サクナヒメ三ダメ農法とは、稲作アクションゲーム『天穂のサクナヒメ』において、稲作初心者が陥ってしまいがちな三つの失敗農法である。
概要
『天穂のサクナヒメ』は攻略部分のアクションパートと育成部分の稲作シミュレーションパートの2つがあり、その中で稲作パートは「土づくり」「苗の疎密」「降雨や日照に影響される水量や水温の加減」「肥料の質・量とそれ由来の益と害」といった多くのパラメーターが相互影響する再現度の高さ故、“農林水産省のQ&Aを見ろ”という凡そアクションゲームとは思えない攻略指南がコミュニティで語られるほどである。
本作の特徴は、アクションパート最中でもリアルタイムに稲作の成果につながる影響があるため、ある程度田んぼを放置できる仕組みを作り上げることも攻略のキモとなる。
…ゆえに、簡便にゲームを攻略したいという焦りや手抜き、システムの不理解から、以下のような農法を実施し収穫が減って攻略に必要な育成が頭打ちになったという悲鳴が多数報告されることとなった。
そんなよくある農法がゲーマー用語や史実に結びつけられた、「初心者にありがちとされる農法」が以下となる。
三ダメ農法
トライフォース農法
肥料の三角形が最大になるまで養分を与えすぎて土壌が栄養過剰に陥り、雑草やムシや病気が大量発生してしまう失敗農法。
由来はゼルダの伝説のトライフォース(大三角形)から。
ちなみに肥料が普及した現代だからこそ、キリのないほど例が多い失敗だったりする。
施肥ができる2年目時点ではこのあたりの最適な配分と投入時期のヒントがほぼないため、「とりあえず全部MAXしておけばいいや」とやってしまいがちなのも三ダメ農法で真っ先に名前が上がる理由と言える。それを補正するために、後述する「害を抑制するアイテム」を肥料に投与していくのだが……
ゲーム内で『根肥』『葉肥』『穂肥』と区別されている通り、必要な栄養素は稲の成長期によって変化する。さらに、田のインフォメーションで表示されるのは、「現在土に蓄積されている栄養総量」なので、稲が吸収するのはこの三角形の一部である。
そのため時期に合わせて稲の成長に最適な肥料を合成して投入しつつも、富栄養化による成長阻害と害敵が共存しないようにすることが高品質・高収量化に必要である。
稲の世代が進むとマスクデータとして病気などの害に強くなることが報告されているが、そこまで育つのはゲーム後半になる。
カルタゴ農法
防病・防虫・防草になるからと田んぼに塩を大量に撒くことで、塩害が発生し稲を枯らせてしまう失敗農法である。ローマ帝国が敵国カルタゴを攻め落とした後に、農業が出来なくなる(=二度と再興しない)よう土壌に塩を撒いて壊滅させたという話に由来する。ただし、近年ではカルタゴに塩は撒かれていないとする異論もある。ともあれ塩を撒かれようが撒かれまいが、カルタゴは滅ぼされるべきである。
ゲーム内の肥料の調整画面の数値上では、塩の投入で防病・防虫・防草のステータスが一挙に向上するため初心者はやりがち。「なんかステータス的に有用すぎで逆に怪しくない?」「いや普通に考えて塩はダメだろう」等で思いとどまらず、塩害まで再現されているということを知らない・気づかないとやってしまいがちである。
特に自分で施肥をするようになり、アクションパートも長丁場が増え始める2年目から(特に前述のトライフォース農法に向かっているほど)病害虫の被害がドッと増えるため、それらのステータスに意識が向いているほどやりがちなのが三ダメ農法次鋒たるゆえんである。
プレイヤーキャラの食事の献立が肥料に反映される仕様もあるため、よっぽどの話だが塩分の濃い食事をしていると何もしなくても塩害になるという仕様もある。
なお、ゲーム内でならまだしも現実において土壌に塩を撒いて除草する行為は、土壌を半永久的に枯渇させ植物が育たなくなるばかりかコンクリートや配管も腐食させるなど、周辺への深刻な環境汚染となるため原則やってはいけない。
ルイセンコ農法
苗が育たない真冬に田植えを行ってしまい、苗を無駄にしてしまう失敗農法である。
