サルサディオーネ(英:Salsa Dione)とは、2014年生まれの日本の競走馬。栗毛の牝馬。
6歳で大井に移籍してから覚醒し、ロケットスタートからの逃げ一本で9歳まで牝馬ダート戦線を牽引し続けた地方の女王。
所属は羽月友彦厩舎(栗東)→堀千亜樹厩舎(大井競馬場)。大井転厩後の主戦騎手は矢野貴之。
主な勝ち鞍
2020年:マリーンカップ(JpnⅢ)、クイーン賞(JpnⅢ)、報知グランプリカップ(南関東SⅢ)
2021年:スパーキングレディーカップ(JpnⅢ)、日本テレビ盃(JpnⅡ)、スパーキングサマーカップ(南関東SⅢ)
2022年:さきたま杯(JpnⅡ)、ビューチフルドリーマーカップ(岩手M1)
左回りの逃亡者
青森生まれのデカい女神
父ゴールドアリュール、母サルサクイーン、母父*リンドシェーバーという血統。
父は*サンデーサイレンス産駒唯一の中央ダートGⅠ馬で、スマートファルコン、エスポワールシチー、コパノリッキー、クリソベリルなどを輩出したダート界の大種牡馬。
母は地方で19戦2勝……と書くと平凡だが、2002年の南関東牝馬三冠で浦和桜花賞2着、関東オークス5着と好走し、そしてデビュー戦以来となる2勝目を三冠目である南関東GⅠ・東京プリンセス賞で挙げた実力馬。ゴールドアリュールが勝ったジャパンダートダービーにも出走している(10着)。
母父は1990年の朝日杯3歳S勝ち馬で、マルゼンスキーのレコードを更新したことで大いに注目されたが、弥生賞のあと故障で引退した外国産馬。種牡馬としての産駒は直系も母父としてもほぼ地方のダート馬である。
半妹で同馬主のサルサレイアは、中央時代は羽月厩舎所属、現在は堀厩舎所属と同じようなルートを辿り、一緒のレースに出ることも多かった(レイアの方は堀厩舎と川崎の内田勝義厩舎とを行ったり来たりしている)。
2014年5月3日、青森県東北町の荒谷牧場で誕生。
……人によっては「え、青森生まれの馬なんて、グリーングラスの昔ならともかく今もいるの?」と思われたかもしれない。衰退したとはいえ、青森では現在もサラブレッドの生産が続けられており、日本のサラブレッド生産頭数の1%ぐらいが青森産なのだ。規模としては九州産馬とどっこいぐらいである。
中央GⅠ馬こそ2001年の阪神JFを勝ったタムロチェリーが最後だが、地方のJpnⅠ馬では2016年のジャパンダートダービーを勝ったキョウエイギアや、直近の中央重賞馬では2020年のダイヤモンドSを単勝325.5倍の最低人気で勝ったミライヘノツバサ(タムロチェリーの孫)がいる。サルサディオーネはそんな青森産馬の一頭である。
脚質はデビューから引退まで逃げ一本という生粋の逃げ馬。真っ赤なメンコを目印に常にロケットスタートでハナを奪いにいくので、レースを見ていてもたいへんわかりやすい馬である。道中緩みのないラップを刻む単騎マイペース逃げで後続のスタミナをすり潰して完封というのが勝ちパターンだが、それだけに競りかけられたり他の逃げ馬にハナを奪われたりすると脆いところがあった。
また、右回りの大井所属なのに右回りが非常に苦手で、右回りのレースでは[0-0-0-11]と、生涯を通して3着以内が一度も無い、というか掲示板に入ったことすらない(右回り11戦で2桁着順が8回、最高は京都での3歳500万下での6着)。そのため大井移籍後も主戦場は左回りの川崎と船橋であった。
馬体重が520~530kg台と、牝馬としてはトップクラスにデカい。横幅が広いのではなく、背が高いタイプである。まあ牡馬にはこのぐらいの馬は普通にいるのでデカすぎて目立つというほどではないが、並の牡馬より背が高く、牝馬限定戦の出走時は彼女より馬体重が大きい馬はまずいない程度にはデカい。
