スローン大提督(Grand Admiral Thrawn)とは、「スター・ウォーズ」サーガの登場人物である。
スローン大提督は、青い肌に真っ赤な目の人間型エイリアン、チス出身の銀河帝国軍人。銀河史上でも最高峰の天才的戦略家として、反乱同盟軍/新共和国の前に立ちはだかる最強の敵である。本項目では、「レジェンズ」作品群におけるスローンと「カノン」作品群におけるスローンについて別個に詳述する。
最終的なフルネームは共通して「ミスローニュルオド(Mitth'raw'nuruodo)」であり、著名な「スローン」の名はコア・ネーム(レジェンズ項において詳述)。当項目では基本的には「ミスローニュルオド」のフルネームではなく、人口に膾炙したコア・ネームである「スローン」の名を使用し、もっとも有名な呼び方である「スローン大提督」を記事名としている。
なお、「カノン」作品群に登場する「レイ・スローン(Rae Sloane、のちに大提督)」とは別人である。
非人間種族ではほぼ唯一の帝国高級軍人であるスローン大提督は、皇帝死後に分裂し衰退した帝国軍を蘇らせ、新共和国のほとんど致命的な脅威となった「最後の大提督」として史上に名高い人物である。
彼は既知銀河最高の戦略家、皇帝死後の銀河帝国における最強の指導者であり、新共和国にとって皇帝を除けば最大の敵であった。その冴え渡る指揮は新共和国をあわや滅亡寸前にまで追いやり、帝国による銀河の再征服を前に暗殺されて以降も、ユージャン・ヴォング戦争を経てキリック戦争までに至るありとあらゆる戦役と事件に影響を及ぼしたといえるだろう。
レジェンズ作品群では、ティモシイ・ザーンによるスローン三部作の主な敵役として登場する。スローン自身は同三部作中で死亡したが、以降様々なところでスローンの名が語られ、帝国軍の伝説の天才的指導者としてのその存在感はスピンオフ作品群出身のキャラクターでも屈指のものとなっている。
スローン大提督といえば、帝国最後にして唯一の非人間種族の大提督であり、新共和国を脅かした天才的司令官として知られている。しかしそれは彼の人生の最期の一年程度の活躍に過ぎない。スローンという天才は、その若き頃から死後に至るまで、より多くの活躍と勝利、そして影響を残しているのである。
なお、スローンの生年は知られておらず、また非人間種族であることから単純な比較は出来ないが、その活躍時期などを見るに、彼は後の副官ギラッド・ペレオンと同年代か、より年配であると思しい。
スローンとして知られるミスローニュルオドは、未知領域のエイリアン、チスに生まれた。高度な知性と論理性を持つ種族であるチスとその国家チス・アセンダンシーは複雑極まりない社会システムを持っており、ルーリング・ファミリーと呼ばれる複数の氏族の協議による寡頭支配制でありながら、一般市民も役職に応じて各氏族に属させ、なかでも顕著な功績を挙げた者は終身的に一族に取り込むことで血脈の鮮度を保持する柔軟さにより国家を維持していた。
チスの首都惑星シーラに生まれたスローンは一般家庭の出身であったが、軍人を志して拡張防衛艦隊で高い能力を顕し、ルーリング・ファミリーのひとつ、ミス家(Mitth Family)に迎え入れられた。彼のフルネーム「ミスローニュルオド(Mitth'raw'nuruodo)」の冒頭に含まれる「ミス(Mitth)」は、このミス家の一員であることを示すものである。
フルネームの中心部を抜き出した「スローン(Thrawn)」という名は、コア・ネーム(短縮名)と呼ばれる。コア・ネームは本来親しい間柄で使用するものだったが、やがて正しい発音が困難な場合(複雑な発音を持つチスの言語チユーンに慣れない異種族から呼ばれる場合など)にも転用されるようになった。
チス拡張防衛艦隊の士官となったスローンは、優秀さから速やかに栄達し、27BBYにはチス史上最年少のコマンダーとして<スプリングホーク>を中心としクルスタイ基地に駐留する第2前哨部隊を指揮する身となっていた。
ある時、チスの一将校にすぎなかった彼が後に銀河の趨勢に関わることになる転機が訪れる。
27BBY、彼は哨戒中にコレリアの密輸船を拿捕した。この船は追っ手から逃れるため無計算でハイパースペースにジャンプし、偶然チス領域の外縁部に到達したのだ。彼は船の乗組員ジョージ・カーダスと交流を持ち、彼にチスの言語チユーンと交易言語ミニシアットを教える代わりに共和国の標準言語ベーシック・スタンダードを学ぶ。それと平行して、近隣で暴れ回る略奪遊牧種族ヴァガーリと交戦してその掠奪品を満載したその宝物船を拿捕した。
だが、この行動はチスにとって大問題だった。チスの厳格な規律は先制攻撃を固く禁じており、いかにチス領域の外縁部で彼らが他の種族から掠奪し奴隷にしているとしても、戦争状態にないヴァガーリと戦うのは明確なルール違反だったからだ。しかしスローンは再び出撃し、ヴァガーリの重力プロジェクターを奪う。重力プロジェクターは擬似的な巨大重力によってハイパースペースから宇宙船を強引にリアルスペースに引き出し、あるいはハイパースペースへの逃走を防ぐ兵器である。そしてこれを使った巧妙な戦術は、以後のスローンの十八番となった。
