アエロリット(Aerolithe)とは、2014年生まれの日本の競走馬である。芦毛の牝馬。
安平町・ノーザンファーム生産、美浦・菊沢隆徳厩舎所属、馬主はサンデーレーシング。
主な勝ち鞍
2017年NHKマイルカップ(GI)
2018年毎日王冠(GII)、2017年クイーンS(GⅢ)
概要
父クロフネ、母アステリックス、母父ネオユニヴァースという血統。
父はジャパンカップダートやNHKマイルカップなどGⅠ2勝を挙げ、種牡馬としてはカレンチャンやスリープレスナイトなどスプリント~マイルを中心に活躍馬を送り出している。母は現役時代1戦0勝、アエロリットは初子にあたる。母父は2003年の牡馬二冠馬で、最近では母父としてもルヴァンスレーヴ他存在感を表しつつある。
従兄弟にマイル路線で活躍したミッキーアイルがおり、更に5代母My Bupersから広がる牝系は、ラッキーライラック、テイエムジンソク、ハーツクライ、ノンコノユメ等々、活躍馬を多数送り出す名門牝系が構築されている。
競走生活
2歳~3歳
サンデーレーシングにて募集がかけられ、美浦の菊沢隆徳厩舎へと入厩。
6月の東京開催でデビュー戦となり、鞍上に菊沢師の義理の兄横山典弘を迎えると道中2番手で折り合い、直線で力強く抜け出してデビュー戦を勝利で飾る。
休養を挟んで自己条件のサフラン賞では好位から抜け出すも追い込み馬に差されて2着、年明けのフェアリーSでは直線で一旦先頭に立ったものの残り50mで差されて2着、翌月のクイーンCでは中団からじわじわ好位に上がって外から抜け出しを図ったが、更に外から伸びるアドマイヤミヤビに追いつくには至らず2着。クラシック候補の一角ではあるのだが如何せん爪が甘い。
そして迎えた桜花賞本番。単勝23.6倍の6番人気に推されたが、レースでは出遅れが響き最後方追走から終いにかけざるを得なくなる。しかし前潰れの展開となり後方から猛然と追い込み5着は確保する。
オークス路線には向かわずにNHKマイルカップへ挑戦。戦前のNHKマイルカップは混戦ムードが漂っており、1番人気の桜花賞4着馬カラクレナイが5.0倍、続くアエロリットが5.8倍、単勝20倍以内の馬が10頭と中心馬不在の状況であった。鞍上は勿論横山典弘。
大外16番枠スタートとなったアエロリットは、ポンッと半馬身以上差をつける好スタートを切ったが、ハナを主張するモンドキャンノ、ポンゼルヴィーソを行かせて外の好位を追走。3コーナーからジリジリとポジションを上げると直線入口には先頭に並びかける勢い。残り200から一気にスパートをかけて後続を突き放し、追いすがるリエノテソーロを1馬身半突き放してゴール。菊沢厩舎は初のGⅠタイトルを得た。
少し間を開けて札幌のクイーンSから始動。前走18kg増ながら1番人気に推され、内枠から好スタートを切ると1コーナーを回る辺りから一気に後続を離して単騎先頭。そのまま後続から7, 8馬身突き放して緩みないペースで逃げ、直線でも勢いが衰えることなく逃げ切り勝ちを収める。今思ってみればここが一つの分岐点であったかもしれない。
続いて秋華賞に挑戦。桜花賞馬不調、オークス馬不在の中、前走好内容が評価されたのか若干押し出され気味の1番人気に支持される。レースではカワキタエンカがハナを切って逃げたため番手で控えて進めたものの、直線で伸びず7着に敗れ、初めて掲示板を外した。
4歳春
秋華賞後は休養に入り中山記念から始動。10頭立てながらGⅠ馬3頭が集結した中で5番人気に推される。ここでもマルターズアポジーが逃げた為、それに3馬身近く後ろからついて行く形となった。直線でウインブライトに交わされるものの中山の坂を登った後から伸び続けており、逃げ粘るマルターズアポジーを捉えて2着に入る。
続くヴィクトリアマイルでは中心馬不在の状況で3番人気に推される。ここから鞍上が横山典弘から戸崎圭太にスイッチ。好位の外目からじわじわ上げて4コーナーを曲がりきるころには先頭に立つ。直線でレッドアヴァンセに交わされるも粘っていたが、外からジュールポレール、リスグラシューに交わされ4着に敗れる。この時左前脚を落鉄していたとの事。
