Pot Noodle(ポットヌードル)とは、イギリスのカップ麺である。
概要
1977年に、イギリスの企業「Golden Wonder」(ゴールデンワンダー)が発売したカップ麺。ただしその後ブランドの売買などが行われた結果、2021年現在では同じくイギリスの企業「Unilever」(日本でも有名な「ユニリーバ」)のブランドとなっている。
ちなみに元々の発売企業であるゴールデンワンダー社は、こういったインスタント食品を主力としていた企業というわけではなく、ポテトチップスなどを主力商品としているスナック菓子企業であった。
イギリスでは「昔からある定番商品」として社会に定着しているようで、「Pot Noodle」という言葉はこの商品自体を指すだけでなく、カップ麺の代名詞的な存在にもなっている。
例えば日清の「カップヌードル」の生みの親である「安藤百福」の死去を伝えた2007年のイギリスのオンラインニュースでは、彼の事を「Mr Pot Noodle」(ミスター・ポットヌードル)と紹介している。
その同じ記事内に記載されている情報によれば(つまり2007年の情報になってしまうが)、ポットヌードルは年に1億7500万個生産される人気商品であるという。
なお日本人は「ポット」と言えばお湯を入れるポットを連想するので「お湯で作れるという意味合いの商品名なのかな?」と思ってしまうかもしれないが、英語の「pot」は蓋があり縦に円筒形の容器を広く指す言葉でありすなわちカップ麺のカップ容器も指す。よって「Pot Noodle」という商品名は、単に「カップヌードル」と同程度の意味合いであると思われる。
日本語紹介記事などで「カップラーメン」であると紹介されることもある(本記事もかつてはそう表記されていた)。だが、少なくとも2024年3月現時点においてブランド公式サイトなどで「ramen」(ラーメン)と表現されてはいないようである。日本語レビュー記事にて、麺について「かん水は使っていないようで白く、うどんのようだ」[1]と評されることもあり、「ラーメン」と区分すべき食べ物ではないのかもしれない。
商品ラインナップ
日本の「カップヌードル」がそうであるように、ポットヌードルも複数の種類が販売されている。
2024年1月現在、ポットヌードル公式サイト内に掲載されている味(フレーバー)の種類は以下の通り。フレーバー名からは公式サイト内の商品説明ページに飛べる(リンク切れになっていなければ)。
- Pot Noodle Chicken & Mushroom:「チキン&マッシュルーム」フレーバー。
- Pot Noodle Beef & Tomato:「ビーフ&トマト」フレーバー。
- Pot Noodle Original Curry:「オリジナルカレー」フレーバー。
- Pot Noodle Bombay Bad Boy : 「ボンベイバッドボーイ」フレーバー。ボンベイとはインドの都市ムンバイのこと。唐辛子を利かせた辛口のカレーフレーバーで、刺激が強いことを「バッドボーイ」(不良少年)と表現しているようだ。
- Pot Noodle Chinese Chow Mein : 「チャイニーズチャウミン」フレーバー。中華焼きそば味か。
- Pot Noodle Chicken Korma : 「チキンコルマ」フレーバー。「コルマ」とはインド料理の一種。
- Pot Noodle Sweet & Sour : 「スウィート&サワー」フレーバー。パッケージには中華風の龍のシルエットがあしらってある。酢豚みたいな、中華料理の甘酢味という事だろうか。
- Pot Noodle Sticky Rib : 「スティッキーリブ」フレーバー。パッケージには棒術の構えをとる東洋風の武術使いらしきシルエットが描かれている。「Sticky Rib」で検索すると、どうやらリブ肉にタレを付けて焼いた中華料理であるようだ。
- Pot Noodle Pulled Pork : 「プルドポーク」フレーバー。「プルドポーク」とはアメリカのバーベキュー料理。
- Pot Noodle Christmas Dinner:「クリスマスディナー」フレーバー。七面鳥/グレーヴィー/スタッフィングといった、欧米でのクリスマス料理の味らしい。
- Pot Noodle Doner Kebab:「ドネルケバブ」フレーバー。「ドネルケバブ」はトルコの肉料理。
- Pot Noodle Piri Piri Chicken:「ピリピリチキン」フレーバー。「ピリピリチキン」はポルトガル料理。
