マクマホン(Mac Mahon)とは、2014年生まれのイタリア産馬の競走馬である。
概要
父Ramonti、母Martino、母父Celtic Swing(セルティックスウィング)という血統。2014年5月2日に誕生。
マクマホンの父系
現代サラブレッドの父を辿ると過半数が辿り着くとも言われている無敗の名馬Nearco(ネアルコ)は、稀代の馬産家フェデリコ・テシオによってイタリアの地で生産され、種牡馬としても大成功を収めた。
その子Nearctic(ニアークティック)はカナダで成功し、更にその代表産駒Northern Dancer(ノーザンダンサー)は、カナダ産馬として初めてケンタッキーダービーを制し、引退後は種牡馬として空前絶後の大成功を収めた。
そのノーザンダンサー産駒のうちの一頭、トライマイベスト(Try My Best)は、アメリカ生産、アイルランド調教のGI馬である。5戦4勝で早期に引退したものの種牡馬としてヨーロッパで成功し、イタリアのリーディングサイアーにもなった。なお、同馬は高齢で日本に輸入されたが、その2年後死亡したため日本では実績を残せていない。
その代表産駒の1頭であるラストタイクーン(Last Tycoon)は、アイルランドで生まれフランスで調教され、G1を3勝した。種牡馬としてもヨーロッパやシャトル先のオーストラリアで成功した。日本に輸入された後は桜花賞馬アローキャリーを輩出するなど一定の実績を収めたものの、日本での産駒よりもどちらかというと持込馬キングカメハメハの母父として有名という印象である。
そんなラストタイクーン産駒のMarju(マルジュ)はG1は1勝で3歳時に引退したものの1992年から始まった種牡馬生活は成功。ジャパンカップへの出走が有名な香港馬インディジェナスなどを輩出し、2011年の種付けで生まれたラストクロップからはGI2勝馬サトノクラウンを輩出している。
Martino Alonsoは、そんなMarju産駒の一頭。アイルランド産馬でイタリアの競争で活動。重賞の勝利こそなかったものの9勝を収め、ローマ賞(当時G1)を2着、ヴィットリーオ・ディ・カプア賞(当時G1)とエミリオ・トゥラティ賞(当時G2)を3着などという実績を残した。とはいえ、この実績では種牡馬としての人気を集めるには厳しかったらしく、どうも初年度産駒は1桁だったらしい。
そんなわずかな初年度産駒の中から生まれたのがフランス産馬Ramonti(ラモンティ)である。イタリアでデビューし、パリオーリ賞(イタリア2000ギニー、当時G2)の勝利後、デルビーイタリアーノ(イタリアダービー、当時G1)では2着に終わったものの、その後ヴィットーリオ・ディ・カープア賞(当時G1)などを勝利して香港マイルでも3着となった後、ゴドルフィンに購入されて最終的にGI5勝を挙げた。
余談であるが、Martino Alonsoはラモンティへの注目が集まったことで金になるとでも思われたのか2009年に誘拐されたそうだ。シャーガーとは違い無事翌年に発見されたようであるが。
ラモンティは種牡馬入り後の初年度にはアイルランドで、翌2010年からはイタリアで繋養されたが、そんなラモンティ産駒の1頭がこのイタリア産馬マクマホンである。
イタリア競馬
ミルコ・デムーロ騎手「(競争で得た賞金は)支払われているみたいだけど、半年以上遅れているみたい。だから、みんなどうやって生きているのか…。心配になるね。」(netkeibaの記事
より)
イタリアは、古くは先述のネアルコを生産した国である。また、日本で成功した種牡馬の1頭にイタリア調教馬トニービンを挙げることに異論のある人は少ないだろう。しかし、現代競馬でイタリア産馬やイタリア調教馬の存在感は薄く、むしろイタリア競馬の衰退について聞く機会が多いかもしれない。サラブレッドを用いない繋駕速歩競走の方が人気があるといった事情を考慮するとしても、1年の生産頭数は僅かに600頭前後となっている。
冒頭のミルコ・デムーロ騎手(4年連続でイタリアのリーディングジョッキー、Rakti[1]でデルビーイタリアーノ勝利)の父はかつて騎手であったが、イタリア競馬の成り行きを不安視してか日本の騎手免許を取ることに決めた息子に対し「イタリアを出た方がいい」とまで言ったという。
この状況ではグレードの維持も難しく、先ほど登場した競争も
- ローマ賞 G1→G2
- ヴィットリーオ・ディ・カプア賞 G1→G2
- エミリオ・トゥラティ賞(2008年にカルロ・ヴィッタディーニ賞に改名) G2→G3
- パリオーリ賞 G2→G3
- デルビーイタリアーノ(イタリアダービー) G1→G2
と軒並み格下げの憂き目にあっている。
1884年から行われてきた歴史あるダービーでさえ2009年からG2に降格(ついでに2008年からは2200mに短縮)し、2019年にはG1競争が消滅。2020年には国際セリ名簿基準書における格付けがパート1国からパート2国に降格し、競馬主要国ではなくなったと認定されたような状況である。
