フサイチジャンク(Fusaichi Junk)とは、2003年生まれの元競走馬である。中央競馬中継でもおなじみのフジテレビの番組由来で命名され、その期待通りに2006年春クラシックの有力馬の一角を担った馬。
概要
血統
父 *サンデーサイレンス、母 *セトフローリアンⅡ、母父 Belottoという血統。父はご存じ日本競馬を丸ごと塗り替えた馬。本馬はそのラストクロップ世代になる。母はオーストラリア産の馬で38戦5勝。GⅢを優勝しGIオーストラリアンオークス2着の実績がある。ちなみにⅡとついているのは1989年生まれの同名(ついでに同馬主)の馬がいたからである。母父はミスプロ産駒で7戦2勝、英2000ギニーで2着、英ダービーで3着の実績がある。種牡馬としては豪州でGI馬を複数出すなど活躍した。
本馬は第6番仔にあたり、全兄に2002年の皐月賞で2着になったタイガーカフェがいる。
誕生~デビュー前-テレビで名づけられた3億の馬-
2003年3月に社台ファームにて誕生した本馬は、7月開催の当歳セレクトセールに上場される。この年の目玉はなんといってもサンデーサイレンスのラストクロップが登場するということ。その中でも全兄が実績を上げている本馬への期待は非常に高かった。
欠場含み72番目に本馬が登場するとあっという間に金額は上昇していく。やがて「フサイチ」冠でおなじみの関口房朗氏と「マイネル」冠でおなじみの岡田繁幸氏の一騎打ちの様相を呈し、ハギノカムイオーの1億8500万を超え、2億を超え、なおも上がり続ける。最終的に関口氏が競り落としたその金額、3億3000万円。「高い馬ほど走る」が信条の関口氏、このセールでは本馬含めて9頭を8億6600万で購入していったのだった。
そんな大事な馬に「ジャンク」なんていうマイナスイメージがつきまといかねない名前を付けたわけだが、その由来はフジテレビのスポーツバラエティ番組「ジャンクSPORTS」である。この番組に関口氏は日本ダービーとケンタッキーダービーをともに制した馬主ということやそのバブリーっぷりでしばしば呼ばれていたわけだが、2005年2月の放送にて番組司会のくちびるおばけダウンタウン浜田雅功と関口氏が同郷ということで関口氏から名づけを提案。「フサイチジャンク」と命名された。番組名を馬名にしたら一発で弾かれそうなものだが、そこは「多種多様な環境で力強く勝利を目指す馬」として通した。ものはいいよう
デビュー~若葉ステークス -4戦4勝の快進撃-
そんな本馬は2005年年末、皐月賞と同じ中山2000mにて武豊を鞍上にデビュー。ゼンノエルシドの半弟かつサンデーのラストクロップの一頭であるフェラーリワンと人気を分け合い、2.2倍の1番人気。関口氏は対戦相手にちなんでか大量のフェラーリで中山競馬場に襲来し、名付け親の浜ちゃんも一緒に観戦。そしてレースは先行策から上がり最速の脚できっちりと逃げ馬を捕まえて勝利。関口氏はファンと共に万歳三唱。しかもこの日のメインレース・朝日杯フューチュリティステークスでは関口氏が前述の当歳セールで9900万で落札したフサイチリシャールが見事勝利。関口氏は再びファンの歓声を浴びたのであった。
年が明けて2戦目は500万下・福寿草特別(京都2000m)。何の因果かプレゼンターはジャンクSPORTSのアシスタントとしてもおなじみの内田恭子アナウンサーであった。ここもユタカ鞍上で1番人気、そして1戦目同様の先行抜け出しできっちり連勝してオープン入り。ユタカはこれでJRA通算2700勝達成、メモリアルな勝利をプレゼントした。
3戦目は前年にディープインパクトが馬鹿げたパフォーマンスを見せた若駒ステークス(京都2000m)。人気はさらに上がって1.3倍。そして2番手追走から派手さはないもののきっちりと勝利。無傷の3連勝である。これを受けてジャンクSPORTSは「皐月賞出走決定的!」とぶち上げた。いやまあ確度は高いけどそれでいいのかJRA中継やってるテレビ局。
そして皐月賞の権利を確実に取りに行くための前哨戦は若葉ステークス(阪神2000m)。弥生賞だとユタカはアドマイヤムーンに取られてしまうし、スプリングステークスにはフサイチリシャールが参戦する&ユタカはディープインパクトの阪大に乗るのでこの選択である。そしてレースはというといつもより後方からになったがきっちりと勝利し優先出走権を獲得。なおジャンクSPORTSは「日本ダービー出走決定的!」とぶち上げた。だから気が早いって。
春クラシックの夢舞台
そしてクラシック第1戦、皐月賞。裏街道を歩んできたこともあってこれが初重賞挑戦、相手関係が軽いとみられたものの4戦4勝は無視できるはずもなく、大本命アドマイヤムーンに次ぐ5.6倍の2番人気。2歳王者のフサイチリシャールやスプリングステークス覇者のメイショウサムソンを上回る人気となった。ユタカは蜜月(当時)のアドマイヤ冠&前哨戦含む重賞3勝と非の打ちどころのない成績のアドマイヤムーンに持っていかれてしまったので、代わりの鞍上としてこの年中央に移籍した岩田康誠騎手を手配。岩田騎手が尼崎市にある園田競馬場出身ということで、ジャンクSPORTSは「尼崎最強トリオ」と呼んだ岩田騎手は姫路市出身なのは内緒。そしてジャンクSPORTSの面々(浜ちゃん、内田アナ、石垣佑磨氏、皐月賞は5回実況している三宅アナ)も当然ながら観戦に訪れた。なおこのレースのフジの実況はアオシマバクシンオーである。
レース本番はやや出負けし、横のメイショウサムソンが抜群のスタートを切ったこともあって無理せず中団待機を選択。アドマイヤムーンと並んで3角から進出を開始…したのはいいがアドマイヤムーンともども思いっきり外を回らされ(ムーンとは接触しかけている)、先行して粘るメイショウサムソンには遥かに届かず内を突いたドリームパスポートにも2馬身引き離されての3着。初の敗戦となったがそれでも先行したフサイチリシャールはしっかり捉えたし、アドマイヤムーンやサクラメガワンダーの追撃は退けたので今後への期待を持てる結果であった。
