ヴィクトリーギャロップ(Victory Gallop)は、1995年にカナダで生まれアメリカで走った元競走馬で、現在は種牡馬。2010年にカナダ競馬の殿堂入り。
ケンタッキーダービー・プリークネスSでともに2着に惜敗したが、最後の最後にベルモントSで借りを返し、古馬になっても活躍した。
父Cryptoclearance(クリプトクリアランス)、母Victorious Lil(ヴィクトリアスリル)、母父Vice Regent(ヴァイスリージェント)という血統のカナダ産馬。
父クリプトクリアランスはGIでは勝ちきれないことのほうが多く、最終的には44戦12勝GI4勝だったもののその間にGIで2着が7回、3着が4回もあった善戦マン。種牡馬としては本馬の他にブリーダーズカップ・クラシックを最低人気で勝ったヴォルポニなどを輩出しており、また現役時は重賞勝ちがなかった産駒ライドザレイルズがキャンディライドを出して現在では影響力を強めている。
母ヴィクトリアスリルはカナダのLR競走[1]ラプレヴォヤンテSなど27戦3勝で、外国産馬として日本で走り1998年のガーネットSをレコード勝ちしたスーパーナカヤマの従姉。
母父ヴァイスリージェントは競走馬としてはイマイチどころか故障でまともに走ることすら出来ていなかったが、種牡馬としてカナダのリーディングサイアーを13回獲得した名種牡馬である。
5月30日生まれと割合遅生まれの部類だったヴィクトリーギャロップだが、特に何事もなく成長すると1歳時のセリでテキサス州の石油業者に2万5000ドルで購買され、W・エリオット・ウォルデン調教師に預けられた。
デビュー戦は後方のまま直線で何頭か抜いただけの5着に敗れたが、2戦目を8馬身3/4差で逃げ勝つとそれを皮切りに3連勝。1番人気としてローレルフューチュリティ(GIII)に参戦したが、大逃げを打ったファイトフォーエムレディを1馬身3/4差捉えきれず2着に敗れた。
3歳初戦のレベルステークス(GIII)を好位抜け出しで快勝したヴィクトリーギャロップはアーカンソーダービー(GII)に向かったが、ここには強敵がいた。8戦無敗でブリーダーズカップ・ジュヴェナイルを制して2歳ながら年度代表馬に選ばれ、3歳初戦も快勝して無傷の9連勝としていたフェイヴァリットトリックである。
しかし、ヴィクトリーギャロップはいつも通りの末脚に賭けて豪快に追い込むと、直線で先行していたフェイヴァリットトリックを差し切って勝利。フェイヴァリットトリックは本馬からアタマ差の2着に入ったハヌマーンハイウェイにも内から差されてアタマ差で3着となり、10戦目で初黒星となった。
ケンタッキーダービーではフェイヴァリットトリック、4戦無敗のサンタアニタダービー(GI)勝ち馬インディアンチャーリー、フロリダダービー(GI)勝ち馬ケープタウンらが人気を集め、ヴィクトリーギャロップは15頭立ての7番人気止まりだった。しかしレースでは最後方から3コーナーで仕掛けて豪快に追い込み、勝ったリアルクワイエットに半馬身差まで迫る2着となった。
ケンタッキーダービーでインディアンチャーリーの手綱を執っていたゲイリー・スティーヴンス騎手との新コンビで挑んだ二冠目のプリークネスSではその末脚が評価され、リアルクワイエットを抑えて1番人気に支持された。ところが中団後方を進んだヴィクトリーギャロップは外からリアルクワイエットに延々とマークされ続け、そして直線で突き放されて2馬身1/4差の2着に敗戦。20年前のアファームドの三冠の裏で全て2着に敗れたアリダーと同じ準三冠馬という嬉しくない偉業に王手をかけてしまった。
ベルモントステークスでは当然リアルクワイエットが1番人気となり、競馬場には8万人の大観衆が詰めかけた。ウォルデン師が「距離延長はプラスに働くはず。ただ、もしうちの馬が勝たないならリアルクワイエットが勝つところを見たい」という見解を示す中、決戦のゲートは開いた。
中団から抜群の手応えで上がっていくリアルクワイエットと、最後方から末脚に賭けるヴィクトリーギャロップ。4コーナーを抜けたところでリアルクワイエットは後続を突き放して独走態勢に入り、三冠馬の誕生をファンが確信したかに思えたその時。
馬群の中から恐ろしいスピードで1頭だけ飛んできた馬がリアルクワイエットに迫る。誰であろう、ヴィクトリーギャロップである!