その少し後、我知らずチス領域へと侵入した艦隊があった。ルクレハルク級二隻を中核とする通商連合の強大な機動部隊である。スローンはこれをチス領域への侵略と捉え、戦力では圧倒的に不利だったにも関わらず旗艦<ダークヴェンジ>以外の全艦を容易く沈め去った。そして彼は旗艦に乗り込み、「コマンダー・ストラティス」と名乗る男に出会う。その正体は最高議長パルパティーンのアシスタント、裏でシスの暗黒卿ダース・シディアスに仕えるキンマン・ドリアナだった。彼はシディアスの意を受け、共和国のある巨大プロジェクトを秘密裏に消し去るため通商連合の艦隊とともに未知領域へと侵入していたのだ。
そのプロジェクトの名は「アウトバウンド・フライト」。ジェダイ・マスター、ジョラス・シボースが率いた外宇宙への大規模な探索植民計画であり、中央の収納コアを6隻のドレッドノート級クルーザーで取り巻きターボリフト・パイロンで繋ぎあわせた巨大な宇宙船に、6人のジェダイ・マスターと12人のジェダイ・ナイト、そして5万人の乗組員兼植民者を乗せて外銀河へと向かう壮大な旅路だった。そしてシディアスにとっては多くのジェダイを一挙に抹殺できる機会でもあった。
機動部隊を失ったドリアナはスローンに会うと、アウトバウンド・フライトを撃墜するべきだと説く。ホログラムでスローンと会話したシディアスは、自身が外宇宙からの未知のエイリアンによる侵略を予知しており、アウトバウンド・フライトがそのエイリアンの手中に落ちる可能性を避けねばならないのだ、と語った。そしてチス・アセンダンシーが実際にそのエイリアンと既に遭遇していることを知っていたスローンは、チスの安全のためにもアウトバウンド・フライトに何らかの対処を行うことを約束した。
この時、スローンはさりげなくカーダスに通商連合のスパイ疑惑を掛けていた。それを知ったカーダスは恐怖に駆られてチスのシャトルを奪い、スローンが突き止めたヴァガーリの集結地へと亡命を試みる。しかし、それはスローンの、アウトバウンド・フライトに関わる極めて巧妙な謀略が発動した、まさにその瞬間だった。
スローンはアウトバウンド・フライトを航路上で待ちぶせ、重力プロジェクターによってリアルスペースに引き出した。だがスボースはスローンの勧告を拒否する。フォース・メルドによって精神を共有したジェダイたちが6隻のドレッドノートの火器を操るのなら、恐るべき敵など銀河のどこにもない。だが、そこにハイパースペースから第三者が現れた。それは、カーダスを捕らえ、シャトルの情報を元にクルスタイ基地を攻撃せんとしたヴァガーリの艦隊だった。
彼らは超光速航行のさなか、スローンの重力プロジェクターによってハイパースペースから無理やり引き出されたのだ。全てはスローンの手の内だった。アウトバウンド・フライトの航路がヴァガーリの集結地からクルスタイまでを結ぶ線と交差するその地点で、スローンはアウトバウンド・フライトと対峙していたのである。そしてカーダスからアウトバウンド・フライトの情報を得たヴァガーリは、その兵器を奪おうとアウトバウンド・フライトを脅迫する。
だが、これは大きな誤りだった。メルドで統制されたジェダイの精神攻撃が、ヴァガーリ艦隊の兵員を致命的な混乱に陥れた。さらにはカーダスの乗ってきたシャトルに秘密裏に積み込まれていた通商連合のバトル・ドロイドがヴァガーリの首脳を殺害し、この略奪種族はごく僅かな残党を除いて殲滅された。そしてスローンはアウトバウンド・フライトを引き返させるため切り札となる通商連合のドロイド・スターファイターを投入、アウトバウンド・フライトの火器に直接突入させ、無力化してしまった。
しかし、スローンはジョラス・スボースというこの我の強いジェダイ・マスターを過小評価していた。同胞の死の衝撃を受けたスボースは怒りに堕ち、画面越しにスローンの首を締め上げる。だが為す術のない事態に、ドリアナが我武者羅に押したスイッチがスローンを救った。ヴァガーリに使うつもりで強引に放射能兵器を搭載した残りのドロイド・スターファイターがアウトバウンド・フライトに突入し、5万人の乗組員ごとスボースを鏖殺したからだ。無理とわかっていても今回だけは完全を期したかった計画が、ヴァガーリの残党を取り逃がし無数の人々を殺す結果に終わったことは、彼にとって深い悲しみだった。
それでもなおアウトバウンド・フライトは形を留めていたが、スローンを糾弾しにやってきたアリストクラ・チャフォーンビントラノらの見る前でハイパースペースに姿を消した。共和国の技術と情報が詰まったアウトバウンド・フライトを、何者の手にも渡さないために。その再発見には50年近い時を待つことになる。そしてスローンは、アウトバウンド・フライトの放棄に赴いた弟ミスラスサフィスを喪った。
アウトバウンド・フライトとの戦いの後もスローンはチス拡張防衛艦隊の司令官として任務を続けたが、その独断での活動は次第にチス上層部の忌避を買うようになっていった。そしてついに、スローンは度重なる独断専行と先制攻撃の罪でチス・アセンダンシーから追放され、未開の密林惑星に送られたのだった。
しばらく後、未知領域に一隻のスター・デストロイヤーが侵入した。ヴォス・パーク艦長の指揮するそのスター・デストロイヤー<ストライクファスト>は、密輸業者を追って偶然スローンが追放された惑星を訪れる。スローンは彼ら帝国軍が送り込んだ地上部隊を翻弄し、その撤退に乗じて<ストライクファスト>へと忍び込んだ。
