第二次ネオ・ジオン抗争とは、アニメ『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の作中で起きた戦争である。
「シャアの反乱」、あるいは「第二次ネオ・ジオン戦争」とも呼ばれる。
概要
宇宙世紀0093年に勃発した、地球連邦軍とネオ・ジオンとの戦争。グリプス戦役の終結時に歴史の表舞台から姿を消していたシャア・アズナブルが、反地球連邦組織やジオン残党を併合した新生ネオ・ジオンのリーダーとなり、宇宙世紀0092年12月22日に難民用コロニー「スウィート・ウォーター」を占拠した事を発端とする。
シャアの目的はアースノイドを粛清し、人類全てを宇宙へ上げるための地球寒冷化作戦を実施することだった。もっともこの目的は新生ネオ・ジオンの支援者でもあるアナハイム・エレクトロニクス(AE)社や宇宙居住者にとっても到底許容できないものであり、組織上層部と実行部隊以外には秘匿されていた。
経過
前史
宇宙世紀0089年1月、ネオ・ジオンの自滅的敗北によるエゥーゴの勝利という形で第一次ネオ・ジオン抗争が終結。残存ネオ・ジオン部隊は散り散りとなり、エゥーゴも地球連邦軍に吸収される形で事実上消滅。かくして情勢は元通り……となったはずだったが、連邦政府のスペースノイド軽視の姿勢は変わらず、戦後復興のスピードは明らかに遅かった。宇宙は地球に住む一部の特権階級によって搾取される時代へと逆戻りしつつあり、スペースノイド全体に反地球連邦政府の感情が拡大していた。
0090年に入り、反地球連邦組織の活動は激化。エグムやNSPなど、一部の大規模な組織はモビルスーツ(MS)や宇宙艦艇まで調達していた。連邦政府・軍への妨害工作も顕著になり、テロや小規模な戦闘が頻発する。
0090年3月21日、地球連邦軍は外郭新興部隊「ロンド・ベル」を編成し、各コロニーへの独立捜査権を与え、一連の反連邦活動の取り締まり任務を命じた。この時点のロンド・ベルは小規模な部隊ではあったが、スペースノイドはかつてのティターンズの再来であると警戒心を抱き、調査へのサボタージュを繰り返した。そのためロンド・ベルは2年間のコロニー内偵において、密かにネオ・ジオンに戻っていたシャアによる軍事力整備を発見することができなかった。
反地球連邦組織や旧ネオ・ジオンを糾合し、さらにAE社に新型機を製造させるなど軍備の増強を進めていたシャアは、父ジオン・ズム・ダイクンの衣鉢を継ぐ事を標榜し、新生ネオ・ジオンの総帥となる。ジオン公国=ザビ家の復興を掲げた旧ネオ・ジオンは、「スペースノイドの独立」を掲げながら対立するスペースノイドを虐殺したザビ家に危機感を抱く民衆から支持を集められなかったのに対し、シャアは本来のジオンの理想を掲げながら連邦体制への反抗を宣言し、広く支持を集めることに成功した。
0092年12月22日、ネオ・ジオン艦隊はサイド1のスウィート・ウォーターを占拠。これに対し、同年12月25日、地球連邦政府の高官ジョン・バウアーの指示によりロンド・ベル隊の増強が行われ、組織的にも実戦部隊として機能できるように再編成される。前々から申請が出ていたガンダムタイプの導入も許可され、AE社フォン・ブラウン工場の協力の元、サイコミュ搭載のνガンダムが開発される。
0093年2月27日、シャアはインタビュー番組内で地球連邦に対する事実上の宣戦布告を行う。
5thルナ落下作戦
3月3日、スウィート・ウォーターを発進したネオ・ジオン艦隊は連邦政府の油断をつき、少数精鋭をもって地球の衛星軌道上にあった小惑星5thルナを占拠。当時の連邦本部が置かれていたチベットのラサへ「5thルナ落とし」を決行する。
ロンド・ベルは5thルナへ急行するが、それ以外の連邦軍は大した動きを見せず、戦力不足は明らかだった。5thルナ落下阻止は叶わず、直撃を受けたチベットは壊滅した。もっとも粛清対象である地球連邦政府の閣僚達は一足先に脱出しており、犠牲になったのは避難の完了していなかった多くの一般市民だった。
リ・ガズィでシャアのサザビーと交戦したアムロは、彼我のMSの性能差を痛感し、自身が開発に関与していたνガンダムを受領するため、AE社フォン・ブラウン工場へ単身赴いた。
ロンデニオン極秘交渉
元来、地球連邦軍全体とは比較にならないほどの小勢力であるネオ・ジオンは、蜂起にあたっては短期決戦を目指していた。5thルナ落としで自分たちの力を誇示したネオ・ジオンは、地球連邦政府に対して和平交渉を申し入れ、連邦政府もこれに応じる。この交渉はロンド・ベルの本部が存在するサイド1のロンデニオンで極秘に行われることとなった。
ネオ・ジオンはシャアのロンデニオン潜入をロンド・ベル艦隊に悟られないため、小艦隊による陽動攻撃を仕掛けた。熟練のネオ・ジオンMS隊にロンド・ベル艦隊は苦戦を強いられるが、援護の艦砲射撃(実際はアムロのνガンダムによる超長距離狙撃)開始に伴い、ネオ・ジオンは撤収する。
