モズカッチャン(Mozu Katchan)とは、2014年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牝馬。
主戦騎手を務めた和田竜二とミルコ・デムーロの間でちょっとした因縁のバトル(?)を繰り広げた、ミルコ曰く「一番可愛かった馬」。
主な勝ち鞍
2017年:エリザベス女王杯(GⅠ)、フローラステークス(GⅡ)
概要
父*ハービンジャー、母サイトディーラー、母父キングカメハメハという血統。
父は2010年のキングジョージを大差勝ちしたことで知られる。種牡馬としてもディアドラ、ペルシアンナイト、ブラストワンピース、ノームコア、ナミュールなどを輩出し成功を収めた。モズカッチャンはディアドラやペルシアンナイトと同じ3年目の産駒。
母は不出走。伯母に南部杯などを勝ったダートの名牝ゴールドティアラがいる。モズ軍団のオーナーの所有で、産駒は全てモズ軍団である。モズカッチャンは第3仔。
母父は説明不要の非SS系筆頭の大種牡馬。
2014年2月27日、日高町の目黒牧場で誕生。代表夫婦と数名のパート従業員からなる牧場で、同牧場の育成部門として立ち上げられたばかりのステーブル・キズナの第2期生として育成された。
オーナーはモズアスコット、モズスーパーフレアなど「モズ」冠名を用いるキャピタル・システム。
馬名意味は「冠名+人名愛称」なのだが、「カッチャン」というのはオーナーの知人男性の渾名で、「牝馬なのに男の名前を間違えて付けてしまった」とのこと。
ローズS以降の主戦を務めたミルコ・デムーロはモズカッチャンについて「めっちゃ可愛かった、あの馬」「顔も可愛かったけど、お尻がすごくキレイだった(笑)。もうね、トモがムキムキプリプリなの! 丸くて本当にきれいなお尻をしてたね」と語っている。
また厩舎で担当した古川秀太調教助手いわく「初めて会った時にモズカッチャンは、すごく気が強くて、結構うるさいところがあったんで、ちょっと怖かったです」「でもやっぱり、レースが終わった後はちょっと甘えてきたりとか、そういう可愛い面もありましたね」とのこと。
カッチャンは女の子
2歳~3歳春:リュージの悲願はまた届かず
シルクフェイマスやパドトロワを管理した、栗東の鮫島一歩厩舎に入厩。入厩当初の評価は「そこそこやれるかな?」ぐらいの感じだったそうである。
2016年12月24日、阪神・芝1800mの新馬戦で藤岡康太を鞍上にデビューしたが、当初の注目度は低く、75.5倍の10番人気という低評価だった。レースも特に見せ場なく6着に終わる。
明けて3歳、1月の京都・芝1800mの未勝利戦ではさらに評価を下げて131.5倍の13番人気。しかし和田竜二を鞍上に迎えたモズカッチャンは、内から鋭く脚を伸ばして3着に好走。
再び藤岡康太と向かった2月の小倉・芝1800mの未勝利戦では4.4倍の3番人気まで評価を上げると、後方から捲っていって突き抜け2馬身半差の快勝で勝ち上がる。
3月の中山・芝1800mの平場500万下ではまた和田竜二が手綱を取り、スローペースを前目で進めると4角でもう先頭に立ち、そのまま押し切って連勝。
この連勝でオークスを目指すことになり、和田竜二の進言もあって府中のフローラステークス(GⅡ)へ。37.2倍の12番人気という低評価だったモズカッチャンだったが、最内枠から中団のインに構えると、直線で馬群を捌いて前を追いかけ、最後のひと伸びで前2頭を差し切って勝利。目黒牧場は嬉しい重賞初制覇となった。
というわけで和田竜二とともに優駿牝馬(GⅠ)に参戦。この年のオークスは、桜花賞馬レーヌミノルは距離が厳しいと見られ4番人気、1番人気は桜花賞を断然人気で3着に敗れたリベンジに燃える超良血2歳女王ソウルスターリング。そのソウルスターリングと同じ1枠の最内1番に入ったモズカッチャンは15.0倍の6番人気となった。
