紅の豚とは、1992年に劇場公開された、スタジオジブリ制作の日本の長編アニメーション作品である。
「自分で自身に魔法をかけて」豚の姿になった元イタリア人・マルコが偽名「ポルコ・ロッソ」を使い、世界大恐慌に揺れるイタリアとアドリア海を舞台に「金と女と名声を賭けて」空賊や凄腕の傭兵と空中戦を繰り広げる格好良い話。
キャッチコピーは「カッコイイとは、こういうことさ。」 by糸井重里
本当にカッコイイから困る。
イタリア、アドリア海、「金と女と名声を賭けて」、空賊などのワードが出た通り、本作はそれまでのスタジオジブリの映画作品らしからぬ「大人向け」な内容である。
なぜ大人向けになったかというと、さる模型雑誌で宮崎駿が連載していた「飛行艇時代」というマンガにある。
この「飛行艇時代」、全編に汗臭さとエンジン油臭さとメカメカしさと飛行への憧れとヒゲがみなぎった、とても子供向けとは言い難い宮崎駿らしい怪作である。
これを題材にした短編映画が、航空機の機内上映用作品としての制作が試みられた。
しかし試作してみたらフィルムの尺が機内上映用にしては長すぎたため、思い切って映画化に踏み切った、という経緯がある。
機内上映と映画化というプロセスを経て、「紅の豚」は非常にスタジオジブリらしく収まった。
それでもイタリアの町並に入ってからの場面は宮崎駿の独壇場といえるような風景が映し出されており、特に飛行艇に積むフォルゴーレ・エンジンのテスト風景などは「飛行艇時代」っぷりをいかんなく発揮している。
この「飛行艇時代」は書籍「宮崎駿の雑想ノート」にも収録されている。興味があったら図書館で調べてみよう。
ポルコ・ロッソ(声:森山周一郎)
本作の主人公。本名はマルコ・パゴット。
かつてはイタリア空軍のエースパイロットであったが、軍を辞めた後、自分に魔法をかけて豚人間の姿となり、現在ではアドリア海で空賊を相手取る賞金稼ぎとして活動している。
クールかつニヒリスティックな無頼漢ながら殺し合いを嫌い、戦闘において相手の命を奪うような真似はしない。
得意な戦法は「捻り込み」で、マンマユート団長いわく「これでアイツはアドリア海のエースになった」との事。
愛機は真紅の“サボイアS.21試作戦闘飛行艇”(マッキ M.33がモデル)
ドナルド・カーチス(声:大塚明夫)
空賊連合がポルコ打倒のために雇った飛行挺乗り。アメリカのアリゾナ出身(いわく祖母がイタリア人のクォーター)。
将来はアメリカ大統領を目指す野心的な人物で、性格もキザな自信家だが、その腕はポルコも認めるほどの実力派。また、役者や脚本家としての才能も持ち合わせており、帰国後はハリウッドで成功したことが劇中で語られている。
かなり多情な所があり、ジーナはおろか自身より遥かに年下のフィオにすら結婚を申し込むほど(このロリコンめ!)。
愛機は“カーチス R3C-2”(をモデルにした架空の機体)
マダム・ジーナ(声:加藤登紀子)
アドリア海の孤島に浮かぶホテル・アドリアーナのマドンナ。ポルコとは幼馴染でもあった。
その美貌と歌声から「アドリア海の飛行艇乗りは全員ジーナに恋をする」とまで言われるほど飛行艇乗りにとってのアイドル的存在で、それゆえ同ホテルは空賊であれ賞金稼ぎであれ飛行挺乗りの憩いの場兼中立地帯となっている。
以前は三度も結婚していたが、どれも飛行機絡みの事故で夫を失っている未亡人で、そのため未だ飛行機で無茶を続けるポルコを心配している。
フィオ・ピッコロ(声:岡村明美)
ポルコ行きつけのミラノの飛行艇製造会社社長の孫娘。
まだ少女ながらもエンジニアとして非凡な才を持ち、カーチスとの戦いに敗れ大破したポルコの機体を再設計した。
修理後完了後は自身もポルコの機に乗ってアドリア海に赴き、ポルコとカーチスのリベンジマッチを見届ける。
勝ち気ながらも純粋かつ心優しい性格で、ポルコの過去を知って同情したり、ポルコの機体を壊そうとする空賊に対して毅然とした態度で飛行艇乗りとしての矜持を説いたりした。
ジブリ作品にしては珍しく時代や舞台の背景が明確で、1930年前後のアドリア海となっている。当時のヨーロッパは第一次世界大戦と第二次世界大戦の間(戦間期)にあたり、大戦後の平穏と戦争の傷跡による不穏が同居する時代だった。
ポルコの故郷であるイタリアは大戦で戦勝国となったものの、期待した程の領土拡大(併合に成功した南チロルに加えて、アドリア海沿岸のダルマティア地方を望んでいた)は果たせず、また多額の賠償金にも与れず、膨大な戦死者と戦費負担に苦しむ時代を迎えていた。「栄光無き勝利」への不満が高まる中、ベニート・ムッソリーニ率いるファシスト党が退役兵らの支持を受けて急速に力を持ち、ファシスト党による統制的な社会が築かれていった。