3月6日、ロンデニオンのホテル・キャンベラにて和平交渉が行われる。会談にはアデナウアー・パラヤ以下の連邦政府代表とネオ・ジオン参謀ホルスト・ハーネス、そしてシャア本人が出席。ネオ・ジオン艦隊が連邦軍ルナツー要塞で武装解除する代わりに、連邦政府が管理する小惑星アクシズをネオ・ジオンの買い取りという形で譲渡することが決定された。アクシズはネオ・ジオンの手でスウィート・ウォーターに輸送されることになった。
だが、この和平交渉自体が、ネオ・ジオンによる欺瞞であった。日和りきっていた地球連邦政府の高官たちには、その目論見が見破れるはずもなかった。
アクシズ落とし
3月12日、ネオ・ジオンは艦隊を二手に分割。一方はダミーで艦艇数を偽装した上でルナツーへ向かい、和平成立と思い込み油断していたルナツー艦隊を騙し討ちで壊滅させる。
シャアに率いられた残りの艦隊はアクシズを占領する。前述したように、シャアの真の狙いは小惑星アクシズを地球に落とし、かつ地表近くで核爆発を起こし、地球に核の冬を到来させることにあった。ネオ・ジオンはルナツーに貯蔵されていた核兵器をアクシズに移送する。
ロンデニオン会談のリークを受け、シャアのアクシズ落としを察知していたロンド・ベル隊は、連邦会計局のカムラン・ブルームから提供(横流し)された核ミサイルを戦力に加え、アクシズ追撃を開始。MS隊を先攻させ、艦隊は牽制のミサイル砲撃を行った後、核ミサイルの集中攻撃を行う作戦に出る。しかし、MS隊は防衛線を突破できず、核ミサイルも迎撃されてしまう。アクシズは核パルスエンジンに点火し、地球への落下コースに遷移する。
ロンド・ベルは艦隊攻撃を主軸とし、残存核ミサイルによるアクシズ自体の破壊、そして陸戦隊のアクシズ揚陸という、三段構えの第二次攻撃を開始。時を同じくしてサイド2、サイド5、そしてルナ2の生き残り連邦艦隊がアクシズへ向け進発した。
激戦の中、ロンド・ベルはアクシズ内部への破壊工作によって、アクシズを2つに爆砕する事に成功する。ところが、爆発の威力が強すぎた為にアクシズの後部が地球へ向けて押し出され、落着は不可避となった。彼らはシャアの手助けをしてしまったのである。
アクシズ・ショック
サザビーを撃破し、脱出したシャアを捕らえていたアムロは、νガンダムでアクシズの軌道を逸らそうとする。この時になってようやく連邦軍艦隊が到着し、ロンド・ベルに代わってネオ・ジオン艦隊と交戦を開始する。
この時、撃墜されたチェーン・アギ機から飛び出したサイコフレームが虚空を漂っていた。サイコフレームが戦士たちに何らかの影響を与えたのか、それはわからない。しかし、援軍として駆け付けた連邦軍MS隊は、次々とアクシズへ取りつき、アムロと一緒にアクシズを押し出そうとしたのである。さらには一部のネオ・ジオンMSまでもが、彼らに同調してアクシズへ取りつくのだった。
集まった人々の意志は、νガンダムに搭載されたサイコフレームを共振させる。そして、νガンダムから生じた“虹色の光”が、アクシズのみならず地球全体を覆うほどのオーロラへと拡大していく。オーロラは超常的な力でνガンダム以外のMSを吹き飛ばした後、アクシズを地球から遠ざけていった。
残存ネオ・ジオン艦隊は撤退を開始し、かくしてシャアの反乱は宣戦布告から一ヶ月足らずで終結に至る。なお、アムロとシャアの2人は行方不明となった。
戦後の影響
サイコフレームの輝きは地上の各地で目撃され、様々な人々の心に、様々な印象を残した。だが、制御不能な力の発現を危惧した連邦軍によって、サイコフレームの研究・開発は(表向きには)凍結され、アクシズの地球落下回避はロンド・ベル隊の分断作戦の成功であると公表された。
事実上、シャア一人によって形を保っていた等しいネオ・ジオンは瓦解したかに見えた。しかし、彼らは決して壊滅したわけではなく、ジオン共和国の強硬派やAE社の一部勢力から支援を受け、旧ジオン公国残党といった様々な層をも取り込んで勢力を維持していた。彼らは後に「袖付き」と呼ばれ、新たな火種となる。
また、「地球の保全」というシャアの思想に共感し、全人類を地球から宇宙へ移民させる為の政策実施を地球連邦政府に要求する武力組織も勃興していく。
だが、それでもなお連邦政府の腐敗と弱体化は留まることが無かった。そして、その姿勢に対して更なる反抗組織が現れるいたちごっこが続く。この構造はおよそ30年後、コスモ・バビロニア建国紛争という形で爆発し、連邦政府の衰退に拍車をかけることになる。
関連動画
関連項目
- 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
- 宇宙世紀
- 地球連邦軍
- ロンド・ベル
- ネオ・ジオン
- アクシズ
- アクシズショック
- サイコフレーム
- 一年戦争
- グリプス戦役
- 第一次ネオ・ジオン抗争
- ガンダムシリーズの登場人物一覧
- ガンダムシリーズの関連項目一覧
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