用心深い調査のすえ<ストライクファスト>の格納庫で侵入者スローンを捕えたバークは、この青い肌をした未知のエイリアンがたった一人で帝国軍を翻弄したことに感嘆せざるを得なかった。スローンの目的はあくまでチス・アセンダンシーに帰還し未知の脅威との戦いに備えることだったが、その機知を高く評価したバークは彼に帝国軍への入隊を勧め、スローンも受諾した。それはまさしく、後の銀河史に絶大な影響をもたらす出会いだった。
皇帝パルパティーンはスローンを歓迎した。パルパティーンはかつてアウトバウンド・フライトの事件の際にスローンとホロごしに会話しており、通商連合の機動部隊やアウトバウンド・フライトを少数の部隊で壊滅させてのけた手腕を知っていたのだ。そして両者には、銀河外からの未知の侵略者に対抗するという共通の最終目標があった。パルパティーンの後ろ盾を得て、彼は非人間種族への差別意識の強い帝国軍の中でさえ栄達を重ねることとなる。
人間至上主義の帝国軍の中で疎まれつつも、スローンは能力を発揮し順調に階梯を駆け上がっていった。カリダの帝国軍アカデミーでの教官職の後、彼は皇帝パルパティーンの指示により故郷である未知領域の探査に着手し、外銀河からやってくるであろう未知の脅威を迎え撃つため、ニラーンを中心に諸星系を一つに再編する。そこは広大で、かつ未開発の領域だった。ほとんど手を付けられていないこの膨大な資源を活用し得れば、強大な星間帝国をもう一つ作り上げることができるほどに。
いっぽう、スローンはかつて自分を追放したチスに接触する。銀河帝国という強大な後ろ盾を持つ彼はチス・アセンダンシーの体制を動揺させ、彼同様に情勢への危機感を抱いているチスがスローンのもとに集まった。そしてスローンがチスに居た頃に比し、格段に外的の脅威が高まったことに気づきはじめたチスのルーリング・ファミリーもスローンの未来予測に賛同し、秘密裏に協力し始めた。
彼は銀河帝国が未知領域を統治する上での最高権力者であったが、彼の領域は銀河帝国本体からかなりの独立性を保っていた。その顕著な点はスローンの帝国に非人間種族差別が一切存在しなかったということで、あまつさえ後には非人間種族の志願兵によるストームトルーパー部隊が成立するほどだった。かの"ヴェイダーズ・フィスト"第501大隊も、彼の帝国において非人間種族と人間の混合部隊として再結成されたのである。
純白の軍服と金色の肩章を着用する大提督は、帝国軍のみならず銀河帝国そのものにおけるほとんど最高の地位であり、あらゆる分野のスペシャリストだった。皇帝に直接任命される彼らは同時期に12人しか存在せず、その内の一人であるデミトリアス・ザーリンの叛逆によって欠けた穴は、ザーリンを討ったスローンによって埋められた。
彼は秘密裏に昇進しており、反乱軍は彼の存在に気付かなかった。スローン自身もふたたび探査任務を命じられ未知領域へ赴いたため、パルパティーンの死後発生したセイト・ペスタージュやイセイン・アイサードらによる血みどろの権力争いとは全く無関係でいた。
その間、彼はエンドアの戦い直後にバクラを侵略しようとした銀河外縁部のトカゲ型種族シ=ルウクの母星ルウィックを攻撃、壊滅させてシ=ルウクの憂いを取り除き、ニラーンを中心に未知領域で発見した広大な領域をまとめあげて一帝国を作り上げた。その帝国は、天を掴もうとするかのような掌の形をした彼の要塞ハンド・オブ・スローン(スローンの手)にちなみ、ハンド帝国と呼ばれた。
皇帝の死から5年後、未知領域をひととおり平定したスローンは銀河へと還ってきた。彼はこの頃もっとも効率的に運用されていたスター・デストロイヤー<キメラ>と、かつて共に指揮したことのあるその艦長ギラッド・ペレオンに目をつけ、<キメラ>を旗艦として帝国軍を再結集し始めた。
しかし、その存在が新共和国に知られるまでには、なおしばしの期間を要した。イセイン・アイサードやズンジ大将軍を退けた新共和国がようやく安定と拡大を謳歌し始めた影で、スローンは壮大な構想と緻密な計略をもって暗躍し、かつてダース・ヴェイダーが“救った”惑星ホノーグル(ホノガー)の原住種族ノーグリの隠密能力と、いまや新共和国の首都となったコルサント(コルスカント)の政府機関内部に張り巡らされた皇帝のスパイ網とを手に入れる。
反攻に先立ち、スローンは辺境の惑星ウェイランドを訪れた。そこで彼は白髪の老人に行く手を阻まれる。この老人こそが、皇帝パルパティーンがかつて秘密裏に創り出したジョラス・スボースのクローンにして狂ったダーク・ジェダイ、ジョルース・シボースだった。40年近い年月を越えてかつての敵の複製に巡り会ったスローンだったが、彼はその巧みな弁舌をもってジョルースを味方につける。そして彼は、タンティス山の地下にある皇帝の秘密倉庫へと足を踏み入れる。
倉庫の中にあったのはスパーティ・シリンダー、すなわちクローン培養設備だった。スローンはフォースを遮る生物イサラミリを活用してクローンの急速生産を可能にし、残存帝国軍は精強なクローン兵士を実質無限に手に入れたのだった。とはいえ、兵士が居ても艦艇が無ければ新共和国に対して優位には立てない。なればこそ、強力な艦艇を速やかに入手する必要があった。そこでスローンは鉱業惑星ニクロンを急襲し、モール・マイナーと呼ばれるドリル付きの小艇を手に入れる。このモグラ艇に突入部隊を乗せ、新共和国の造船所惑星スルイス・ヴァンで修理中の大型艦艇を奪い去るのだ。