同時期、ドイツでは共産党との乱闘街頭民主主義を経て、ファシスト党の影響を受けたヒトラー率いるナチスが台頭。敗戦後の苦境に苦しむ国で、図らずも同じように反対者を容赦なく粛清する社会が出来上がっていた。そして更に東の大国ロシアでは大戦中に帝政が倒され、「ファシズムの双子」とも呼ばれる共産主義国家が形成されていたのである 。
一方、前大戦の中核となったフランスとイギリスは情勢の不安定化を感じつつも、凄惨な結果となった前大戦を繰返す事を恐れるあまりに具体的な行動に移れずにいた。
アドリア海と空の吸い込まれるような蒼さとは異なり、世相はかなりキナ臭く、暗かったのである。
「さくらんぼの実る頃」は、曲自体は失恋を歌ったシャンソンであるが、それとは異なる側面を持つ。
普仏戦争終盤、ナポレオン三世が捕虜になったことでフランスは戦争の継続が不可能になり、プロイセンと講和した。
こうして第二帝政は終焉を向かえ第三共和政が成立するのだが、その過程で新政府に不満を募らせたパリ市民の政府「パリ・コミューン」が作られ、新政府に対し蜂起した。
社会主義っぽいことは言っていたが、「食べ物無いのが嫌」「プロイセンに領土割譲するのがムカツク」といった程度の不満分子の集まりみたいなモンで大した力はなく、新しい共和政府に鎮圧されてしまう。パリ市民は新政府への恨み節として、さくらんぼの実る頃を歌ったという。この側面を見るとフランス版の「世情」のようなものとも言えるが、曲自体の成り立ちは上記のようなものなので、哀愁はあるが悲壮感はない。
だから抗議活動家が国家警察やジャンダルマリに逮捕される場面をスローモーションで流して、BGMをこの曲にしても、あまり合わないかもしれない。さくらんぼも腐ってないと思う、多分。
作中においては、ホテル・アドリアーノのバーで、オーナーであるマダム・ジーナが客相手に歌っている。そこだけ見れば単に客に聴かせているだけのように思える。だがヨーロッパを覆うような硝煙の香りが漂い始めた時代を考えれば、また上記のような別の側面を考えれば、「自由とパンが欲しい」「生活に困らない金も欲しい」「仕事も欲しい」「総じて言えば諸々の生活の安定だな」「卒業後の就職で困るんだよ」「東欧に労働需要がシフトして嫌だ」「アドリア海を渡ってくる難民を蹴散らせ」「アドリア海爆発しろ!」「プジョー・シトロエンのリストラ納得できない」「そもそもギリシャ支援が嫌だ」「欧州中央銀行の奴らは表に出ろ」「つーかギリシャって何だよヨーロッパなのか?」「ギリシャが繁栄してたのは神話の時代だろ」「その頃のギリシャって恐竜を飼ってたんだよね?」仏独「半島国家をヨーロッパに組み込むな」伊「(´・ω・`)」西「俺はセーフ?」仏「アウト」「グローバリゼーション死ね」「ウォール街の銭ゲバ死ね」「彼女できない」「リア充爆発しろ!」など、人々の渇望を観る者に伝えるエッセンスと言えるだろう。
掲示板
227 ななしのよっしん
2024/03/24(日) 02:45:44 ID: kd80wTVeX/
>>196
>>206
この二つを合わせて考えると、最初はフィオがポルコに抱いた感情は憧れとか恋心だから、その理想から離れてしまえば一気にマイナスの感情を抱いてしまう。それが5年後
けどそこから先も関わることで今度は愛情を抱く様になるから、相手に対して理想とかを抜きにした目線で見ることが出来る。これが50年後
ってことなんかな?
228 ななしのよっしん
2024/08/21(水) 23:57:04 ID: bpXl+lvRhp
理想云々というよりかは、
「いつまでも少年の心を忘れないで空を飛び回っているような男」
に対して女性が向ける心情の変化を年代ごとに描き分けてるって感じだね。
少女のうちはそんな男に憧れを抱きがちなものだが(フィオ)
世慣れてくるとそういう男を軽蔑するようになり(フィオの姉)
それでもそんな男と付き合い続けて何十年と経つと諦観めいた包容を示すようになり(ジーナ)
最終的にどんな男だろうが子供と同じという境地に至る(バアちゃん)
・・・だいぶ駿の願望が入ってる気がするが。
そして駿の実体験にも根ざしてそうな気がするがw
229 ななしのよっしん
2024/12/05(木) 22:23:50 ID: XwsK/U3DUJ
俺にとってのある種の永遠のヒーローだ。未だにこの人を超える憧れには出会わない。好きなキャラはそれこそ沢山いるんだけど、自分の中の琴線にこれでもかと触れまくる。自分でも不思議だ。
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最終更新:2025/02/15(土) 23:00
最終更新:2025/02/15(土) 22:00
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