『魔王なあの娘と村人A』とは、ゆうきりんによる日本のライトノベルである。イラストは赤人が担当している。
概要
将来《テイル・ユニバース》と呼ばれる世界で活躍して成功することが約束された《個性者》の生徒たちと、彼らと比べて平凡な個性しか持たず平凡な人生を過ごすことが決められた《村人》の生徒たちが織りなすドタバタ学園ラブコメ。
電撃文庫(アスキーメディアワークス)より、2011年5月10日から全11巻(2016年11月10日完結)が刊行されている。
『電撃マオウ』2012年4月号より、コミカライズ版も連載されている。作画はtsucacoが担当している。
あらすじ
ここは一般生徒に混じって将来《テイル・ユニバース》での活躍が期待される「国の宝」たる《個性者》も通う高校。
しかし彼らのような《個性》を持った人間はごく少数。無個性な大半がなれるのは精々がヒント係の《村人》程度だ。
佐東二郎もそんな《村人》の一人だったが、ある日、小柄で大人しい美少女・竜ヶ峯桜子に目をつけられてしまう。
不意に「あー人類滅ぼしたいなー」と呟いたりと、どこか物騒な彼女はなんと、超レアな《魔王》の《個性者》だった。
そこに二郎の幼馴染みの美少女《勇者》・光ヶ丘翼が加わり、敵対する《個性》の桜子に並ならぬ対抗意識を燃やす。
《魔王》と《勇者》の起こす騒動に振り回されつつも、二郎はクラス委員として様々な《個性者》たちと関わっていく────
用語
- 《個性》(こせい)
この世界のごく一部の人間は、通常の人間とは違った特別な名称の《個性》を持って生まれてくる。
それは《勇者》や《魔王》に始まり、《魔法使い》《メデューサ》など、主にファンタジーに登場するキャラクターの名称が用いられる。ただし、同名の個性の中でもタイプの違いがある(例えば魔王なら力で侵略するタイプや、策謀を巡らせるタイプなどが居る)。また、個性にも上下関係があるようで、《勇者》や《魔王》は特に村人や他の個性者に対する影響が強い(無意識に勇者のノリに乗せられる、魔王の威圧で身が竦む等)。
- 《個性者》(こせいしゃ)
上記の《個性》を持つ人間を指す。男女問わず容姿端麗である事が多い。
外見は普通の人間と変わらないが、自らの持つ《個性》に従ったアタッチメント(勇者なら剣、死霊使いなら動物の死体を模したぬいぐるみ等)を装備 しており、これらは《個性者》にとって自分が自分であるための支えとなっている。また、彼らはその《個性》に従った行動を起こす欲求(《勇者》 なら人助けをする、≪魔王≫なら人類を滅ぼす計画を立てる、等)に駆られるため、その衝動のままに行動することを法律で許されている(一般人がそれを妨害することは禁じられている)。ただし行き過ぎた行動をした《個性者》は『黒服』と呼ばれる集団によって矯正施設へと連行され、そこで教育(内容は不明)を受ける事となる。
個人差はあれど、成長するにつれ《個性者》以外の人間を認識出来なくなっていき、話しかけても気付かないどころかそこに存在している事さえ気付かなくなる。それにより他の一般人に配慮することも無くなっていくため、一般人からは迷惑な存在と見られることが多い。
ただし、認識出来なくなった後はそれっきりという訳ではなく、自身にとって有益であると(無自覚に)判断した人間、自らの内に強く印象付けられた人間は認識が可能。そうでない人間でも努力によって徐々に再度認識出来るようにはなるようだ。これらの《個性者》は成人すると自動的に特別公務員として採用され、《テイル・ユニバース》と呼ばれる物語世界においてそれぞれの役柄を果たす仕事に就く。仕事の内容や国に対してどのように利益を生むのかは不明だが、仕事に就いている《個性者》は総じて裕福である。
- 《村人》(むらびと)
《個性》を持たない人間を指す。いわゆる一般人。
RPGに出てくる村人よろしく、会話の中で《個性者》にヒントを提供するという役割を持っている。
《テイル・ユニバース》で働くことも可能ではあるが、その他大勢のモブ役しか務めることが出来ず、その業務内容は過酷で待遇も悪いらしい。
