フレンチデピュティ(French Deputy)とは、1992年生まれのアメリカの競走馬。
競走馬としてはそこそこだったものの、種牡馬として日本でブレイクした。
また、近年では母の父としても顕著な成績を残しつつある。
クロフネやメイショウベルーガの印象もあるかもしれないが、本馬は芦毛では無く栗毛である。
名前は父デピュティミニスター(事務次官)と母ミッテラン(昔の仏大統領)からの連想。
直訳すると「フランス人の代議士」。
概要
父Deputy Minister、母Mitterand、母父Hold Your Peaceという血統。
父のデピュティミニスターは81年の全米2歳チャンピオンで種牡馬としてもゴーフォーワンドやオーサムアゲインなどを送り出した大種牡馬。日本ではトーヨーシアトルが代表的。本馬は8年目の産駒である。
母のミッテランは現役時代米GⅠを勝利した活躍馬。ただ近親に活躍馬はそんなにいない。
母父のホールドユアピースは現役時代39戦11勝、仕上がりの早いスピードタイプの種牡馬。
2歳の11月に西海岸でデビューすると、5馬身差を付けて初戦を飾る。
続く一般競走を2レース連続で楽勝したものの脚部に故障を発生し、三冠競走を棒に振る。
復帰したのは3歳秋。西海岸からブリーダーズカップが開催されるベルモントパーク競馬場へと遠征し、当地のGⅡジェロームハンデにて軽量を生かし4馬身差快勝。4連勝で重賞制覇を飾る。
しかし続く一般競走で2着となり初黒星を喫すると、続くBCクラシックでは当時11連勝中だった大魔王シガーを筆頭に強豪が揃っていたこともあり9着と惨敗。ジェロームハンデで2着に破ったミスターグリーリーがスプリントでクビ差2着に入ったのとは対照的な結果であった。
結局、BCクラシックを最後に現役を引退。通算6戦4勝、主な勝ち鞍はGⅡジェロームハンデである。
種牡馬入り後
1996年より、アメリカはケンタッキー州で種牡馬入り。
米国で生まれた産駒のうち数頭が日本へと輸出されたが、その中にノボジャックとクロフネが入っており、クロフネが2歳の時に社台グループが本馬を購入。翌2001年より社台スタリオンステーションで種牡馬生活を送ることとなった。
2001年シーズンから人気は高く、更に同年にクロフネがJCダートやNHKマイルを、ノボジャックが破竹のダート重賞6連勝を飾るなど産駒の日本適性が明らかとなると人気は不動に。翌2002年には米国に残したレフトバンクが北米最優秀古牡馬に選ばれた。他にも米国に残した馬からGⅠ馬が2頭出ている。
産駒の傾向としては「万能」である。基本的に仕上がりが早く勝ち上がりも良い産駒が多いが、総じて頑健でエイシンデピュティのように古馬になって本格化するなど成長力があり、また芝ダートを気にせず、アドマイヤジュピタのように配合次第で長距離適性を示す産駒や、サウンドトゥルーのように8歳になってもダートの第一線で活躍する馬もいる。サイアーランキングは2007年に最高位の6位につけた。
毎年100頭程度の牝馬を確保していたが、流石に寄る年波には勝てず2017年シーズンを最後に種牡馬生活を引退。2018年に生まれた6頭がラストクロップである。
むしろ何でそこまで種牡馬生活を引き延ばしたかと言えば、「母の父」として非常に優秀だからである。
マイネルホウオウのNHKマイルカップで母父として始めてGⅠを勝つと、毎年のようにGⅠ馬、重賞馬を輩出。特にリーディングを突っ走るディープインパクトとの相性は抜群で、果てはディープインパクトが苦手としていたダートでGⅠを勝ったアンジュデジールが出てくる始末。更には自分が大敗したブリーダーズカップを制したマルシュロレーヌまで出てきた。
更に面白いのは北米時代に残した牝馬達も海外で繁殖牝馬として大活躍しており、アルゼンチンにて本馬を母父に持つハイハッピーという馬がアルゼンチン四冠のうち三冠を、更に北米に渡り芝GⅠを制している。
現在は社台SSの功労馬房にて余生を送っている。2021年にクロフネに先立たれたがフレンチデピュティは未だ健在である。
サイアーラインの存続は少し厳しい状況である。本馬の産駒は牡馬に活躍馬が多かったものの、後継たるクロフネは活躍馬が牝馬に固まり、他の牡馬達は活躍できない、あるいは種牡馬入り出来なかった。