そして2冠目、日本ダービー。鞍上は引き続き岩田。何気に初の左回り、初の府中であるがメイショウサムソンに次ぐ2番人気。兄が10着に敗れた舞台でリベンジを果たせるか、期待が集まった。
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編集した人はどうやら日本ダービー以降の成績を知らなかったようです。 でも、知ってたとしても書かないのが優しさだって誰かが言ってたような・・・。 |
…正直この言葉で済ませたくなるほど、この馬の戦績は暗転したのである。中団待機を選んだが直線全く伸びず、メイショウサムソン2冠の後ろで11着。兄のリベンジどころか兄を下回る着順に終わる。
夢破れて
秋はセントライト記念から始動し、のちの中山マイスターマツリダゴッホやなんでいるんだ桜花賞馬キストゥヘヴンらを抑えて2.4倍の1番人気に推されたが掲示板を外す6着。本番菊花賞もアドマイヤメインの大逃げとかメイショウサムソン3冠ならずとかの添え物にもならない15着。ここでも兄(13着)を下回る結果に。兄より優れた弟など存在しない…というのをこんな悲しい形で表さなくてもいいじゃないか。
まあ兄貴もその後8歳まで走り続けてオープン勝ちしたし?長くやってりゃいいことあるよ?となればよかったのだが、理由は不明だが長期休養。この間に当時の4歳夏の収得賞金半額を受け、1600万下に降級になってしまう。復帰戦のグリーンステークス、4連勝中の鞍上武豊を迎えて捲土重来ののろしを上げ…たかったがどうやら1年弱の休養は彼から力を奪い去ってしまったようで8着惨敗。これを最後にジャンクSPORTSが本馬を取り上げることもなくなってしまった。
その後2戦して3着、11着。また1年休養を余儀なくされ、復帰後も3戦して掲示板に入れず。船橋競馬に移籍したがダート適性はなかったようでかしわ記念13着、大井記念15着と惨敗。これを最後に引退となった。その後は小山乗馬クラブにて乗馬となったが、同クラブHPには所属馬の記載がないため2025年現在も在籍しているかは不明である。
フサイチジャンクは凡馬なのか?
通算16戦4勝[4-0-2-10]、総獲得賞金8,909万円。無傷の4連勝を挙げたしクラシックで掲示板にも乗った。その過程ではのちにドバイなどのやGIを3勝するアドマイヤムーンや天皇賞馬アドマイヤジュピタにも先着している。同世代では上澄みに当たるのは間違いない。春クラシックでは活躍したもののその後パッとしなかった馬についてもあまたの前例があり後に続いてしまった例も多数ある。本馬が際立った失敗というわけでもない。それこそ本馬の兄貴とか翌年の同馬主のフサイチホウオーとか
しかしながら3億3000万という高額に見合う成績だったか?と言われれば残念ながらNOである。結果的に本馬は購買価格の4分の1強しか稼げなかった。維持費なども含めたらそれ以上の赤字である。冒頭のセールにおいて関口氏が購買した9頭の馬は、フサイチリシャールの他にも8700万で購入したフサイチパンドラがエリザベス女王杯を制したものの、購買額以上に稼いだのはのちに他馬主に売却されて地方で活躍したフサイチミライを含めた3頭のみ。フサイチジャンクに次ぐ1億6000万で購入されたGiant’s Causeway産駒はデビューすらできず、維持費等含めたら思いっきり赤字である。この後も関口氏はダンスインザダーク×エアグルーヴ産駒を4億9000万で落札したりStorm Cat産駒を800万ドル(当時のレートで約8億8000万円)で落札したりと派手な話題を振りまいたものの前述の馬たちも大して活躍できなかったことで行き詰まり、前述のフサイチミライなどを売却して馬主業から撤退、消息を絶つ(その後死亡と報道)ことになる。
そしてこれらは「高額馬は走らない」とのジンクスにつながり、ワールドプレミアやサトノダイヤモンド、アドマイヤグルーヴといった反例はあるもののあまたの前例が誕生してしまっている。
血統表
| *サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo 1969 黒鹿毛 |
Hail to Reason | Turn-to |
| Nothirdchance | |||
| Cosmah | Cosmic Bomb | ||
| Almahmoud | |||
| Wishing Well 1975 鹿毛 |
Understanding | Promised Land | |
| Pretty Ways | |||
| Mountain Flower | Montparnasse | ||
| Edelweiss | |||
| *セトフローリアンⅡ 1990 黒鹿毛 FNo.4-m |
Bellotto 1984 黒鹿毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
| Gold Digger | |||
| Shelf Talker | Tatan | ||
| Melody Mine | |||
| Yeastina 1984 黒鹿毛 |
Yeats | Nijinsky | |
| Lisadell | |||
| Sear | Blazing Saddles | ||
| Wiley Trade | |||
| 競走馬の4代血統表 | |||
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