いっぽうで、スローンはジョルース・スボースの利用にも心を砕いた。彼を満足させるため、ノーグリのコマンドを派遣してルーク・スカイウォーカーとレイア・オーガナ・ソロの双子を誘拐する手を打ち、対価として自らの艦隊の兵員の精神をフォースで調整させることで極めて効率的かつ効果的に新共和国への攻撃を重ねた。こうして、新共和国も次第に新たな脅威の存在に気づきはじめた。
本格的に新共和国への反撃を開始したスローンは、さらなる兵力強化のため「カタナ艦隊」に目をつける。旧共和国が建設したカタナ艦隊は200隻のドレッドノート級クルーザーからなり、高度に自動化・集中制御された強力な大艦隊だったが、感染病の蔓延によって正気を失った旗艦<カタナ>の航法士官によって艦隊まるごと行方不明になっていたのだ。彼はその場所を突き止め、新共和国に先んじて178隻ものドレッドノート・クルーザーを手に入れることに成功する。それは新共和国にとって恐るべき脅威だった。
スローンの率いる帝国は、エンドアの戦いの敗北以来初めて往時の勢威を取り戻した。士気は高く、統制されていた。新共和国軍を率いるアクバー提督は、反撃のために帝国の造船所惑星ビルブリンギを攻撃することを決意する。当然というべきか、スローンはその意図を読んでいた。
しかし、銀河史上の天才指揮官たるスローンといえど万能ではなく、彼すら気づいていないファクターがその計画を狂わせていく。その一つは、政府ではなく個人の集合体である密輸業者同盟があえて帝国との敵対を選んだこと。そして最大の狂いは、レイア・オーガナ・ソロによってホノーグルの「救済」に隠された欺瞞がノーグリに明かされてしまっていたことだった。
ビルブリンギの戦いの序盤、スローンは彼の十八番、重力井戸発生装置を用い思わぬところで敵艦隊をリアルスペースに引き出す戦術によって新共和国軍を罠に陥れた。しかし、密輸業者同盟が後背の造船所を襲撃し被害を与えると、スローンは造船所を護るために艦隊に後退命令を出さざるを得なくなった。だが、これは彼にとって予期せぬ失敗でこそあれ、回復し得ぬ失敗では無かった。ビルブリンギの戦いは別に最終決戦というわけではないのだ。
ところで、彼が利用していたジョルース・スボースはビルブリンギには居なかった。ルーク・スカイウォーカーを捕らえるため、ウェイランドのタンティス山に戻っていたのだ。一方ルークはスローンのスパーティ・シリンダーの位置を突き止め、それを破壊すべくウェイランドへ赴きジョルース・スボースと対面する。狂気を悪化させたジョルース・スボースはルークを従わせようとしたが、暴走の果てについに破滅した。スパーティ・シリンダーも破壊され、新たにクローンを量産することは出来なくなった。
この知らせは、ビルブリンギの戦いのさなかに<キメラ>へと届いた。そしてスローンがそれを聞いた瞬間、彼の計画のもう一つの狂いが姿を見せる。スローンのボディガードを務めていたノーグリのルクが裏切り、鮮やかな手並みでスローンの胸を一刺ししたのだ。最期にルクの腕前への賞賛の言を残して、新共和国にとっての恐るべき敵、皇帝によって任命された最後の大提督は死んだ。
スローンの死から10年が過ぎた。
その間、皇帝が復活して新共和国を滅亡の縁に追い込みながらあっさりと自滅し、残された帝国の統制と秩序を保とうとするペレオンやダーラの必死の努力と僅かな勝利もついには虚しく、残された帝国は首都惑星バスティオンを中心とする1000の居住惑星を持つ8つのセクターにまで縮小していた。残存帝国軍の最高司令官となっていたペレオンは、もはや帝国が往時の覇権を取り戻す可能性はなく、それどころか帝国は滅亡の危機にあると認めた。
ペレオンが、帝国の主権者であるモフ評議会に対しついに新共和国との和平協定、すなわち実質的な降伏を提案した時、多くのモフが反発した。かつての帝国の繁栄を忘れられず、前線戦闘を指揮していたわけでもない頑固なモフたちにとって、「反乱軍」に降伏するなど考えられないことだったのである。しかし、そのモフ評議会も、ペレオンに現実を指摘されると渋々ながら和平交渉を考えざるを得なかった。
もっとも強固な反対者だったのはバスティオンのモフ、ヴィリム・ディズラだった。彼はかつてルクを射殺したグロディン・ティアス少佐と共謀し、帝国の主導権をペレオンから奪い、かつ新共和国に勝利し銀河を取り戻す陰謀に手を染める。その計画の根幹は、ディズラの手元にいるフリムという天才的な詐欺師にあった。ディズラは彼の肌を青く染め、眼を赤く輝かせ、白い軍服を着せて徹底的な訓練を施していた。
そして、ティアスの前に現れたフリムの姿は、外見から話しぶりまでまさにスローン大提督そのものだったのである。そう、彼らはこの帝国最強の大提督を「復活」させようとしていたのだ。スローン大提督の頭脳はその戦歴に詳しいティアスが陰ながら代行し、政治的にはディズラが手を貸した。そしてペレオンが新共和国との和平交渉のためバスティオンを離れた隙に、一味は行動を開始したのである。