堀厩舎の担当厩務員によると、朝一番の挨拶は「おはよう!女王様」。普段は「サーちゃん」と呼んでいるそうな。普段の性格は人見知りだが、レースでは負けん気の強さを発揮するタイプとのこと。
サルサディオーネはその担当の福田厩務員のことが大好きだったそうで、菅原オーナー曰く「サルサディオーネは福田さんと結婚したかったと思います」とのこと。
2歳~5歳・中央所属時代
栗東の羽月友彦厩舎に入厩し、2016年11月にデビュー。デビュー戦は芝だったが13着に惨敗したため、12月の未勝利戦はダートに回りここを逃げ切り勝ち。
明けて2017年、3歳初戦は再び芝の福寿草特別(500万下)に出走したが9頭立ての8着に終わり、以降は(後述の1戦を除いて)ダートに専念する。
7月に昇級3戦目で500万下をやはり逃げて勝ち抜け、8月のレパードステークス(GⅢ)で重賞初挑戦。12番人気ながらしぶとく逃げ粘り、ローズプリンスダムに差されたものの2着の大健闘。ちなみに勝ったローズプリンスダムも11番人気という大波乱で、単勝6630円、ワイド1万7360円、馬連9万5320円、馬単25万1840円、3連単80万7250円という高配当がついた。
しかしその後は2桁着順の惨敗続き。2018年、4歳となり、2月のエンプレス杯(JpnⅡ)で3着に粘ると、4月の福島牝馬S(GⅢ)で久々に芝を試されたが12着に終わり、夏に1000万下に降級となる。すぐに自己条件の三浦特別を勝つと、8月にBSN賞(OP)を勝ってオープンに復帰した。
11月にJBCレディスクラシック(京都)でJpnⅠ初挑戦もハナを切れず4コーナーで沈んで12着。続くクイーン賞(JpnⅢ)は前走に続いてアイアンテーラーにハナを奪われ振り切られたが、自身も2着に粘りこんだ。
5歳となった2019年はスパーキングレディーカップ(JpnⅢ)とBSN賞で2着になったものの、それ以外は特筆することもなく、中央のレースではBSN賞以外は2桁着順の惨敗。11月の霜月S(OP)13着を最後に中央登録を抹消され、大井競馬場の堀千亜樹厩舎(地方転出後のエイシンチャンプが所属した厩舎だったりする)に転厩となった。
6歳・大井転厩、相棒との出会い、女傑覚醒
6歳となり移籍初戦のTCK女王盃(JpnⅢ)はクレイジーアクセルにハナを奪われ逃げ争いとなって消耗、一緒に沈んで10着に終わったが、続く2月の報知グランプリカップ(南関東SⅢ)を逃げ切り勝ち、地方重賞ながら重賞初制覇。
3月のエンプレス杯ではまたクレイジーアクセルに先頭を奪われて一緒に沈没するパターンで11着だったものの、このレースで相棒となる矢野貴之騎手と出会う。
続いては4月のマリーンカップ(JpnⅢ)。天敵クレイジーアクセルはいないので気分よくハナを切り、マイペースに逃げて直線でも後続を突き放して2馬身差の鮮やかな逃げ切り勝ち。自身はもちろん、矢野騎手・堀調教師もこれが嬉しいダートグレード競走初勝利となった。
5月の川崎マイラーズ(SⅢ、西啓太騎手)は7着に沈んだが、6月の京成盃グランドマイラーズ(SⅢ、山崎誠士騎手)は逃げ粘ってカジノフォンテンのクビ差2着。
7月のスパーキングレディーカップからは鞍上が矢野騎手に戻りファッショニスタの3着。これ以降は騎乗停止を除いて全戦矢野騎手が手綱を取っている。9月の宮前オープン(川崎)はさすがに格の違いを見せて6馬身差で逃げ切り圧勝。
日本テレビ盃は後続につつかれて超ハイペースになってしまい9着に沈没、JBCレディスクラシック(大井)も苦手な右回りで7着に沈んだが、12月のクイーン賞(JpnⅢ)ではトップハンデの55kgをものともせず、得意の単騎マイペース逃げで1番人気の中央馬アッシェンプッテルに2馬身半差、3番手以下には10馬身以上の大差をつける独走で圧勝、重賞3勝目を挙げた。
