園田競馬場とは、兵庫県尼崎市にある地方競馬場である。阪急園田駅が最寄りであり、大阪中心部から一番近い競馬場。
2017年9月29日より、ニコニコ生放送(公式)においてレースの生中継が開始された。
2022年4月5日からは、YouTubeでもレースの配信が行われる。
概要
1930年12月15日に開場。後述の通り、超小回りコースであることから、長らく気性が荒く脆いサラブレッドではなく、サラより頑丈なアングロアラブによって全てのレースが行われていた。特にアラブの4歳馬(現行表記では3歳)で争われる地方全国交流の最強馬決定戦「楠賞」は有名であり、「アラブのメッカ」とも言われたが、アングロアラブ種の生産数低下に伴い1999年より試験的にサラブレッドを導入。現在は全てサラブレッド系競走となっている。
レジャーの多様化で売上げが全盛期の頃に比べて大きく減少した時期が続き、一時は存廃すら議論に上るほど苦しい経営状況となった。2008年に開催されたJBCで、園田競馬史上最高売上げとなる20億5584万900円を記録したものの、以降も状況の好転が見られなかったが、2010年代後半からのインターネット発売のシェア増が園田にも追い風となり、経営状態は持ち直し、2018年末には施設耐震化工事を兼ねた施設改修も実現。スタンド内は近代的な雰囲気に生まれ変わりかつての鉄火場感はほんの少し薄れた感がある。
以前から、各地の地方競馬で行われていたナイター競馬の開催構想があったものの、地元調整が難航。ようやく2012年夏に照明設備設置工事を行い、同年9月7日より金曜限定のナイター開催「そのだ金曜ナイター」が開始された(最終競走20:30)。ナイター開催中は通常火~木の3日間開催が水~金の3日間開催となる。初年度となる2012年は9~11月上旬、2013年度は4月~11月上旬に拡大したが、その後はおおむねGW中後~10月下旬ないし11月はじめの期間で開催されている。
ただ、目玉商品のナイター開催にも関わらず、中央競馬のインターネット投票システム利用者が地方競馬でも投票できる「IPAT」や、比較的売り上げの多いWINS神戸・WINS難波を借りた場外発売が行えない(いずれについても、金曜日は中央競馬開催の前日のため、馬券発売を原則として休止している)という欠点もあるが、本場来場については概ね定着してきた印象があり、初年度は「摂津盃」のみだったナイター重賞も増やされつつある。
一方、新型コロナウイルス感染拡大防止のため無観客競馬が続いた2020年より、南関東がナイターでない浦和競馬開催の一部の昼間開催で最終競走を通常より1時間以上遅らせる薄暮開催を実施。有観客となっても続けられており、南関東終了後のインターネット投票の需要を取り込む試みも始められている。
地方競馬の投票システムを利用した中央競馬の投票券購入施設「J-PLACE」の園田競馬場外への導入は、しばらくDASHよかわ(三木市、2013年4月27日開始)のみにとどまっていたが、2016年7月30日にDASH福山駅前・DASH柳津(いずれも福山市、元・福山競馬の場外発売所)で、2017年6月24日にDASH和歌山、2018年10月13日にはDASH観音寺で取り扱いが開始された。
競馬場発のアイドルユニット「SKNフラッシュ8」の結成や、競馬場マスコットキャラクター「そのたん」の誕生などの話題づくりも続けている。一方、アラブのメッカ時代とは違い、サラブレッド導入後は地方交流重賞はまずまず結果を出し、ダートグレード制覇できる馬も時折現れるものの、全国区のスターホースとなるような馬がなかなか現れておらずその出現が待たれるところである。
ファンファーレはダートグレード競走、重賞、それ以外の3種類。懐かしきシンセブラスの音色と、ヨレたテープのような音質がレトロな雰囲気を伝える。重賞ファンファーレは展開が独特で「しつこい」との評も。兵庫大賞典などの大レース時には兵庫のブラスバンド「H.B.B.」による生演奏が行われる。同じメロディなのに印象が180度変わるので一聴の価値あり。
