李康仁(イ・ガンイン、이강인、2001年2月19日 - )とは、韓国のサッカー選手である。
フランス・リーグ・アンのパリ・サンジェルマン所属。サッカー韓国代表。
概要
韓国の・仁川広域市出身。韓国国内のバラエティ番組出演をきっかけにとして注目されるようになり、バレンシアCFの下部組織で育った「韓国の神童」。2019年のFIFA U-20ワールドカップでは2ゴール4アシストの活躍によって大会のゴールデンボール賞を受賞し、世界中の関係者から注目された逸材。
同い年で、同じ左利き、幼い頃からスペインの下部組織で育ったという共通点の多い「日本の神童」久保建英とはライバル関係として何かと比較されている。実際は2人は親友という間柄だが、久保と共にアジアの中でも特に高く評価されている選手である。
一方、チーム内で揉め事を起こしたり、試合中にラフプレーをおこなう問題児としても知られており、トラブルメーカーぶりがキャリアの足枷になっていたこともある。
経歴
生い立ち
仁川でテコンドー長を経営していたた父と大学病院のカトリック教室で務めていた母の間で1男2女のうちの末っ子に生まれる。父親がディエゴ・マラドーナのファンだった影響もあって幼い頃からサッカーボールをおもちゃのようにして遊んで育つ。
そして6歳にして早くも彼の運命を決める大きな転機が訪れる。2007年、サッカー選手に憧れる未就学児を集めてその成長過程を追うバラエティ番組「ナララ・シュットリ」に6ヶ月間出演。そこで驚異的なパフォーマンスを見せたことにより幼くして「韓国の神童」と呼ばれ、韓国国内で大きく注目されるようになる。
2009年9月、地元の仁川ユナイテッドFCのU-12チームに入団。2010年には同じく地元の仁川flyings FCでプレーしている。
10歳になった2011年1月、ユースの監督の紹介によって家族とスポーツマネージメント会社と共にスペインへ渡り、バレンシアCFのカンテラのテストに合格し、入団。ここでも成長を遂げて頭角を現し、評価を高めるようになる。2013年2月にはアロナU-12国際トーナメントに出場し、4ゴールで大会得点王に輝いている。この大会での活躍により、イ・ガンインの注目度は高まり、レアル・マドリードが関心を示すほどの存在となっていた。ちなみに当時FCバルセロナのカンテラで活躍していた久保建英と初めて出会ったのもこのときだったらしい。
その後もユース年代の大会でMVPを獲得するなど、評価を高めていった。
バレンシア
16歳となった2017年3月2日、バレンシアCFと正式にプロ契約を締結。2017-18シーズンよりセグンダB(スペイン3部)に所属するバレンシアCF・メスタージャの一員となる。12月17日のデポルティボ・アラゴン戦で途中出場しプロデビューを果たすと、この試合で早速初アシストを記録。2018年5月6日のCEサバデル戦ではスタメンで出場し、プロ初ゴールを決めている。
2018年7月22日、バレンシアCFとの契約を2022年まで延長する。2018-19シーズン開幕時にはセカンドチームのレギュラーとして活躍。10月30日には、コパ・デル・レイのCDエブロ戦でトップチームデビューを果たす。17歳253日のトップチームデビューはバレンシアの外国人選手最年少記録であり、欧州でプレーした韓国人選手としては史上最年少での出場となった。2019年1月19日のレアル・バリャドリード戦でラ・リーガ初出場を果たしている。1月30日には正式にトップチームに登録されている。
2019-20シーズンはレンタル移籍で経験を積むことが検討されていたが、チームに残留。開幕後まもなくしてマルセリーノ・ガルシア・トラル監督が解任され、アルバート・セラデスが監督に就任すると出場機会を増やすようになる。2019年9月17日のUEFAチャンピオンズリーグ チェルシーFC戦に途中出場し、韓国人選手のCL最年少出場記録を更新。9月25日のラ・リーガ第6節ヘタフェCF戦ではスタメン出場し、リーガ初ゴールを決める。ところが、10月19日のアトレティコ・マドリード戦で途中出場ながらサンティアゴ・アリアスに危険なタックルを喰らわせ、一発退場になる。ちなみに、リーガの21世紀生まれの選手として初めて退場となったというありがたくない記録を残している。ラフプレー癖はこの頃から顕著になっており、2020年6月19日の第20節レアル・マドリード戦ではセルヒオ・ラモスを後ろから3回蹴りつけ、出場わずか13分で退場になっている。