この年ダートグレード競走2勝の活躍で、満場一致でNARグランプリ4歳以上最優秀牝馬を受賞した。また、2020TCKミストレス賞も受賞。
7歳・衰え知らずの女傑
明けて7歳の2021年は報知グランプリカップから始動、連覇を狙い1番人気も3コーナー終わりあたりで捕まりまさかの5着。
続くエンプレス杯は昨年11着に沈没していることもあってか6番人気だったが、マルシュロレーヌに差し切られたものの3着マドラスチェックは振り落として6馬身突き放し、負けてなお強しの2着でNARグランプリ馬の意地を見せる。
4月のマリーンカップは直線でマドラスチェックと叩き合っていたら外からテオレーマの豪脚に置いていかれて3着。
続いて5月のかしわ記念(JpnⅠ)に挑んだが、さすがに相手が悪かったか3コーナーでもうカジノフォンテンに捕まって沈み8着。単勝万馬券の低評価を覆すとまではいかなかった。
気を取り直して7月のスパーキングレディーカップ(JpnⅢ)。雨の中、気分よく得意のマイペース逃げに持ち込むと、直線では後続を突き放す一方でJRA勢を歯牙にもかけず6馬身差の圧勝(まあ1番人気テオレーマが熱中症で沈んだのもあるけども)。地方所属場の同レース勝利は13年ぶりの快挙になった。
8月のスパーキングサマーカップ(SⅢ)も単勝1.6倍に応えて、紅一点ながらティーズダンクの猛追を振り切って3着には4馬身半差をつける圧巻の逃げ切り勝ち。
そして9月の日本テレビ盃(JpnⅡ)では復帰戦のクリソベリル(単勝1.5倍)に次ぐ2番人気(5.4倍)。このレースも紅一点だったが、大外からハナを切って毎度の単騎マイペース逃げに持ち込むと追走してきたクリソベリルをまるで相手にせず、追い込んできたダノンファラオを振り切って逃げ切り勝ち。ダートグレード競走4勝目、牡馬相手のダートグレード競走では初勝利を挙げた。日本テレビ盃を地方馬が勝ったのはフリオーソ以来11年ぶり、牝馬の勝利に至っては1995年のケーエフネプチュン以来26年ぶりでJpnⅡとなって以降では初の快挙である。
この3連勝で11月のJBCレディスクラシック(金沢)では3番人気(4.3倍)に支持されたが、苦手な長距離輸送&大の苦手の右回り&初体験の金沢の三重苦ではさすがに力を発揮できず10着惨敗。
気を取り直して年内最終戦は連覇を目指す12月のクイーン賞。牝馬には過酷なトップハンデ56.5kgもなんのその、逃げて直線で突き放す勝ちパターンに持ち込んだが、ゴール寸前でダイアナブライト(53kg)にクビ差かわされ惜しくも2着。同レース初の連覇は逃したが、3着は5馬身突き放しており、実力のほどを見せつけるレースであった。
この年もダートグレード競走2勝、牡馬相手に勝利を挙げたこともあり、満場一致で2年連続のNARグランプリ4歳以上最優秀牝馬を受賞。また、大井競馬場の年間表彰である2021 TCK大賞も受賞した。この年は大井競馬場じゃ一度も走ってないのに。
8歳~9歳・奮闘すれど悲願には…
8歳となる2022年も現役続行。1月の東海ステークス(GⅡ)に登録しており2019年の霜月S以来となる中央出走かと思われたが、輸送を嫌ってかこれを回避。
というわけで始動戦は2月2日の川崎記念(JpnⅠ)。いつも通り好ダッシュでハナを切ったが、前年のかしわ記念に続いてカジノフォンテンにマークされたのと、2100mはさすがに距離も長かったか、3コーナーで早くも捕まり9着に敗れた。
