ジャンヌ・ダルク(Jeanne d'Arc)とは、15世紀・百年戦争の終盤に活躍したフランスの聖女である。
また、彼女を元ネタとしてさまざまな作品で同じ名前が使われている。
概要
百年戦争の末期のフランスに現れ、神のお告げを受けたとして十代後半の少女ながら軍を率い、フランス北部および南西部を占領していたイングランド軍と戦い、フランスを救った聖女。
軍を率いるまで
フランスの貧しい農家の娘として生まれたジャンヌはある日「オルレアンを解放しフランスを救え」という天のお告げを聞く。
彼女はそのお告げに従い、フランスの王位継承者であるシャルル王太子の元を尋ねる。この際、王太子は自分の顔を見たことがないジャンヌをからかうために偽者を謁見させた。しかし、ジャンヌは謁見した王太子が偽者であることをすぐさま見破り、こっそり従者たちに紛れて潜んでいた本物の王太子を探し当てて見せるのである。
この奇跡で王太子はジャンヌのことを認め、一軍を率いさせることになる。
オルレアン解放~シャルル戴冠
当時のオルレアンはイングランド軍の包囲の真っ最中であり、ジャンヌ率いる軍勢はその包囲解放を目指しオルレアンに進軍する。
ジャンヌは自ら軍の戦闘に立って突撃し、兵士たちを鼓舞した。その結果フランス軍の戦意は高く、見事オルレアンを解放することに成功するのである。
また、ジャンヌはシャルル王太子にランスにて戴冠し、正式にフランス国王を名乗ることを提案した。このときのフランスには国王は不在であり、それがイングランドに付け込まれる原因のひとつにもなっていたのである。しかし、ランスにまで至るにはイングランド軍を打倒せねばならず、その道のりは困難だった。
ジャンヌはリッシュモン大元帥の救援を受け、パテーの戦いでイングランド軍を撃破する。これでランスへの道は開け、シャルル王太子は正式にシャルル7世として即位。ジャンヌはお告げにあったオルレアン解放とフランスの救世という目的を達したことになる。このときがジャンヌの絶頂期であった。
火刑に至るまで
フランス国王となったシャルル7世はこれまでの勝利を軸にしてイングランドとの和平を模索する。しかし、ジャンヌはそれまでと変わらずイングランド軍への攻撃を主張したためやがて王の周辺から遠ざけられるようになる。
ジャンヌは周囲からの支援を得られぬまま戦いを続けるものの、コンピエーニュの戦いで捕らえられ、イングランド軍の捕虜となってしまう。
彼女はイングランドの手によりルーアンにて異端裁判にかけられ、火刑を宣言される。理由は「お告げ」をしたのがキリスト教以外のものである可能性、そして男装したことである。
この裁判は当然のことながらイングランド軍の占領下で行われたものであり、その判決にはイングランド軍の影響が大きかったと思われる。一度は火刑は取り下げられるものの獄中のジャンヌが再度男装をした(牢屋番の兵士に強姦されるのを避けようとした為)ことで異端とみなされ、結局は火刑にかけられることになった。
処刑にあたり、司祭が目の前に差し出した十字架に祈りを捧げながら、彼女は炎に包まれた。ジャンヌが聖女などではなく、また確実に死んだ証拠として、処刑人達は途中で体を覆う薪を崩し、焼け爛れた股間を露出させてさらし者にしたという。
火刑の後、その遺灰はセーヌ川に流され、フランスを救った救世の少女は塵一つ残さずこの世を去ったのである。
死後の再評価
ジャンヌの死後、フランス軍がルーアンを奪還するとそこでジャンヌの復権裁判が行われ、ジャンヌの異端判決が取り消された。
また、もともとはフランス全土に名前が知られているわけではなかったが、時代が下ってナポレオンのころになると救国の英雄として国家をまとめるための宣伝材料とされ、これをきっかけにフランス全体で広く知られるようになった。
評価
オルレアンを解放し、シャルル7世に戴冠させた彼女がフランスの救国の英雄であることは間違いないが、イングランド側にとってはフランス平定に対する邪魔者以外の何者でもない。そのため、異端裁判の判決そのままに魔女と呼んでいた時代も長かった。
実際、シェイクスピアは史劇「ヘンリー六世 第一部」の中で、ジャンヌを悪魔にたぶらかされた虚言癖のある女として登場させ、父親にさえ見限られる存在としてクソミソにこき下ろしている。
20世紀にはカトリックによりジャンヌ・ダルクが聖人として認められ、列聖されることになる。
また、「女性ながら戦争に参加した」という事実が広く知られるようになったため、各地の闘いに参加した女性のことを「○○のジャンヌ・ダルク」と呼ぶことも多い。
(インドのラクシュミー・バーイー、大三島の鶴姫など)
ジャンヌに由来する作品・名称
主題とする作品
- ジャンヌ・ダルク(映画) - リュック・ベッソン監督の映画。聖女ジャンヌを別の視点から描いている。
- JEANNE D'ARC - 2006年発売のPSP用シミュレーションRPG。レベルファイブ開発。
- 天川すみこの漫画作品
キャラクター名
- ジャンヌ・ダルク(ワールドヒーローズ) - 金髪の女性剣士。自分より強い男が好き。
- ジャンヌ・ダルク(ドリフターズ) - 歴史上のジャンヌ・ダルク本人。炎を操る能力を持つ。
- ジャンヌ・ダルク(緋弾のアリア) - 正式な名前はジャンヌ・ダルク30世。銀髪の女性剣士。
- ジャンヌ・ダルク(放課後のカリスマ) - 漫画「放課後のカリスマ」の登場人物
- ジャンヌ・ダルク(Fate/Apocrypha) - 歴史上存在したジャンヌ・ダルクがサーヴァントとして登場している。
- ジャンヌ・ダルク(魔法少女まどか☆マギカ) - 歴史上のジャンヌ・ダルク本人がじつは魔法少女であったという設定。ジャンヌ・ダルク本人を主人公としてその物語を描く番外編漫画「魔法少女たると☆マギカ」も存在する。作中ではタルトと呼ばれる。→タルト(魔法少女たると☆マギカ)
- ジョーン・アーク(RWBY) - 正義感強い青年として登場している。ちょっぴりドジ。
- ジャンヌダルク(Cygames) - ゲーム「神撃のバハムート」や「グランブルーファンタジー」などのCygames作品に登場している。
- ジャンヌ・ダルク(神撃のバハムートGENESIS) - ジャンヌダルク(Cygames)が基。オルレアン騎士団の聖女として登場。神の天啓を受け魔に対抗する。
- ジャンヌダルク(#コンパス) - ゲーム「#コンパス」のキャラクター
- ジャンヌ・ダルク - ユリシーズ ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士に登場するキャラクター。(ウルトラマン)
- ジャンヌ・ダルク(アズールレーン) - STGアプリゲーム「アズールレーン」に登場するキャラクター。下記のジャンヌ・ダルク(軍艦)のうち、1931年~1964年に活躍した練習巡洋艦がモチーフ。
その他
- Janne Da Arc - 日本のビジュアル系ロックバンド。バンド名の由来は漫画「デビルマン」の登場人物による。
- ジャンヌ・ダルク(軍艦) - フランス海軍の軍艦。巡洋艦、空母など、様々存在同名の艦船が複数存在している。
- アニメ「機動戦士Vガンダム」に登場する戦艦の名前
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関連項目
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