概要
- ドラゴンクエスト4コママンガ劇場とは、1990年4月19日から往年のエニックス(現スクウェア・エニックス)から刊行されていた、同社の看板作品であるゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズ各作品のパロディギャグを中心とした、複数の作家による公式4コマ漫画アンソロジーを収録した単行本シリーズおよびその派生シリーズ群である。
- 1990年4月の出版と同時に好評を博してシリーズ化、1年半後の1991年末までですでに販売されたシリーズ累計は500万冊に迫り、全盛期には各巻100万部前後も売れていたほどの相当な人気だった。
同シリーズ及びその関連シリーズの執筆陣は有名無名問わず多種多様で、プロ漫画家以外にも才能ある新人も数多く参加し、その中から後の有名漫画家が多数輩出された事でも有名。
特に「衛藤ヒロユキ」や「柴田亜美」などはこのドラクエ4コマでデビューしてその独特のギャグセンスと面白さで大人気になった後に、オリジナルで「魔法陣グルグル」や「南国少年パプワくん」を連載して大ヒットした。他にも「牧野博幸」「新山たかし」など人気漫画家が多数輩出された。
- 原作の世界観を尊重するためにある程度の制限はあったものの、内容はかなり自由なギャグてんこ盛りであり、特に初期のドラクエではファミコンの容量の問題で台詞がとても少なくグラフィックもドット絵で詳細はほとんど分からなかったため、逆に各作家達が原作のキャラやモンスターの性格や振る舞いを想像する自由度は非常に高く、様々な設定でギャグからラブコメに至るまで多数の名作が生み出された。
- 原作ゲームのドラゴンクエストシリーズへの影響も大きく、4コマ劇場の中で定番ネタとして用いられたキャラクター造形や設定が、後に制作されたリメイク版で逆輸入する形で公式設定になった例もある。
特にDQ4のネタは多く描かれたため顕著で、リメイク版で公式設定になった「アリーナに片思いしているクリフト」「カジノ狂で酒豪のマーニャ」「少し暗い性格のミネア」「テリーに片思いしているドランゴ」などは4コマ劇場の影響が色濃く見られる。
- 関連シリーズが多数あり全てを総合するとかなりの冊数になる。
元祖「無印」シリーズの他にも、月刊少年ガンガン誌上で連載された「ガンガン編」シリーズや、月刊少年ギャグ王で連載された姉妹版の「1Pコミック劇場」シリーズなどがあり、さらには読者からの投稿作品を集めた「番外編」シリーズや、「ギャグ王編」シリーズ、「大全集」シリーズに加え、DQ4と6以外は「各ドラクエ作品別の4コママンガ劇場」まである(ただしDQ1~3は過去作品の再録)。ドラクエの外伝作品である、トルネコの大冒険、モンスターズ、テリーのワンダーランド、キャラバンハートにもそれぞれ4コママンガ劇場シリーズがある。
- 無印とガンガン編は、DQ1からDQ6までのナンバリングタイトルを総合的に取り扱った一番基本の4コマ漫画シリーズ。
1Pコミック劇場は、4コマではなくその名の通りに一つのネタを1ページで表現した派生作品で、コマ割りに関しての自由度が高くなったため大きなコマもある。無印やガンガン編とほぼ同じ作家達が参加していた。
番外編は、月刊少年ガンガン誌上の読者投稿コーナーであるドラゴンクエスト4コママンガクラブに掲載された作品と選外佳作を収録した傑作集。巻数は多いが1冊あたりのページ数が少なくて厚みが薄い。
大全集は、DQ7やリメイク版DQ4までに加えDQM・DQM2のネタまでを取り扱った無印の後継シリーズである。
- 読者投稿コーナーのドラゴンクエスト4コマクラブは、月刊少年ガンガンが創刊するまでの間は初期のドラクエ4コマ単行本の巻末部分に掲載されていた。
このコーナーは漫画家デビューの登竜門でもあり、読者投票で1位となった投稿者は4コマキングとして漫画家デビューすることができた。4コマキング以外にも漫画家デビューした投稿者は多く、そのほとんどが4コママンガ劇場の他、月刊少年ガンガンや月刊少年ギャグ王などの漫画雑誌で活躍していった。
会員数は最終的に1000人を越えた。
ここから、「牧野博幸」「中井一輝」「タイジャンホクト」「夜麻みゆき」「祐太郎」「幸宮チノ」「ちるみる」「山崎渉」「堀口レオ」他、多くの人気ドラクエ4コマ作家が生まれた。
- 創刊初期は「すずや那智」「栗本和博」などすでに漫画家として活躍していた作家や「柴田亜美」「衛藤ヒロユキ」「新山たかし」「石田和明」など関係者として引き抜かれた漫画家や新人メンバーをメインに掲載していたが、ドラゴンクエスト4コマクラブが始まってからは主にそこから輩出された新人漫画家や、同社の月刊少年ガンガン及び姉妹誌に所属する漫画家の作品を掲載していた。「ジャングルはいつもハレのちグゥ」などで知られる「金田一蓮十郎」も執筆していた。
- また「村上ゆみ子」はドラクエ4コマ劇場で執筆していたほか、鳥山明に画風が非常に似ていたことから公式に鳥山明の影武者として抜擢され、DQ6以降のドラクエシリーズの公式ガイドブックや、モンスターズでのメインビジュアルやイラストを担当し、リメイク版のDQ4とDQ5ではメインビジュアルを手がけるほどである。
- 本編以外にも、5巻から楽屋裏というそれぞれの作家が最後の1ページを使って、元ネタとなったゲームや、読者からの手紙に対する返事、リクエストのあったイラスト、人気投票、近況報告など、色々な事を語るあとがきコーナーも人気があった。
- DQ4はちょうどドラクエ4コマの創刊と同時に発売された事に加え、もともと個性的なキャラクターも多かったために特にネタにされる事が多く、特に「衛藤ヒロユキ」はほとんどDQ4ネタばかり描いていたほどで、楽屋裏でも読者から4以外描かないのは何故かと質問され、「キャラが多くて複雑な人間関係を描きやすいから」と答えていた。他にも沢山の漫画家達がこぞって4ネタを描いていた。
それゆえか原作ゲームへの影響度も最も大きく、4のリメイク版での新規キャラ付けは他のシリーズよりも4コマからの逆輸入が顕著である。
ただし1巻はまだDQ4発売直後だったので、ネタバレ防止のために表紙は4キャラなのに中身には4ネタが無いという状態だった。
- ドラクエ4コママンガ劇場シリーズは1990年から発行され続け、総巻数は100冊を超える。
全盛期には各巻売り上げが100万部前後にもなるほどの人気ぶりだったが、時代と共にインターネットの登場で個人の二次創作発表や交流の場がネットに移ったこと、新人発掘の役目も新人漫画賞に取って代わられたことなどから徐々に人気が衰えていった。