続いては5度目の挑戦となる、川崎・船橋の牝馬限定ダートグレード競走で唯一勝てていない3月のエンプレス杯。いつも通りのスタートダッシュから単騎逃げでレースを引っぱり直線でも粘ってレーヌブランシュの追撃は凌ぎきったが、最内を強襲してきたショウナンナデシコには差し切られ惜しくも2着。
当初はエンプレス杯で引退・繁殖入りの予定だったそうだが、2022年のJBCレディスクラシックは待ちかねた左回りの盛岡競馬場。オーナーと陣営の話し合いの結果「馬は全然元気です、やっと左回りのレディスクラシックです、挑戦しましょう」ということになり、1年の現役続行が決定。
というわけで続いては4月のマリーンカップ。いくらなんでも8歳牝馬には過酷に過ぎるトップハンデ58kgを背負わされながらも前走で敗れたショウナンナデシコと差のない1番人気。いつも通りのスタートダッシュで逃げたがショウナンナデシコに2番手でぴったりマークされ、直線入口で捕まるとあとは突き放される一方で8馬身差の完敗。とはいえ2着は死守して2強の意地を見せた。なお3着はまたレーヌブランシュで、エンプレス杯と1~3着が全く同じという結果に。
5月のかしわ記念は選定はされたが回避。ちなみにそのかしわ記念ではショウナンナデシコがまるでサルサディオーネのような緩みのないラップの逃げで勝利し、「ショウナンナデシコはサルサディオーネが育てた」なんて声も。
そのかしわ記念を回避して向かったのは6月のさきたま杯(JpnⅡ)。49戦目・地方移籍後24戦目でなにげに初の浦和、中央時代最後の霜月S以来の1400m、牡馬相手ということもありいろいろ不安視され、単勝10.5倍の5番人気に留まる。
しかしいつもより距離が短かろうが彼女の走りはいつも通り。久々に軽い55kgで済んだこともあり、ガンガン行ってハナを切ると、ぴったり食らいついてきたシャマルと直線で並んでの叩き合いに突入。一度はシャマルにかわされたが根性で差し返し、外から追い込んできた浦和のティーズダンクも凌ぎきって、最後は3頭横並びの激戦をアタマ差制して逃げ切り勝ち。
ショウナンナデシコには負けてられないとばかりに再び牡馬を蹴散らし、ダートグレード競走5勝目、混合重賞2勝目を挙げた。牝馬の勝利は2007年のメイショウバトラー、2017年のホワイトフーガに次いで3頭目、地方所属馬としては初。そして8歳牝馬による国内平地グレード競走勝利は史上4頭目。牡馬混合戦に限定すれば史上2頭目[1]という快挙であった。
続いての通算50戦目は7月のスパーキングレディーカップ。帝王賞をパスしたショウナンナデシコと3度目の対決となった。また58kgを背負うが、今度はナデシコも58kgだしここらで一矢を報いてJBCへ向けて弾みをつけたいところ……だったが、直前で相棒の矢野騎手が控え室への通信機器の持ち込みで騎乗停止となり、森泰斗騎手に乗り替わりになってしまう。
レース自体は勝った前年と同じ1枠1番からいつも通り逃げるも、今回もショウナンナデシコに2番手でバッチリとマークされ、直線で振り落とされてレディバグにもかわされ、アールロッソにも迫られながらなんとか3着。これで大井転厩以来左回り牝馬限定重賞では10戦連続馬券圏内だが、悲願へ向けて最大の障壁であるショウナンナデシコにはもう完全に「サルサ姐さんを番手でマークして直線で振り切る」という勝ちパターンを構築されてしまい、いったいどうすれば勝てるのかという感じである。