フリムの演技は完璧だった。彼は伝説的なカリスマ指導者「スローン大提督」として必要なありとあらゆる声色と演技を巧みに操り、かつてスローンの麾下にあった<リレントレス>のドージャ艦長すら一瞬で騙してのけた。戦略面はティアスが担い、新共和国の惑星はスローン復活の噂とスローンを彷彿とさせる巧みな戦術の前に次々と降伏していった。そしてディズラは、その政治力によって企みをペレオンから隠し、スローンの遺伝情報をフリムのものに書き換え、新共和国への逆襲を果たすために様々な手を打った。
その新共和国は折から発生していた帝国時代のカーマシにおける虐殺事件に関する対立で内部分裂を起こしかけており、帝国の攻勢に対応できなかった。さらにフリムに対面したランド・カルリジアンらが「復活したスローン」に出会ったと主張し始めると混乱はいっそう加速し、新共和国を離脱して帝国に雪崩れ込む星系も続出する。
その頃、ペレオンは和平交渉のため訪れた惑星ペジティンで、スローンが復活したという報道を知って困惑していた。彼はモフ・ディズラが何を企んでいるかは知らなかったが、何かを企んでいるのはわかっていた。彼は辛うじて届いたメッセージを見て駆けつけたレイア・オーガナ・ソロと対面し、ともに戦争の終結を望んでいることを確認した。
その新共和国では、追い詰められつつある状況を打開するため、帝国領の重要惑星でありカーマシ虐殺事件についての情報が眠るデータバンクが存在するヤガ・マイナーへの奇襲攻撃を発動させた。しかし、それはティアスに読まれており、ガーム・ベル・イブリス将軍が指揮する新共和国艦隊は罠に誘い込まれることとなる。
密輸業者ブースター・テリック個人が所有するインペリアル・スター・デストロイヤー、<エラント・ヴェンチャー>を使った偽装作戦も空しく、ベル・イブリスの旗艦はヤガ・マイナーからの強力なトラクター・ビームに囚われた。そしてフリムとティアスが巧みな戦術で<ヴェンチャー>の必死の抵抗を抑えこんでいるその時、フリムらが指揮を執る<リレントレス>の艦橋にギラッド・ペレオンが現れた。
首都惑星バスティオンのディズラの執務室から得たデータ・カードと様々な伝手からの情報によって、ペレオンは「スローンの復活」に隠された企みの全てを知ったのだった。そして彼はもう一つ、興味深い真実を暴いてみせる。グロディン・ティアスなる帝国軍将校は、10年前にジェナリスで戦死しているという公式の記録を。つまり、ここにいる「ティアス少佐」はスローンが生前作った、スローンの才能を持つよう作られたクローンにすぎなかったのである。
真実を暴かれ激昂したティアスのクローンはペレオンに襲いかかるが射殺され、モフ・ディズラも反逆容疑で逮捕された。そしてフリムは「スローン大提督」の最後の仕事として全艦隊に停戦を命じ、ペレオンに降伏した。ただの男に戻ったフリムはペレオンにこう告げる。「こういっちゃなんだが、提督、あんたがここに来てくれて、心からほっとしたよ。この芝居はおれにとっちゃ、ひどい悪夢だったんだ」と。
このすこし後、新共和国と帝国軍最高司令官ギラッド・ペレオン提督の間にペレオン・ギャヴリソム協定が結ばれ、銀河に平和が取り戻されることになる。
銀河を震撼させた「スローンの復活」は、結局のところ、よく考えられた陰謀に過ぎなかった。
しかし、スローンは生前、腹心パーク提督にこう言い残していた。「もし私が死んだと聞いても、10年後に戻ってくるのを待て」と。パークはそれを信じ、ニラーンで広大無辺なハンド帝国を守り続けた。
スローンが帰還したという噂がニラーンに伝わると、パークは残存帝国軍への接触を検討した。彼は仲介のためにマラ・ジェイドを味方につけようとし、彼女をニラーンまでおびき寄せたが、タロン・カードの依頼を受けたルーク・スカイウォーカーがその後を追っていた。バーク提督はマラと対面したが、彼女は協力を拒み、ルークの助けを得てハンド・オブ・スローンを脱出した。その後、二人はパークも知らないハンド・オブ・スローンの地下空間へと侵入し、そこでスローンの恐るべき計画の根幹を見ることになる。
二人が見たのはクローンの培養槽だった。そしてその中で培養液に浮かんでいたのは、完全に成長したスローンの身体だったのである。スローンはウェイランドで得たスパーティ・シリンダーの一基をニラーンに運ばせ、自らの死に備えてクローンを作っていた。彼は自らの遺伝子だけでなくそのあらゆる知識と記憶をクローンに与え、自分が最後に訪れて10年の後にクローンが「甦る」ように設定していたのである。むろん同じ遺伝子と記憶を持つからといってオリジナルと同じ行動を取るとは限らないが、もしクローンが復活したスローンとなれば、新共和国に重大な危機をもたらすかもしれない。だが、二人はクローンを殺す決心ができずにいた。培養液に浮かぶクローンが絶対に新共和国の敵になるとは言い切れなかったし、なによりその身体は完全に無防備だったからである。
だが、悩んでいる余裕はなかった。クローンを守る警備ドロイドが起動し、光弾が二人を襲った。ライトセーバーの光刃を通さないコートシス鉱の体を持つ特別製の警備ドロイドに二人は苦戦し、マラは地下空間の壁となる岩盤を破壊するという奇策に出る。要塞は湖の傍に建てられており、壁は湖水によって侵食され弱くなっていたのだ。そしてそれは、スローンといえど予想できなかった問題を発生させることになる。水は二人が溺れそうになるほどの勢いで地下空間へ流れ込み……そしておそらく、地下室にエネルギーを供給していた小型核融合炉の爆発に巻き込まれて、スローンのクローンは死んだ。
