てるとたいぞうとは、『笑う犬の生活 -YARANEVA-』『笑う犬の冒険 -SILLY GO LUCKY-』において放送されていたコント兼大河ドラマである。主演は内村光良(ウッチャンナンチャン)と原田泰造(ネプチューン)。
概要
一人の刑事「てる」が、ある日バディを組んだ相棒の「たいぞう」を意識するようになってしまい
禁断の同性愛に目覚める様子を面白おかしく、そしてどこか切なく哀愁ある雰囲気で描いた名作ホモコント。
同時期に発表された小須田部長、ミル姉さんと共に番組の顔ともいえる人気シリーズである。
タイトルに「たいぞう」とあるが、実はたいぞうの出番は僅か3回で、以後は下記の通りヒロイン(と呼んでいいのか?)も代替わりしている(演じているのは一貫して原田泰造)。
当時の小中学生や高校生で、この作品が最初に触れたBLドラマだった、という人も多い。(当時のフジテレビバラエティはボキャブラ天国のさぶネタを筆頭に結構な確率でホモネタが混じっていた)
ナレーションに地獄先生ぬ~べ~やビートたけしの家庭の医学シリーズなどでお馴染みの女優来宮良子を起用するなど、当初から本格派を意識しており、相棒が二代目となった「たいしろう編」からはストーリーはさらに深化し、昼ドラ顔負けの愛憎劇が繰り広げられ、第三部にあたる「みちのく編」では本格的なロケまで行われるなど、コントの枠を超えた「もうひとつのフジテレビ深夜ドラマ」と呼んでも過言ではない出来だった。実際、劇中でも「これはコントなのかドラマなのか!?」という台詞がある。
そして、てるを演じている内村の本物のゲイさながらの迫真の演技から一時期ホントに「原田とホモ恋愛関係にあるのでは?」という噂さえ立っていた(番組公式本の原田へのインタビューでも「え? 内村さんとのホモ疑惑? 秘密です(笑)」などと答えていたので一種のネタでもあった)。
念のために書いておくが、この当時独身であった内村も笑う犬シリーズの番組完結後に女性アナウンサーの徳永有美と結婚し、現在は2児の父である。よって、ウッチャンはゲイではない。列記としたノンケである。
一方、相手役を務めた原田も、当時の評価こそただのお笑い芸人であったが、本コントでは一人で4役(打ち切られた作品を含めれば厳密には5役)もの異なる性格の男性を演じていたことや小須田部長シリーズや沼田と高田シリーズなどで演技を磨かれ、次第に芸達者ぶりを発揮し、後に俳優としても活躍、近年ではNHK大河ドラマにまで出演する本格派となっている。
なお、原田はこのコントの開始時点で既に女性と結婚して子供もおり、当然ながらゲイではない。
そもそもこのコントは笑う犬シリーズの記念すべき第一回放送(1998年10月14日 午後23時)のファーストコントとして放送された作品で、DVD第1巻も、このコントで当時放映済みだったものをほぼ網羅したもの(てるとたいぞう 完璧版を銘打っていた)であった。なお、最初の収録は、まだ二人の息が合っていなかったこともあってか、コントとしては異例の6テイクを費やし、ようやくOKとなっている(後に生活のスペシャルで南原がゲスト出演したときにこのNG集が視聴者リクエストで放送され「コントでTAKE6ってあんまり聞かないよ」ととても驚いていた)。このあたりからも、笑う犬が本来正当な質の高いコント番組を目指していたことが伺える。
笑う犬の復活となった2008年版は内村の「再開するには、まずはてるたいからやりたい」というたっての希望により、再びこのコントがファーストコントに選出されている。
番組中ではゴールデン進出後も続編が作られ、最終的には第5部まで制作される超ロングランとなり、番組が続く限り物語も続くかに思われた。
しかし、第5部は僅か1回で打ち切りとなり、以後続編が製作されないまま未完の大作となった。
後に2008年、2010年に単発の笑う犬が放送された際には後日譚的なストーリーが展開された。
また、初期はほぼ2~3週に1話ぐらいの割合で放映されてストーリー進行も比較的早かったが、ゴールデン進出後は同性愛を扱ったことが災いしてか、放送回数が激減し、長いときでは4ヶ月ほど間が開いたことすらあった。(元々笑う犬のコントは事前にどのコントが放映されるか、はあまり事前にオープンになっておらず、インターネットのコミュニティも今ほど発達していなかった当時は新聞や予告などで予測するしかなかった)。