メインの無印の刊行は1990~2000年までで、関連シリーズも2006年を最後に途絶えていたが、2009年にDQ9の4コマが発行され復活したほか、2013年からDQ10の4コマ劇場も連載された。ただし名称が4コママンガ劇場ではなく4コマ劇場に変更されたほか、本の装丁も小さくなり楽屋裏も廃止され、執筆陣も全盛期の作者はほとんどいなくなり新人作家で占められているため、以前の4コママンガ劇場とは別物と見る人もいる。
- ドラクエ4コママンガ劇場シリーズはまた、日本において現在も多数出版されているゲームの二次創作アンソロジーの先駆けとも言える存在である。
ドラクエ4コマの人気がきっかけとなって、その後ドラクエシリーズのみならず、「スターオーシャン」、「ヴァルキリープロファイル」等のエニックス作品はもとより、「スーパーマリオ」「ゼルダの伝説」「アークザラッド」「ワイルドアームズ」「テイルズ」といった他社の人気シリーズや、「Kanon」「To Heart」等のギャルゲーに至るまで、色々なゲームの4コママンガ劇場が発行されるようになった。
- 当時子供だった世代への影響は非常に大きく、ヒャダインや中川翔子などドラクエに縁の深いタレントも子供の頃にドラクエ4コマを読んで影響を受けたり、自分も投稿していたと語っている。
ドラクエはやったことが無くても4コマは読んでいたという人もいるほど。
主なシリーズおよび関連派生シリーズ
ドラゴンクエスト4コママンガ劇場全20巻(DQ1~6ネタ)
ドラゴンクエスト4コママンガ劇場ガンガン編全13巻(DQ1~6ネタ)
ドラゴンクエスト1Pコミック劇場全10巻(DQ1~6ネタ)
ドラゴンクエスト4コママンガ劇場番外編4コマクラブ傑作集全23巻(DQ1~6ネタ)
ドラゴンクエスト4コママンガ劇場ギャグ王編全2巻(DQ1~6ネタ)
ドラゴンクエスト4コママンガ大全集全7巻(DQ1~7・DQM・DQM2ネタ)
ドラゴンクエストV4コママンガ劇場全3巻(リメイク版DQ5ネタ)
ドラゴンクエストVIIエデンの戦士たち4コママンガ劇場全8巻(DQ7ネタ)
ドラゴンクエストVIII4コママンガ劇場全3巻(DQ8ネタ)
ドラゴンクエストIX星空の守り人4コマ劇場(DQ9ネタ)
トルネコの大冒険4コママンガ劇場全4巻
トルネコの大冒険2 4コママンガ劇場全2巻
トルネコの大冒険3 4コママンガ劇場全2巻
ドラゴンクエストモンスターズテリーのワンダーランド4コママンガ劇場全5巻
ドラゴンクエストモンスターズ2マルタのふしぎな鍵4コママンガ劇場全3巻
ドラゴンクエストモンスターズキャラバンハート4コママンガ劇場全1巻
掲載状況一覧表(無印のみ)
記号の意味 | ●:カラーページのみ ○:白黒ページのみ ◎:カラー+白黒ページ ▲:投稿作品 |
著者名\巻数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
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増田佳子 | ◎ | |||||||||||||||||||
米山智子 | ● | |||||||||||||||||||
国島龍美 | ◎ | |||||||||||||||||||
栗本和博 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ||
蓼 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||
青木光恵 | ○ | |||||||||||||||||||
すずや那智 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ||||||||||
猫乃都 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||
KIETH | ○ | |||||||||||||||||||
きりえれいこ | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ||||||||||
羽柴砂忍 | ○ | |||||||||||||||||||
石田和明 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |||||||||||
しむらかずみ | ○ | |||||||||||||||||||
蘇我晶 | ○ | |||||||||||||||||||
柴田亜美 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ||||||||||||||
木本よし子 | ○ | |||||||||||||||||||
西川秀明 | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | |||||||||||||||
中瀬ひろき | ○ | |||||||||||||||||||
坂井孝行 | ○ | |||||||||||||||||||
TAKERU | ○ | |||||||||||||||||||
衛藤ヒロユキ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||
細貝明男 | ○ | |||||||||||||||||||
豊島ゆーさく | ○ | |||||||||||||||||||
ぴろしき | ○ | |||||||||||||||||||
新田真子 | ○ | |||||||||||||||||||
いちごみるく | ○ | |||||||||||||||||||
清水あき | ○ | ○ | ||||||||||||||||||
松本英孝 | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||||
紺屋たかし | ○ | |||||||||||||||||||
一塔寺花丸(*1) | ○ | |||||||||||||||||||
著者名\巻数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
新山たかし | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |||||
さがわゆめこ | ○ | ○ | ||||||||||||||||||
押田J・O | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||||
タイジャンホクト | ▲ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||
山口せーら | ○ | |||||||||||||||||||
