ウインブライト(Win Bright、勝出光采)とは、2014年生まれの日本の競走馬である。芦毛の牡馬。
美浦・畠山吉宏厩舎所属、新冠町・コスモヴューファーム生産
馬主はウイン(ウイン冠で知られる一口馬主クラブ。ウインバリアシオンやウインクリューガー等)
主な勝ち鞍
2019年クイーンエリザベス2世カップ(GⅠ)、香港カップ(GⅠ)
2017年スプリングS(GⅡ)、2018, 2019年中山記念(GⅡ)
2017年福島記念(GⅢ)、2019年中山金杯(GⅢ)
概要
父ステイゴールド、母サマーエタニティ、母父アドマイヤコジーンという血統。
父は現役最終戦で香港GⅠを制し、種牡馬としてオルフェーヴルやゴールドシップなど個性的な産駒を多数送り出す名種牡馬。母は現役時代短距離を3勝、母父は2歳王者だったが故障や不振を経て6歳で安田記念を制した。ウインブライトは芦毛だが、これは母、母父から受け継いだものである。
全姉に阪神JF2着のウインファビラスがいる。5代母ミスブゼンはニュージーランドからの輸入馬であり、彼女からから広がる牝系にはコスモドリーム、ラッキーゲラン、シルクスキー、オースミシャダイ、ヤシマソブリンなどちょっと古いが活躍馬の多い、中々のファミリーだったりする。ウインブライトからだと、3代母ミスゲランで分岐するハクサンムーン・サトノレーヴ兄弟が近親として一番近いか。
コスモヴューファーム生産馬の例に漏れず、一口馬主クラブのウインRCにて募集された。募集額は1口8万円×400口の総額3200万円で、ウインRCの中では高値の方である。
なおクイズ早押し問題のネタとして使えそうな知識となるが、平成最後のGIである2019年の春の天皇賞を勝った馬はフィエールマンだが、平成最後にGI馬になったのは天皇賞の2時間後に香港で勝利を挙げた同馬である。
戦歴
好素材の期待馬から
美浦・畠山吉宏厩舎へ入厩し、前年に姉ウインファビラスが阪神JFを2着に好走し、函館にいた松岡正海が美浦まで乗り込みに来るなど周囲の期待は非常に高かったが、6月のデビュー戦では6着。内田博幸に乗り替った翌月の未勝利戦は5着と結果を残せず、北海道で夏を越した後の11月の未勝利戦で勝ち上がる。
その後ひいらぎ賞2着を経て、年明け初戦の若竹賞を勝利し初重賞であるスプリングSへと出走。
前走比ー12kgと馬体を大きく減らしながらも4コーナーで一気に捲ると、直線半ばで先頭に立ち後続の追撃を抑え重賞初制覇を果たす。この時2歳王者サトノアレスやアウトライアーズ等を抑えている。
続く皐月賞では大外17番枠を引き8着、ダービーも15着とクラシックは苦い結果となった。
秋は毎日王冠から始動し10着となるが、続く福島記念では道中3番手から4コーナー入口で先頭に立つとスズカデヴィアスやヒストリカルの追撃を抑えきり重賞2勝目を挙げた。
中山の鬼
4歳シーズンは年始の中山金杯から始動。福島記念と同様に先行策からの押し切りを図ったがセダブリランテスに交わされ2着。しかし続く中山記念ではペルシアンナイト等GⅠ馬3頭を相手に回しつつも、逃げるマルターズアポジーとアエロリットを4コーナーで一気に捲り、直線で捉えきり重賞3勝目を挙げた。
この頃になるとウインブライトに対し「中山巧者」の評価が定着するようになり、事実中山や小回りである福島で良績を残していた。
そして大阪杯へ挑んだが12着。休養を挟み秋はマイルに挑戦したが富士S10着、マイルCS9着と結果を残すには至らず。古馬の出られる中山1800~2200のGⅠがあったらなあ...と思ったのは筆者だけでは無いはずだ。
5歳となり、前年同様に中山金杯から始動。トップハンデの58kgを背負う事になったが、レースではいつもより控えた中団の位置から、直線で外へ進路を変えると力強く抜け出して勝利する。
しかし金杯の翌日、主戦の松岡正海が中山3レースのパドックにて騎乗馬に蹴られて右腕(右尺骨)を骨折するアクシデントが発生。だが僅か1ヶ月で復帰。以前から松岡はウインブライトの成長に"怪気炎"を上げており、ウインブライトに対する自信と、ウインブライトを失いたくない気持ちが現れている。実際、松岡は「ウインブライトはリーディング上位が乗るような馬」と表現している。