後にこのコントを意識したと見られる作品「ビバリとルイ」というものが同じフジテレビの『ピカルの定理』で放映されていた。
あらすじ (各章の簡単な解説)
たいぞう編
路上で張り込みを続ける刑事の「てる」と「たいぞう」
しかし、てるにはある秘密があった。いつしか、同僚であったたいぞうを「男」として意識してしまう自分が。
差し入れのたいぞうが口にした缶コーヒーを一気飲みしたり、双眼鏡を探してポケットに手を入れるたいぞうに感じてしまう自分が・・・
容疑者を発見し、追いかけるたいぞう、そんな彼を追うてるは一言「恋してるっ!」
その後、アパートでの張り込みでは図らずも妬きもちを感じてしまったり、ついには口付けすら交わそうと試みるが、失敗。
そして、ついに組織のアジトに潜入した二人だったが、敵に追い詰められ絶体絶命。
夕日が倉庫を照らす中、初めて銃を抜いたたいぞうに「人を撃つ為でなく、護るために使え」と刑事としてもっともらしい事も言っていたが、負傷した手の傷を吸うたいぞうに対してついに気持ちが抑えきれなくなり、口走った。
「たいぞう、俺はおまえのことが・・・す・・きだ・・・」
しかし、たいぞうはてるの突然の告白に対し「わかってました」と笑顔で答え、「なんて言っていいのかわからないけど、すごくうれしいです」と二人の心が通じ合った瞬間だった。
応援のパトカーのサイレンが聞こえたと思ったそのとき、たいぞうの胸を一発の銃弾が貫いた。
「たいぞう、たいぞーう!!」
動かなくなったたいぞうを胸に抱え、夕日の中、てるは最初の恋人の亡骸の前で涙に暮れるのであった。
たいしろう編
全4回。1998年12月2日、16日、1999年1月20日、2月10日放送。
たいぞうが殉職して暫く後、墓参りに訪れたてるの下に死んだはずのたいぞうに瓜二つの男が現れる。
彼の名は「たいしろう」。亡くなったたいぞうの弟で彼も兄と同じ刑事であった。
「好きだったんでしょ? 兄貴のこと。」と刑事を辞めようとするてるを引き止めるたいしろう。
そして「兄貴のことなんか忘れろよ」とたいしろうはてるを抱きしめるのだった。
しかし、たいしろうは兄のたいぞうとは少し違っていた。
暴力団ヤマネ組の情報を敵側に渡し、金を得る、犯人を見逃す代わりに荒稼ぎした金をネコババするなどおおよそ刑事とは思えない策略家的な一面を持っていた。
コートを嗅いでも「やっぱりたいぞうと違う」と感じていた。
そんな中、てるとたいしろうの関係は女刑事ちなつを巻き込んだ三角関係に発展。
ちなつとてるの思いは「悪事をやめさせたい」という共通の事項ではあったが、互いに「彼のことを一番理解しているのは自分だ」と譲らない。
しかし、てるを選んだたいしろうに対して逆上したちなつは自害を試みる。
それを止めようとしたたいしろうは彼女の発砲した銃弾に倒れる。
「たいしろう、たいしろーう!!」
皮肉にも兄のたいぞうと同じく、凶弾を受けた後にてるの胸の中で息を引き取るたいしろう。
そして、金を集めていた理由が全てボランティア団体への寄付であったことを語ると後事を託して旅立った。
たいしろうのロケットペンダントにはてるの写真が入っていた。
このたいしろう編の途中では年跨ぎがあったため、新年の挨拶にてるとたいしろうが登場し、ラブラブカップル(?)ぶりを炸裂させたことがあった。
みちのく編
全4回。1999年2月10日、3月3日、4月28日、5月26日放送。
このシリーズより、ストーリー部分がさらに泥沼にハッテンしてきたことから、急速に放送ペースが鈍化する。
なお、全作品通じて明確にたいぞう一族の中で『ゲイ』であったことがハッキリしているのは本シリーズのたいのしんだけである。
また、潤子を演じた名倉潤のメイクはあまりに本格的だったため、非常に手間がかかったほか、その雰囲気から「本物のオカマにしか見えない」と実際のゲイバーのママに言わしめたほどリアルであった。
たいしろうがちなつの銃弾に倒れて1年半後、てるは秋田県能代市のパブスナック「じゅんちゃん」のママ潤子と同棲を始めていた。潤子も「離さない」とてるを深く愛していた。
そんなある日、てるの下に一人の男が現れる。
「てるさん・・・、ですね?」
その男はまたしても同じ顔を持つ男、大原田物産社長にしてたいぞう、たいしろう兄弟の叔父たいのしんだった。
年老いているとはいえ生き写しのその姿に大きく動揺するてる。
