刑務所とは、裁判によって法令に違反したと判断され自由刑の刑事罰を科された人が収容されるところである。
収監されている人は受刑者・囚人とも呼ばれる。
概要
法務省の定める刑事施設には刑務所・少年刑務所・拘置所の3種類があり、刑務所には刑事裁判で懲役刑や禁固刑の判決を受けた人が収容され、少年刑務所には基本的に18歳未満の少年および特定少年が収容されるが、26歳未満の成人も受け入れており、実際には20歳以上の成人収容者が大多数を占めている。
刑事事件とは法律の適用によって刑罰を受けることになる事件で、裁判で被告人が有罪判決を受けると刑務所行きになるのである。
類似施設として拘置所、留置場があるが、拘置所は裁判中で刑が確定していない人もしくは死刑囚が収容される、未確定の被告が収容されるのは逃走や証拠の隠滅を防ぐ目的もある。留置場は酔っ払いなど警察の職務執行により身柄を確保された人が収容される施設で、送検後に身柄は拘置所に移送される。
上記の通り刑務所には死刑囚は収容されていないが、札幌刑務所・宮城刑務所には死刑執行の刑場が設けられており、執行当日に隣接する札幌拘置支所・宮城拘置支所から身柄が移送され刑が執行される。
同じ刑務所暮らしでも何かしら働かなければいけない懲役と、拘置されるだけで刑務作業の義務がない禁錮の2種類があり、禁錮の受刑者であっても本人が希望すれば刑務作業に従事できる。どちらの場合も刑務作業の報奨金がわずかではあるが支払われる。
実態として禁錮受刑者の大半が刑務作業を希望している事と出所後の社会復帰の促進を目的に2023年に改正刑法が成立、2025年6月1日以降に発生する事件の刑より懲役刑と禁固刑は「拘禁刑」に統合される。
ただし既に服役している受刑者の刑は切り替わらない。
どっちも嫌なら罪を犯さなければよいのだが、懲りずに何度も刑務所に入る人がいて、出所しても仕事もなく生きていけないという理由でまた事件を起こして自分から刑務所に逆戻りする人もいる。
ちなみに少年院と少年刑務所は異なり、少年院では刑罰を科したり刑務作業を行わない。ただし「少年院上がりということで箔がつく」と考える奴もいる。
種類
刑務所には刑務所の他に医療刑務所、女子刑務所、刑務支所、社会復帰促進センターに区分される。
医療刑務所は特に精神・身体に異常をきたす受刑者が収容され、女子刑務所はその名の通り女子が収容される他、刑務支所が女子刑務所の役割も担っている。社会復帰促進センターは構造改革特区により民間企業がPFI方式により運営する刑事施設であり、刑務官よりも法執行権限の制約を受けた民間警備員も従事している。
受刑者がどの刑務所に収容されるかは受刑者個々の処遇指標により分けられる。
犯罪傾向の進んでいないA、累犯もしくは暴力団関係者であるB、10年以上の刑期であるL、女子W、外国人Fといった指標を元に適切な刑務所が選ばれる。当然受刑者は選択の余地は無い。
意外ではあるが極悪犯が収容されていると思われがちな網走刑務所は比較的緩い方である。
作品
怖いもの見たさもあってか昔から刑務所が舞台になった映画や小説は和洋問わず多数あり、高倉健主演の「網走番外地」シリーズや、クリント・イーストウッド主演の「アルカトラズからの脱出」などの映画がヒットした。また何度も脱獄を繰り返した囚人の実話を小説化した吉村昭の「破獄」や、安部譲二が自らの服役体験を元に著した小説「塀の中の懲りない面々」、同じく花輪和一が自らの服役体験を元に著した漫画「刑務所の中」などがある。
塀の中の人たちにも様々な事情があると思われるが、服役中は反省し出所後は真面目に暮らすことを願ってやまない。もちろん反省しない奴も一部いる。
生活費・賃金
刑期を進める上で最低限必要となる作業着、寝間着、下着は支給される、食住は税金ですべて負担してくれる。自由はないが。
ちなみに刑務作業によって賃金が支払われるが月額にして5,000円程度である。習熟度に応じて上がってもたかが知れているし、時給1000円の学生アルバイトが金持ちに見えるレベルである。
受刑者もこの賃金で物を買う事もできるが、雑誌や生活用品に限られる。
要するに悪いことをするくらいならアルバイトのほうがよほど稼げる+自由があるので、「前科はないけど生活苦で犯罪を犯すしかない」と考えている人はご参考までに。闇バイトはダメだが。
刑務所内の生活や風習
刑務所内での生活は起床時間や就寝時間、持ち物まで細かく規定されている。所定の時間以外の私語は一切許されず姿勢も崩せない。読書やテレビなどの娯楽も存在するが、持ち込める本やテレビの視聴時間、読み方も決められている。入浴の時間も限られており、カミソリや医薬品も刑務所が管理するなど生理・衛生・医療も外の世界とは異なる独特なものである。
反面、外界から隔離され規則正しい生活を送るため心身に良い影響を与えるケースも多く、残業もなく休日も睡眠時間も完全保証されているホワイトな世界でもある。
食事
日本の刑務所においては「薄給激務でこき使われてる社畜よりいい物食べてるのでは?」と言われることもあるぐらいに豪華と言われている刑務所の食事。クリスマスにはチキンが出されたり、年末年始にはおせち料理が出たりするなど犯罪被害者に申し訳ないのかと非難される事も多い。
矯正実務六法に記載されている矯正施設被収容者食料給与規程によると、1日当たりの量として主菜1020kcal以上、主食は重労働従事者で1600kcal(A食)軽作業従事者1300kcal(B食)居室・懲罰者1200kcal(C食)米麦比率7:3の麦飯もしくはコッペパン・茹で麺で出される、また正月三が日のみ白米が提供される。