2020-21シーズンは飛躍のシーズンになると思われたが、ラ・リーガ第2節のセルタ・ビーゴ戦でFKのキッカーについて主将のホセ・ルイス・ガヤと大口論となり、前半途中で交代させられてしまう。この事件を境にガンインは構想外となってしまい、出場機会が激減。20試合1得点という消化不良のシーズンとなる。オーナーのピーター・リムのお気に入りとされていたが、ガヤとの対立によってクラブとの関係性も悪化してしまい、契約延長のオファーも拒否。2021年8月29日に契約解消に合意し、退団している。
マジョルカ
バレンシア退団の翌日である2021年8月30日、ラ・リーガに昇格したばかりのCRDマジョルカと4年契約を締結。一足早くレンタルでの加入が決まっていた久保建英との共演が実現する。9月22日の第6節レアル・マドリード戦では移籍後初ゴールを決めている。だが、残留争いの渦中にあるチーム事情もあってルイス・ガルシア監督は久保との同時期用に消極的で、出場機会は限られたものとなっていた。シーズン途中にハビエル・アギーレが監督に就任してからはより守備的な戦術を採用したこともあってより立場は厳しいものとなり、結局30試合1得点2アシストと期待外れのシーズンに終わった。
2022-23シーズンはプレシーズンでのアピールによってアギーレ監督の信頼を得ることに成功し、2トップの一角としてレギュラーを獲得。この年はエースのヴィダト・ムリキと2トップを組み、セカンドトップとして自由を与えられたことで才能を発揮できるようになる。2022年8月21日の第2節レアル・ベティス戦でアシストを記録すると、8月28日の第3節ラージョ・バジェカーノ戦ではシーズン初ゴールを記録。10月23日、メスタージャでの古巣バレンシア戦では後半に決勝ゴールを決めたものの、ゴールセレブレーションは拒否している。2023年4月24日の第30節ヘタフェ戦では自身ラ・リーガでは初となる1試合2ゴールの大活躍で勝利に貢献。第36節のバレンシア戦ではまたもピンポイントクロスでムリキの決勝ゴールをアシスト。ようやくアタッカーとしての才能を発揮するようになり、6ゴール6アシストの成績でマジョルカの2年連続ラ・リーガ残留の立役者となる。
パリ・サンジェルマン
2023年7月9日、フランス・リーグ・アンの強豪パリ・サンジェルマンへの移籍が発表される。5年契約で背番号は「28」。8月4日のトロフェデ・シャンピオン トゥールーズ戦でスタメンに起用され、新天地でのデビューを果たすと、開始3分で移籍後初ゴールを決め、タイトル獲得に早速貢献。しかし、第2節トゥールーズ戦でハムストリングを負傷、加えてアジア大会に参戦していたこともあり、1か月以上戦列を離れることになる。それでも戦線復帰後は中盤のレギュラーとして起用されることが多く、10月24日のCL第3節ACミラン戦ではCL初ゴールを決める。11月23日第11節モンペリエHSC戦ではリーグ・アン初ゴールとなる先制ゴールを決める。CLラウンド16では久保のいるレアル・ソシエダと対戦し、2ndレグでキリアン・エムバペのゴールをアシストし、勝利に貢献。完全なレギュラー奪取とはならなかったが、キリアン・エムバペとの相性の良さもあって出場機会を与えられ、公式戦5ゴール5アシストという成績を残す。
2023-24シーズンはリーグ・アンで開幕から2試合連続でゴールを決める好スタートを切る。
韓国代表
2017年11月よりU-20韓国代表に選出。2018年にはトゥーロン国際大会に出場し、チームは全敗に終わったものの、大会通算5試合3ゴールという大活躍を見せ、大会のベストイレブンに選出されている。