そして、彼からは「私の子供となって、跡を継いで欲しい」という『家族』になろうという思わぬ提案がなされるのだった。潤子に手切れ金を渡して。
心ではいけないこと、とわかりつつも身体は正直でたいのしんの胸の中で恍惚とするてるを見た潤子はてるを連れて出て行くようたいのしんを追い返してしまう。
我に返ったてるは潤子の下へと戻るが、潤子は冷たく突き放す。
その後、潤子は店を畳む決心として荷造りを始める。そのとき、「お前のことを忘れた日は一度もない」と再びてるが戻ってきた。しかし、愛されていないことを悟っていた潤子は「もういいの」と笑顔を見せるのだった。
そして、てるを追ってきたたいのしんは、強引にてるを連れ去ろうとするが、その背中を思わず潤子は刺してしまう。
「このぉ~オカマァ~~~~!!!」
たいのしんの叫び声が聞こえる中、ついに犯罪者となってしまった潤子とてるは逃亡生活へ。
海辺の小屋でイカの指輪を交わして愛を誓った二人だったが、壁をぶち破ってまさかの復活を遂げたたいのしん登場でまたしても場は修羅場に。銛でたいのしんを殺害しようとする潤子、そしてたいのしんをかばってしまうてる。「てるさん、あんたはオカマより俺を選んだ」の言葉に怒ったてるはたいのしんに銛を向けるが、やがて戦意を喪失し、消える。
寂れた田舎のローカル線に乗ったてるは「あんたー、行かないでー!」と追いかけてくる潤子を背に再び旅に出るのであった。
潮騒編
全4回。1999年10月17日、2000年1月9日、2月6日、3月5日放送。
本シリーズより、『笑う犬の冒険』での放送となる。
放映当初は「てるたいシリーズ最終章」を銘打っていた。
前回とは対照的に原田演じるたいきちは完全なノンケである。また、一族との関連は最後まで明かされなかった(単なる他人の空似?)。
みちのくでの悲恋を乗り越えたてるは高知県中村市で駐在所の巡査として新たな生活を始めていた。
そして、その生活の中でようやく女性を愛することができるようになった。凪子というその愛する女性にプロポーズしたその日、彼女の婚約者が帰ってきてしまった。
脱ぎ捨てられていたその男の服を思わず嗅いでしまったてる。
その嗅ぎ覚えのある体臭にある予感が過ぎった・・・
「あんたが、てるさんかい?」
巨大な魚を手に褌姿で角刈りのガタイのいい男性が、そしてあの顔がまた目の前に現れた。
「またか・・・」と呟くてる。彼の名はたいきち。
凪子の心は既にてるの下にあったため、凪子はてるとの結婚を承諾するが、たいきちに対して「一緒に暮らそう」と口走ってしまう。「あんた、いい人だな」と素直に喜んでてるに無邪気に抱きついてくるたいきち。
「もう、どうなってもいいや」と呆然とするてるだった。
しかし、自分との夫婦生活ができないことに悩んでいると勘違いする凪子、たいきちへの思いを抑えきれないてる、そして凪子に心があるたいきちというそんな奇妙な共同生活が長続きするはずもなく、ある日てるは大嵐の中飛び出していってしまう。
そして、たいきちは凪子を賭けて何故か相撲で勝負を付ける事を提案。
最初は拒否したてるも、褌姿のたいきちには興奮を抑えきれず思わず抱きつく。
が、その死闘(?)の軍配はたいきちに挙がった。
その後、凪子とたいきちの結婚式、映画「卒業」のごとく現れたてるは「どうしても、お前のことを忘れることができないんだ」と叫ぶ。(この場面ではご丁寧に本家の映画と同じくサイモンとガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」がBGMになっている)
「てるさーん」
花嫁姿でうれしそうに駆け寄る凪子だったが、そんな彼女を跳ね除けてるがむかったのはタキシード姿に正装したたいきちの下。
「好きだ」
が、当然受け入れられるはずも無く、平手打ちを喰らう。
そして満場の拍手と共に凪子とたいきちはバージンロードを去っていく。
その後、てるを追ってはるばる高知にやってきた潤子が現れるが、誓いの口付けを交わすことなくてるは逃げ出す。
さらにそれを追ってきたたいのしん。だが、たいのしんが追っていたのはてるではなく、潤子。
潤子に告白したたいのしんはそのまま彼(いや彼女か?)と結ばれるのであった。
愛染編
全1回。ラストには縦書きで「つづく」の文字が出るが、2000年11月26日放送のみで打ち切り未完。別名京都編。
前章まで潤子として登場していた名倉はこの章ではチャン念なる坊主として登場。