由来は、旧ソ連において農学者ルイセンコが提唱した似非科学に基づき、スターリンによって国策として強硬的に推し薦められた農法である。
ちなみにルイセンコ氏の農法は、その実態が隠蔽され大成功だと喧伝されたため共産圏に広まり、後述の主体農法、大躍進政策の元となった。
ゲーム内で田植えは春1日目(3月)に解禁されるのだが、この最速タイミング(早蒔き)でやってしまうと収量ダウンに繋がりやすい。少し待って春2日目(4月)・春3日目(5月)に行うと収量を増やしやすい。
収穫後の乾燥期間に余裕が持てる、収穫時期で選択できる米の上昇ステータスに選択肢が持てるなど、このやり方でもメリットがあるのだが、そもそもの種籾・苗の数を増やしたい序盤のタイミングでやってしまいやすいのが三ダメの後詰めたる所以といえる。
「日本でも稲の二期作とかやってんじゃん」と小学生の社会や地理で習ったことを思い出すかもしれないが、実はこの二期作が行われているのは高知県・鹿児島県・沖縄県といった3月時点の平均気温が16℃ある地域限定の農法という裏がある。日本の平均的な気象条件(日本の3月時点の平均気温:12~16℃)と思われるヒノエ島では気温が低すぎて早植え出来ないものと諦めるしかない。そもそも二期作は第一期が3~7月、第二期が7~11月とかなりカツカツなスケジュールかつ真冬を避けているため真冬に植えるのは根本的に間違っている。
初出
ちなみに、『天穂のサクナヒメ』関連におけるこれら「トライフォース農法」「カルタゴ農法」「ルイセンコ農法」の用語の初出ははっきりしない。GoogleやTwitterで検索したところでは、以下が見つかる範囲で最も早い言及であるようだ。ただしこれらの「見つかる範囲で最も早い言及」が既に伝聞形式なので、これらの発言者がこれらの用語の考案者というわけでもない。
そもそもこの確認方法では、検索で見つけられない言及(ディープウェブにおける書き込みやプライベートアカウントのツイートなど)は確認できないので、あくまで「最初の言及」ではなく「最初期の言及」に過ぎない。
トライフォース農法
2020年11月16日午前0時36分に、「トライフォース農法って呼ばれて」いると伝聞形で言及するツイートがなされている。
ツイートを読み込み中です
https://twitter.com/Bakawomi/status/1327998878050787328
カルタゴ農法
2020年11月16日午後6時28分に「トライフォース農法」「カルタゴ農法」「ルイセンコ農法」を紹介するツイートがなされている。ちなみに、このツイートがバズったこと自体が、これら3種の農法の知名度が増したきっかけだったようだ。
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https://twitter.com/G_GM/status/1328268725204647937
ルイセンコ農法
ツイートを読み込み中です
https://twitter.com/takaP719601/status/1326778221359140864
2020年11月12日午後3時45分に、『天穂のサクナヒメ』のダイジェスト動画ツイートをリツイートした後に「ルイセンコ農法できる?」と思い立った人が居たようだ。なぜそれを真っ先に思い立つのか。
実際のゲーム中での行動についての言及としては、2020年11月12日午後9時8分に「田植え初心者向けのアドバイスでルイセンコ農法を勧めている人がいて」とツイートしている人がいる。
ツイートを読み込み中です
https://twitter.com/wiener_kongress/status/1326859456706015232
その他のダメ農法
ゲーム的に再現可能だが、ゲーム内で必ずしもダメ農法に繋がらない失敗もあるので紹介。
主体(チュチェ)農法
苗を高密度に植えることで、栄養不足となり稲が育たなくなる失敗農法。
