エリモエクセル(Erimo Excel)とは、1995年生まれの日本の競走馬。栗毛の牝馬。
(結果的に)ファレノプシスの牝馬三冠とエアデジャヴーの悲願を打ち砕き、古馬となってからも一定以上の強さを見せた、1998年のオークス馬。
主な勝ち鞍
1998年:優駿牝馬(GⅠ)
1999年:中京記念(GⅢ)、マーメイドステークス(GⅢ)、府中牝馬ステークス(GⅢ)
父*ロドリゴデトリアーノ、母*エリモファンタジー、母父Rivermanという血統。
父は1992年の英愛2000ギニー、インターナショナルS、英チャンピオンSを制した馬。日本で種牡馬入りしたが期待されたほどの結果は出せず、晩年は種付け料10万円で千葉や栃木、九州を転々とした。一般的に代表産駒と言われるのはスーパーホーネットだろう。エリモエクセルは種付け料400万円で募集された2年目の産駒。
母は冠名の通り同オーナーの所有馬だが、マル外ではなくアメリカ産のフランス調教馬。競走馬としてはフランスで8戦未勝利。日本で繁殖入りし、エリモエクセルは第4仔。
母父リヴァーマンは1972年の仏2000ギニーとイスパーン賞の勝ち馬。種牡馬としては名牝Triptychや仏G1を7勝したIrish River、凱旋門賞馬のGold RiverとDetroitなどを輩出した。日本では母父としての産駒にアロンダイトがいるほか、産駒が何頭か種牡馬入りし、*パラダイスクリークがカネツフルーヴやテイエムプリキュア、*リヴリアがナリタタイシン、*ルションがインテリパワーを輩出している。
甥に2001年のステイヤーズSを勝ったエリモブライアンがいる。
1995年5月18日、えりも町のえりも農場で誕生。オーナーはそのえりも農場の代表で、エリモジョージなど「エリモ」冠名を用いた山本慎一。ノースフライトを管理した栗東・加藤敬二厩舎に所属し、ノースフライトと同じく石倉幹子厩務員が担当した。
馬体重は最小で412kg、最大でも440kgという小柄な馬であったが、非常に気が強く、的場均いわく「こちらが触ろうものなら噛みついてくるような」馬だったという。ただ、レースでは素直だったそうな。
※この記事では馬齢表記は当時のもの(数え年、現表記+1歳)を使用します。
デビューはやや遅れ、4歳となった1998年1月31日、京都・ダート1200mの新馬戦だった。松永幹夫を鞍上に、好位から抜け出して5馬身差の圧勝デビューを飾る。
続く佐藤哲三を迎えたダート1800mの飛梅賞(500万下)は逃げたマックスキャンドゥに突き放されて3着に敗れたが、陣営は桜花賞を目指してトライアルの報知杯4歳牝馬特別(GⅡ)(現:フィリーズレビュー)へ。鞍上には角田晃一を迎えたが、出負けしてダッシュもつかず最後方からのレースとなってしまい、上がり最速の末脚は見せたものの6着まで。桜花賞の夢は破れた。
しかし陣営はクラシックを諦めず、オークスを目指し忘れな草賞(OP)へ。四位洋文を迎え、馬体重は-12kgの412kgでの出走となったが、中団前目から上がり最速の末脚を繰り出して逃げ粘るヤマノセンプーを半馬身差しきって勝利。無事にオークスへの賞金をゲットした。
というわけで迎えた優駿牝馬(GⅠ)。鞍上には新たに的場均を迎え、以後的場が彼女の主戦となる。快晴で30℃を超える暑さの中での開催となったこの年のオークス、1番人気は桜花賞馬ファレノプシス、2番人気は桜花賞3着のエアデジャヴー。3番人気は桜花賞5着のマックスキャンドゥで、桜花賞2着のロンドンブリッジは距離不安から評価を下げて4番人気と、順当に桜花賞上位組が人気を集めていた。エリモエクセルは13.4倍の7番人気である。
レースはロンドンブリッジが敢然とハナを切り、外枠のファレノプシスとエアデジャヴーは揃って後方に控えた。エリモエクセルは中団前目につける。そのままロンドンブリッジがスローに落として1000m62秒8という緩い流れとなり、スローペースに気付いたファレノプシスとエアデジャヴーが揃って3角から進出を開始する。しかしスローの直線ヨーイドンであれば、末脚自慢のエリモエクセルにとってはまさにおあつらえ向きの展開。人気2頭よりずっと前にポジションを取ったことが勝負を分けた。
外を通って、エリモエクセルが先頭に立った、エリモエクセル先頭に立った、
さらにその、外を通りまして、ファレノプシスも上がってきている!