2019年5月にはポーランドで開催された2019 FIFA U-20ワールドカップに出場。開幕からチームのエースとして違いを生み出し、攻撃陣を牽引。準々決勝のセネガル戦では先制ゴールとなるPKを決めれば、決勝のウクライナ戦でも先制ゴールとなるPKを決めている。結局、その後に逆転を許し、チームは準優勝となったが、韓国は同大会における歴代最高成績を樹立。自身は大会通算2ゴール4アシストと大きなインパクトを残し、1試合9得点で得点王となったアーリング・ハーランドを押しのけて大会のMVPに該当するゴールデンボール賞を受賞。アジア人の同タイトル受賞はUAEのイスマイル・マタール以来二人目となった。さらにはこの年のアジア年間最優秀ユース選手賞を受賞。
2019年9月にはフル代表に選出され、9月5日にトルコのイスタンブールで開催されたジョージアとの親善試合で韓国代表デビューを飾る。18歳198日でのA代表デビューは、韓国代表史上7番目の若さとなった。2021年3月には日本との日韓戦に初出場するが、吉田麻也と冨安健洋のコンビに完封されて何もさせてもらえず、チームも完敗。その後、バレンシアで出場機会を失ったこともあってしばらくの間フル代表からは遠ざかることになる。
2021年7月、東京オリンピック(2020年)に出場するU-24韓国代表のメンバーに選出。グループリーグ第2戦のルーマニア戦では2ゴールを決め、チームに初勝利をもたらす。続く第3戦のホンジュラス戦でも2試合連続となるゴールを決め、韓国の首位での決勝ラウンド進出に貢献。しかし、準々決勝のメキシコ戦では6点を奪われての大敗を喫する。4か月前の日韓戦に続いて横浜で悔しさを味わうこととなった。
ワールドカップ直前の2022年9月の親善試合でおよそ1年半ぶりにフル代表に復帰。しかし、パウロ・ベント監督は守備の献身性の低さからガンインの起用に積極的ではなく、直前の2試合は出場機会を与えられなかった。
そういったいきさつから、本大会のメンバー入りは当落線上と見られていたが、2022年11月にカタールで開催される2022 FIFAワールドカップの登録メンバー入りを果たす。大会では途中出場から流れを変える役割となり、第2戦のガーナ戦では投入されて2分後にチョ・ギュソンのゴールをアシスト。劇的な逆転勝利を飾った第3戦のポルトガル戦で初スタメンを果たすが、後半36分に同点の場面で交代となる。再びベンチスタートとなったラウンド16のブラジル戦は後半29分に投入されるが、チームは大敗となった。
2023年9月には、中国の杭州で開催されたアジア競技大会2022にU-24代表として出場。直前にリーグ・アンでハムストリングを負傷していたこともあって試合出場は限定的となったが、決勝の日本戦にはスタメンで出場し、優勝。無事、兵役免除を勝ち取ることとなった。
代表監督がユルゲン・クリンスマンに代わってからは、主力として定着するようになっており、2023年10月23日のチュニジア戦ではフル代表初選出から4年越しとなった初ゴールを記録。この試合では2ゴールの大活躍を披露。その後のベトナム戦と11月のシンガポール戦でもゴールを決め、3試合連続ゴールとなり、ようやく代表でも真価を発揮するようになる。
2024年1月にはカタールで開催されたAFCアジアカップ2023に出場。初戦のバーレーン戦では2ゴールを決め、チームを勝利に導くと共にMOMにも選出される。大乱戦となった第3戦のマレーシア戦でもチームの2点目となるFKによるゴラッソを決めている。しかし、チームは準決勝でヨルダンを相手に枠内シュート0本に終わり、敗退。それでも3ゴール1アシストで大会ベストイレブンに選ばれた。
