概要
散弾銃とは、散弾を発射する銃の総称である。
ショットガン(人によってはシャッガン)とも呼ばれる。
一度の射撃で散弾をばら撒けるため移動する標的に対し効果的であり、狩猟用に広く利用されている。ただし、散弾ではない弾薬(スラッグ弾)を使用できるものも多いため、厳密に言えば散弾銃という呼称は適切ではない。
日本では、狩猟・有害動物駆除(猟銃)・標的射撃の用途に供するため民間人の所持が許可されているが、銃のもつ危険性から所持者には非常に重い責任(年に一度の警察署での検査義務、銃と弾は鍵付きのロッカーに別途保管する、車に銃を積載した状態で車から離れてはいけない、など)が課されている。
また、散弾による瞬間的な弾幕を張ることができ、目前の敵を瞬時に制圧できることから
警察・軍隊においては対人戦闘としても用いられる。(後述)
散弾の拡散
ちなみに、下記の図の通り、実際はゲーム表現のような拡散はしないらしい。
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ゲームなどでの散弾銃 | 実際の散弾銃 |
距離××メートルにおいて散弾が20cmの円に広がる…といった例もあるが
厳密には銃身長や銃口部の広がり(チョーク)といった細かな要素も絡むため
それらが異なれば、同じ弾薬を使用しても同じ拡散率ではない点に注意。
射程
基本的に通常の小銃(ライフル)と比較すると射程は短い。
※それでも意外と射程はあるため、50~100m離れれば撃たれても大丈夫という意味ではない。
- 通常の銃は一発の弾頭(飛翔部分)が銃身に密着し効率的に押し出すのに発射エネルギーを集中できる
- 散弾銃の場合はライフリングも無く、内部に詰められた細かな複数の粒弾を押し出すのに発射エネルギーを使ってしまうためロスが大きい。また個々の粒弾が小さく重量がないため、飛翔中の空気抵抗も相まって距離があるほど急激に飛翔エネルギーを失ってしまいやすい。
- もちろん銃身の短いもの、短く切り詰めたものはさらに射程は短くなる。
弾薬
弾薬は、リム付の金属製台座とプラスチック製のケースで構成されている。プラスチックの特性上、再装填は難しい。
口径は、(1ポンド/ゲージ数)の重さの鉛球の直径によって表される。すなわち、ゲージ数が少ないほど、口径が大きい。
10番で19.5mm、20番で15.6mm、もっとも普及している12番で18.1mmである。
例外的に、410番だけは、0.41インチ(10.4mm)である。
弾薬自体が大きいため、通常のライフルや拳銃弾と比較し中に詰める散弾や内容物の自由度が高い。
ただし弾薬自体の大きさから携行弾数・装填可能弾数には限度がある。
大まかな弾種
30発以上と多くの細かな散弾が詰まっているもの。
鳥などの小動物を撃つのに向いているが、熊は倒せない。
クレー射撃にも用いられる。
対人用ではないが、人間が食らうと非常に悲惨なことになる。[1]
8発~10発程度のゴロゴロと大きめの散弾が詰まっているもの。
鹿などの大型獣を仕留めるのに必要。熊も倒せる。
バック(Buck)は雄鹿の意。後方・背中のバック(Back)ではないため注意。
スラッグ弾
散弾ではない1発の通常弾が飛んでいくもの。熊も倒せる。
他の2つより破壊力と射程があるものの、射程はライフル弾には及ばない。
機構による分類
- 元折単身銃
- 銃身後端と機関部との結合部辺りで折れるのでこの名があり、銃身は1本で単発である。
- 水平2連銃
- 銃身が2本、横に並べられているので、横2連銃と呼ぶ事もある。型式としては殆どが元折れ式で、主に狩猟に使用される。
引き金(トリガーとも言う。)は、左右各銃身にたいして1本ずつ計2本あるものと、1本の引き金で両方の銃身から発射する物との2種類があり、前者を両引き、後者を単引きの引き金という。 - 上下2連銃
- 基本的な構造としては水平2連銃と同じだが、銃身を縦に2本並べた点が異なる。この型式の散弾銃は、標的射撃競技(クレー射撃)に適しており、多く使用されている。
- ボルト・アクション銃
- ボルト・ハンドルを手動で操作して排きょう・装てんを行う形式で、散弾銃ではそれほど一般的ではない。単発・連発の両種があり、連発の物には弾倉がある。連発式のものは殆どが狩猟用で、携行性に重点を置いて作られている。標的射撃ほどに精密な動作を必要としないので、引き金も狩猟で危険でない程度に重く、安全装置も設けられている。
戦前の日本で普及していた、軍用払い下げの村田銃を改造したものがこの形式である。
散弾銃では最上位の命中精度を持つため、MSS-20のようなハーフライフル・サボスラッグ弾仕様のものが、日本ではライフルの代用として普及している。 - 自動装てん式銃
- 発射の際に生じる反動・火薬のガス圧を利用して、排きょうと次弾の装てんを自動的に行う形式の連発銃である。
- スライド・アクション銃
- 映画などでよく見る「ガシャコッ」「ジャコン」と弾を装填している有名なアレである。
排きょう、装てん等の連発に必要な操作を先台を握る手で行う形式の連発銃で、常位置(機関部閉鎖の状態)から手先台を前に引いて(スライド)排きょうし、元の位置に戻して弾倉から次弾を装てんする。
この型式の銃をレピーター・ポンプ銃と呼ぶ事もあるが、レピーターとは連発銃全体を意味することもある。ポンプアクションとも呼ばれることも。
