都市圏(としけん)とは、都市の実質上の規模を調べるために計測される、ある種、魔法のような基準値である。定義は国や調査機関によって異なっている。
日本では総務省による定義(ただし、これは14しかない)、国土交通省による定義、そして主に地理学で用いる都市雇用圏の3つが有名。
主に、その都市の影響力や規模、格を判別するために用いる。特に、行政区だけで各都市の規模を決めかねない傾向があったため、都市圏という基準を設けることで、より現実に近い都市規模を測り、動向を読み取るべく、各省庁や学者らが定義したものである。
具体的な例を挙げれば、宮崎市(人口40万)と甲府市(人口19万)を都市圏(ここでは国土交通省定義)で比較すると宮崎市は約50万人なのに対し、甲府市は約60万人となる。これは、宮崎市が平成の大合併で、清武町や佐土原町というベッドタウンを合併し人口を増大させたのに対し、甲府市は諸事情によって一町しか吸収合併できなかった上、人口流出が続いているからである。
おしなべて、基準となる都市は、昼間人口比率が1以上であること、かつ中心都市の人口が一定数以上であることの2つが最低条件となっている。対して、都市圏に包括される周辺市町村(衛星市町村、俗にベッドタウン)は中心都市への通勤通学者率が5%以上、または500人以上の市町村となっている。
総務省による都市圏
総務省が定義する都市圏はたったの14しかない。なぜなら、中心都市の人口が50万人以上という条件があるからである。また、2015年より政令指定都市の中心地の場合は、大都市圏と呼ばれるようになった。また、総務省による定義は政令指定都市以上ならば、昼間人口比率が1未満であっても、中心都市という見方を与えている。
したがって、今日、日本に存在する大都市圏は札幌、仙台、関東(さいたま、千葉、東京、横浜、川崎、相模原)、新潟、静岡・浜松、中京(名古屋)、近畿(京都、大阪、堺、神戸)、岡山、広島、北九州・福岡、熊本の11都市が該当し、そして都市圏として宇都宮、松山、鹿児島の3都市が調査対象となっている。
だが、これはそもそもの定義(中心都市の人口50万人以上)がネックとなって、都市圏に定義されないという問題がある。別統計では高い値を算出している金沢市、岐阜市、長崎市、那覇市などがこの定義によって対象からはじかれており、実質これらの都市は松山都市圏より人口が多かったりする。
要は、お国が大都市の定義を与えてくれたんだから、もうおまいらケンカするなってこった
国土交通省による都市圏
総務省の定義が、国土全体の傾向を示すものに対し、国土交通省の定義は、都道府県に点在する各中心都市に対し評価基準としているもので、中心都市への通勤、通学比率を基準としている。したがって、一つの都市圏が別都道府県にまたがっているケースが多い。だが、この定義は2010年国勢調査を最後に算出されていないようで、2015年度の資料は現在探索中である。
なお、2010年の資料によると以下の分布となっているようだ。
- 100万人以上の都市圏
首都圏、中京、近畿の三大都市兼を筆頭に、札幌、仙台、新潟、静岡、浜松、岡山・倉敷、広島、北九州・福岡、熊本のほか、前橋・高崎都市圏と富山・高岡都市圏、那覇都市圏が100万人以上として統計されている。 - 50万人以上の都市圏
旭川、八戸、秋田、山形、福島、郡山、水戸、土浦、つくば、宇都宮、前橋、熊谷、長岡、金沢、福井、甲府、長野、松本、沼津、津・松阪、彦根、姫路、和歌山、福山、徳島、高松、松山、高知、久留米・佐賀、長崎、大分、宮崎、鹿児島 - 30万人以上の都市圏
帯広、苫小牧・室蘭、函館、青森、弘前、盛岡、酒田・鶴岡、いわき、日立、那須・黒磯、鳥取、米子、徳山、防府・山口、丸亀、新居浜・西条、佐世保、都城 - 20万人以上
北見、釧路、北上、石巻、会津若松、上越、上田、諏訪、飯田、松江、出雲、津山、宇部、延岡、霧島、鹿屋 - 10万人以上
