ゲイバーとは、男性同性愛者向けのバーである。ホモバーとも呼ばれる。
ゲイバーは世界中に存在するが、この記事では日本国内の事情について述べる。
ゲイバーの定義
客・スタッフ共に女装・化粧などをしない、男性的なゲイが集うゲイバーが大半である。テレビなどのメディアでは、女装家やニューハーフなどによる派手な店といったイメージが強いが、実際はそのような店は「ニューハーフバー」・「おかまバー」などと呼ばれ、ゲイバーとは区別される(立地している場所も全く異なる場合が多く、客層は大半が異性愛者の男女である。ただしニューハーフ系のバーであっても「ゲイバー」と称する店舗もある)。スタッフにゲイとトランスジェンダー・女装が混在している店は「ミックスバー」と呼ぶ。また、レズビアン向けの「レズビアンバー」もある。まれにゲイ・レズビアン両方を対象としている店舗もある。
おおまかに分けると、以下のように分類できる(店によっては必ずしも以下のようになるとは限らない)。
種類 | 主な客層 | 概要 | ||
ゲイバー (ホモバー) |
(非オネエ系) | ゲイ・バイセクシャルの男性 | スタッフがオネエ言葉を全く使わない、もしくは使うことが少ない(普通に男性語を話す)タイプのゲイバー。 店主は「マスター」と呼ばれる(ママと呼ばれる場合もある)。 この形式のバーはテレビなどのメディアに出ることはほぼない。 |
カウンター形式のバーが一般的。 非オネエ系・オネエ系の店に必ずしも明確な違いはなく、オネエ全開の店もあれば、そうでない男性的な店、もしくはその中間など、それぞれの店によって雰囲気は大きく異なる。 店主がオネエ言葉を話すが、店子はオネエ言葉を話さない、あるいは逆と、混合している店も多い。 当記事では、この形式の(本来の意味での)ゲイバーについて扱う。 |
(オネエ系) | スタッフがオネエ言葉を使用する頻度が多いバー。 店主は「ママ」と呼ばれる(マスターと呼ばれる場合もある)。 スタッフがオネエ言葉を話す場合も、女装はしない店が多い(店により異なる)。 まれにテレビなどのメディアに出る場合がある。 |
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観光バー | ゲイ・バイセクシャルの男性が中心 異性愛の男女も入店可能 |
女性・異性愛者の男性が入店可能なタイプのゲイバー。 この形式でもゲイが多く集まる店が多いが、中にはノンケが多い客層の店もある。 |
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クラブ・カフェスタイルのバー | ゲイ・バイセクシャルの男性 | ショットバー形式が多い。 スタッフとカウンター越しで話す通常のゲイバーとは異なり、客同士で話すことが多い(そのため、初心者には敷居が高い形式でもある)。 |
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ニューハーフバー 女装バー |
異性愛の男女が大半 | 女装・化粧をした女装家・ニューハーフ・トランスジェンダーなどが集う店。 ゲイバーとは全く別ジャンルである。 メディアで「ゲイバー」として紹介されるのはほぼこの形態の店舗。 |
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ミックスバー | 店により異なる | ゲイ・女装家・ニューハーフなどが混在している店舗。 観光バーを兼ねているケースも多い。 まれにゲイ・レズビアン両方を対象にしているバーもある。 |
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レズビアンバー | レズビアン・バイセクシャルの女性 | レズビアンが集う店である。 |
概要
主にゲイタウン(新宿二丁目・上野・浅草・堂山など)や、都市部の歓楽街などに立地していることが多い。地方でも県庁所在地などに数件立地していることがある。ただし、秋田県・富山県・福井県・滋賀県・山口県・佐賀県には1件もない。
主に男性同性愛者(ゲイ)やバイセクシャルの男性が集まる。スタッフや他の客と会話を楽しんだり、酒を飲んだり、雰囲気を楽しんだりと、様々な楽しみ方がある。
なお、ゲイだからといって必ずしもゲイバーに行くとは限らず、全くゲイバーに行かないゲイも多い。また、ゲイバー自体がほぼ都市圏にしか無いため、地方ではゲイバーに行く機会自体が無いケースが多い。