当然ながら秋の目標はJBCレディスクラシック。今年のJBCは盛岡なので、その下見として8月28日の盛岡2000m戦、ビューチフルドリーマーカップ(岩手競馬M1)に参戦。これだけの実績馬が1着賞金600万円の地方馬限定・牝馬限定戦に斤量差なしの55kg、1枠1番で出てくるのだから、当然のように単勝1.0倍の元返し。グランアレグリアがローカル牝馬限定GⅢに54kgで出てくるようなもんである。もちろんほとんど追うこともなく余裕の5馬身差逃げ切りで楽勝。盛岡遠征とコースを体験して本番のJBCレディスクラシック、打倒ショウナンナデシコへまずは視界良好といったところか。
次走は連覇を目指して日本テレビ盃(JpnⅡ)へ。JRA勢からはJDD馬ノットゥルノ、JDD2着のペイシャエス、UAEダービー馬クラウンプライドと3歳馬の主役たちが名乗りをあげてきたが、地方代表・前年覇者として若造どもを4.4倍の2番人気で迎え撃った。
ゲート内でフルデプスリーダーが暴れて競走除外になり、ゲートの入れ直しで発走が遅れるアクシデントがありつつも、いつも通りのロケットスタートでハナを切る。ぴったりマークしてきたノットゥルノを4コーナーで振り切ったが、3番手に構えていたクラウンプライドに残り200mで捕まり、さらに外からカッ飛んできた同じ8歳の元JRA組・船橋のフィールドセンスにかわされる。それでもなんとかペイシャエスとギガキングの追撃は凌いで3着に残した。
10月に結果発表されたnetkeiba.comのJBC2022 第5回地方競馬ファン投票では、5515票を獲得し、ミューチャリーやカジノフォンテンを抑え、ついに1位に輝いた(2020年は18位、2021年は2位)。
そして向かうは11月3日の大一番、盛岡のJBCレディスクラシック(JpnⅠ)。宿敵ショウナンナデシコを筆頭に、レディスプレリュードでナデシコに先着したプリティーチャンスとテリオスベル、そのプリティーチャンスに勝っている3連勝中の3歳馬グランブリッジ、同じく3連勝中の3歳馬ヴァレーデラルナなどが出揃った、まさしく現役ダート女王決定戦に、妹のサルサレイアとともに乗りこんだ。だが……。
当日の馬体重は-10kg。朝からイレ込んでしまい飼い葉を食べず、とても万全の状態ではなかった。レースはいつも通りハナを切ったものの、いつものようなハイペース逃げが出来ない。らしくないスローペース逃げの末、4コーナーでもう捕まると、直線で力なく後退していく赤いメンコの姿。初めて妹のサルサレイアにすら先着を許す9着。引退を1年延ばして挑んだ悲願は、あまりにも遠かった。
夢破れ、あとは長い競走生活をどう終えるかとなったサルサディオーネ。年内ラストはさきたま杯と同条件の、12月の浦和・ゴールドカップ(SⅠ)へ向かう。しかし、その背に相棒の矢野貴之騎手の姿はなかった。矢野騎手は同じく主戦を務める3番人気の5歳馬スマイルウィを選び、2番人気サルサディオーネの鞍上は2年半ぶりの山崎誠士。いつもの相棒がおらずともいつも通りハナを切って逃げ、直線でも粘ったが、矢野騎手のスマイルウィに差し切られて2着。
この年も満場一致で、3年連続のNARグランプリ4歳以上最優秀牝馬を受賞した。
明けて9歳、前年同様に東海Sに登録していたが、最終追い切り後に脚元に不安が出たそうで回避。3月1日の川崎・エンプレス杯(JpnⅡ)がラストランとなった。鞍上にも矢野騎手が戻り、オーナーも絶対にハナは譲らないと宣言して通算55戦目、長い競走生活の締めくくりに臨んだ。
そして宣言通り、いつも通りにロケットスタートからハナを切る赤いメンコの姿。大方の予想通り、ホームストレッチでテリオスベルが捲りをかけてくるが、逃げ馬の矜持にかけて意地でも先頭は譲らない。逆にテリオスベルを突き放して逃げる。先頭のまま迎えた直線。最後まで誇り高く刻んだ[1-1-1-1]のコーナー通過順。生涯逃げ一本、その生き様に相応しい走りをして、最後は次世代の牝馬ダート戦線を牽引する2頭、グランブリッジとヴァレーデラルナのワンツーを見送って5着。