レースはソウルスターリングを前に見ながら前目のインで進める絶好のポジションを確保。直線で先に抜け出したソウルスターリングを目標に脚を伸ばし、一度はかわしたかに見えたが、併せにいくモズカッチャンに対してクリストフ・ルメールとソウルスターリングは馬体を離してそこから突き放し、モズカッチャンは食い下がったものの1と3/4馬身差で悔しい2着。和田竜二はテイエムオペラオー以来の悲願となる中央GⅠ制覇をまたも逃した。
3歳秋:デムーロvsリュージ
夏休みを挟み、秋華賞を目指してローズステークス(GⅡ)から始動したモズカッチャン。しかしその鞍上にいたのは和田竜二ではなく、この年絶好調のミルコ・デムーロだった。リュージが久々に中央GⅠ勝てそうなお手馬なのに!NTRやんけ!とリュージのファンは歯がみしていたが、乗り替わりは競馬界の常なので仕方ない。
さてそのローズS、モズカッチャンは皐月賞1番人気だったファンディーナに次ぐ2番人気に支持されたが、パドックでイレ込んでしまったためかか、直線で馬群の中からインを突いて抜け出しを図るも伸びず7着。勝ったのは和田竜二のラビットランで、歯がみしていたリュージのファンは溜飲を下げた。
迎えた秋華賞(GⅠ)はソウルスターリングが天皇賞(秋)に向かったこともあり、アエロリット、ファンディーナ、ディアドラ、リスグラシューらで大混戦ムード。モズカッチャンはその4頭に次ぐ8.6倍の5番人気に支持された。
レースは雨で重馬場の中、ローズSで2着に逃げ粘ったカワキタエンカが1000m59秒1のハイペースで飛ばす展開。今回も内目の枠から前目のインにつけたモズカッチャンとミルコ・デムーロは、4コーナーで前が苦しくなると早めに並びかけに行き、直線入口で先頭に立つ。早め先頭で押し切ろうとしたが、後方から強襲してきたディアドラとリスグラシューにかわされ3着。実は1コーナーと2コーナーの間で右前脚を落鉄しており、ずっとそれを気にしながら走っていたそうで、それもあって早めの仕掛けで押し切ろうとしたのだったが……アンラッキーで悔しい敗戦となった。
続けてエリザベス女王杯(GⅠ)へ。ドバイターフを勝ったヴィブロスが頭ひとつ抜けた1番人気で、2番人気からは割れる中、モズカッチャンは7.7倍の5番人気。
クインズミラーグロとクロコスミアが後ろを少し離して逃げ、1000m通過は62秒0というスローだが縦長の展開。モズカッチャンはインの好位でレースを進めた。直線、2番手からクロコスミアが抜け出して押し切りを図るのを、内からマキシマムドパリと馬体を併せて脚を伸ばす。外からは2年前の二冠牝馬ミッキークイーンが追い込んできて、最後は粘るクロコスミアと3頭横並びとなったが、モズカッチャンがクビ差クロコスミアを差し切り、ミッキークイーンの追撃を振り切ったところがゴール板だった。
オークスと秋華賞の悔しさを晴らしたモズカッチャン。ミルコ・デムーロはこの年の中央GⅠ5勝目を挙げ、鮫島師は開業18年目で悲願のGⅠ初制覇。「グランプリ」冠の息子にグランプリボスで先を越されていた「モズ」の北川雅司オーナーは、こちらも嬉しいGⅠ初制覇となった。もちろん目黒牧場も初制覇である。
そして差し切られて2着のクロコスミアの鞍上は和田竜二。リュージのファンがまたも歯がみしたのは言うまでもないが、ミルコも和田から奪う格好になったモズカッチャンで和田のクロコスミアを差し切っての勝利にはちょっと引け目を感じたようで、ゴール後に馬上で和田から「おめでとう」と声をかけられ「ごめんなさい」と返したそうである。でも謝られてもリュージも反応に困ったんじゃないかなあ。
4歳~5歳:挑戦と善戦と
明けて4歳はドバイ遠征を目標に定め、京都記念(GⅡ)から始動。昨年のダービー馬レイデオロと皐月賞馬アルアインが揃って出走してくる中、アルアインを抑えて2番人気に支持されたが、スタートでやや後手を踏みいつもより後方からのレースとなってしまい、直線で内ラチ沿いから抜け出しを図るも競り負けて4着。