テレビなどの影響で怖いイメージや危険なイメージなどの偏見もあるが、大半の店舗は一般のスナックやバーと何ら変わりない営業形態であることが多い(ただし、スナックと異なりスタッフは男性である。スタッフもゲイである場合が大半であるが、店によってゲイではないスタッフもいる)。またテレビでは性的な、いかがわしい、といったイメージも強いが、風俗店では無いので実際に性的なサービスを行うことはほぼない(ハッテン場形式の店舗を除く)。また店主がパフォーマンスを行ったり、面白発言をするとも限らない。
店主は「マスター」もしくは「ママ」と呼ばれるか、単に名前で呼ばれる。マスターの他に、アルバイトなどでスタッフとして手伝っている者は「店子」と呼ばれる。マスターが複数いる店舗もある。
「ゲイバー=スタッフがオネエ言葉を使う」というイメージが強いが、全く使われない店も多い。また、客がオネエ言葉を使う例は少ない(※誤解されやすいが、ゲイ全体の割合としてオネエ言葉を使用する者は少数派である)。
雰囲気は店によって全く異なる。大半の店舗は年齢・体型などは問わないが、中には好みの体型(太った人が多い、筋肉質が多い、ガチムチ系が多い、など)・好みの年齢(20代が多い、30~40代が多い、老け専が多い、など)などが集まる店や、特定の服装・職業・嗜好が集まる店(学生、ガテン系、ジャニーズ系、スポーツ系、作業服、スーツ、褌(六尺)バーなど)、外国人が集まる店、音楽・スポーツなどの趣味を全面に打ち出している店などもある。ジャズが流れ落ち着いた雰囲気のバー、にぎやかな雰囲気のバー、カラオケのあるバー、ディスコ風のバーなど様々である。
基本的に男性同性愛者(ゲイ)やバイセクシャルの男性であり、かつ成人している場合は誰でも入店できる(ただし、酒が出ること・深夜まで営業していることから、未成年は基本的に入店できない。未成年が入店できる店舗でも18歳以上でソフトドリンクのみの提供となる)。ゲイであれば誰でも入れる店が大半であるが、まれに一見お断り(常連の客からの紹介でないと入店できない)の店もあるので注意が必要である。
女性や異性愛の男性は、大半の店舗では基本的に入店できない。入店している場合も基本的に常連客からの紹介であったり、事前に店からの許可を取っているケースがほとんどである。ただし、一部の店では「観光バー」と称し、異性愛者の男性や女性などが入店できるバーもある。観光バーであっても、基本的にゲイが客層の中心である場合が多いが、中には異性愛者の男女客が多い店もある。テレビなどでは、ゲイのスタッフが、嫌がる芸能人などに無理にキスを迫ったり襲ったり、といったシーンが目立つが、テレビ用の演出であるケースが多く、実際にノンケ客に性的なことをすることはまずない。
新陳代謝が激しく、長年営業している店もあれば、オープンから数年で突然閉店する店も多い。近年はインターネットの発達に伴い、ゲイバーに足を運ぶゲイは減少傾向にある。これに比例して、ゲイバー自体も近年は減少傾向にあり、地方ではゲイバー自体が1箇所もなくなってしまった地域も多い。
システム
※店により異なるが、ここでは一般的な店舗について記述する。
概ね18時~20時ごろに開店する。閉店時間は店により異なり、23時頃~5時頃まで様々である。まれに昼間から営業している店舗もある。
店の入り口には「会員制」などと書かれた立て札が設置してある場合が多いが、女性や異性愛者の男性が誤って入店しないように書いてあるだけで、ゲイならば誰でも入店できる(実際に会員制度があるわけではない)。
カウンターに椅子が数席あり、カウンターの後ろにボックス席があるタイプが一般的である。初心者はスタッフや周りの客と会話がしやすいカウンターの中央寄りに座るとよい。
だいたいはチャージ+1杯目のドリンクが1500円~2000円前後。2杯目以降は500円~1000円の追加料金が上積みされていく。店に慣れてきたり、多く飲んだりする場合はボトルを入れることもできる。酒だけでなく、ソフトドリンクも用意されている店が多い。
簡単なおつまみ(枝豆、ポテトサラダ、柿の種など)が提供されることが多い。中には本格的な料理が出る店舗もある。これらのお通しなどは基本的にチャージ料金に含まれている。
食べ物の持ち込みは可能な店が多いが、ほとんどの店では飲み物の持ち込みは禁止している。また、大半の店舗が喫煙可であり、禁煙の店舗はごくまれである。
名前を聞かれることもあるが、一般的には下の名前、もしくはニックネームを名乗るのが好ましい(本名を答えたり聞いたりするのはあまり好まれない)。