- 《役所》(やくしょ)
正式名称は「文科省特別個性管理局」だが、作中では単に役所と呼ばれることが多い。「特別個性保護法」に則り個性者のサポートおよび教育・監視を行う公的機関。
やり過ぎた個性者や、個性の発露を妨害しようとした一般人を拘束・連行する「黒服」、個性者の医療サポートを行う「白服」などの部隊が在籍している。その権限は非常に強い。
- 《テイル・ユニバース》(Tale Universe)
詳細は不明であるが、人々が暮らす世界とは別に存在すると言われる複合物語世界。
この世界では《個性者》達は、その《個性》の名に応じた能力を扱えるようになるという。
登場人物
主要人物
- 佐東二郎(さとう じろう)
- 作品の主人公。
桜子がクラス委員長となる後押しをした事で彼女からクラス副委員長に指名され、彼女の突拍子な行動に振り回されつつも親交を深めていく。本人にそんなつもりは微塵も無いものの、桜子曰く《村人》の特性である「《個性者》に的確なヒントを提供する」能力が優れているらしく、彼の言葉から様々な策謀を思いついていく。
《個性者》に認識されやすい体質であるようで、桜子などを介して一旦認識された《個性者》には比較的あっさりと完全に認識されている。
翼と共に育ったこともあり《個性者》に対する差別感情は少ないが、桜子や光の露骨な愛情表現を何故か「そんなことはありえない」と頑なに認めようとしない。
- 竜ヶ峯桜子(りゅうがみね おうこ)
- 《魔王》の個性を有する少女。作品のメインヒロインその1。見た目は長い黒髪で小柄な和風美少女である。《個性者》としては珍しく個性を象徴する物を身に着けていないが、これは彼女の存在と思考自体が《魔王》という個性の支えとなっているためである(逆さドクロのような髪留めはあるゲームのボスのアイコンを模した、ただのアクセサリー)。
魔王だけあって人類の事が大嫌いであり、本人もしょっちゅう明言している。口癖は「人類絶滅しないかなー」。
クラス委員長に立候補するも、魔王という事で担任やクラスメイトから暗に拒絶されそうであった所を二郎に助けられた事で、彼を興味を持つ。クラス委員としての活動や人類絶滅作戦の共謀(二郎にそのつもりはない)をしているうちに二郎に惹かれ、呼び名も「副委員長」から「村人Aさん」へと変わった。本当は名前まで覚えており何度も言いそうになるものの、恥じらいから呼べずにいるが、ここぞという場面で本名を呼び、その度に二郎をドキリとさせている。
もっとも、本人が素直になれないのもあり、二郎には好意とまでは気付かれていない様子。
- 常日頃から人類を絶滅させるための智謀を張り巡らせているのだが、その内容というのが「良心価格でボリュームたっぷりの学食を用意しメタボリックシンドロームを引き起こす」「生徒の掃除当番を肩代わりすることで間接的に掃除をサボらせ、怠慢癖を付けてゆくゆくはニートにさせる」など、どれもこれもが超長期的だったり先行き不透明だったりどこかズレた代物である。傍から見ればただの親切であるので、必然的に人々からは感謝されることになるのだが、《魔王》にとって人間からの感謝は災いであり、蕁麻疹を引き起こして半ベソで逃げ去るのが日常となっている。
- 光ヶ丘翼(ひかりがおか つばさ)
- 《勇者》の個性を有する少女。作品のメインヒロインその2。「宝剣エンヴリオ」という模造刀を常に携帯している。ブロンドの髪に豊満なバストを持ち、それを惜しげもなく主張するため個性関係無しに注目を集めやすい。
- 二郎の幼馴染であり、幼少の頃はその《個性》を無差別に発揮し、他人の持ち物を漁る、家に無断で侵入するなどの行動を繰り返していたが、ある時期 を境にその《個性》は二郎に対してのみ発揮されるようになり、それ以外の他人に対して発揮する《個性》は親切を行うか《魔王》の策謀を砕くのみに留まって いる。