北朝鮮で金日成・金正日父子によって国策として強硬的に推し薦められた農法である。
一時的に収量のブーストに成功したが、これによって北朝鮮は土壌が枯渇し深刻な飢饉や水害を招くこととなった。
サクナヒメは『最適な苗の間隔のガイドが見える』能力を獲得するため、普通にゲームを進めていっても割と避けることのできるダメ農法といえる。
一応、ガイドラインを無視して密植することもできる、果ては、全ての苗を1ドットにのみに植えるような物理法則を超えた密植(通称:ガイル農法。穂が熟した時は実に見事な金髪逆毛となるため)を行ったとしても「密植」として判定され、ゲーム内では甚大な被害が出にくい。
大躍進政策
米を食べる害鳥だからといってスズメを殲滅駆除してしまうことで、スズメが捕食していた害虫が大量発生してしまい作物に深刻な被害をもたらしてしまう失敗農法。中国で毛沢東によって「四害駆除運動」として国策として強硬的に推し薦められ、大飢饉をもたらした。その死者は4500万人にものぼるという。蒼天航路の画像が有名か。言うまでもないが大躍進というのは名前だけの話となった。
サクナヒメはスズメを駆除することが出来ないのでこの失敗農法をゲーム内で行うことは出来ないが、ゲーム実況者などが(アクションパートの敵キャラである)スズメを駆除したい旨の発言をするたびに揶揄としてその名が挙がるワードである。
緑の革命
稲の品種改良および農薬と肥料の大量投入によるゴリ押しで米を生産する農法。
これに関しては前述のダメ農法とは違い、新興国での食糧増産が可能となり、特に東南アジア諸国の急発展の原動力となった、むしろ歴史的成功農法といえる。
ただ、その国の農業従事者のそもそもの識字・知識不足の結果、農薬・化学肥料…すなわち、自然由来(オーガニック)でないゆえのデメリットとその対策手段が講じられず、過剰な成分(特にミネラル分)が土中に析出して疑似的なカルタゴ農法が完成して痩せ地と化してしまうなど、一部で問題もあった。現代の日本人は米への舌が肥えすぎているため、味で劣るこの農法の米は全く売れず、日本で採用している米農家はほぼ皆無である。
風土・品種・技術・知識の全てが揃わなければ土壌を消耗する高度な農法だが、ゲーム内では知識ゼロのまま手探りでサクナヒメを普通にプレイしていれば、アイテムが豊富になることで最終的にこの農法に行きつく可能性が高い。最適解とはいえないがゲーム内でもある種の成功農法といえる。
トライフォースに寄せつつ、カルタゴ農法(塩害)にならないよう塩ではなく防虫・防草・防病効果のある農薬に相当する「妙薬」や野菜を駆使して放置しやすい田んぼを作っていく。
畑や稲、周辺環境へのデメリットがなく、長年の使用でも耐性がつかない特効薬である「妙薬」はゲームだからということで存分に恩恵に預かるべし。
稲作初心者はまずここを目指してみるのも一つの手ではある。ただし繰り返すがこれさえも最適解ではなく、米の質の向上を目指すには更なる試行錯誤が必要となる。
さいごに
農業関係者が舌を巻く稲作シミュレーションと言わしめた『天穂のサクナヒメ』。
結果として、無知ゆえのプレイヤーの行動が歴史上のダメ事件を再現してしまうのは、皮肉ともいえるし、シミュレーターとしてのクオリティの高さを物語っているといえる。とにかく高品質なゲームなのは間違いない。
公式のキャッチコピー「米は力だ!」になぞらえて、結びの文句とさせていただきたい。
知識は武器だ!
関連動画
再生時間5:56頃から、実際にトライフォース農法を行ってしまっている様子が映っている。
カルタゴに関する歴史のゆっくり解説動画。塩に関する言及は再生時間9:09頃から。
緑の革命についての解説。やる夫で学ぶシリーズだが、緑の革命についてはこの動画だけでも大丈夫。
関連静画
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関連項目
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