1日当たりの単価は刑務所毎に異なるが概ね500円前後とされ、学校の給食費よりは当然高い。
かつて刑務所の給食は出所前最後の花形仕事とされ、模範囚が従事する例が多かったがそれは昔の話である。受刑囚の高齢化により出所前ではガタが来過ぎて重労働に耐えられない事例が多発し、現在では多くの刑務所で民間業者が競争入札で給食業務を受託している。麦飯は外の炊飯工場から持ってきたもの、おかずは冷凍食品を温め直すだけで包丁も調理器具も使わないため普通の受刑者でも出来てむしろ安全である。というのが今の刑務所飯である。そして市販品だから当然受刑者のウケもいいというオチも付く。
たまに刑務所開放デーとかでプリズンカレーなる刑務所メシを味わえる体験イベントをやってたりするが、当然ながらシャバの人向けにアレンジされた美味しいカレーであり、本物は拘禁されないと食べられない。
刑務作業
作業は刑務所内の工場・作業場で行われるため、支援企業からの受託や生活用品の製造が主となっている。身体に障害を抱えたり高齢で動けない受刑者のために製品の袋詰めなど居室内で行う内職も行われている。
また、農場や牧場を保有したり支援企業から借り上げて和牛や豚の生産、野菜の栽培を行ったり、模範囚や刑末期囚を支援企業に派遣し一般作業に従事させたり、自前の漁船で漁を行う所もある。
そうして作られる刑務所作業製品は一部では人気になっており、函館少年刑務所のマル獄シリーズの布製品や横須賀刑務支所で製造される石鹸・ブルースティック、横浜刑務所の製麺工場で作られるパスタが特に人気になっており転売も行われているほどである。
売上は各刑務所の運営予算に計上され、受刑者の報奨金に充てられるほか、犯罪被害者支援団体の活動にも分配される。
2025年の拘禁刑導入により懲役刑では義務となっていた刑務作業が見直され、通常の刑務作業の他に職業訓練や改善指導、教科指導といった教育プログラムが導入される。2025年以前に刑が確定した受刑者は義務を逃れられないがプログラムの選択は出来るようになる。
慰問・信教
刑務所外との接点として芸能活動を鑑賞できる「慰問」という行事がある。杉良太郎など一般の歌手などが来ることもあるが、俗に「受刑者のアイドル」と呼ばれている女性デュオ「Paix2」のように刑務所慰問をメインに活動している者もいる。
ただし、慰問の時間は決して声を上げたり笑ったりはできず座って観るのみ、やったら懲罰対象となる。
「絶対に笑ってはいけない慰問」
刑務所は法務省が管理する公的な施設であり、同時に日本国憲法が保障する信教の自由は受刑者であっても妨げられない事から、受刑者が希望する宗教活動の機会が設定されており、仏教やキリスト教の宗教家が刑務所を訪問して受刑者と接することもある。
医療・検査
収容者の中には当然ながら持病を抱えたり治療を必要としているものもいるため刑務所内でも医療施設がある。特に重度の場合は医療刑務所に収監されることとなる。軽度の場合にはそれぞれの刑務所の医療設備で処置が行われ、日常的な持病等の薬の処方などは所内で完結される。外では街中のクリニック等で行われるような小規模な治療も一般的な刑務所内で完結して行うことができる。ただし、医学上の処置は行われても受けられる内容は生活保護の医療扶助と同等の範囲に限られ、また外の医療機関で配慮されるような患者のプライバシーや尊厳への対応は問題視されることがあり、2016年に女子刑務所で痔の治療の際に女子受刑者の肛門へいきなり指を挿入し痛がらせたという事例が報告されている[1]。
監獄法から刑事収容施設法に根拠法令が変わってから、刑務所内生活に変化があったともいわれる。
また、刑務所入所の経験談としてよく取り上げられるが、刑務所では身体検査の一種である検身が行われている。日本の刑務所での検身の方法は、男子刑務所は「カンカン踊り」という動作による検査が、昔は裸体で実施されていたものの現在ではパンツ一丁で実施されている。女子刑務所の場合は全裸で四つん這い姿勢になり静止して、耳や膣や肛門の内部に隠匿物がないかを検査する手法であり[2]、さらに膣および肛門へのガラス棒挿入や目視により膣の中を足元に置かれた鏡で覗く検査も行われている。諸外国では検身自体は行われるものの内容は異なる。例として英国法が採用されている香港では女子刑務所で行われる「通櫃」という体腔検査で肛門と膣に指を挿入する際、処女膜を損壊しないよう対処して検査する対策がとられている。
新社会人の方へ。囚人と社畜を比較した表を貼っておきます - Togetter
海外
海外の刑務所は日本とは同じとは限らず差異が激しい。広さの違いもあるが外に出られないだけで暴れないならある程度の自由が黙認されている、囚人同士で自治させている場合もある。
- 囚人が所狭しとすし詰めにされている
- 暴動が起きたり、銃器が持ち込まれているなど無法地帯
- 囚人がそれぞれの特技を生かし商売をしてひとつの街を形成している(飲食店、コンロ、包丁などもある)
- 酷暑の気候であるがエアコンなどなく、小さな扇風機ひとつ、酷い場合はそれすらない。
こんなところ絶対に入りたくない!な刑務所もあれば、一部の国では囚人の人権が非常に尊重されており、どう見てもホテルや「ちょっとおしゃれな自分の部屋」のような一室が独房の刑務所もある。
関連動画
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関連項目
脚注
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