連覇のかかる中山記念ではドバイや国内GⅠを目標にしたGⅠ馬が5頭結集するなど面子が揃ったが、レースでは逃げるマルターズアポジーから離れた4番手を追走し、直線では先頭に立っていたラッキーライラックをゴール手前で捉え、中山記念の連覇を達成。これで重賞5勝目、中山では4勝目。また、ステイゴールド産駒による中央重賞100勝目となった。
2019年香港チャンピオンズデー~
次走は大阪杯ではなく香港のクイーンエリザベス2世カップを選択。
同レースにGⅠ馬で前年香港ヴァーズ2着のリスグラシューや、同じくGⅠ馬のディアドラも出走し、大衆の関心はこの2頭に向いていた。レース前の記者会見では、「ルメールでもデムーロでも無く、何で松岡なの?」という質問が飛び出したように、香港では松岡騎手の知名度も無かった。それに対し畠山師は「ウインブライトは松岡が乗ったときが一番走る」と豪語。日本国内では単勝8.5倍の4番人気だったが、現地では単勝48.35倍、複勝10.65倍と完全な伏兵扱いであった。
日本勢では本馬と前述の2頭、地元香港勢では香港ヴァーズと香港GCを勝ったExultantや前年王者Pakistan Star、香港カップを制した経験のあるTime Warp, Glorious Forever兄弟など、香港の中距離で活躍する各馬が揃っていた。
レースでは最内枠スタートとなり、スタートで若干出負けしたものの中団前でスムーズに追走する事ができ、手応え良く直線に入ると、残り300mで進路を確保し抜け出し、先行する前年王者Pakistan Starを力強い末脚で捉え、外から追い込む1番人気Exultantと2番人気リスグラシューの追撃を抑え、遂に悲願のGⅠ制覇を、初めての海外で達成した。タイムの1分58秒81はレコードタイム。4分の3馬身差であったが、ゴール前で松岡がガッツポーズする程の余裕があった。
GⅠ制覇は馬主のウインRCは2003年のNHKマイルカップ(ウインクリューガー)以来となる16年振り2頭目、畠山師は2013年のNHKマイルカップ(マイネルホウオウ)以来となる6年振り2頭目、騎手の松岡正海はJpnⅠも含めて2009年天皇賞(春)(マイネルキッツ)以来となる10年振り4頭目。勿論全員海外GⅠは初めてである。何の因果か、この香港チャンピオンズデー当日には、日本で天皇賞(春)が開催されていた。
レース後、松岡はインタビューに対し流暢な英語で対応した後、関係者と共に表彰式へ向かった。
その表彰式では、ウインブライトと関係者を讃え、音楽隊による君が代が演奏された。
折しも、日本では松岡騎手が勝った事のある天皇賞が開催され、数日後には退位・即位、それに伴う平成から令和への改元が予定されており、更にウインブライトが勝った中山記念では天皇陛下御在位30年を記念した慶祝競走として行われ、レース前に君が代が流されている。
沙田に流れる君が代を聴き、心に刺さった者も少なくないのでは無いだろうか。
クイーンエリザベス2世カップ以降、早くから秋シーズンはオールカマー→天皇賞(秋)→香港カップのローテーションを組む事が発表され、短期放牧を挟んで早々と帰厩し夏を美浦で過ごした。北海道に戻った際にはビッグレッドファームの種牡馬展示会で展示された。
そして挑んだオールカマーには前年の優勝馬レイデオロがおり、こちらも中山巧者で知られておりウインブライトは差の無い2番人気に推された。しかしレースでは道中好位を確保するが、残り600mを前にガシガシ手綱を扱くものの反応は薄く直線で失速。勝ち馬スティッフェリオから1.5秒離れた9着に惨敗。
中山芝2200mは1800mや2000mと違って外回りコースであり、自身が勝ち馴れた内回りコースとは勝手が違ったか、また元々鉄砲駆けするタイプでもなく、前走+11kgかつ在厩調整+美浦ウッドチップコースが工事で夏季閉鎖が響いたか...と負けた後に理由は次々と出てくるものである。