奥州、一関、今治
なお、一定の人口以上の中心都市が定義となっているために、道北(稚内市、紋別市、名寄市など)、標津(中標津町など)、空知南部(岩見沢市)、日高(新ひだか町)、ニセコ(岩内町、倶知安町)、檜山(江差町)、岩手三陸沿岸(宮古市、釜石市)、秋田北部(大館市)、秋田南部(横手市)、飛騨(高山市)、丹後・但馬東部(舞鶴市、豊岡市)、南紀(田辺市、新宮市)、石見(浜田市、益田市)、室戸岬周辺(室戸市)、四国西部(四万十市、宿毛市、宇和島市)、九州山地中央あたりは統計の空白域となっている。
都市雇用圏
ある意味、最も正しい都市の性格を導き出せるのではないかということで、地理学者らが提唱した都市圏で、中心都市の人口及びDID人口に焦点を当てている。また、この定義の基準が、中心都市の昼間人口比率は1を超えることなので、近畿大都市圏はそれぞれ大阪圏、京都圏、神戸圏に分かれている。
ただし、つくば市など、工場や研究施設といった大規模雇用主の存在が大きく影響して昼間人口が多くなっているだけで、CBDや商業施設の集積といった市街地形成や商圏などの視点が欠落しているため、一部の都市において、実質の都市規模を計測するにあたって不備な点も指摘されている。
赤字は都市雇用圏におけるDID人口比率20%未満の都市であり、この分布を見ると、工業、特定サービス業などが盛んな大都市圏近郊の都市、あるいは人口稀薄地域の中心都市において、DID人口比率が異常に低くなっていることが一目瞭然である。
また、ある時期を境に、岡山都市圏と倉敷都市圏が合算され、広島都市圏の人口を(意図的かは定かではないが)上回ったり(類似のケースとして前橋+高崎>宇都宮、富山+高岡>金沢というものも)するなど、ある種、露骨すぎるほどの経済戦略的な調整が行われることも起きている。
- 1000万人以上
東京、大阪 - 500万人以上
名古屋 - 200万人以上
京都、福岡、神戸、札幌 - 100万人以上
仙台、岡山、前橋、広島、北九州、浜松、宇都宮、熊本、新潟、静岡 - 70万人以上
岐阜、那覇、高松、長崎、金沢、姫路、大分、鹿児島、つくば - 60万以上
徳島、水戸、豊橋、福井、松山、四日市、福山、長野、甲府 - 50万以上
和歌山、郡山、山形、高知、津、沼津、宮崎 - 40万以上
豊田、盛岡、福島、松本、太田、久留米、秋田、岡崎、佐賀 - 30万以上
富士、旭川、長岡、日立、函館、いわき、成田、八戸、小田原、青森、大垣、山口、高岡、弘前、佐世保 - 20万以上
松江、下関、沖縄、神栖、周南、帯広、刈谷、那須塩原、大牟田、都城、呉、鳥取、上越、宇部、米子、新居浜、会津若松、東近江、小松、三条、東広島、古河、上田、小山、石巻、釧路、半田、大崎、中津、諏訪、室蘭 - 10万以上
掛川、飯塚、北上、苫小牧、伊勢、伊那、伊賀、佐久、津山、岩国、安城、千歳、出雲、甲賀、横手、飯田、今治、米沢、西尾、御殿場、長浜、栃木、薩摩川内、筑西、尾道、鹿屋、白河、酒田、八代、鶴岡、洲本、奥州、大仙、霧島、本庄、一関、彦根、田辺、田川、唐津、豊岡、延岡、北見、五所川原、常総、佐野、高山、南相馬、福知山、関、鳥栖、由利本荘
アメリカの場合
アメリカでは日本以上に、都市圏という基準を重視している。それもそのはずで、アメリカの場合人口規模=都市圏の大きさとならないことが非常に多いためであり、MSA(Metropolitan statistic area)とCSA(Combined statistic area)という広域都市圏人口が目安となっている。
有名な一例で、人口70万人のサンフランシスコは日本でいう70万人程度の都市と思ってると大恥を掻くことになるわけである。この辺りはアメリカ合衆国の記事を参照。
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