春3戦目は安田記念に挑戦。ここではスワーヴリチャードやペルシアンナイトなど牡馬の有力どころが集まったものの5番人気に推される。ここでは3番手を追走して先行する馬を見る形で進める。緩みないペースから直線では好位から抜け出しを図り、残り200mで先頭に立ち粘り込みを図ったものの、馬群を割って伸びてきたモズアスコットに交わされて2着に敗れる。前走同様に落鉄していた事がレース後に分かった。
4歳秋
休養を経て毎日王冠から始動。短期免許で来日していたジョアン・モレイラが鞍上となり、紅一点ながら1番人気に推される。レースでは好スタートを決めるとそのままハナを切って主導権を握る。そのまま直線に入っても先頭を譲らず、追走するキセキやステファノスを従えたまま追い込むステルヴィオを1と1/4馬身抑えて逃げ切り勝ちを収める。これで重賞2勝目となった。
次走はマイルチャンピオンシップを選択。鞍上にはやはり短期免許で来日していたライアン・ムーアを迎え、安田記念で敗れたモズアスコットに次ぐ2番人気に支持される。こちらでも先頭に立ってレースを引っ張ったものの直線半ばで差されて12着に大敗する。この時鞍上は右回りが苦手ではないかと指摘した。
5歳春
5歳シーズンの幕開けは米国へ遠征しペガサスワールドカップターフから始動。このレースは2019年から新たに創設されたもので、左回りの芝1900mという本馬にうってつけの条件だったことや、獲得賞金の減額を条件に出走枠購入額や輸送費の減免を受けられる事、ラシックス(利尿剤)未使用により3.5kg斤量が減って50.5kgで出られる事などが決め手となった。鞍上にフローレン・ジェルーを迎えたが3コーナーから一気に手応えがなくなり後退。結果10頭中9着に敗れた。
帰国後間隔を開けてヴィクトリアマイルへ出走。鞍上は横山典弘に戻った。前走府中牝馬Sで復活の気配があったラッキーライラックに1番人気を譲り、本馬は2番人気に推される。単勝10倍以内が6頭とやはり中心馬不在の状況。
レース本番ではやはりハナを奪って逃げにかかる。2019年春の東京競馬場は超がつくほどの高速馬場となっていた事を考慮しても前半800mを44秒8とハイラップの逃げをうち、息を入れることなく徐々に差を広げる。しかし残り100mでノームコアやプリモシーン等4頭の集団に交わされて5着に敗れた。なお本馬がハイラップを刻み続けた結果レースが高速化し、1分30秒5という日本レコードとなった。
昨年同様に中2週で安田記念へと参戦。鞍上は再び戸崎圭太にスイッチ。ここでは昨年の牝馬三冠馬でドバイターフを快勝したアーモンドアイが帰国初戦としてやって来ており、他にも重賞連勝中のダノンプレミアムがいた。アエロリットは3番手評価も単勝12.5倍と人気は前述の2頭に集中していた。
レースに入ると前に行くグァンチャーレを制してハナを奪う。一方その頃武豊騎乗の16番枠ロジクライが内に大きく斜行し15~12番枠の馬が大きく不利を受けた。その被害馬がアーモンドアイとダノンプレミアムであり波乱が発生する。アエロリットはいつも通りに後続を2, 3馬身離して逃げ直線に入る。直線に入り番手からレースを進めたグァンチャーレと競り合い負けなかったものの、馬群から抜け出して脚を伸ばすインディチャンプにゴール前に差され2着。2年連続2着と惜敗を重ねる。走破時計1分30秒9とやはり高速決着となった。
5歳秋
秋シーズンは天皇賞(秋)を目標に定めて毎日王冠から始動。前走鞍上の戸崎圭太がダノンキングリーに騎乗するため津村明秀を鞍上に迎えた。相手には春クラシックで好走を続けたダノンキングリーにインディチャンプ、モズアスコット、ペルシアンナイト等が集結。アエロリットは2番人気に推された。
やはり好スタートを切ってハナに立ち逃げの手を打つ。1000m通過58秒5、11秒台前半のラップを刻み続け直線に入る。直線で一旦インディチャンプに交わされたものの残り200m付近で再び差し返す。しかしその外から脚を伸ばすダノンキングリーに交わされて2着となる。