西部警察の大門刑事が使用した銃や、初代バイオハザードで登場したショットガンをイメージすればわかりやすいかもしれない。スライドアクション特有の動作が絵になるのか、フィクションでも取り上げられやすい銃である。
自動装てん式に比べれば旧式な部類に属するが、手動装てんの確実さが買われて現在でも広く普及している。 - レバー・アクション銃
- これも手動の連発銃で、通常、引き金を囲む用心金(トリガー・ガード)を兼ねているレバーを前後に作動させて、排きょう、装てんを行う。
某サイボーグ映画で用いられたウィンチェスターM1887のスピンコッキングはこれによるもの。遠心力でレバーを動かすことで片手リロードができるというものだが、実際のところ破損しやすいやり方なので推奨はされない。
軍事・治安維持用途における散弾銃
第一次大戦の塹壕戦・第二次大戦・ベトナムにおけるジャングル戦等、近距離および限定された状況において散弾銃が効果的に利用された事例はあるが、散弾銃は他の軍用火器に比べて装弾数が少ない、携行弾数が少ない、連射が利かない、有効射程が短い等の短所を抱えているため、現代の地上戦で歩兵の主要装備として用いられることはほぼない。
一方で近距離では制圧力が高い、ドア破壊(後述)が可能、非致死性弾を含む多様な弾薬を使用可能、といった長所もあるため、建物への突入作戦を行う主にアメリカの軍部隊・警察・沿岸警備隊等の治安機関が装備している。
近距離=万能ではない
但し市街戦や近距離戦闘であっても、散弾銃が万能というわけではない。1997年にロサンゼルス市のノースハリウッド地区で発生したアメリカ銀行強盗事件(ノースハリウッド銃撃戦)では、犯人2名がカラシニコフ小銃で武装し、また胴体や腕に防弾装備を施していた。
このため、当初臨場したパトロール警官が所持するピストル及び散弾銃では有効な打撃を与えることが出来ず、また火力は犯人の方が上回っていたため、制圧することが出来なかったのだ。事件そのものは犯人の1名は包囲されて自殺、もう1名は後から臨場したSWATの突撃銃の銃撃を受けて死亡した。
このことを教訓とし、パトカーにも散弾銃だけでなく突撃銃を装備する方法が全米各地の警察で取られた。突撃銃の運用に関しては警察機関ごとに違いがあり、最初の訓練課程で全員に所持資格を持たせる場合もあれば、現役警察官を対象に選抜を経て所持資格を持たせる場合もある。
また散弾の特性から制圧はできても精密射撃は困難なため、人質を抱えた犯人などを撃つと人質ごと射殺してしまう危険性がある。
国際法
一言補足しておくと、散弾銃の軍事使用を明確に禁止する国際法は存在しない。解釈によってはハーグ陸戦条約にいう「不必要な苦痛を与える兵器」に該当するとして非難される場合もある、という話である。
非致死性弾の使用
警察では致死性のバックショットやスラグ弾ではなく、非致死性の弾薬が用いられる場合もある。
非致死性弾として広まっているものの一つはBean bag(お手玉)と呼ばれる弾薬を用いたもの。お手玉弾は文字通りお手玉のような小さい袋を発射することで、被疑者に激痛を与えて制圧する。
もう一つはテーザー銃で有名なTaser Internationalがかつて生産していたXREPである。これはテーザーの機構をシェルの中に搭載し、それごと撃ち出すもの。命中すると被疑者に電撃を加えることができる。テーザー銃と比べて有効射程が長くなるのが特徴だが、現在では生産されていない。
非致死性弾は通常のショットガンをそのまま流用して使用することが出来るので、特殊な装備なしに運用可能なのが特徴。しかし非致死性弾と致死性弾を混用してしまうと事故につながる恐れがある。例えば非致死性弾を撃とうとして実包を発射してしまうなど。そこで非致死性弾を装てんするショットガンは実包を装てんするものと完全に区別した上で、前者のスライドやストックを部分を色分けすることで容易に識別できるようにし、混用による事故を防ぐのが一般的となっている。
お手玉弾を装てんしたショットガンを持つ、カナダ騎馬警察隊員。
その他・変わり種
- 通常の拳銃から無改造で発射可能な弾薬もある。
- 想定は蛇などの駆除用。対人用に用いても威力不足だが一思いに死ねないぶん悲惨。
- 9mm口径の拳銃用散弾が恐ろしすぎた...【ショットガン】 - ニコニコ動画 (nicovideo.jp)
- 対人戦闘に再装填時間が致命的なため、箱型弾倉のショットガンもある。
- フルオート連射可能なAA-12のような変わり種のショットガンも存在する。アメリカ製。
- RDIストライカー12のような回転式弾倉をもつショットガンも存在する。
- 南アフリカ製で、装填数は12発。
- 銃身を非常に短く切り詰めたものはソウド・オフ・ショットガンと呼ばれる。[2]
- 特にドア破壊に特化した散弾銃およびシステムは「マスターキーショットガン」とも呼ばれる。
- もはや銃ではないが、特性的に戦車版ショットガンといえる砲弾もある。
- 粒弾自体も巨大で、前方広範囲の歩兵を一瞬で殲滅可能なもの。(キャニスター弾)
- 戦車砲用対人散弾 - ニコニコ動画 (nicovideo.jp)
- サプレッサー(減音器)の運用には向かないが、一応存在する。
関連動画
関連項目
脚注
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