ファルブラヴ(Falbrav)は、1998年生まれのアイルランド産・イタリア調教の競走馬・種牡馬。
ジャパンカップを9番人気で制してファンを驚かせたが、その後更なる本格化を遂げ、最終的にGI8勝を挙げた。馬名はイタリア語のミラノ方言で「いい子にしなさい」という意味。
概要
血統
父Fairy King(フェアリーキング)、母Gift of the Night(ギフトオブザナイト)、母父Slewpy(スルーピー)という血統のアイルランド産馬。イタリアの馬主グループに購入され、同国のルチアーノ・ダウリア調教師に預託された。
イタリア最強への道
当時3年連続でリーディングジョッキーになるなど、21歳の若さで既に乗りに乗っていたミルコ・デムーロ騎手を背にデビューしたファルブラヴはデビュー戦を勝利で飾ったものの、その後は年末のグイード・ベラルデッリ賞(GII)まで2着・3着・2着と勝ちきれずに終わる。
年が明けるとダリオ・バルジュー騎手騎乗で出走したシーズン初戦を快勝したが、続けて出走したリステッド競走では2着となり、大目標となったデルビーイタリアーノ(伊ダービー)でも19頭中11番人気の低評価を覆す追い込みを見せたが、後にGalileo相手に愛ダービーで2着に入る実績馬Morshdiを捉えきれず2着。秋は初戦を大差勝ちしたが、続けて出走したリステッド競走では最後方から差し損ねて単勝1.2倍を裏切る3着に終わった。その1ヶ月後のレースを3馬身半差で勝利したのがシーズン最終戦となり、当年のイタリアの3歳馬の中ではトップとなる113ポンドのレーティングを得たが、この数字は欧州の3歳馬全体のトップだったGalileoの129ポンドには遠く及ばなかった。
ところが4歳になるとだんだん力をつけ始め、不良馬場の中で行われた始動戦を6馬身差で圧勝すると、イタリア共和国大統領賞(GI・2000m)では逃げたステゴの被害者Ekraarを後方2番手から直線だけで抜き去ってレコード勝ち。ミラノ大賞(GI・2400m)でも、逃げたNarrativeを差し切って3馬身差で快勝し、上半期の中長距離GIを総なめにした。
ジャパンカップ
4歳になって3戦3勝でGIを連勝したファルブラヴが力をつけていたのは明らかであり、陣営は夏の休養を挟んで凱旋門賞挑戦を決定。まずはフォワ賞(GII・2400m)に出走したが、最後方からの追い込みも届かず5頭立ての3着。オリビエ・ペリエ騎手のテン乗りで出走した凱旋門賞も中団後方から伸びを欠いて*マリエンバードの9着に敗退した。
陣営は深く時計のかかるロンシャン競馬場の芝に敗因を求め、軽い馬場で行われるジャパンカップに矛先を向けた。しかしこの年は東京競馬場の改修の都合で中山2200mで行われた上、既に日本馬が前年まで4連勝するなど顕著なレベルアップを見せつつあったこともあって、人気上位は*シンボリクリスエス・ナリタトップロード・ジャングルポケット・ノーリーズンと日本のGI馬勢が独占。前日のジャパンカップダートで*イーグルカフェを復活に導いたランフランコ・デットーリ騎手のテン乗りとなったファルブラヴは単勝20.5倍の9番人気だった。一応中継にゲストで来ていた吉田照哉氏が「デットーリが乗ると5馬身違う」などと警戒してたけど。
ところが、1枠1番からスタートしたファルブラヴはじっくりと脚を溜めに溜め、直線で一閃。内を突いたアメリカのSarafan、外から伸びてきた*シンボリクリスエスとの叩き合いはSarafan陣営からレース後に抗議が出るほど激しいものとなったが、最後は2着Sarafanにハナ差、3着*シンボリクリスエスには更にクビ差という僅差で勝利を飾った。なおSarafanも11番人気と人気薄で、馬連払い戻し25600円は現在でもジャパンカップの最高記録である。
ジャパンカップの勝利を受けて社台グループが所有権の半分を購入したファルブラヴは、当年のイタリア年度代表馬の勲章を手土産にシーズンを終えた。
本格化
年が明けると、ファルブラヴはイギリスのルカ・クマーニ厩舎に移籍した。ただしそれでも、どのようなローテを組むかは転厩時点ではかなり流動的だった。
まずはキーレン・ファロン騎手とのコンビでガネー賞(仏GI・2100m)に出走したが、差し届かず3着に敗れた。しかしイスパーン賞(仏GI・1850m)では残り300m地点で先頭に立ち、追い込んできた前年のディアヌ賞(仏オークス)勝ち馬Bright Skyを抑え込んで勝利した。
続けて出走したプリンスオブウェールズS(英GI・9f212y≒2004m)では久々にデムーロ騎手とコンビを組んだが、序盤で他馬と接触し、直線では前が塞がるという消化不良の内容で、GI3勝馬Nayefの5着に敗退。だがダリル・ホランド騎手に乗り替わって出走したエクリプスS(英GI・9f209y≒2002m)では果敢に先行し、残り2ハロン地点で先頭に立つとNayefを3/4馬身差で抑えてGI5勝目を挙げた。
キングジョージ6世&クイーンエリザベスSでは距離が長かったか5着に終わったが、英インターナショナルS(GI・10f56y≒2063m)では勝利を挙げ、「(オークス・ダービー・コロネーションカップ・プリンスオブウェールズSのいずれか)→エクリプスS→キングジョージ→インターナショナルS」からなる「BHBサマートリプルクラウン/グランドスラム」のシリーズ最優秀馬となった。