ファレノプシスと、エアデジャヴーも、まとめて一気に上がってきた!
先頭はエリモ! 先頭はエリモ! 外を通って、エアデジャヴーが2番手!
1着のゴールは6番の、エリモエクセルー!
エリモエクセル! オークスを制したのは6番のエリモエクセルと、
ここでもクラシック、テン乗り! 的場均! 決めました!
府中の長い直線、中団から上がり最速の末脚を出せば後ろ2頭が追いつけるはずもない。追いすがるエアデジャヴーとファレノプシスをまとめて振り切り、エリモエクセルは先頭でゴール板を駆け抜けた。
加藤師と山本オーナーはクラシック初制覇。えりも農場は前身の田中牧場時代の1965年皐月賞(チトセオー)以来のクラシック制覇となった。
秋は爪の不安で前哨戦を使えず、秋華賞(GⅠ)にぶっつけで向かうことに。ファレノプシスとエアデジャヴーが人気を分け合う中で3番人気に支持されたが、道中折り合いを欠いてしまい7着撃沈。
エリザベス女王杯(GⅠ)ではエアグルーヴ・メジロドーベルと3代オークス馬対決となり3番人気に支持されたが、直線内ラチ沿いで脚を伸ばそうとしたところで、逃げていたナギサが内にヨレたことでその内に潜り込んだメジロドーベルに進路をカットされる不利を受けてしまい5着。審議にもなったが着順は変わらなかった。無念。
年末は初マイルの阪神牝馬特別(GⅡ)に向かい、キョウエイマーチと人気を分け合ったが、出遅れてしまいあえなく11着に沈没。秋は不完全燃焼な感じで4歳シーズンを終えた。
さて、オークス単冠馬はどうしてか、古馬になってからは成績が振るわないことが多い。しかし、ただファレノプシスの三冠を阻んだだけの馬では終われない。古馬となってもエリモエクセルは奮闘する。
始動戦は2月の中京記念(GⅢ)。3.3倍の1番人気に支持されたエリモエクセルは、今回も課題のスタートで後手を踏み最後方からのレースとなってしまったが、外を回して4角から進出すると、武器の末脚が炸裂。植木圭一アナの「これがオークス馬の意地だ!」の実況とともに、先に抜け出した同枠のサンプレイスを豪快に差し切った。
しかし産経大阪杯(GⅡ)は蹄球炎で無念の出走取消。これでいろいろ予定が狂い、続いて向かった金鯱賞(GⅡ)では状態も万全ではなく、3角でステイゴールドにぶつけられて9着に撃沈。
続いて向かったのはマーメイドステークス(GⅢ)。4連勝の上がり馬キクノスカーレットと人気を分け合う形となったが、牡馬にも勝った実績から3.0倍の1番人気に支持される。雨で重馬場となり内の2枠2番ということで末脚が活かせるのかどうかもやや不安視されたが、レースは中団で馬場の荒れたところをギリギリ避けながら進め、直線外からエガオヲミセテとともに強襲、キクノスカーレットを競り落として勝利。的場騎手の巧みな騎乗で重賞3勝目を挙げる。
札幌記念(GⅡ)では久々にファレノプシスと顔合わせ。断然人気のセイウンスカイがなんと後方に控えたその後ろに構え、向こう正面でセイウンスカイが進出を開始するとそれを追いかけて上がって行ったが、直線伸びず6着敗退。
この敗戦のせいか府中牝馬ステークス(GⅢ)では3番人気に留まったが、逃げたショウナンハピネスが3着、2番手で追ったエガオヲミセテが2着にそのまま粘り込む前残りのレースを、後方から馬群をブチ抜き、上がり最速の末脚で半馬身ブッ差すという、実況の吉田伸男アナも「エリモエクセルやはり強い!」と叫ぶ内容で快勝、重賞4勝目。
これでエリザベス女王杯(GⅠ)ではファレノプシス、メジロドーベルと三強対決ムードとなり、4.1倍の3番人気に支持されたが、直線で他馬に接触する不利を受けて伸びず13着撃沈。大一番で運が無い……。
