バトルロイヤルゲーム(Battle royale game)とは、主にシューター(FPS,TPS)で大人数同時対戦を行い、相手を倒した回数などのスコアで競うのではなく、試合中の復活無しのルールで最後に生き残ったプレイヤーが勝者となるビデオゲームの総称である。
概要
2017年3月にリリースされた「PlayerUnknown's Battlegrounds(PUBG)」の流行をきっかけに、多くのフォロワー的タイトルや同様の対戦ルールを導入したゲームが数多く登場した。PUBGの登場後まもなく、それまでの10年間でオンライン対戦のプレイヤー人口が最も多かったゲームジャンルのMOBA(DotA系)を超える勢いがあり、新しいゲームジャンルのひとつとして定着したと言えるだろう。
オンライン対戦用ゲームにおける世界的な流行といっても、先に触れたMOBA(およびそのタイトル群)は日本国内では何だか影が薄かったりもした。一方で、このバトルロイヤルゲームの場合は、PUBGやFortniteなどのゲームタイトルの知名度、そして日本人のプレイヤー人口も多く、日本語版や専用サーバー、国内専門のサポート・運営窓口も用意されているゲームタイトルもある。各動画サイトでのプレイ動画の投稿や配信も盛んであり、日本国内でも人気が高い様子が十分伺えると思う。
"バトルロイヤル"という言葉自体は大規模な乱戦を意味する一般的な単語ではあるが、ゲームジャンルとしての名称の由来になったのは、PUBGの前身でこのゲームジャンルのパイオニアであり影響の大きかった「PlayerUnknown's Battle Royale(PUBR)」とも考えられる(PUBRが登場した頃は"Hunger game"とも呼ばれていた)。ゲームジャンル形成の詳しい過程は後述する歴史の項目で解説する。ちなみに、このPUBRのルールと名称は日本映画の「バトル・ロワイアル」が元ネタであることが開発者自身によって明言されている。
基本的なルール
ゲームタイトルによって異なる部分もあるが、概ね以下のような基本ルールが導入されている。
歴史
まず、前身の前身とも言える「DAYZ」について解説する。これは「Arma2」というFPSのMODで2012年初頭に登場した。オープンワールドの軍事シミュレーターであるArma2をゾンビ・対人サバイバルゲームに作り替えた内容であり、MODという形式ながらも元になったArma2の売り上げを5倍に引き上げるほどの人気があった。後年には多くのフォロワータイトルも登場することになる。このDAYZ自体には試合や基本ルールという概念は無く、あくまでプレイヤーがサバイバルを体験するためだけのゲームだった。
DAYZの人気は非常に高く、DAYZ用のMOD(つまりMODのMOD)も数多く制作された。その中のひとつに「DayZCherno+」があった。これはDAYZの対人戦に焦点を当てバランスを調整変更したものである。このMODを製作したのは、本名Brendan Greene、もとい"PlayerUnknown"氏である。PU氏はDAYZとそのMOD群をきっかけにゲーム開発に興味を持つようになり、さらなる自身のMODの制作を続けた。
その後まもなくPU氏はDAYZの対人戦をより発展させたMOD「DAYZ:Battle Royale」を制作、公開した。元々は身内仲間と一緒に遊ぶため程度に作ったものであったが、DAYZ関係のコミュニティ上で人気となり、自分で運営していたサーバーが満員になる日が連日続くことになった。映画「バトル・ロワイアル」の劇中に登場する禁止エリアを元ネタにしたプレイエリアが時間経過とともに縮小されるというルールがここで完成される。
2013年12月にDAYZはArma2のMODから独立して、スタンドアローンのゲームタイトル(DAYZ:SA)として再開発されることになった。これを受けてPU氏は自身のバトルロイヤルMODの開発ベースをDAYZから「Arma3」に移行し、2014年4月に「PlayerUnknown's Battle Royale(PUBR)」をリリースした。ゲームエンジンを移行したことでより柔軟な開発が進められるようになり、このMODでパラシュート降下での試合開始が導入された。他にもピストル限定モードや復活ありの"WARモード"なども追加され、これらは後年のPUBGにおけるイベントモードの原型になった。現在でもこのMODは配布されており、PU氏自身によってサーバーの運営が続けられている。
余談として、シューター(FPS)の対戦において生き残りで勝者を決めるルールは「Unreal Tournament(1999)」の"Lastman standing"というものがあった。バトルロイヤルというゲームジャンルを解説する上でサバイバルゲームとLastman standingを掛け合わせたようなゲームと形容されることもある。また、映画「ハンガーゲーム」を元ネタにしたMinecraftのMODが映画公開と同じ年の2012年に登場しており、PU氏との関係性は無く現在のバトルロイヤルゲームタイトルの発祥元とは若干異なるものの、同じ様なルールを導入したゲームの最初期の例として語られることもある。
