久保寺紹二(くぼでら しょうじ)とは、小説・アニメ版『Another』の登場人物である。
担当声優は三戸耕三。
概要
夜見山北中学三年三組の担任教師。担当教科は国語。温厚だが頼りない印象を受ける中年男性で、生徒達は彼の授業を余り真面目に聞いていない。アニメ版と漫画版では容姿が大きく異なり、アニメ版では後述の発狂シーンで凄まじい顔芸を見せているが、素の時の彼は意外に若々しい。
脳梗塞で寝たきりの母親を介護し続けている所に、三年三組の災厄が始まってしまった事でストレスが重なり、災厄で自らも鬱病にかかって母親を絞殺。その日の朝のホームルームで、唐突に生徒達に謝罪の言葉を語り始めるが、その直後に奇声を発しながら鞄から肉切り包丁を取り出し、自らの首を滅多刺しにして自殺した。この光景を前に三年三組の教室は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。榊原恒一は、彼が絶命の直前に自分に向かって憎しみをもって睨み付けた様な思いに囚われた。
アニメ版6~7話にかけて起こった久保寺先生の自殺シーンは、アニメ版から入った人にとっては予想の斜め上を行く衝撃的な展開だったに違いない。TV放送版では、首を掻ききった直後に画面が一瞬暗転しているが、BD版では修正されて首から大量の血が吹き出るというグロテスクなシーンが描かれている。しかし、これでもまだ表現は押さえられている方で、原作では突き刺すだけでなく頸部の前半分をぱっくり切り裂いて、首が後ろにもげるという、とても映像化出来ないものであった(最早、自刎である)。最もアニメ版ではこの後に、恒一がクラスメイトや自分自身の顔や体がドロドロに醜く溶けていく世にもおぞましい悪夢を見るという、最凶レベルのトラウマシーンがあるのだが……。
尚、“紹二”という名前はアニメ版オリジナルであり、原作・漫画版では苗字のみで名前は不明である。
実写映画版では名前が“久保寺良一”なっており、正名僕蔵が演じている。また、死因も変更されており、家で母親を介護している最中に停電し、足を滑らせてスプーンが左目に突き刺さってしまう。更に柱にぶつかった拍子で、刺さったスプーンが頭部に深く食い込んでしまって、そのまま死んでしまった(母親は驚いていたが、彼女がどうなったかは不明)。流石に教室の血飛沫ショータイムは再現出来なかった様であるが、それでも充分すぎる程のトラウマシーンである事に変わりはない。
原作では「あがぅ」「ぐげぁ」「うぎぇ」と書かれている久保寺先生の奇声だが、アニメ版のト書きでは「ひゃげう」と表記されている。しかし、演じた三戸耕三の白熱の演技も相まって、視聴者には勿論の事、共演した声優やアニメスタッフにも強烈なインパクトを与えたらしい。また、包丁を振り回す際のくねくねした動きがDJのようにシュールであり、包丁の代わりにライトセーバーを持たせたMADがネットで馬鹿受けしてしまった。そのお陰で、“マスター・クボデラ”の異名まで与えられる始末である。また、自殺する直前の顔芸が『あずまんが大王』の木村先生に似ている為、二次創作では時々変態教師にされてしまう。
三年三組の反応
所で、この惨劇を目の当たりにした三組の生徒達は皆、当初は凍り付いたように動けずにいた。さっさと逃げ出せばいいのにと思うかもしれないが、下手をしたら自分が刺されるのではないか恐怖が上回っていたのだろう(まさか目の前で自分の首をかっ切るとは思いもしなかったであろうし……)。
そして、久保寺の惨死を目にしたを彼らは大パニックに陥り、我先に教室から逃げ出していくのだが、生徒一人一人の反応が実に個性的なのが興味深い。廊下側の生徒から順に、どう対応したのかを簡単に説明する(各生徒の説明についてはそれぞれの記事とAnotherモブキャラを参照)。