これらのフレーバーの内いくつかには、大きなサイズの「King」バージョンや、4つがセットになった「4-Pack」バージョンも存在している。
他にもこれまで「Nice 'n' Spicy」「Spicy Curry」「Southern Fried Chicken」「Chilli Beef」「Brazilian BBQ Steak」「Mexican Fajita」「Seedy Sanchez」「Sausage Casserole」「Mac & Cheese」「Thai Green Curry」「Jerk Chicken」「HOT CHICKEN CURRY」などの様々なフレーバーが存在していたらしく、年月によってフレーバーはどんどん入れ替わっていっているようだ(以前のフレーバーが復刻したり、後述のサブブランドへ移籍することなどもある)。上掲のフレーバーも、あなたがこの記事を閲覧している時には既に古くなっているかもしれない。
また、パスタ製品「Pot Pasta」や、アジア諸国をイメージした「Pot Noodle Fusions」(かつては同様にアジアをイメージした「Asian Street Style」というサブブランドもあった)、カップを無くした袋麺製品「Lost The Pot Noodle」など、姉妹シリーズ/サブブランドとでも言うべき製品群も展開されている。
ベジタリアン適合
ちなみに、「チキン」や「ビーフ」や「ポーク」などと肉っぽい名称が付いているフレーバーでも、上記の商品説明ページにはベジタリアン適合マーク(V-LABEL.EUによる「VEGETARIAN」認証マーク)が付いている。
間違って付けてしまったのかな?と思ったが、公式サイトの「FAQ」(よくある質問)ページに「Is Pot Noodle vegetarian?」(ポットヌードルはベジタリアンでも食べられる商品ですか?)という質問があり、それに対して「Yes! Pot Noodle flavours are vegetarian.」(イエス!ポットヌードルのフレーバーたちはベジタリアンでも食べられますよ)と回答されている。
つまりどうやら間違いでは無く、どのフレーバーもベジタリアン適合商品らしい。「チキン&マッシュルーム」「ビーフ&トマト」「プルドポーク」フレーバーであっても。
どういうことなのかは、詳細が書いていないのでよくわからない。もしかして、化学調味料によって「チキンみたいな味」「ビーフみたいな味」「ポークみたいな味」を合成しているのであろうか。
少なくとも、日本のカップラーメンのように「具として肉やエビが入っている」ことは期待できないようである。入っていたらベジタリアン適合と謳えないであろうから。
評価
まず断っておくと、上記のようにこのポットヌードルは1970年代から数十年売れ続けているロングセラー商品であり、また前述のようにかなり大量の数が生産されていることから売れ筋商品であることもうかがえる。
つまり、イギリス人の味の好みにはある程度合っているのではないかと推測される。よって、メインターゲットであるイギリス人たちの味覚に照らせば、決して「不味すぎる、お話にならない」といったゲテモノ商品ではない。
たしかに社会的な評価としては基本的には「ジャンクフード」扱いではあるようだ。また、そういった評価はポットヌードル公式も受け入れていた。というのも、ポットヌードルを「filthy」(いかがわしい、下品な)と評したり「The Slag of all Snacks」(仮訳:「全てのスナックの中でもクズなものの代表」)呼ばわりするようなテレビCMを流したことがあるため。
このCMは
- 上品そうな妻と一緒に、妻が出してくれたサンドウィッチを一見楽しそうに食べている男性。
- しかしその後、妻に隠れて「妻のことは愛してるけどさ、サンドイッチはもうウンザリだ!何か下品なものが食いたい!(「I need something filthy!」)」と電話で知人に弱音を吐く。知人は「ポットヌードル」を勧める。
- 噂の下品な食べ物「ポットヌードル」を探しに、いかがわしい食品街(明らかにred-light district、すなわち売春街をパロディしている)を彷徨う男性。「ポットヌードルを」といくつかの店で頼むが、この街ですらポットヌードルはいかがわしすぎるのか店員から平手打ちを食らったり、店を叩き出されるなどしてポットヌードルにはありつけない。
- だがついに、ある店でセクシーな格好をした女性店員にかけあったところヒソヒソ声で交渉に応じてくれた。