PUBR以降のPU氏は自身のバトルロイヤルゲームをより発展させるために、MODから独立した新規ゲームタイトルとしての開発を検討していた。最初にArmaシリーズの開発元であるBohemia Interactiveに声をかけたが、当時、同社はDAYZとArma3の開発で手一杯だったようで、バトルロイヤルゲームの共同開発は実現しなかった。
一方で、ゾンビ・対人系サバイバルゲームの「H1Z1」の開発運営を行っていたSony Online Entertainment(現在のDaybreak Game Company)のスタッフがPUBRと開発者であるPU氏に興味を示しており、2015年にPU氏は監修という形でH1Z1の開発に参加した。バトルロイヤルモードが追加のゲームモードとして実装され、同作の売り上げを大きく飛躍させることになった。後の2016年には「H1Z1:King of the kill」としてバトルロイヤルモードがスタンドアローンタイトルとして独立、さらにその後は本家H1Z1と置き換えられる形で名称が変更され、H1Z1はPU氏がきっかけで全く別のゲームになってしまったとも言える。
しかしながら、この時のPU氏はあくまで監修の立場であり開発の主導権を持っていなかった。自身のゲームを制作するためにH1Z1と同開発スタジオから離れることを決めた。幸いにもこの頃にはPU氏のバトルロイヤルゲームが注目されており、数多くの開発スタジオからのオファーを受けていた。
PU氏はMMORPGのTERAを開発運営していたBluehole Studioに移籍し、同スタジオのスタッフと共に新作バトルロイヤルゲームの制作に取り掛かった。そして、2017年に完全な新規バトルロイヤルゲームとして「PlayerUnknown's Battlegrounds(PUBG)」がリリースされた。同作は発売後まもなくSteamやtwitchの統計記録を大きく更新し、それまでの10年近い間プレイヤー人口の上位を維持していたMOBA系タイトルや対戦FPSの代表格であったCounter-Strikeの記録を塗り替える大ヒット作になった。
2017年9月にEpic Gamesより「Fortnite(Fortnite Battle Royale)」がリリースされる。元はPvEを主体としたゲームとして2011年頃から開発が進めれていたが、PvPモードとしてバトルロイヤルが実装された。PUBGとは異なるカートゥーン調のグラフィックデザインやクラフト(防壁や砦の建築要素)による独自の戦闘が評価され、F2Pであることも踏まえてこちらも大ヒット作になった。ただし、PU氏とは一切関りが無く、PUBGの開発スタジオとPU氏は類似性に苦言を呈している。一時はPUBGの開発スタジオが「荒野行動」「Fortnite」に対して訴訟を行う事態となったが、その後和解・訴訟取り下げが行われた。
2019年2月、Respawn Entertainmentより「Apex Legends」がサービス開始。Titanfallシリーズに含まれる作品であり、タイタンこそ登場しないものの、おなじみの高性能な銃や着地ダメージ無しの仕様によるスタイリッシュな戦闘、3人一組のチームプレイによって他社との差別化に成功。Fortniteで既に成功していたバトルパスも導入され、大ヒットを記録することとなった。
一方、同時期に任天堂からもバトルロワイヤルゲームが発表される。その正体は「テトリス99」という、テトリスでバトルロワイヤルゲームを行う異色の内容であった。しかし、マッチングの速さや、テトリスならではの奥深いゲーム性、継続的なアップデートが好評を博し、後にパッケージ版が発売されるまでに至った。
近年においては、従来のバトロワのルールを踏襲しつつ戦闘を銃撃戦ではなく接近格闘戦をメインにした、通称「近接バトロワ」と呼ばれる派生ジャンルも出てきている。銃撃戦と異なりAIM力が殆どor全く必要がないためFPS/TPSが苦手なプレイヤーにもとっつきやすく、それでいてガードや回避等のアクション、スタンやノックバック等の行動阻害のシステム等による対戦格闘ゲームやソウルライクアクション的な駆け引きや緊張感を持たせているのが特徴。代表的な作品としては「DEATHVERSE: LET IT DIE」「NARAKA: BLADEPOINT」「HypeSquad」等がある。
新しいゲームジャンルの登場とその影響によって議論されるような一面もあるかもしれないが、このバトルロイヤルゲームの人気は既にひとつのゲームタイトルという範疇を大きく超えているとも言える。これからも様々な形でバトルロイヤルゲームが登場することが予想されるだろう。
記事のあるバトルロイヤルゲーム
- PlayerUnknown's Battlegrounds
- Fortnite
- H1Z1
- Darwin Project
- Ring of Elysivum
- Apex Legends
- 荒野行動
- テトリス99
- Fall Guys: Ultimate Knockout
- SUPER MARIO BROS. 35
- ジョジョの奇妙な冒険 ラストサバイバー
- 僕のヒーローアカデミア ULTRA RUMBLE
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