- 一般人を救う《勇者》の特性として、彼らを無視せずに積極的に関わろうとするので、他の《個性者》より一般人認識力は高いが、あまり興味や必要の無い人間に対しては名前すら憶えられなかったりいきなり認識出来なくなったりする。その一方で《勇者》を手助けするタイプの《個性者》たちの集団である親衛隊を常に率いては日々の組織的な慈善活動と《魔王》の計略喝破に精を出している。
- いいことをした相手の手の甲に、ウサギ模様の勇者スタンプを押している。以前のスタンプが消えないうちに10個集めれば「もっといいこと」があるらしいが、いつの間にか消えているため二郎を含め集められた人間は居ない。
- 《魔王》の策謀を妨害するのは《勇者》として当然の行為であるのだが、その方法が第三者から見れば迷惑であったりタイミングが悪かったりする上、《魔王》の策謀そのものが普通にありがたいものであることも多いため、《魔王》がらみの行動に関しては人々からまともに感謝されたことが無い。
- 幼い頃から二郎に対して好意を持っており、桜子よりは積極的にアプローチしているのだが、当の二郎からは《個性者》が一般人に対して遠慮が無い事の延長線だと思われている。
- 塚耶舞莉(つかや まいり)
- 1巻より登場。《死霊使い》(ネクロマンサー)の個性を有する少女。桜子と同じく小柄であり、銀色の短髪と制服のあちこちにぶら下がっている、デフォルメされた動物死体のぬいぐるみがチャームポイント。
基本は丁寧語だが「シ」と「デス」のみ片言のようなイントネーションが付く特徴的な喋り方をする。
《死霊使い》でありながら死体が怖くて触れない体質であり、その事を相談した桜子から二郎を紹介される。
二郎のアドバイスにより「死体を扱う店」があることに気付き、そこでアルバイトをしている。
《反転ネタバレ注意》
魚屋時代に泥棒黒猫が車に轢かれる場に立ち会っており、その時は物怖じせず死体を抱き上げていた。
現在はその猫の子供である3匹の黒猫を黒、闇、炭と名付け飼っている。3匹も彼女には懐いている様子。
二郎の事は多少気になってはいるものの、桜子を応援する立場を取っている。
- 矢刳馬心(やぐるま こころ)
- 2巻より登場。《ロボット》の個性を有する少女。誠(まこと)という弟が居る。
- ダンボールで作った一昔前のロボットのような格好をしており(中は全裸)、これまた一昔前のロボットのような抑揚の無い喋り方をする。が、たまに普通の口調が漏れる。
- 弟から昔聞かされたロボットのイメージ(鋼鉄の身体で空を飛ぶ)を自らの《個性》として信じ込み、自らを鍛えるために街中で「殴ッテクダサイ」と触れ回っていたり、空を飛ぼうとして高所から飛び降りたりして入退院を繰り返しているため入学式から学校には来ていない。
《反転ネタバレ注意》
3巻にて二郎は彼女を学校に来させるため、彼女が持っている《個性》のイメージを古臭いと否定する事で一度破壊した。その結果一時的に錯乱状態に陥るものの、最新のロボットのイメージを新しく与える事で落ち着く。
その後は二郎の事を完全に認識し、新たな《個性》を与えてくれた人間として「マスター」と呼ぶようになる。
感情もやや過剰なほどに豊かになり、割と二郎への好意も隠そうとはしていない。
その装いもツインテールの結び目にアンテナのような飾りを付け、バックパックを背負い、スパッツにエアガンを仕込むなど最近の少女ロボイメージをごちゃ混ぜにしたような様相となっている。
-
その他《村人》の登場人物
- 斎藤始(さいとう はじめ)
- 二郎のクラスメイトであり気心の知れた友人1。
- 《個性者》や《テイル・ユニバース》に関しての知識が豊富で、クラスの《個性者》も全員把握している。
- その知識を生かし、大文化祭の出し物である劇の脚本を任される。
《反転ネタバレ注意》
彪と大文化祭にて共に打ち合わせをしている内に恋人関係に発展。
が、「女性の目を正面から見られない」という体質から、一時期少し関係が悪化する。
それを相談したところ正平からヒントを貰い、元の良好な関係に戻った模様。
- 木村正平(きむら しょうへい)
- 友人その2。作中では始、二郎も含めた3人でつるむ事が多い。