次走は予定通り天皇賞(秋)へ参戦。アーモンドアイやダノンプレミアムやサートゥルナーリアなどビッグネームが名を連ねる中、ここまで左回りでの戦績が2歳時の未勝利戦しかない他、陣営からも良化途上など弱々しい声が上がり、外枠も相まって単勝12番人気(148.9倍)とかなりの低評価だった。レースでは終始アーモンドアイをマークするように中団に構えていたが直線での伸びは今一つで8着(16頭立て)に敗れた。
2019年香港国際競走
天皇賞(秋)の後、予定通りに香港カップへの出走を表明。日本からは現役最強牝馬のアーモンドアイも出走を表明し、更に英愛チャンピオンSを勝ったMagicalが引退を撤回して挑戦するという報道もなされた。
しかし、最終的にMagicalは香港カップ出走を辞退。アーモンドアイは出走予定だったが香港への渡航直前に熱発を起こし、大事を取って出走を回避する事となった。その結果香港カップは8頭立てとかなり少なくなり、ディアドラやExultantが香港ヴァーズを選択するなど、面子は比較的薄くなった。
それでもかつて香港カップを制したTime Warp、Glorious Forever兄弟、過酷ローテで悲願のGⅠを制した後に香港へやってきたMagic Wand、香港ダービー馬で前走好内容のFurore、当地の名伯楽の秘蔵っ子Rise Highなどが出走。日本国内では1番人気に推されたウインブライトも、陣営からは調子が戻ってきていると明るい話題も出るようになったが、近走の成績が良くない事や大外枠(沙田2000mはスタートから第1コーナーまで170m程度しかなく、先行馬にとっては外枠不利)の為かブックメーカーの前売りオッズは5.5-6.5倍の4番手評価だった(1番手評価はFurore)。
レースではスタートはあまり良くなかったもののすぐに二の足がつき、Time Warp, Glorious Foreverの先行争いの後ろ、好位をキープする。内にムーア騎乗のMagic Wandを見つつ道中を進む。4コーナーを手応え良く回り直線に入ると、直線を目一杯使った追い比べとなる。外目から進出してきたFuroreを競り落とし、内で粘っていたGlorious Foreverを交わして一気に抜け出して先頭に立つが、残り50mで最内からMagic Wandが猛追。しかしウインブライトと松岡は人馬一体で粘り、Magic Wandをアタマ差押さえ込んでゴール。香港国際GⅠの春秋連覇を達成した。タイムは2分00秒52で、エイシンヒカリが2015年に記録したレースレコード2分00秒60を僅かであるが更新した。
なお、香港チャンピオンズデーと香港国際競走の両競走制覇はエイシンプレストン(01年香港Mと02, 03年QE2C)とモーリス(15年香港M、16年チャンピオンズMと香港C)、同一年海外GⅠ2勝は16年モーリス以来となる2頭目の記録である。
レース後に松岡は春同様に英語でインタビューを返し、下馬後に関係者へ飛びかかって抱き合うなど感情を爆発させた。なお、2019年の香港国際競走は、グローリーヴェイズが3馬身半差の圧勝で香港ヴァーズを、アドマイヤマーズが亡き近藤オーナーに捧ぐ香港マイルを、そしてウインブライトが香港カップを制し、2001年以来となる日本調教馬による香港国際競走3勝を達成した。
6歳以降
明けて6歳となり、中山記念からスタートする事が早々に発表されたが、2月に主戦騎手の松岡正海が落馬事故により大腿骨を骨折。普段からウインブライトの調教をつけているのも松岡であり、只の乗り替わり以上の打撃となる。急遽代打として短期免許で来日中のミナリク騎手が据えられ、その後モレイラ騎手を据えてドバイターフへ出走する事がウインより発表された。
中山記念ではラッキーライラック、ダノンキングリー等の実力馬が揃う中3番人気に推される。道中中団につけるものの、マルターズアポジーの刻むペースが思いのほか遅く(1000m59秒3)、位置取りが後ろ過ぎた上に反応も弱く伸びを欠き、0.9秒差の7着に敗戦する。
その後ドバイターフ出走の為にドバイへと輸送されるが、新型コロナウイルス感染拡大を受けて輸送後にドバイワールドカップデー中止が決定され、出走すること無く帰国。その後宝塚記念に向けて外厩のBRF鉾田で調整が進められていたが、左前脚の蹄に蟻洞(蹄の奥に空洞が出来る病気)を起こし、宝塚記念も回避して休養する事となった。年が明けてからついてなさ過ぎる。