その後は阪神牝馬特別(GⅡ)で不得意距離ながら後方から3着に突っ込んで見せたものの、明けて6歳はAJCC(GⅡ)5着、中京記念(GⅢ)6着と見せ場のない結果に終わり、現役引退。故郷のえりも農場で繁殖入りとなった。通算17戦6勝 [6-0-2-9]。
前述の通りオークス単冠馬は古馬で伸び悩むことが多く、古馬となっても牡馬相手を含む重賞3勝を挙げたエリモエクセルの実績はかなり上位の部類に入る。というか彼女の次に古馬となってから重賞で牡馬に勝ったオークス馬は、なんと11年後のブエナビスタ。オークス単冠馬に限れば16年後のヌーヴォレコルトまで出なかった(ダイワエルシエーロもオークスの後に京阪杯を勝っているが3歳時のこと)。
エリザベス女王杯では2年続けて不利に見舞われる不運もあったが、ただの「ファレノプシスが負けたオークスの勝ち馬」ではない。的場均は著書にて自分の騎乗ミスで負けたレースが多かったと回顧し「彼女を思い出すときはいつも、申し訳なさがこみ上げてくる」と語っているものの、充分に〝優駿牝馬〟の名に恥じない実力派の名牝であったと言えよう。
前述の通り、故郷のえりも農場(2003年から「エクセルマネジメント」に改称)で繁殖入り。エクセルマネジメントの事業縮小に伴い2012年に繁殖馬セールに出され、新ひだか町のチャンピオンズファームに落札されて移動した。
合わせて13頭の仔を生み、直仔からは目立った活躍馬は出なかったものの、13頭中10頭が牝馬で、血統登録のみだった1頭を除く9頭が繁殖入りして牝系の血を繋いでいる。孫世代以降でもまだこれといった活躍馬は出ていないが、最近ちょっと話題になった馬だと、ブラックタイドとディープインパクトの全兄弟2×2クロス持ちで一部ファンの注目を集めたワイズメアリーがエリモエクセルの孫である。
エリモエクセル自身は2017年限りで繁殖を引退。2018年7月25日、23歳で死亡した。
| *ロドリゴデトリアーノ 1989 栗毛 |
El Gran Senor 1981 鹿毛 |
Northern Dancer | Nearctic |
| Natalma | |||
| Sex Appeal | Buckpasser | ||
| Best in Show | |||
| Hot Princess 1980 栗毛 |
*ホットスパーク | Habitat | |
| Garvey Girl | |||
| Aspara | Crimson Satan | ||
| Courtside | |||
| *エリモファンタジー 1986 栗毛 FNo.1-k |
Riverman 1969 鹿毛 |
Never Bend | Nasrullah |
| Lalun | |||
| River Lady | Prince John | ||
| Nile Lily | |||
| Share the Fantasy 1980 栗毛 |
Exclusive Native | Raise a Native | |
| Exclusive | |||
| Misukaw | Northern Dancer | ||
| Dihela |
クロス:Northern Dancer 3×4(18.75%)、Nearco 5×5(6.25%)、Native Dancer 5×5(6.25%)
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