- そして場面は個室へ。男性はその女性店員と二人でベッドの上に座り、興奮の声をあげて体を震わせながら二人でポットヌードルをすする(要するに、売買春のパロディ)
- 最後にポットヌードルの画像と「THE SLAG OF ALL SNACKS」というネオンサインが表示される。
といったもの。
売買春を彷彿とさせるこのテレビCMはやはりまずかったのか、抗議の声が殺到。放映規制を食らってしまったという。[2]slag自体「売春婦」「淫乱女」といった意味もあり、「そうした言葉をテレビで聞きたくない」という声もあった。
2005年にはズボンのポケットに角笛(もちろんアレのメタファーである)を入れた男が登場するCMを流したり(これにも苦情は来たが、当局は「夜9時以降の放送なら問題なし」とした)と、たびたび物議を醸す宣伝をしているようである。
また、いささか古い資料だが、2004年にイギリスの大手新聞「The Guardian」紙のサイトに掲載されたコラムではこの商品に関してこのような文章が掲載されたこともあった。
(前略)Pot Noodle was generally regarded, by middle-class opinion-formers, as nasty, nutritionless gut-filler for indolent, tracksuit-clad peasants - and Pot Noodle has scarcely looked back.(後略)
(和訳例:ポットヌードルは、中流クラスの世論形成者たちからは概ね「低質で栄養が無く、スウェットを着た怠惰な田舎者が腹を満たすためのもの」とみなされており、ほとんど一顧だにされない存在であった。)
とはいえ、ここには「まずい」と書いてあるわけではない。上記のCMからしても、「下品な食べ物だが、ときには無性に食べたくなるもの」的な扱いがされている。
では味の面ではどうなのかと言うと……イギリス人によるレビューでは、いくつかのフレーバーの味について高評価を下しているものもある。だが、少なくとも「日本人からの評価」では、概ね芳しくないと言わざるを得ない。「味が薄い」「ダシが全く感じられない」「そのくせ辛いフレーバーのものは辛みだけが強い」「麺もボソボソしている」と言った、率直に言って酷評レベルの感想が多いようだ。
(上記のイギリス人によるレビューも含め、複数の日本語レビュー記事へのリンクを本記事の「関連リンク」に掲載しておくので、興味がある方はご覧いただきたい。)
「ダシが感じられない」と言う感想が多い事には、前述のように「チキンやビーフやポークと謳っているフレーバーでも、なぜかベジタリアン適合マークが付いている」事にも何か関係しているかもしれない。もしかすると、肉や魚介類に由来するエキスや出汁は全く使っていないのではないだろうか……?
ただしこういった感想は、「イギリス人向けに作られた製品を、本来のターゲットではない日本人が食べたこと」に由来する可能性がある。「イギリス人は塩辛い味が嫌いな人が多いと言われるので、ロンドンの有名ラーメン店は塩からくないよう味を変えた」といった話もある。つまり「味が薄い」という点はイギリス人の好みに合わせているからであって、日本人が文句を言うのは筋違いなのかもしれない。
関連動画
関連リンク
日本語でのレビュー記事
- イギリス版「カップヌードル」 Pot Noodle | EIKOKU GO :
イギリス人による、5種のフレーバーのレビュー記事(2017年9月24日)。以下の日本人らによるレビューと比べると、比較的高評価であることが分かる。特に「ビーフ&トマト」フレーバーには10点満点中8点を付けて、「昔から私が好きな味で、かなりビーフの風味が強いです」「このビーフ&トマト味はほとんどの人が好きな味だと思います。」とまで誉めている。 - Vol.9 劇マズ生き地獄!歴史と伝統のPOT NOODLE4種を命がけで食べ比べてみた | LiB UK :
英国生活に関するサイト「LiB UK」のスタッフ4名による、4種のフレーバーのレビュー記事(2017年9月22日)。上記のイギリス人によるレビューとは打って変わって、「ビーフ&トマト」は「なにこれひどい。」「この世のものとは思えない。」「吐きそう。」「殺す気か!」と酷評が並んでしまった。ただ「チキン&マッシュルーム」は「マッシュルームの味は一切しないが、なんとか食べれる。」などと比較的好評価を得ている。 - 「世界一マズいカップ麺」食べてみた 衝撃の"不良少年味"って… よくあるカップ麺と何が違う? | 乗りものニュース