3月6日、右周りなので結局生涯で3回しか走らなかった大井競馬場で引退式が行われ、菅原オーナー、堀師、福田厩務員、矢野騎手に加え、中央時代の主戦だった丸山元気騎手も駆けつけて、ファンに別れを告げた。オーナーは「ディオーネの産駒が生まれましたら、また必ずこのチームでここに戻ってこられるようにしていきたいと思います」と語った。
通算55戦13勝[13-10-5-27]。重賞8勝、交流重賞5勝。55戦中34戦がコーナー通過順[1-1-1-1]。7年半にわたる長い競走生活を通して自分の走りを貫き続けた誇り高き逃げ馬の証が、その戦績に刻まれている。
南関東で覚醒し、高齢の牝馬ということで軽視する馬券師たちを鼻で笑うような逃げでダート戦線を盛り上げ続けた地方の女王、青森産馬の星、サルサディオーネ。この歳まで走らされたのはやっぱりゴールドアリュール産駒なせいでダート系種牡馬の配合相手が限られるからだろうか……。大きな夢には届かなかったが、ひたむきに逃げ続けたその競走生活は何ら恥じるところのない名牝の歩みである。
引退後
引退後は地元の青森ではなく北海道に渡り、様似町の高村伸一牧場内にある「99.9牧場」で繁殖入りとなった。
初年度のお相手はオルフェーヴルの予定だったが、種付け予定日にオルフェがお休みに入ることになってしまい、代わりに*ニューイヤーズデイを種付け。しかし不受胎に終わり、後日改めてオルフェをつけて無事受胎。5月3日に初仔となる牝馬を無事出産した。
そのスピードとタフさを受け継いだ産駒が、母のようにハナを切る姿を楽しみに待ちたい。
血統表
ゴールドアリュール 1999 栗毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
*ニキーヤ 1993 鹿毛 |
Nureyev | Northern Dancer | |
Special | |||
Reluctant Guest | Hostage | ||
Vaguely Royal | |||
サルサクイーン 1999 栗毛 FNo.17-b |
*リンドシェーバー 1988 鹿毛 |
Alydar | Raise a Native |
Sweet Tooth | |||
*ベーシイド | Cool Moon | ||
Polondra | |||
シーサイドエンゼル 1991 栗毛 |
*ジャッジアンジェルーチ | Honest Pleasure | |
Victorian Queen | |||
シャダイハマナス | *ノーザンテースト | ||
*ハマナスⅡ |
クロス:Northern Dancer 4×5(9.38%)、Thong 5×5(6.25%)、Lt. Stevens 5×5(6.25%)、Nearctic 5×5(6.25%)
関連動画
関連リンク
- サルサディオーネ | 競走馬データ - netkeiba.com
- サルサディオーネ | 競走馬詳細データ | 南関東4競馬場 nankankeiba.com
- hs1600915(@h1600915) - 菅原広隆オーナーのTwitter
関連項目
脚注
- *他に8歳以上の牝馬が平地グレード競走を勝利した例は、ブロードアピールの2002年ガーネットステークス、メイショウバトラーの2008年・2009年マリーンカップ、ジョリーダンスの2009年阪神牝馬ステークスがある。障害競走ではコウエイトライが9歳で重賞を2勝している。
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