その後予定通りに天皇賞(秋)へ参戦。ここにはアーモンドアイやダノンプレミアム、更に皐月賞馬サートゥルナーリアなどGⅠ馬が10頭集まり、ここまで2000mの実績の無いアエロリットは6番人気(単勝20.0倍)にまで人気を落とす。ダノンキングリーがマイルCSへ向かった為、鞍上は戸崎圭太に戻った。
レースでも大方の予想通りにハナを切って先頭に立つ。この時前半1000m通過が59秒0と高速府中としては緩めのペースで進め、後続とは差をつけずに逃げる。4コーナーに入って後続を離しにかかるが後続も詰め寄っており、残り300mでアーモンドアイ、アエロリット、サートゥルナーリア、ダノンプレミアムが横一線となる。しかし最内を突いたアーモンドアイが他3頭を尻目に一気に抜け出し、アエロリットはサートゥルナーリアとダノンプレミアムと叩き合いとなる。アーモンドアイには差をつけられたが、サートゥルナーリアを競り落としてなお伸び続け、ダノンプレミアムのクビ差の3着に入線する。勝ち時計は1分56秒2とトーセンジョーダンの日本レコードと0.1秒差まで迫る時計となった。
次走に引退レースとして有馬記念を選択。戸崎圭太が落馬負傷の為、鞍上には津村明秀を迎えた。この有馬記念ではアーモンドアイやリスグラシューなど、GⅠ馬11頭が集まる豪華メンバーとなった。2500mという未知の距離、15番枠発走が不安要素となったか12番人気となった。
そうして訪れた本番。外から好スタートを決めると同じ逃げ先行馬であるクロコスミア、スティッフェリオを抑えて先手を奪う。1週目のスタンド通過の段階で既に数馬身突き放す逃げを見せ、1000m通過58秒5と良馬場発表とはいえ開催が進み荒れた馬場と、小雨降るコンディションを考えれば明らかにハイペースであるが、それでもアエロリットは逃げる。ペースは緩む事無く進みアエロリットも粘るが4コーナーで捕まり万事休す。1着リスグラシューから3.6秒差の14着で入線した。
特徴
- 4歳春頃までは番手を追走して直線抜け出しからの粘り込みを図る競馬をしていたが、4歳秋より自分からハナを奪って逃げ、緩み無いラップを刻んで後続に脚を溜めさせず粘り込むスタイルとなった。アエロリットを抜かそう、馬体を併せようとした馬を競り落として差し返すなど、勝負根性も魅力であった。
- 緩み無いラップを刻み続ける為か、ペースが中だるみせず進むため従来のレコードを更新するかそれに匹敵するタイムとなる事が多々あった。
- 東京競馬場の1600~2000mを特に得意とし、その中でも牡馬との混合戦は[2-3-1-0]と好走している。
一方で輸送を苦手としていたのか秋華賞やマイルCSなど関西圏への輸送競馬は良績を残せなかった。
血統表
クロフネ 1998 芦毛 |
*フレンチデピュティ 1992 栗毛 |
Deputy Minister | Vice Regent |
Mint Copy | |||
Mitterand | Hold Your Peace | ||
Laredo Lass | |||
*ブルーアヴェニュー 1990 芦毛 |
Classic Go Go | Pago Pago | |
Classic Perfection | |||
Eliza Blue | Icecapade | ||
*コレラ | |||
アステリックス 2010 黒鹿毛 FNo.6-a |
ネオユニヴァース 2000 鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
*ポインテッドパス | Kris | ||
Silken Way | |||
*アイルドフランス 1995 鹿毛 |
Nureyev | Northern Dancer | |
Special | |||
*ステラマドリッド | Alydar | ||
My Juliet |
クロス:Northern Dancer 4×5、Nearctic 5×5
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
- 5
- 0pt