スローンは死んだ。そしてそのクローンも。だが、彼が、自らの死すら想定してクローンを作っておいたほどのスローンが、はたしてクローンの死を想定していなかったなどということがありうるだろうか。
クローンの死を見届けたルークとマラの二人は、これでスローンの危険は去ったと判断していた。しかし、数年を待たずしてそれに疑問を抱かせるような事件が起きる。
帝国との和平から数年後、アウトバウンド・フライトの残骸が見つかったという知らせがチスから齎され、ルークとマラ・ジェイド・”スカイウォーカー”がその確認のためチスの下へと赴くこととなった。チスの重要な軍事拠点でもあるその発見地リダウトへの旅には、かつてヴァガーリの奴隷にされていた種族ジェルーンの生き残りが「アウトバウンド・フライトへの感謝の意を示したい」と随行していた。
だが、アウトバウンド・フライトの内部に足を踏み入れた途端、「ジェルーン」は豹変した。彼らは実はヴァガーリの生き残りであり、アウトバウンド・フライトのドレッドノートと植民地警備用に搭載された大量のバトル・ドロイドを奪うためにジェルーンを騙っていたのである。彼らはドレッドノートの一隻を切り離して飛び立つと、複雑に入り組んだリダウトの入り口を目指してハイパースペースに突入した。
しかし、これ自体がチャフ家のアリストクラ、チャフォーンビントラノによる陰謀だった。アウトバウンド・フライトへの旅自体が、ヴァガーリを誘い出しチスを攻撃させるためのものだったのだ。チスは先制攻撃を固く禁じているが、ヴァガーリを放置すれば必ずや将来の禍根となる。だからこそ、チャフォーンビントラノは自らヴァガーリに「攻撃され」なければならなかった。そして無事、チス・アセンダンシーはヴァガーリとの戦争状態に突入したのである。
この時、マラはある疑惑を抱いた。いかなヴァガーリが脅威といえ、わざわざチスを「攻撃させる」のは教条主義的なチスらしくない。そしてヴァガーリを誘き出すためアウトバウンド・フライトという無視しがたい餌をぶら下げる発想。ハンド帝国から護衛に派遣されたストームトルーパーの精鋭という不自然な存在。究極の切り札として銀河最高のジェダイを二人も迎える手の込みよう。そんな壮大で複雑で陰険な企みを得意としていた男を、彼女はひとりだけ知っていた。死んだはずの、あの赤い目の大提督を。
スローンが本当に生きているのかどうか、それは結局わからないままだ。だが、外宇宙の未知の脅威との繋がりも噂される厄介なヴァガーリを相手に主導権を握れたことで、チス・アセンダンシーは結果として数年後に侵略者ユージャン・ヴォングの侵攻を迎え撃つ準備ができた。
スローンという男の一生を後から考えてみれば、若き日のヴァガーリ討伐も、帝国軍での栄達も、未知領域の広大な開拓地の確保も、残存帝国軍をまとめあげ反乱軍への究極の勝利を目指したのも、そして自身の死に備えてクローンを残したのも、すべては銀河の外からやってくる「血も凍るような脅威」ユージャン・ヴォングの侵略に備えるためだったのだろう。そして、多大の犠牲を出しながらもついに銀河はユージャン・ヴォングに打ち勝った。
あるいは死したスローンもまた、ユージャン・ヴォング戦争の勝者だったのかもしれない。
「芸術を学びたまえ、艦長。種族の芸術を理解すれば、その種族を理解することができるのだ」というスローンの言は、彼の天才的戦術指揮能力の根幹を成していると言えるかもしれない。この言の際の戦闘では、帝国軍の監視艇に対しての僅かな前哨戦闘だけで敵の指揮官の種族を見抜き、その種族の特性上まったく対応できない戦術によって数で優勢な敵艦隊を撃破してのけている。彼は異種族の芸術を鑑賞し、理解し、その種族がいかなる戦い方をするか、選択を迫られた時にどの道を選ぶか、いとも容易く洞察することができたのである。そしてそこから生み出される彼の戦術は、むしろそれこそが芸術的ですらあった。
スローンのこの才能は、すでにその青年期、チス拡張防衛艦隊での指揮官時代に顕れている。拿捕したヴァガーリの宝物船に積まれていた略奪美術品をひとめ見た彼は――その美術品を制作した種族をまったく知らなかったにも関わらず――その種族がどのような身体をしていたか、どのような生活をしていたか、どのようなものを恐れていたか、ピタリと言い当てて見せたのだった。
このように美術品を鑑賞するのを好んでいたスローンは、自身の旗艦<キメラ>に作らせた瞑想室でも、様々な、ほとんどは人間以外の種族によって作られた美術品の精巧なホログラフを眺めていることが多かった。彼は、実直な部下であるペレオンが芸術を解さないことを残念がっていたようである。そしてスローンの死後、彼の手元にあったごく僅かな真物の美術品がペレオンの手に残されたのだった。
部下には厳しく、時に即時処刑を執行して規律を正すといったことも行ったが、その評価は極めて公正だった。また、彼は他の帝国軍人と違い、なすべきことをしなかった部下にこそ厳しいものの、失敗したというだけで一律に厳罰を与えたりはしなかった。特に「想定外の事態に果敢に対処を試みたものの最終的に失敗した」というようなタイプの兵士には、失敗を咎めないどころかむしろその臨機応変さを讃え、改めてその事態への対処法を構想しマニュアル化するよう命じるといったこともあった。