休養中に蹄も良くなり、天皇賞(秋)を叩いて香港カップへ出走するプランが立てられた。骨折で休養していた松岡正海も復帰。天皇賞(秋)では12頭立ての最低人気で、道中中段から進めて10着と良いところは無かったが、出走後の調教で明らかな良化が見られると陣営はコメントしていた。そして香港カップを最後に現役を引退、ビッグレッドファームで種牡馬入りする事が発表された。
そして香港カップ本番。日本からは本馬の他ノームコアとダノンプレミアムが遠征し、地元からは一昨年の香港二冠馬で復調傾向のFuroreや3年前の本レース勝ち馬Time Warp等、海外からは欧州中距離の名牝、GⅠ7勝のMagicalに重馬場巧者として知られるSkalletiが出走。昨年同様の8頭立てとなった。
レースでは大外8番枠からスタートし、道中は先行する3頭を見る4番手、丁度中団から進める。折り合いは問題なく、3, 4コーナー中間辺りからペースが加速するもそれに対応し、4コーナー出口から松岡が満を持して追い始める。直線外目から伸び続け、粘っていたダノンプレミアムを交わすも更に外から伸びるノームコアに差される。しかし内から伸びてきたMagicalを僅かに封じ、2着。有終の美こそならなかったものの、香港巧者の意地を見せた。
帰国後、12月23日を以て競走馬登録を抹消、引退となった。引退後は前述の通りビッグレッドファームで種牡馬入りする。
香港ジョッキークラブからのこの短い呟きこそ、彼らの香港スターたる証と言えよう。
特徴
- 「1800m〜2000m」「コーナー4つ」「右回りで対称型のトラックコース」「若干時計がかかる」なら有数の実力者である。それに合致するのが中山競馬場や沙田競馬場である。涼しい時期ならなお良い。
一方で休み明けは全然で、得意条件でもコロっと負けたりするなど中々調整の難しい馬でもある。 - 母譲りの芦毛だが、模様の関係上顔が太眉に見える。特に左目がそれっぽく見える上にメンコをしていても隠れきれず見える。なおステイゴールド産駒なので少し充血した白眼が見える為威圧感が凄い。
主な記録
- 海外調教馬初のクイーンエリザベス2世カップ、香港カップの同一年両制覇
(香港調教馬は2005年Vengeance of Rain、Designs on Romeが達成
GⅡ時代のQEⅡCを含めれば1999年の仏国のJim and Tonicが達成)
血統表
ステイゴールド 1994 黒鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
ゴールデンサッシュ 1988 栗毛 |
*ディクタス | Sanctus | |
Dronic | |||
ダイナサッシュ | *ノーザンテースト | ||
*ロイヤルサッシュ | |||
サマーエタニティ 2005 芦毛 FNo.18 |
アドマイヤコジーン 1996 芦毛 |
Cozzene | Caro |
Ride the Trails | |||
アドマイヤマカディ | *ノーザンテースト | ||
*ミセスマカディー | |||
オールフォーゲラン 1993 黒鹿毛 |
*ジェイドロバリー | Mr. Prospector | |
Number | |||
ミスゲラン | マルゼンスキー | ||
ゲラン |
関連動画
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- アンジュデジール
- クラックスマン
- サトノアレス
- サブノジュニア
- サルサディオーネ
- サングレーザー
- シロニイ
- スワーヴリチャード
- ネイチャーストリップ
- ヒガシウィルウィン
- ファッショニスタ
- ファンディーナ
- ブリックスアンドモルタル
- ベンバトル
- ペルシアンナイト
- マクマホン(競走馬)
- モズカッチャン
- ヤマニンアンプリメ
- ヨシダ(競走馬)
- リエノテソーロ
- レーヌミノル
▶もっと見る
- 6
- 0pt