続けて出走した愛チャンピオンS(GI・10F≒2012m)では前年の英愛ダービー馬High Chaparralの後塵を拝して2着に終わったが、陣営はその次戦をデビュー戦以来のマイル戦となるクイーンエリザベスII世S(英GI)に決定。7戦6勝2着1回の1000ギニー馬Russian RhythmやクイーンアンS(GI)の勝ち馬Dubai Destination、前年の勝ち馬Where or Whenらを抑えて1番人気に支持されたこのレースでは果敢に先行し、勝負どころで抜け出してレースレコードで勝利した。
続けてアメリカに遠征し、追加登録料を払ってブリーダーズカップ・ターフに挑戦。英米でGI3勝の*ストーミングホーム、ジョッケクルブ賞(仏ダービー)などGI4勝のSulamani、前年の勝ち馬でもあるHigh Chaparralなどが対戦相手となった。レースでは中団好位から抜け出しを図ったが、仕掛けを遅らせたHigh Chaparralと最後方から飛んできたJoharに僅かに抜かされ、同着優勝した両馬にクビ差遅れて3着に敗れた。
この後カルティエ賞最優秀古馬のタイトルを受賞し、それを引っさげて向かう香港カップがファルブラヴの引退レースとなった。社台グループが残りの所有権も購入したため、勝負服は吉田照哉オーナーの「黄色・黒縦縞・赤袖」という日本でもおなじみのものに変わっていた。そしてデットーリ騎手を背にスタートが切られると、道中は中団を追走。最後の直線で馬群を縫うようにあっという間に先頭に立ち、GI6勝馬Rakti以下を2馬身突き放して、ラストランを勝利で飾った。
この年ファルブラヴはGI5勝が評価され、この年のBHB(英国競馬公社)年度代表馬に選出された。
通算成績26戦13勝(うちGI8勝)。
種牡馬として
2004年から社台スタリオンステーションで種牡馬入り。初年度は二冠牝馬ベガを含む144頭の繁殖牝馬を集め、オーストラリアにシャトルされたり、2年目にはイギリスにリースされたりと引く手あまたの人気種牡馬となった。
以降も100頭前後の種付け頭数をキープしていたが、日本の初年度産駒がレーヴダムールの阪神JF2着くらいで振るわなかったこともあって(7歳になってようやくトランスワープが重賞を2勝した)、2009年の種付け頭数は43頭、2010年は32頭に急落。一時は500万円に上っていた種付け料も2009年は200万円、2010年は100万円にまで下落してしまった。
2010年夏にワンカラットが短距離重賞を2勝し、サイアーランキングで過去最高の29位に入ると再びファルブラヴはそれなりの人気を取り戻し、種付け料が50万円まで落ちたのもあってか一気に種付け数は164頭にまで回復。アイムユアーズのファンタジーS優勝・阪神JF2着などがあって翌年も人気は続き、145頭の牝馬を集めた。しかしそれも長続きせず、2013年は再び65頭まで減少し、体調不良に見舞われた2014年は4頭にとどまった。このシーズンを最後に種牡馬を引退して社台スタリオンステーションの功労馬厩舎で余生を送り、2024年1月12日に老衰のため26歳で死亡した。
産駒の活躍馬は牝馬と騸馬ばかりで、牡馬の重賞馬は出ておらず、後継種牡馬も(少なくとも日本では)出ていない。初年度産駒のヒストリックスター(母はベガ)から桜花賞馬ハープスターが、同じく初年度産駒のラルケットからマイルチャンピオンシップを勝ったステルヴィオが出ているあたり、母の父として活力を発揮していくのかもしれない。
血統表
Fairy King 1982 鹿毛 |
Northern Dancer 1961 鹿毛 |
Nearctic | Nearco |
Lady Angela | |||
Natalma | Native Dancer | ||
Almahmoud | |||
Fairy Bridge 1975 鹿毛 |
Bold Reason | Hail to Reason | |
Lalun | |||
Special | Forli | ||
Thong | |||
Gift of the Night 1990 黒鹿毛 FNo.4-i |
Slewpy 1980 黒鹿毛 |
Seattle Slew | Bold Reasoning |
My Charmer | |||
Rare Bouquet | Prince John | ||
Forest Song | |||
Little Nana 1975 栗毛 |
Lithiot | Ribot | |
Lithia | |||
Nenana Road | Kirkland Lake | ||
Sena | |||
競走馬の4代血統表 |
主な産駒
- トランスワープ (2005年産 騸 母 ボンヌシャンス 母父 *リアルシャダイ)
- ワンカラット (2006年産 牝 母 *バルドウィナ 母父 Pistolet Bleu)
- エーシンヴァーゴウ (2007年産 牝 母 *カンザスガール 母父 *サンダーガルチ)
- エポワス (2008年産 騸 母 マニックサンデー 母父 *サンデーサイレンス)
- ダンスファンタジア (2008年産 牝 母 ダンスインザムード 母父 *サンデーサイレンス)
- フォーエバーマーク (2008年産 牝 母 リトミックダンス 母父 ダンスインザダーク)
- アイムユアーズ (2009年産 牝 母 セシルブルース 母父 *エルコンドルパサー)
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
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