また、後に「スローンの復活」の騒動があった際、もしスローンが本当に復活していたとしたら指示を待たずに勝手に「スローン」の元に赴くのは危険ではないか、と部下に危惧されたギラッド・ペレオンは「スローンは部下が正しいと信じてやったことを罰したことは一度もなかった」とはっきり断言しており、このことからも彼の公正性、帝国軍人としての特異性が見て取れる。
スローンが帝国軍を率いて歴史の表舞台で活躍したのはその死の直前ごく僅かな間だけだったが、彼は残存帝国軍に大きな痕跡を残していった。
12ABYにナタシ・ダーラが再び起ったとき、部下としたペレオンに、自分はとてもスローンのような偉大なリーダーにはなれない、とはっきり言明したように、スローン死後の帝国軍の指導者にとって「スローン大提督」の存在は極めて大きいものだった。トルーテン・テラドクのように自身の勢力拡大にしか興味のない強欲な大将軍でさえ、ペレオンを叱責するのにスローンの名を挙げたほどである。
そしてそのペレオンこそが、スローンによって最大の影響を受けた人物といえるだろう。彼はまず第一に、自身の指揮する<キメラ>がスローンの旗艦として選ばれたことで名を挙げた。第二に、スローンの側で作戦を見守る立場にあったことで戦術戦略両面に渡る薫陶を受けた。第三に、偉大なるスローンの副官であったことが、残存帝国軍内部の彼に対する多大な尊敬を獲得させた。これが後にダーラの再起にあたっていがみ合う大将軍たちを一箇所に集めるだけの影響力となり、その後ダーラから残存帝国軍を託されたペレオンがその領域を維持するだけの能力を与え、帝国軍最高司令官として長年に渡って将兵の支持と畏敬を受けるだけの人望の基礎となったのである。
大提督の階級を与えられた、銀河帝国軍でもごく一握りの存在のひとりであるスローン大提督は、帝国軍では珍しい非人間種族の高級士官であり、ヤヴィンの戦い以前の反乱同盟軍の恐るべき敵である。
冷静沈着にして天才的な洞察力、そして巧妙きわまる戦略によって彼は反乱軍を追いつめたが、ヤヴィンの戦いの1年前、戦いのさなかにいずこかへと姿を消した。その消息は杳として知れなかったにも関わらず、エンドアの戦いの何年も後になっても、銀河に残る帝国軍の残党だけでなく帝国軍を敵とする立場の者たちにも大きな影響を与えつづけたのだった。
スピンオフ(EU/拡張世界)諸作品の「レジェンズ」化後、スローンは「カノン」作品のアニメ『スター・ウォーズ 反乱者たち』で衝撃的な再登場を果たした。これと合わせ、生みの親ティモシイ・ザーン自身により『反乱者たち』までのスローンを描いた小説シリーズが多数にわたり展開され、レジェンズ時代以上の規模でチスとスローンを中心とした“スローン=バース”あるいは“ザーン=バース”とでもいうべきザーン作品世界が生み出されている。
後にスローン大提督と呼ばれるチスの人物は、ヤヴィンの戦いの59年前にチス・アセンダンシーの惑星レンター(Rentor)で生まれた。
彼は若い頃からチス・アセンダンシーの軍隊に所属し、拡張防衛艦隊の士官として、チス領域周囲の銀河辺境にはびこる強大な海賊や種族帝国との戦いで功績を立てた。やがてクローン大戦のさなかには、銀河共和国方面の調査に派遣され、ジェダイ・ナイトのアナキン・スカイウォーカーとも遭遇している。
やがて銀河共和国が銀河帝国へと移り変わると、スローンは未知領域の脅威に対抗することを目的に、ヴォス・パークら帝国軍に接触。皇帝パルパティーンに謁見した彼は、帝国アカデミーでの訓練を経て帝国軍で頭角を現す。インペリアル・スター・デストロイヤー<キメラ>の艦長を務め、やがては<キメラ>を含む任務部隊の指揮官となった。
帝国軍における彼は、帝国だけでなくチスにも忠誠心を抱きつづけていた。彼は帝国軍人としてその本分をつくすいっぽうで、アセンダンシーを守るためさまざまな術策をほどこしつづける。皇帝はそれを知っていながらもスローンの能力と忠誠を高く評価し、大提督へと昇進させたのである。
大提督として、スローンはパレオン艦長のスター・デストロイヤー<ハービンガー>を含む第7艦隊を指揮することとなった。彼はロザルにおいて反乱勢力への対処にあたりつつ、新型戦闘機TIEディフェンダーの計画やサビット大提督の反逆への対処にも関わることとなる。
1BBY、スローンは帝国軍占領下の惑星ロザルへの反乱同盟軍の攻撃にも見事に対処し、ついにロザルの反乱勢力を殲滅する寸前に至った。だが彼が陥れたはずのジェダイ、エズラ・ブリッジャーの作戦によって宇宙クリーチャー、パーギルが帝国軍艦隊を襲撃したことで、スローンはエズラと<キメラ>ごと、パーギルによって宇宙の深淵へと連れ去られたのだった。
こうしてスローンは、1年後のヤヴィンの戦いにはじまる銀河の大変動に関わることなく歴史から姿を消し、帝国は4ABYのエンドアの戦いをさかいに崩壊する。
だが帝国が崩壊した後でさえ、消えたはずのスローンの存在は敵味方の双方に大きな影を落とす。エズラの仲間だったもとジェダイのアソーカ・タノのように、スローンを危険視し、その行方を捜索しつづけた者がいた。そのいっぽうで、のちに帝国軍残党の指導者に列を並べることとなったもと部下パレオン艦長も、スローン大提督の帰還に備えることを至上命題としていたのである。