大会後、チームの内紛を引き起こしていたことが発覚。敗れたヨルダン戦の前夜に卓球をするために夕食を早く済ませて食事会場を離れようとしたが、チームの結束を重視する主将のソン・フンミンから席に戻るよう叱責を受ける。これに反発して口論となり、揉みあいとなった際にソンが中指を脱臼。ベテランと若手が対立したままヨルダン戦を戦っていた。これを受けて自身のインスタグラムで謝罪するも、韓国国内で大バッシングを受けることになる。中には、代表から追放すべきという声も挙がった。
騒動後初の代表戦となった2026 FIFAワールドカップ アジア2次予選のタイ戦に無事出場すると、因縁のあったソン・フンミンのゴールをアシストする。
個人成績
シーズン | 国 | クラブ | リーグ | 試合 | 得点 |
---|---|---|---|---|---|
2017-18 | ![]() |
バレンシアB | セグンダB | 11 | 1 |
2018-19 | ![]() |
バレンシアB | セグンダB | 15 | 3 |
![]() |
バレンシア | ラ・リーガ | 3 | 0 | |
2019-20 | ![]() |
バレンシア | ラ・リーガ | 17 | 2 |
2020-21 | ![]() |
バレンシア | ラ・リーガ | 24 | 0 |
2021-22 | ![]() |
マジョルカ | ラ・リーガ | 30 | 1 |
2022-23 | ![]() |
マジョルカ | ラ・リーガ | 36 | 6 |
2023-24 | ![]() |
パリ・サンジェルマン | リーグ・アン | 23 | 3 |
2024-25 | ![]() |
パリ・サンジェルマン | リーグ・アン |
個人タイトル
プレースタイル
メインポジションは攻撃的MFだが、二列目であれば左右のウイング、中央、セカンドトップと様々なポジションに対応できる万能型のアタッカー。しばしば久保建英とプレースタイルが被ると言われるが、イ・ガンインのほうがもっとパワフルで直線的なタイプで、日本人なら久保よりも本田圭佑や堂安律のほうが近い。
もっとも得意としているのはドリブル突破で、右から中央に切れ込んで左足でシュートまで単独で持ち込むプレーが魅力。圧倒的なボールコントロールで相手を抜く久保に対し、イ・ガンインのドリブルは体幹が強く、馬力があるパワフルなもの。ただし、ボールコントロールの技術も高く、華麗なフェイントを織り交ぜてくる。推進力があり、ゴール方向への仕掛けを繰り返すため、エリア付近ではかなり脅威となる。
また、積極的にミドルシュートを狙ってくるタイプで、20~30メートル級の遠い距離からでもガンガンミドルシュートを狙ってくる。フィジカル面で強力な選手相手でも、当たり負けしない強さをもっており、ボールキープも得意。また、サイドチェンジも多用しており、体幹が強く、パワーがあるためワンステップで遠くまでパスを通すことができる。中長距離のパスの精度も高い。
欠点は守備の切り替えの遅さで、守備時に戻ってはくるが判断の悪さもあってアリバイ守備のようになりがち。また、我が強すぎるのも欠点で、プレーに波がある。メンタル的にも不安定で、うまくいかないときにイライラしてラフプレーに走ったり、チームの和を乱す行動をすることもある。
人物・エピソード
- 前述のとおり、久保建英とは小学生の頃から切磋琢磨してきたライバルであり、親友。マジョルカで一緒だったときはほとんど一緒にいたらしい。久保は「サッカー界における最高の親友」とまで明言。また、久保のいるチームと対戦する際、試合前に久保を探す姿が何度もカメラに抜かれている。
- 自身のロールモデルとなった選手としてリオネル・メッシ、ディエゴ・マラドーナ、パク・チソンの名前を挙げている。
- バレンシア時代、オーナーのピーター・リムが溺愛するあまり、まだ実績を残せていないにも関わらず10番を与えようとしたり、監督にガンインを起用するよう圧力をかけていた。そのため、ロッカールームで他の選手たちから拒絶され、孤立するようになっていた。
関連動画
関連項目
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