3番手以下をちぎり捨てて物凄い豪脚で前に迫るヴィクトリーギャロップ、粘るリアルクワイエット。流石のリアルクワイエットにも突き放す余力は残っておらず、ヴィクトリーギャロップがよれる場面のあった[2]リアルクワイエットに迫り、クビの上げ下げの勝負に持ち込んだところがゴール板だった。
レースは長い写真判定に突入したが、既にスティーヴンス騎手とリアルクワイエットのデザーモ騎手は結果をある程度悟っていたらしく、スティーヴンス騎手はウイニングランを始め、反対にデザーモ騎手は暗い表情を浮かべていた。
写真判定の結果は両馬の鞍上が体感で悟っていた通り、ヴィクトリーギャロップの先着。20年ぶりの三冠馬誕生とはならず、前年にベルモントSで敗れて三冠を逃したリアルクワイエットの同厩の二冠馬*シルバーチャームの主戦であったスティーヴンス騎手が今度は最後の一冠を止める立場になるという何とも皮肉な結果に終わった。スティーヴンス騎手はデザーモ騎手の沈痛な表情を見ると「胸が張り裂けそうな思いだった」という。
リアルクワイエットはこの後調教中のケガと使い詰めにより年内のレースを自重し、ヴィクトリーギャロップは三冠路線のエースとして世代を牽引していく立場となった。
次走はハスケル招待ハンデキャップ(GI)となった。ここでは三冠レースに出てこなかったがGIIを3連勝中の*コロナドズクエストが単勝1.7倍で1番人気、ヴィクトリーギャロップが2.2倍で2番人気、2歳GIを2連勝した実績馬グランドスラムが6.8倍の3番人気だった。しかしレースでは後方から4角で前に詰め寄ったが伸びきれず、先行していた*コロナドズクエストの2着に敗戦。アーカンソーダービー・ケンタッキーダービーで騎乗していたアレックス・ソリス騎手と再コンビを組んで挑んだトラヴァーズS(GI)では前走の反省から早めに動いたがまたしても*コロナドズクエストに後れを取り、ハナ差で惜敗した。
善戦マンに逆戻りしてしまったような匂いがプンプンする中で迎えた3歳最終戦はブリーダーズカップ・クラシックだったが、このレースが超豪華メンバーだった。コロナドズクエストは可愛いもので、
などの有力古馬が揃い、更には欧州からキングジョージVI世&クイーンエリザベスダイヤモンドS連覇・コロネーションカップ・愛チャンピオンSとGI4勝のスウェインまで殴り込みをかけてくるという陣容であり、流石にGI馬といえども分が悪いと見られたヴィクトリーギャロップは5番人気に留まった。
スティーヴンス騎手は*シルバーチャームを選んだため、こちらはソリス騎手とのコンビを続行。1番枠を引いたヴィクトリーギャロップだったが、スタートで行き脚がつかず、所謂「後方ポツン」状態になってしまった。それでも4コーナーからは速い脚を使って追い込んできたがゴール前でよれて失速してしまい、オーサムアゲインの4着に敗退。この年のGIは結局ベルモントSだけに終わり、最優秀3歳牡馬のタイトルもリアルクワイエットに取られてしまった。
4歳時は3月の一般競走(8.5ハロン)から始動し、最後方から4角で一気に先頭に立って押し切るという競馬で単勝1.3倍の人気に応えると、続けてドバイワールドカップに参戦した。このレースでは*シルバーチャームと前年の英ダービー馬*ハイライズがおり、76年ぶりの英ダービー馬とケンタッキーダービー馬の対戦として話題を呼んだ。他にもプール・デッセ・デ・プーリッシュ(仏2000ギニー)、エクリプスS、マンノウォーSとGI3勝のデイラミ、ジャン・プラ賞(仏GI)の勝ち馬*アルムタワケルがおり、ヴィクトリーギャロップにとって楽なメンバーではないことは明らかだった。
そしてレースでは例によって例のごとく末脚に賭けたが、途中から前を行っていた馬と脚色が変わらなくなってしまい、*アルムタワケルの3着に敗れた。それでも5着だったデイラミや6着だった*シルバーチャームには先着した。
アメリカに戻ってのスティーブン・フォスターハンデキャップ(GII)では再び*シルバーチャームとの対戦となったが、レースではスタートで本馬の陣営が用意したペースメーカーが出遅れるハプニングが発生。プランが狂った上にまたしても最後方からの競馬になったヴィクトリーギャロップだが、3角から押し上げて先頭で直線に入るとそのまま突き放す一方となり、結局2着以下に5馬身差をつけてコースレコードで圧勝。*シルバーチャームは4着に敗れ、このレースを最後に引退した。
