会を尊重しながらも主導している。バスティオンと呼ばれる移動首都の位置は新共和国にも知られていない機密で、物語現在はモフ・ディズラが統治するブラクサント宙域のサーティネイニアン星系に置かれている。
| スター・ウォーズ レジェンズの邦訳小説 (作中時系列順) |
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|---|---|---|
| 前作 | 本作 | 次作 |
| コレリアン三部作 (18ABY) |
ハンド・オブ・スローン二部作 (19ABY) |
生存者の探索 (22ABY) |
掲示板
1 ななしのよっしん
2023/06/11(日) 22:36:26 ID: wOwDOLy6Ci
新三部作の設定に準じたノベライズだが、すぐにまたレジェンド送り。
めげずにザーンはカノンに準じたノベライズを送り出しているが、未だに未邦訳。
2 ななしのよっしん
2023/06/11(日) 23:47:04 ID: 1K3+On1WTK
>>1
EP1以前の本だから特別編までの設定が入ってるかどうかくらいだと思うよ
翻訳は1999年だからギリギリでEP1でのコルスカント→コルサントが間に合ったけども
それにレジェンズになるまで15年以上空いてるのは「すぐに」ではないんじゃないかと
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/06(土) 15:00
最終更新:2025/12/06(土) 15:00
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