そんなイタリア競馬であるが、ヨーロッパ内では国境を超えたレース遠征が頻繁に行われることもあり、近年ではデルビーイタリアーノの出走馬の大半が海外馬となっている。
一例として、ディープインパクト産駒の七夕賞勝ち馬アルバートドックがイタリアで繋養され、2022年のリーディングサイアーとなったことが報道されているが、同馬はデルビーイタリアーノにも3頭の産駒を出すことに成功している。但し、出走馬15頭中イタリア産馬は3頭、つまり全てのイタリア産馬がアルバートドック産駒であった。(このレースでは産駒のTempestiが2着に健闘している。因みにディープインパクト直系の馬としては、2024年のデルビーイタリアーノでドイツから遠征してきたサクソンウォリアー産駒Bornaが勝利を挙げている。)
2016年、2018年、2019年の勝ち馬が馬産を行っていない香港に輸出されて改名されるなど、種牡馬にならない馬が増えているが、そんなデルビーイタリアーノの2017年の勝ち馬がこのイタリア産馬マクマホンである。
競走実績
海外でも馬主として活動している日本人馬主は多く、2021年のデルビーイタリアーノ勝ち馬Tokyo Goldも吉田照哉社台ファーム代表がフランスで所有していた馬である。(ニュースによると
後にインドで種牡馬入りしたとか。)そのうちの一人、島川隆哉がこの馬の所有者である。
3歳に入った2017年にサン・ジュゼッペ賞(2100m)を勝利し、リステッド競走のエマヌエーレ・フィリベルト賞(2000m)も勝利で3連勝となった。先ほどは島川の所有と書いたが、海外では現役馬の馬主変更が良く行われており、馬主となったのはこのレース後のことであったようだ。
4戦目は初重賞のデルビーイタリアーノ(2200m)。騎手はクリスチャン・デムーロ。先述のミルコ・デムーロ騎手の14歳年下の弟で、こちらもイタリア競馬の苦境によって現在はフランスにメインの騎乗の場所を移している。日本でもGIを獲得するなど活躍している名手の騎乗により、デルビーイタリアーノを5馬身差で勝利した[2]。因みにYoutubeに動画が投稿されていたが結構快勝感のある勝ち方である。あと実況がメックマホーンに聞こえる上に2着馬のBack on Boardと聞き分けにくかった。
5戦目に選んだのはフランスの3歳馬G1であるパリ大賞(2400m)は、9頭中の8着と大敗。
6戦目はイタリアに戻り、G2のフェデリコ・テシオ賞(2200m)に出走も3着。7戦目は騎手が変わり、この年からG2に降格したローマ賞(2000m)に出走も2着と地元でも勝ち切れない。
8戦目に選ばれたのは12月に行われるカタールダービー(2000m)であった。ここでイタリアダービー以来の勝利。ついにGI馬…といいたいところだが、カタールはパート3国。このレースは国際グレードではないため、さすがに名乗りにくいか。
4歳になり、迎えた9戦目は再びカタールのアミールトロフィー(2400m)。こちらもローカルG1[3]であるが、こちらは4着。
10戦目はイタリアのG2のフェデリコ・テシオ賞(2200m)に再び出走も4着。2018年9月のこのレースを最後に引退した。
オーナー
ここで島川隆哉オーナーについて触れておこう。実業家であり、馬主としては島川の音読みからトーセン冠を使うことが多い[4]。トーセンジョーダンやトーセンラーが代表馬だろうか。
そんなオーナーだが、自らの所有馬を多く種牡馬入りさせており、最近ではエスティファームという自前の牧場に繋養しているようだ。
種牡馬入りさせた所有馬の例
- GIIIエプソムカップ勝ち馬トーセンレーヴ[5]
- トーセンファントム[6]
- GIII級4勝のトーセンブライト[7]
- トーセンモナーク[8]
- GII青葉賞勝ち馬ヴァンキッシュラン
- ミラアイトーン
- トーセンカンビーナ
他にもかつては主要なスタリオンで人気を集めたものの需要が少なくなったトーセンホマレボシ、トーセンジョーダン、トーセンラーなども種牡馬として2024年現在エスティファームに繋養されている。
そんな島川オーナーによってマクマホンは日本に種牡馬として輸入された。
種牡馬入り
実績としてはGII1勝+ローカルGI1勝であるが、島川オーナーは初年度の2019年は34頭、2020年は48頭、2021年は44頭と所有する繁殖牝馬の多くをマクマホンと配合させている。
母ウインドインハーヘアのトーセンソレイユや、ペルーやブラジルのGI勝ち馬など最初の3年間の繁殖牝馬のラインナップから期待のほどがうかがえる一方で、島川オーナーと無関係な種付けは皆無で、「プライベート種牡馬」という言葉にふさわしい状況であった。
2022年に産駒がデビュー。(因みに同年にはタスティエーラなどMarju直仔のサトノクラウン産駒もデビューしている)