カラオケを導入している店もある。DAMが多いが、まれにJOYSOUNDを導入している店もある。なお、LIVE DAM以降の機種ではデンモク(Smart DAM)で「新宿二丁目で流行っている曲」のランキングを見ることができる。カラオケは1曲歌うごとに100円~200円程度加算されていくことが多い。
基本的に、会計は帰り際に支払う(マスターやスタッフに帰る旨を伝え、そのときに支払う)。大半の店舗では現金のみの支払いに対応しており、クレジットカードが使える店舗はまれである。また楽天Edyやsuicaなどの電子マネーは基本的に使用できない。まれにスタンプカードを発行している店舗がある(スタンプが一定数貯まると、ボトル1本無料など)。
イベント
通常営業とは別に、イベントを開催する店舗もある(全く行われない店舗も多い)。
例
- ○○周年記念パーティー
- 店主・スタッフの誕生日パーティー
- ハロウィンパーティー
- クリスマスパーティー
- 年末年始カウントダウンパーティー
- バーベキュー・花見・焼き肉・芋煮会・温泉・スポーツ・旅行などの外出系イベント
- 褌デー
- コスプレイベント:クリスマスなどの季節系イベントと兼ねるケースが多い。
- ゲイナイト:夜間にクラブ形式で、テーマを打ち出して様々なイベントが開催される。必ずしもゲイバーの店主が主催者とは限らない。オールジャンル(ゲイ用のスマートフォンアプリ系など)、体型別(デブ専ナイトなど)、年齢別(30代ナイトなど)、趣向別(学生ナイト、リーマンナイト、ガテン系ナイトなど)、音楽系(アイドル系ナイト、特定の歌手系など)、アニメ・漫画系(アニソンナイト、アキバナイト、声優系など)などがある。
ゲイバーの店舗数
※2017年2月現在。ゲイバー検索サイト「ゲイイエローページ『G click』」に掲載されている店舗を元に独自に計算したもの。ニューハーフ系バー、レズビアンバー、その他ゲイバー形式でない店舗は含まない。ミックスバー、観光バーは含める。ただし、「G click」には既に閉店した店舗や掲載されていない店舗も含まれているため、正確な数値ではない。
- 東京都:564(内、新宿二丁目:235、上野:110、浅草:59、新橋:53)
- 大阪府:240(内、堂山:164)
- 福岡県:87
- 愛知県:73
- 北海道:36
- 神奈川県:31
- 兵庫県、広島県、沖縄県:16
- 岡山県:15
- 静岡県:14
- 宮城県、京都府:13
- 茨城県、埼玉県、鹿児島県:11
- 福島県、石川県、愛媛県:8
- 栃木県、香川県:7
- 群馬県、大分県:6
- 千葉県、長野県、高知県、熊本県:5
- 青森県、岩手県、三重県、長崎県、宮崎県:4
- 岐阜県:3
- 山形県、新潟県、奈良県、島根県、徳島県:2
- 山梨県、和歌山県、鳥取県:1
※秋田県、富山県、福井県、滋賀県、山口県、佐賀県にはゲイバーがない。
主なゲイバー集積地
- 新宿二丁目(東京都新宿区)…日本国内では最もゲイバーやゲイ関連施設が多い地域である。日本屈指のゲイタウンとして知られる(ただしゲイだけに特化したわけでなく、オフィス街としての様相も強く、一般企業・商店なども多い)。基本的にオールジャンルの店が多く、20代前後の若者も多く集まる。近年はテレビなどのメディアで頻繁に取り上げられることから、世間的にも有名になりすぎてしまい、一種の観光地と化してきている。このため、異性愛者も多く集まるようになってしまい、異性愛者向けの店舗や観光バーも増加している。
- 新橋(東京都港区)…2000年代に入ってから急激にゲイバーの店舗数が増加。主にサラリーマンや30代前後の年齢層が多く集まる傾向がある(そうでない人も多い)。
- 上野(東京都台東区)…ガチムチ系・野郎系・イカニモ系(髭・短髪・筋肉質など如何にもゲイらしい格好という意)・デブ専(太っている人が好きな人)・中年の客が多く集まる傾向がある(そうでない人も多い)。
- 浅草(東京都台東区)…昭和初期頃からゲイバー形式の店舗が存在するなど、歴史が古い。老け専(老けている人が好きな人)が多く集まる傾向がある。
- 堂山(大阪府大阪市北区)…新宿二丁目の次に規模が大きい、大阪のゲイタウンとして知られる(ただし、異性愛者向けの店舗のほうが多い)。
関連動画
関連項目
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