- 藤巻奈緒美・・・出入り口に最も近かった為、教室の前方では一番早く避難に成功する。しかし、最前列でもあった為、返り血もかなり浴びてしまっており、廊下でへたり込んでしまう。
- 多々良恵・・・藤巻に続いて脱出。力を落とした藤巻をしっかり介抱していた。後日、欠席をしていない事を考えると、精神的に中々強いようだ。
- 松井亜紀・・・廊下に避難した後、座ったまま顔を手に当てて泣き始める。流石の百合ップルも今回ばかりは別行動であった。
- 金木杏子・・・久保寺先生が包丁を喉に突いた時、恐怖で体が震えている。口と腹に手を押さえて気持ち悪さを堪えている。
- 杉浦多佳子・・・出入り口が近い事もあって早めに逃れた。出た時には胸に手を当てて息を吐いていたが、クラスメイトが廊下に揃った時には平静を取り戻していた。この時から鳴に不審を抱いた模様。漫画版では、返り血を浴びたまま千曳先生に助けを求めている。
- 風見智彦・・・原作・漫画版程ではないが、元々豆腐メンタルな上に、間近で惨状を目にした為、暫く呆然としたまま硬直している。この時の作画がかなり適当で、誰が言ったかは知らないが“ししゃも”の様だと評された。やはりこのシーンでも出番が少ない。
- 猿田昇・・・風見同様、かなり血を浴びる被害を受け、藤巻や多々良に次いで三番目に前方の出入り口から脱出。手を押さえているが、立つ気力は残っている。
- 和久井大輔・・・普段から糸目の彼がこの衝撃で遂に開眼した。病弱な体にこの衝撃は絶えられず、嘔吐して倒れてしまい、助けに来た川堀に担がれながら教室を出る。
- 榊原恒一・・・久保寺が首を突いた直後、気胸の再発を恐れたのか胸を押さえている。しかし、クラスメイト達が逃げる中で一人、有ろう事か久保寺の死体を見に行く度胸を持っていた。千曳に促され、教室を出たのは一番最後。
- 王子誠・・・血飛沫が飛ぶ場面では、最も作画崩壊が酷い事になっている(普段イケメンな分尚更)。廊下に出た後は、まだ実感が湧かないのか、ぼーっと座り込んでいる。
- 勅使河原直哉・・・出入り口に近い割には、出てくるのは遅め。小椋を介抱している事から、彼が動けなかった小椋を助け出したと推察できる。
- 中島幸子・・・桜木が亡くなっている為、最も近距離の位置にあり、間違いなく最大の被害者。血反吐がかかった時点で既に血塗れの状態で、浴びた血飛沫の量も桁外れに多い。ショックで腰を抜かしてしまい、千曳が駆けつけた時は、這いつくばりながらやっと廊下へ出られた所だった。
- 綾野彩・・・4話で死にかけて以来、メンタルがかなり弱っており、彼女が悲鳴を上げたのがきっかけで、クラスメイト達は金縛りが解けたかの様に逃げ出した。赤沢さんの胸の中でボロボロ号泣しており、赤沢さんに慰められながら教室を出た模様。
- 望月優矢・・・血飛沫が飛んだ時は片手で防いでいるが、綾野と江藤のリアクションが印象に残る分、余り画面に映らない(綾野が叫ぶシーンを見るとかなり血が掛かったらしいが)。教室側の壁にいる事から、出たのはかなり遅め。
- 江藤悠・・・先述の綾野が悲鳴を上げた直後、机に突っ伏して泣き出す。パニック状態だった為、望月か川堀辺りに助けられたのかもしれない。廊下に座ったシーンでは履いていないに見えてしまう。
- 柿沼小百合・・・最後列だった為、恐怖より周りのパニックによる困惑の色が強かったらしく、皆が逃げ出し始めた時はオロオロ戸惑っていた。松井と佐藤の間に座り、心配そうな表情を浮かべている。
- 前島学・・・久保寺が包丁を出した時は、驚きの余り口をあんぐり開けていた。廊下の壁に凭れ掛かっており、他の生徒の陰に隠れて、その表情を窺うことは出来ない。
- 中尾順太・・・綾野が絶叫した時に、「オーマイゴッド!」と言わんばかりに頭を抱えている。顔色がかなり悪いが、廊下に出た後は、ちゃっかり赤沢さんの隣に収まっていた。