産駒のサムタイムアゴーが南関東競馬最初の新馬勝ち馬となったものの、2024年8月8日現在では中央競馬での勝利はトーセンアウローラの1勝のみ。地方では49勝しているものの、地方重賞となるとスタンレーが名古屋競馬の中京ペガスターカップを勝ったのみである。
デビュー年の2022年には既に種付け頭数が19頭に減少していたが、同年に島川オーナーがなんとGI7勝の名馬ハイランドリール[9]を輸入。受胎条件200万円とGI7勝馬に相応しく高額に設定されたのもあり、島川オーナー以外の申し込みは少数に留まったようであるが、それでも種付け数37頭を集めた。そうなると煽りを食ったのがマクマホンの種付け数であり、この年に初めて受胎条件50万円の種付け料が設定されたものの僅か3頭の種付けに留まった[10]。
個人馬主の所有であることもあり、本馬も産駒もあまり情報が出てこない傾向にはあるが、2024年デビュー世代は2021年の種付け世代で30頭以上いることもあり、まだ完全に希望を捨てる必要はないかもしれない。イタリアの平地競馬同様厳しい戦いではあるが、これからの大逆転に期待したいものである。
あるスタンドにはフェデリコ・テシオを記念するプレートが掲げられている。(中略)
その碑文の最後は琴線に触れるようなものだった。
「世界中のサラブレッドの幸運のために、歴史が絶えずイタリア競馬にふさわしい未来を支持しますように」。
この言葉が真実であることをただ祈るばかりである。「サンシロの美貌も虚しく衰退し続けるイタリア競馬
」By Tom Peacock
血統表
| Ramonti 2002 鹿毛 |
Martino Alonso 1994 鹿毛 |
Marju | *ラストタイクーン |
| Flame of Tara | |||
| Cheerful Note | Cure the Blues | ||
| Strident Note | |||
| Fosca 1995鹿毛 |
El Gran Senor | Northern Dancer | |
| Sex Appeal | |||
| La Locandiera | Alleged | ||
| Moon Ingraver | |||
| Miss Sultin 2004 鹿毛 FNo.16-a |
Celtic Swing 1992 黒鹿毛 |
*ダミスター | Mr. Prospector |
| Batucada | |||
| Celtic Ring | Welsh Pageant | ||
| Pencuik Jewel | |||
| Miss Caerleon 1998 栗毛 |
Caerleon | Nijinsky II | |
| Foreseer | |||
| Satin Pointe | Sadler's Wells | ||
| Jalapa |
クロス:トライマイベスト、El Gran Senor 15.63% 5×3(15.63%)、Northern Dancer 4×5×5(12.50%)
- 父ラモンティはGI5勝。
- 母ミススルティンはアイルランド産馬でイタリアで3勝。
- 母父セルティックスウィングはフランスダービーなどGI2勝で、代表産駒はテイクオーバーターゲット。更にその父ダミスターは日本に輸入され、トロットスターの父となった。
関連リンク
- Prestazioni di MAC MAHON - SNAI Ippica
…マクマホンの戦績等 - 【血統値】新種牡馬マクマホンの正体 〝ダービーオーナー〟島川氏の切り札となれるか
- 【血統値】〝トーセン〟島川オーナーの果敢な挑戦 2か国でダービー制覇マクマホンの未来は? ディープインパクト半妹との融合に望み
関連項目
脚注
- *ラクティ、日本のマイルチャンピオンシップにも出走し14着(この際は別の騎手)
- *このときC.デムーロ騎手は同競争2勝目、2024年現在5勝
- *2024年に国際G3も取得した
- *娘に反対された、ストックが尽きたという理由で使わなかった年もあり、以降も馬によって使ったり使わなかったりである
- *半姉にGI6勝のブエナビスタ、全妹にGI馬のジョワドヴィーヴル
- *自家生産馬ブレイブスマッシュが重賞勝利、オーストラリア移籍後GI2勝
- *自家生産馬ハイランドピークがGIIIエルムステークス勝利
- *半兄にGI馬アサクサデンエン、半弟にGI3勝馬ヴィクトワールピサ
- *因みに単勝1.3倍の一番人気で出走した香港ヴァーズでサトノクラウンの2着に敗れた
- *全てエスティファームの繁殖牝馬
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- アンジュデジール
- インティ
- ウインブライト
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