また、彼の関与したTIEディフェンダー(TIE/D)は一時生産が頓挫しながらも最新鋭かつ強力な宇宙戦闘機として実用化され、やがてファースト・オーダーの使用するSF TIEファイター(TIE/sf)やTIEサイレンサー(TIE/vn)へと発展していくこととなる。TIEディフェンダーは、レジェンズ作品群ではデミトリアス・ザーリン大提督によって推進されていた戦闘機である。
スローンが初登場したスローン三部作は、スター・ウォーズサーガのスピンオフ作品としては初期のもののひとつである。ティモシイ・ザーンの手になるこの作品において、赤い目と青い肌のエイリアン、スローン大提督は映画作品の帝国艦隊のような圧倒的戦力で反乱軍を押し潰す悪ではなく、天才的な戦略と戦術によって新共和国を脅かす強敵として描かれ、読者から大きな人気を得た。
同じくザーンの手によって生み出された多くの魅力的なキャラクター、つまり後にルークの妻となるマラ・ジェイドや帝国軍の老将ギラッド・ペレオン、銀河を股にかける密輸業者タロン・カードなどがその後ザーン以外によって書かれた多くのスピンオフでも活躍したのに対し、スローンの活躍はそのほとんどがザーンの筆によって描かれている。
その中でもハンド・オブ・スローン二部作では、彼がただ天才的な戦略家というだけでない、銀河そのものに関するより壮大な展望を持った人物だったことが明らかになり、加えて『生存者の探索』と『外宇宙航行計画』の二部作でスボースとの因縁やアウトバウンド・フライトを撃ち落とすに至った経緯、随所で匂わされる「銀河外からの未知の侵略者」といった事柄が明らかになるにつれ、スローンというキャラクターの魅力はよりいっそう輝きを増していった。
その後もザーンはレジェンズ、カノンを問わずSWスピンオフ・シリーズの中でスローンを中心とした半ば独自の世界を組み上げており、未だ邦訳されていない多くの作品も含め、銀河の戦史上に比類なき稀代の天才スローンの「暗躍」は多くのファンを魅了し続けているのである。
意外なようだが、レジェンズでスローン自身がはっきりと登場するのは邦訳作品ではスローン三部作と『外宇宙航行計画』程度でしかない。スローン三部作についてはかつて竹書房文庫より刊行されていたが、2019年になって講談社文庫より新改訳(和気永富訳『帝国の後継者』は富永和子の新訳、富永和子訳の他二作は改訳)版が出版されている。
この他にもスローンの生みの親ザーンは『外宇宙航行計画』からスローン三部作までの間のスローンの活躍を多く描いているが、邦訳されているのは『忠誠』の付録として出版された短編小説「ミスト・エンカウンター」程度である。
カノン邦訳作品におけるスローンの登場は映像作品に限られ、主にアニメ『反乱者たち』において後半の主敵として活躍する(声優はラース・ミケルセンが担当)。さらにドラマ『アソーカ』では、ラース・ミケルセンの演によりついに実写作品への登場を遂げている。日本語吹替はいずれも山野井仁が担当。
上記したように、ザーンはカノン移行後、『反乱者たち』以前の帝国軍でのスローンの活躍を描いたカノン版スローン三部作、さらに若き日のスローンを描いたアセンダンシー三部作を著しているが、いずれも邦訳に至っていない。
掲示板
73 ななしのよっしん
2023/10/14(土) 00:38:26 ID: PjGqkQ6FOv
>>71
ビッテンフェルトにしても過去の経歴調べ上げられてらまずいかも知れない
アソーカだと元々相性の悪いジェダイ×3が相手で今一つ強敵度が足りないとか言われてるが今後に期待
74 ななしのよっしん
2023/10/17(火) 12:21:23 ID: Q1+fLUK5P4
>>73
ドラマアソーカでのスローンの姿は、区々たる戦闘の状況や成果にのめり込まない「戦略家」としての凄みを感じたな。
あの状況でのスローンの戦略的な課題は「あの“荷物”を全部持ち出して銀河に帰還(それもダソミアに到着する)」で、それはジェダイ3人に合流された中でも完璧に達成してのけたわけだし。
思い返せば、反乱者たちS3以降でも、スローン相手にスペクターズは、個々のエピソードでは出し抜けたことはあっても事態は好転させられなかったからなあ。
大きな檻に入れられて、その檻の中ではチョロチョロ動けていても、徐々にその檻は狭まり逃げ場が減っていくのがわかる。
個人的なスローン観って、こんな感じ。
ただ、スローンが本当に苦手としてるのはジェダイではなく、実はエズラなんじゃないかな。
「戦争」という鋼鉄の論理を掻き回す、草原の風のように自由な「混沌」としてのエズラは、スローンの天敵といって良いのかもしれない。
75 ななしのよっしん
2024/03/24(日) 20:09:40 ID: 9yT6zlYZXL
モーガンがゾンビ兵を率いて決死隊になってでも送り届けた荷物とスローンの目的はシーズン2で!
おう配信するんだよあくしろよ
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最終更新:2024/12/01(日) 11:00
最終更新:2024/12/01(日) 11:00
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