とはいえ無事にドバイから招待が届き、レイデオロ・サトノクラウンとともにドバイシーマクラシック(G1)に参戦。鞍上はミルコではなく弟のクリスチャン・デムーロとなった。クラウンがゲート内で立ち上がったり隣のホークビルもそれに釣られて立ち上がったりでゲート内で待たされたのもあったのか、最内枠からスタートですぐに前を塞がれてしまい、スローペースの中で馬群に閉じこめられて後ろに下げられる展開となってしまってはさすがに厳しい。直線内ラチ沿いで食い下がったものの6着。
帰国してしばし休み、札幌記念(GⅡ)から復帰。鞍上はミルコに戻り、混戦ムードの中6.9倍の4番人気。ここもゲートの出が悪く、大外枠もあって道中は一番後ろからに。直線がひとかたまりの大混戦になる中、馬群を捌いて大外に出し追い込んで、最後はサングレーザー、マカヒキと3頭横並びでゴール板に飛び込んだが届かず3着。
叩き良化型ということもあり、もう1戦府中牝馬Sを叩いてエリ女に向かう予定だったが、熱発で府中牝馬Sは回避となってしまい、そのままエリザベス女王杯(GⅠ)に直行。今回も混戦ムードの中、ノームコアやリスグラシューと人気を分け合ったが、3.6倍の1番人気に支持された。……実はこれが初めての、そして最初で最後の1番人気である。
レースは久々に悪くないスタートを切れ、前目のポジションを確保。スローペース逃げから下り坂でロングスパートを仕掛けたクロコスミアを内ラチ沿いから追いかけたものの突き放され、リスグラシューにもあっという間にかわされて、最後はリスグラシュー悲願のGⅠ制覇の後ろ、2着クロコスミアから3馬身離された3着。無念。
年末は有馬記念(GⅠ)に挑戦。オジュウチョウサンの参戦が話題を呼ぶ中、オジュウとともに好スタートを切って前目につけたが、直線伸びず8着まで。デムーロは「距離が長いです」とのコメントであった。
明けて5歳は金鯱賞(GⅡ)から始動。デムーロをペルシアンナイトに取られて久々に和田竜二に手綱が戻ったが、見せ場なく9着。レース後、右前浅屈腱炎を発症、現役引退となった。通算15戦4勝 [4-1-4-6]。
ちなみに2回目のエリザベス女王杯でもし1番人気になっていなければ、史上初の「生涯1番人気経験のない古馬GⅠ馬」になっていたところであった。
引退後
引退後は故郷の目黒牧場で繁殖入り。モズの馬なので初年度のお相手はグランプリボス。2年目はサンダースノーをつけ、3年目からはモズアスコットをつけているが2年続けて不受胎に終わっている。モズスーパーフレアと並ぶモズ軍団の代表牝馬として、良い仔を出していけるだろうか。
血統表
*ハービンジャー 2006 鹿毛 |
Dansili 1996 鹿毛 |
*デインヒル | Danzig |
Razyana | |||
Hasili | Kahyasi | ||
Kerali | |||
Penang Pearl 1996 鹿毛 |
Bering | Arctic Tern | |
Beaune | |||
Guapa | Shareef Dancer | ||
Sauceboat | |||
サイトディーラー 2006 黒鹿毛 FNo.10-a |
キングカメハメハ 2001 鹿毛 |
Kingmambo | Mr. Prospector |
Miesque | |||
*マンファス | *ラストタイクーン | ||
Pilot Bird | |||
*ベストブート 1999 栗毛 |
Storm Boot | Storm Cat | |
Aliata | |||
Bright Tiara | Chief's Crown | ||
Expressive Dance |
クロス:Danzig 4×5(9.38%)、Mr. Prospector 4×5(9.38%)、Northern Dancer 5×5(6.25%)
関連動画
関連リンク
- モズカッチャン | 競走馬データ - netkeiba.com
- モズカッチャンの故郷、目黒牧場 | 生産地だより
- 鮫島 一歩厩舎 古川 秀太 | 一般社団法人 日本調教師会
- 名手に導かれモズカッチャン女王杯制覇 ミルコ「ごめん」2着和田「おめでとう」
関連項目
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