- 米村茂樹・・・久保寺が死ぬまでのシーン一連では、見切れている事が多く、殆ど映らない。逃げ出す場面でも、移動する直前に画面が切り替わってしまい、次に出てくるのは避難した後。教室側の壁でドアに凭れ掛かっている。
- 水野猛・・・米村とほぼ同じ行動を取っているが、席が一つ後ろになっただけで、カメラに映る場面が大幅に増えている。引きつった表情だと、同じショートヘアである為か、猿田との見分けが付きにくくなる(水野は髪が赤みがかかっている)。米村に比べてショックは少なめ。
- 辻井雪人・・・川堀と共に後方の出入り口から最初に脱出。ミステリー小説マニアでも、やはり実物は別問題だったらしく、廊下に出た後は力なく座り込んで、川堀にフォローされている。
- 川堀健蔵・・・全クラスメイトの中で一番早く廊下に出たが、その後思い直して教室に戻り、吐いていた和久井を救出。この際、有田も見つけて一緒に教室から出た。合宿の時も、引き返して辻井達を助けていれば、自分が死ぬ事はなかったのに……。
- 赤沢泉美・・・久保寺が自害する場面では、窓側は殆ど映らない関係で、冒頭で驚くシーンと、廊下で鳴を睨むシーンくらいしか出番が無い。かなり落ち着いており、教室を出る際に泣いていた綾野を連れて行く等、対策係の面目躍如といった所か。これに対して、漫画版では恒一と鳴に向かって凄まじい憎悪を込めて「全部あんたたちのせいよ!」と激高する(アニメ版では冗談で恒一に言っているが、憎しみの感情は皆無)。
- 渡辺珊・・・赤沢さんと同じく、画面には殆ど映らない。廊下に出た後も、立ち尽くしているが、長い髪に隠れてどの様な表情をしているのかは分からない。
- 小椋由美・・・ショックの余り、椅子から落ちたまま茫然自失の状態で動けなくなってしまう。赤沢さんに助けられたらしく、その後は勅使河原が彼女のケアをしている。
- 有田松子・・・他のクラスメイトが立ち上がり始めた時点で、物凄いスピードで逃げ出している。にも拘わらず、教室を出たのは恒一・鳴の次に遅く、川堀の後にハンカチを手に当てながら教室を出て行った。どうやら、吐き気を催して蹲っていた所を、見つけた川堀によって助けられたらしい。
- 佐藤和江・・・周りが逃げ出す場面では、口に手を当てて愕然としている。その後、江藤が泣いている後ろを、まるで忍び足するかのようにそーっと出て行くのが確認できる。廊下ではちょうど真ん中辺りにいる為、姿が殆ど見えない。
- 見崎鳴・・・死を見慣れた所為なのか、メンタルが頑丈という事もあって、ただ一人全く動揺せずに落ち着いている。一番教卓から遠く離れた席にいた為、安全圏だったという点から見ても、運まで味方に付けたと思わずにはいられない。
三年三組の生徒達が、教室から脱出した大まかな順番は以下の通りである。
クラスメイトの脱出順と廊下の配置一覧
こんな事件があった為か、これ以降はクラスメイトの欠席が続出。事件のあった7月13日の翌日と4日後に学校へやって来た面々は以下の通りである。
これは解析班による調査で判明した事だが、赤沢さん率いる対策班の結束力の高さが窺い知れる。また、多々良・江藤以外の合宿不参加者は、二日間とも欠席しており、久保寺先生の自殺によるショックが、合宿に行くのを拒んだ大きな理由の一つとも言えそうである。となると、不参加者の多くはあの事件で精神的に大きなダメージを受けた人が多く、「不参加≠勝ち組」である事が分かるだろう(17日に出席した江藤も当日のショックがかなり大きかった人物である)。勿論、中には風見の様に久保寺の自殺と合宿の災難両方に巻き込まれた人もいるのだが……。
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