「Bombay Bad Boy」フレーバーを乗り物・交通に関するニュースサイト「乗り物ニュース」の編集部が食べてみた記事。「カレー風味で酸っぱく辛めの味となっているものの、とにかく薄味です。」「日本のカレー味のカップ麺に、お湯を規定量の1.5倍注いでしまったイメージがわかりやすいでしょう。」と、他の日本語メディアでのレビューでも共通する「味が薄い」という感想を述べているが「ただ、食べられないほどのものではありません。」とも記しており、カレー風味は日本人にも受け入れやすいようだ。麵については「小麦粉の塊をもぐもぐ食べるような新食感」とのこと。 - 世界一まずいカップラーメンを現役オーナーシェフに無理やり食べさせてみた! - 蒼のモノリス :
会員制レストランのオーナーシェフに「ビーフ&トマト」フレーバーを食べてもらって感想を聞いた記事(2017年3月13日)。「塩気も足りなければうま味もまったくない。」「麺もぼそぼそで味のしない粉を固めた何かを食べているような感じですね。」などと、やはり口に合わなかった様子。 - 【イギリスグルメ】史上最強レベルの不味いカップラーメンを食べてみた / あまりのヤバさにメガネがブレる | ロケットニュース24 :
「Piri-Piri Chicken」フレーバーをウェブメディア「ロケットニュース24」の2人の記者が食べてみた記事(2014年4月12日)。本編はYouTubeに投稿された動画となっている。どちらの記者もスープを一口飲むなり顔をしかめてしまったが、一方は「決しておいしくはないんだけど」「食えなくはないような気がしてきた」と語り、もう一方も「ダシの味がゼロ」「ピリピリしたお湯に入ったボソボソした麺を食べてる」「でもちょっと食っちゃうな」と語り、双方とも「おいしくはないが慣れると食べ進むことはできる」といった評価だった。 - 【グルメ】食べた人が「史上最悪のヤバさ」と断言するカップラーメンを食べてみた | ロケットニュース24 :
同じく「ロケットニュース24」の別の記者が「ビーフトマト味」と「中華焼きそば味」を食べてみた記事(2014年4月12日)で、元記事が消えているのでウェイバックマシーンによるアーカイブ版へのリンク。ビーフトマト味は「酸っぱくて、しょっぱくて、それなのにダシの美味しさが感じられない。しょっぱいお湯に麺が入っている状態」「味だけでなく麺もかなりヤバいコンディションで、お湯をあまり吸収していないのか、かなりボソボソしている。」とのことで、中華焼きそば味は「もっとヤバイ!」とのこと。 - 寝モバ : Pot Noodle Beef & Tomato (No.196) :
カップ麺のレビューブログによる、「ビーフ&トマト」フレーバーのレビュー記事(2006年04月18日)。「今まで食べたことがない味。さすがマーマイトの国イギリス。もうわけがわからない。多分うまいとかまずいとか簡単に言ってはいけないのだろう。」とのことで「評価不能」としている。麺については「「カタイ」の一言。強いて言えば、袋麺を煮ずにどんぶりにいれてお湯を入れただけのような感じ。麺のコシとかそんな問題じゃない。日本のカップ麺ではありえない歯ごたえ。」とのこと。このブログは他の複数のフレーバーも別記事でレビューしている。 - No.1928 Pot Noodle HOT CHICKEN CURRY FLAVOUR | 即席ラーメンは即席ラーメン
ラーメンを中心としたインスタント食品全般のレビューサイトによる、「HOT CHICKEN CURRY」フレーバーのレビュー記事。2001年5月18日付のもので、ネット上に現存するものではかなり古い。
麺について「しなやかさ皆無で、ぼそぼそした食感、飼料的感覚」、スープについて「ダシ成分微少」と、後続の日本語レビューでも追随するような評価がこの時点で出ている。
総合的には「食べるのが辛かった、英国人には味覚が無いのか!? 」と酷評、最低点の1点を付けている(「普通」が2.5点。1点や4点は珍しい)。
関連項目
脚注
- *No.7466 King Pot Noodle (U.K.) Beef & Tomato Flavour | tontantin即席麺処
- *Pot Noodle TV 'slag' ads banned | Advertising | The Guardian (2002年の、イギリスの大手新聞「The Guardian」紙の記事より)
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