このキャラクターは小須田部長シリーズに登場したチャン・名倉であり、人気両シリーズのコラボレーションによる世界観拡大が見越されていたことが伺えるが、結局それが活かされることは無かった。
高知での騒動から1年の月日が流れ、てるは京都烏丸中立売の寺で見習いの修行僧となっていた。
身体に住み着いていた雑念を払うことができたような晴れ晴れした気分であったが
その日に帰ってくるという和尚の名を聞いて仰天する。その名はたいねん。
まさか・・・と思ったが、その姿は彼らとは異なる別人であった。
ひとまず安心するてるだったが、和尚の言葉や仕草に感じてしまう哀れな自分もそこにいた。
そして和尚から「今日から新しい後輩が一人入る」と教えられる。
「よろしく」
その後輩はまたしても「あの顔」だった。
心の底で何かが動き出す音がした・・・ (未完)
エピソード1
1999年7月14日に放送された番外編。
現在においても極めて珍しいコントドラマでの過去編である。
なお、放送されたのは偶然だが、後にニコニコで人気となるガチムチパンツレスリングシリーズの兄貴ことビリー・ヘリントン氏の記念すべき30年目の誕生日である。
時を遡ること10年前、1989年。場所は東京三鷹。
当時まだ大学生だったてるはとあるレコード店で働いていた。
ふと1枚のCDを手に取り、かつての恋人を思い出すのだった。
そして、別れ際に彼女はこう言っていた。
「私、生まれ変わったら男に生まれてくるわ」
その横でCDを万引きしようとする少年を引き止める。
てるに咎められかばんを開くその少年こそ、のちのたいぞうであったことをてるは知る術もなかった・・・
そのとき店内には小田和正の「ラブストーリーは突然に」が流れていた。
そして、別の少年は美輪明宏のCDをリクエストしてきた。
同じにおいがする、と少年は感じていた。この少年も後にてるの人生を狂わせる魔性の男、潤子であった・・・
たいぞうリターンズ編
2008年9月30日、2010年10月5日の2回のみでやはり現時点で未完。
愛染編でどのような事態が起きたのかは全く語られないまま第1シーズンと全くおなじシチュエーションで開始されるニューシリーズ。
刑事に復帰したてるは新しい相棒坪倉と共に張り込みをしていた。
しかし、その最中、てるの下にあの男が現れたのだった。
「お久しぶりです」
なんと現れたのは死んだはずのたいぞうだった。
その後、坪倉、たいぞうと共に敵のアジトへ忍び込むが、てるに付けられていた発信機兼盗聴器によって作戦は失敗。
しかし、久々に抱き合うたいぞうの胸でてるは思うのだった。
「時間よ~止まれ~」 (未完)
その他
- 今後、笑う犬が復活すれば続編制作の可能性は皆無ではないものの、元オセロ中島の洗脳問題などもあり、笑う犬シリーズ再開そのものが困難とみられており、今後の先行きは不透明なままである。
近年、内村主体の数少ない現代コント番組の生き残りである『LIFE -人生に捧げるコント-』においてマモー・ミモーが復活したり、笑う犬内でも『ウッチャンナンチャンのウリナリ』のキャラであるホワイティが登場したことがあるので、可能性としては、別番組での復活となるのかもしれない。
- また、このコントが打ち切られたあたりから小須田部長やテリーとドリーなどの人気シリーズが相次いで完結終了し、翌年には遠山が産休に入り事実上の番組降板。よって、第一回作品であるこのてるたいの盛況と衰退は番組の迷走を招く後の歴史にもそのまま重なっているとも言えなくはない。
- 人気コントであったことから、再放送や総集編での放映回数もダントツに多かったが、冒険時代に人気シリーズの第一話を一挙放送した際には翌週に内村から「不評!」と視聴者からブーイングが殺到したことが明かされた。理由は「何回やってんだよ」というものが最多だったらしい。
関連動画
てるとたいぞうに関するニコニコ動画の動画を紹介してください。
関連商品
※放映当時はVHS全盛期だったが、DVDの黎明期と重なったため、当時珍しかったDVDでもコント集が発売されている。DVD盤にはVHSでは未収録だった第二期の二話目とエピソード1が収録されている。
関連コミュニティ
てるとたいぞうに関するニコニコミュニティを紹介してください。
関連項目
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- 0pt