牧野博幸 | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ||||||||||||
夜麻みゆき | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ||||||||||||||
中井一輝 | ▲ | ▲ | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||
田村きいろ | ▲ | ▲ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | |||||||||||
染宮和子 | ○ | |||||||||||||||||||
池野カエル | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |||||||
たるみ | ○ | ○ | ||||||||||||||||||
成田美穂 | ○ | |||||||||||||||||||
野国由紀 | ○ | |||||||||||||||||||
三剣もとか | ○ | ◎ | ||||||||||||||||||
浅野りん | ▲ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | |||||||||||||||
川本祐太郎 | ○ | ○ | ||||||||||||||||||
梶原あや | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||||||||||
越後屋サイバン | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ||||||||||
幸宮チノ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ||||||||||||||
村上ゆみ子 | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ● | ● | |||||||||||||
坂本太郎 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||||||||||
ちるみる | ○ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | |||||||||||||||
藤田佳子 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||||||||||
白井寛 | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ||||||||||||
曾我晃生 | ○ | |||||||||||||||||||
ふじいたかし | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||||||
魔神ぐり子 | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ○ | |||||||||||||||
藤森ナッツ | ○ | ○ | ||||||||||||||||||
原淳 | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||||
著者名\巻数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
小椋みき | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ | |||||||||||
山崎渉 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |||||||||||
あずき・まめお | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||
浅村イオン | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ||||||||||||||
水谷みか | ○ | ○ | ||||||||||||||||||
白鳥ハト | ○ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | |||||||||||||
金田一蓮十郎 | ○ | ○ | ||||||||||||||||||
丹羽俊晴 | ○ | |||||||||||||||||||
神崎りゅう子 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | |||||||||||||
野原すずかけ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||
神田達志 | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ||||||||||||||
プチ侍 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||
川﨑ゆうり | ○ | ○ | ||||||||||||||||||
結城まさのへ | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||||
なかがわはてな | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||||||||||
うずら野浩二 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||||||||||
天空宇宙流 | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||||
キャンディー・サトウ | ○ | |||||||||||||||||||
汰繭天湖 | ○ | |||||||||||||||||||
堀口レオ | ○ | |||||||||||||||||||
藤野ゆきお | ○ |
※ 著者名は初掲載が早い順。
(*1) 特別附録として「わしマンガ」収録。
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関連項目
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