しかし母の父として高い成績を残し、かつ息子のクロフネも近年母の父として成功しつつある。ヴァイスリージェント系全般に言えることだが、この系統は総じて母の父として優秀、かつ長命である。21世紀に入り日本競馬に確かな足跡を残し、かつ残り続けるだろう。
血統表
Deputy Minister 1979 黒鹿毛 |
Vice Regent 1967 栗毛 |
Northern Dancer | Nearctic |
Natalma | |||
Victoria Regina | Menetrier | ||
Victoriana | |||
Mint Copy 1970 黒鹿毛 |
Bunty's Flight | Bunty Lawless | |
Broomflight | |||
Shakney | Jabneh | ||
Grass Shack | |||
Mitterrand 1981 鹿毛 FNo.4-m |
Hold Your Peace 1969 鹿毛 |
Speak John | Prince John |
Nuit de Folies | |||
Blue Moon | Eight Thirty | ||
Blue Grail | |||
Laredo Lass 1971 黒鹿毛 |
Bold Ruler | Nasrullah | |
Miss Disco | |||
Fortunate Isle | Ambiorix | ||
Slippy | |||
競走馬の4代血統表 |
主な産駒
- Left Bank (1997年産 牡 母 Marshesseaux 母父 Dr. Blum)
- ノボジャック (1997年産 牡 母 *フライトオブエンジェルス 母父 *アフリート)
- *クロフネ (1998年産 牡 母 *ブルーアヴェニュー 母父 Classic Go Go)
- Genereux (1999年産 騸 母 Griffe de Paris 母父 Telescopico)
- Mayo on the Side (1999年産 牝 母 Slewveau 母父 Slew o' Gold)
- House Party (2000年産 牝 母 Bill Back 母父 Relaunch)
- エイシンデピュティ (2002年産 牡 母 *エイシンマッカレン 母父 Woodman)
- アドマイヤジュピタ (2003年産 牡 母 ジェイズジュエリー 母父 *リアルシャダイ)
- フレンドシップ (2003年産 牡 母 *フレンドリービューティ 母父 Stalwart)
- '06ジャパンダートダービー(GI)
- ピンクカメオ (2004年産 牝 母 *シルバーレーン 母父 Silver Hawk)
- レジネッタ (2005年産 牝 母 アスペンリーフ 母父 *サンデーサイレンス)
- サウンドトゥルー (2010年産 騸 母 キョウエイトルース 母父 フジキセキ)
母の父として
- マイネルホウオウ (2010年産 牡 父 スズカフェニックス 母 テンザンローズ)
- ショウナンパンドラ (2011年産 牝 父 ディープインパクト 母 キューティゴールド)
- マカヒキ (2013年産 牡 父 ディープインパクト 母 ウィキウィキ)
- ゴールドドリーム (2013年産 牡 父 ゴールドアリュール 母 モンヴェール)
- レインボーライン (2013年産 牡 父 ステイゴールド 母 レーゲンボーゲン)
- アンジュデジール (2014年産 牝 父 ディープインパクト 母 ティックルピンク)
- マルシュロレーヌ (2016年産 牝 父 オルフェーヴル 母 ヴィートマルシェ)
- レッドルゼル (2016年産 牡 父 ロードカナロア 母 フレンチノワール)
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
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