次走ホイットニーハンデキャップ(GI)では、ヴィクトリーギャロップとGI2勝を含む4連勝中の5歳馬べーレンズ以外の単勝オッズが10倍を超える完全な一騎打ちムードとなった。ここでもヴィクトリーギャロップは最後方を大きく離れて追走していた。しかし3コーナーでべーレンズが仕掛けていったのを見ながら加速、物凄い勢いでカメラにフレームインすると直線入り口でもうマッチレースに持ち込み、馬体をビッシリ併せての長い追い比べとなり、3着以下を12馬身離す激闘の末、付かず離れずのままゴール。ハナ差でこの戦いを制した。
この後、ヴィクトリーギャロップは左前脚繋靭帯炎のため引退。この年のエクリプス賞最優秀古馬牡馬に選ばれ、ニューヨーク・タイムズ紙の「Most Impressive Performance of the Year」という読者投票でスティーブン・フォスターハンデキャップの圧勝劇が選ばれている。
とにかく先行馬が多いアメリカ競馬らしからぬ豪快な末脚が特徴であり、時にはカメラに映りすらしていないところから物凄い勢いでぶっ飛んでくるかなりインパクトが強い競馬が身上の馬であった。
ケンタッキー州のウインスターファームで種牡馬入りしたヴィクトリーギャロップは堅実に産駒を送り出し、2003年の新種牡馬ランキングで2位に入ったが、中々GIを勝つような大当たりの産駒には恵まれなかった。2008年にトルコに売却され、2019年現在も同地で種牡馬として繋養されている。輸出から間もない2010年にジェイシトが3歳GI・ジャマイカハンデキャップ(現:ベルモントダービー)を制し、プリンスウィルアイアムが2歳GI・ノーフォークS[3]を制したことから、現地では人気種牡馬の1頭だとか。
ちなみに*ワンダーレディアンエルが繁殖牝馬として輸入されたくらいしか日本で目立つ産駒がいないリアルクワイエットとは対照的に、ヴィクトリーギャロップは十数頭の産駒が日本に輸入され、その中から阪急杯と京王杯スプリングカップを制したエイシンドーバー、武蔵野ステークスを勝ったエイシンロンバードの2頭が中央重賞馬となっている。
Cryptoclearance 1984 黒鹿毛 |
Fappiano 1977 鹿毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | |||
Killaloe | Dr. Fager | ||
Grand Splendor | |||
Naval Orange 1975 黒鹿毛 |
Hoist the Flag | Tom Rolfe | |
Wavy Navy | |||
Mock Orange | Dedicate | ||
Alablue | |||
Victorious Lil 1989 鹿毛 FNo.12-b |
Vice Regent 1967 栗毛 |
Northern Dancer | Nearctic |
Natalma | |||
Victoria Regina | Menetrier | ||
Victoriana | |||
Glass House 1979 黒鹿毛 |
Halo | Hail to Reason | |
Cosmah | |||
Glass Collector | First Landing | ||
Masked Kiss | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Native Dancer 5×5(6.25%)、Turn-to 5×5(6.25%)、Almahmoud 5×5(6.25%)
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最終更新:2024/04/26(金) 05:00
最終更新:2024/04/26(金) 05:00
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