- かなりの大食漢であると同時に遊び人気質。中学の頃は桜子と同じクラスだった事もあり、その時も彼女はクラス委員長を務めていた。
《反転ネタバレ注意》
彪との関係が悪化した始から相談を受けた際、「相手の鼻の上を見るようにする」というヒントを与える。
後にこのヒントが二郎が鬼灯を説得する際の助けとなる。
- 須々木彪(すずき あや)
- 4巻より登場。
- 始や正平と同じくクラスメイトである《村人》の少女で、《個性者》のコスプレを趣味としている「ユニレイヤー」である。
- 大文化祭の劇にて小道具、衣装を担当する事になり、それをきっかけに上記の3人組と関わっていくこととなる。
- ジェーン・デッカー(Jane Decker)
- 二郎達のクラス担任。翼以上のバストの持ち主(二郎曰く、翼がメロンとすると彼女はスイカレベル)であり、それを無自覚で見せつけるため二郎含む男子生徒の困りの種である。
- 自らの手に余る《個性者》に関するクラス内の問題の解決を半ば放棄しており、《個性者》の知り合いが多い二郎に頻繁に押し付けている。
その他《個性者》の登場人物
- 戸馬鳴丈(とめなり じょう)
- 《騎士》の個性者。
- 銀色のフルアーマーにフルフェイスの兜、両手剣を装備している(無論、作り物だが。他の個性者も同様)。
- 舘衣本月穂(たちいもと つきほ)
- 《治癒師》の個性者。
- ナースキャップと緑十字のワッペンを装備しており、救急箱を常備している。
- 魔法型ではなく医術的な実務型。
- 久魯瓜創(ひさろうり はじめ)
- 《魔術師》の個性者。
- マントの下に様々な道具を仕込んでおり、一見するとローブにも見える格好をしている。
- 使用するのは紙に魔術陣を描き発動させる符呪魔術。
- 逢坂一葉(おうさか ひとは)
- 《狂戦士》の個性者。
- 制服は普通だが巨大な斧を背負っており、本人も狂戦士らしく豪快な性格。
- スイッチが入らない限りは見境無しに暴れたりはしない。
- 翼に並ぶバストの持ち主。
- 土之目偲(つちのめ しのぶ)
- 《忍者》の個性者。
- 忍装束に身を包んでおり、手裏剣等も装備している。言葉数が少なく単語で喋る事が殆どであるが、メモなどの字体や文章は年頃の女子高生そのものである。覆面の下はかなりの美人らしい。
- 瑞平玄人(みずひら くろと)
- 《侍》の個性者。
- 着物に二刀を装備しており、髪は髷にまとめている。「ござる」言葉を使う。
- 石杷実鬼灯(いしわみ かがち)
- 《メデューサ》の個性者。
- 目元が隠れるほど前髪を伸ばしており、ワイズという名前の本物の蛇をカチューシャ代わりにしている。
本人曰く、他の個性者に比べて見える景色が灰色で無機質じみており、《村人》と無機物の区別が付かない状態となっている。これは彼女が自分の個性を 完璧だと思っているためで、そのために彼女は《個性者》を辞めたいと先生に願い出る。6巻ではその彼女を如何にして説得するかがストーリーの要となる。
《反転ネタバレ注意》
実際問題、彼女の個性が完璧というのはあながちウソでもなく、
その髪に隠れた目を見た者はその顔の美しさに固まってしまう。そう、彼女の素顔は超絶美人だったのである。
そして彼女に思いとどまらせるには、その目を見ても固まらない=彼女が完璧ではないという所を見せるのが手っ取り早いと知る。しかしそれは何度試しても不可能であり、途方に暮れていた二郎だがそこで正平からヒントを得て再度挑戦、見事動じない事に成功する。
それ以降は彼女の見る景色も他の個性者と同じレベルにまで落ち着き、個性者も続ける意志を持ったようだ。
悩みの種は二郎に対して頻繁に目を見せようとしてくるようになった事であろうか。
7巻が出る頃には主要人物に移動してそう
- 野芽・RD・絵理(のめ あーるでぃー えり)
- 《龍》の個性者。
- 鹿角のような飾りの付いたカチューシャを身に着けた少女で、喋るのも行動も非常にゆったりしてマイペース。
関連動画
無し。
関連商品
関連項目