2024年から兵庫女王盃が創設されるのを機に、ダートグレード競走用のファンファーレが追加された。こちらもH.B.B.による生演奏が主体となり、演奏ができない場合は事前に録音したものが用いられるとのこと。
コース
以前は1周1000mの超小回りコースであった。サラブレッドの導入により、1周1100mへの改装を予定していたが、3コーナー奥の自然林に手をつけられない事が発覚。2コーナーから3コーナーにかけて大きく外側に膨らませる形で無理矢理1051mに改装を行った。このため向正面は僅かにカーブしている。
現在は1周1051m。直線は213m。1230m、1400m、1700mのレースを中心に開催しているが、820m、1870m、2400mも行われており、2歳戦ばかりだった820mを古馬でやったり、重賞だけだった2400m戦を特別競走で組んだりと番組編成は近年柔軟になりつつある。
騎手
小回りゆえ出入りの激しい競馬が伝統的に行われる園田競馬では馬を動かすことに長けた騎手をよく輩出することで知られる。90年代後半~2000年代前半は小牧太、岩田康誠が園田の看板騎手として知られ、同じころ地方競馬との交流が盛んになった中央競馬にも積極的に遠征して活躍、のちにJRAへ移籍することとなる。
その後はダイナミックな騎乗と気さくな人柄で人気を博した木村健(たけし)や80年代を中心に14年連続リーディング獲得の3000勝ジョッキーで「園田の帝王」と呼ばれた田中道夫の息子でもある田中学が頭角を現し、2006年に笠松から移籍したベテラン川原正一を加えた3人が中心となり、2014年には全国リーディングで「田中1位・木村2位・川原3位」という快挙も成し遂げる。しかし、木村が腰の故障で最終的に調教師に転身。一時は下原理(おさむ)が台頭し2017年には全国リーディングを獲得するも、それを上回るペースで吉村智洋がハイペースで勝ち星を量産するようになり、2018年には全国リーディングを獲得。以降も地元では2位以下に差をつける勝ち星を量産しており、一気にトップジョッキーとしての座を得ている。
アイドル顔負けの甘いマスクを持つ若手の成長株、鴨宮祥行(よしき)や「競馬実況アナウンスができる騎手」として話題となった石堂響(ひびき)と言った個性派も多い。2021年には大山龍太郎、佐々木世麗、長尾翼玖という3人の新人ジョッキーが誕生。大山は新人として順調な勝ち鞍をあげていたが、6月に周回誤認事件を起こして騎乗停止になってしまい、その間に佐々木に勝ち鞍を抜かれてしまった。その佐々木も、中学までは落語を習っていてそちらで注目されながら、騎手の道に進んだ異色の経歴の持ち主。この3人が園田で競り合っている他、中央ではかつて小牧・岩田に次ぐ地位を競った永島太郎調教師の娘・永島まなみがデビューした。兵庫県競馬の若手騎手はTwitter等SNSでも競馬のPRも自ら積極的に行っている。
実況アナウンサー
1937年生まれ。声優志望であったが、大阪競馬場(廃止)などで放送のアルバイトを行ううち、競馬実況デビュー。以後、60余年にわたり園田のレースを盛り上げてきた立役者であった。
吉田節と呼ばれる独特な言い回し、ゴールが近づくにつれて急激にテンションが上がり、ゴール前では声が裏返るほどの激しい実況となる。絶叫系実況の先駆けとも言われ、数々の名文句も生み出した。ばんえい競馬の井馬博アナ(2012年引退)と並び、東の井馬、西の吉田と呼ばれる地方競馬を代表する実況アナとして長らく親しまれてきた。
元々は株式会社弘報館に属していたが、有限会社ダート・プロダクションを設立し独立。1998年10月に同社所属となった弟子である竹之上次男アナが実況デビューしたが、それ以前から他のアナウンサーも実況しており、全レースを吉田アナがやっていたわけではない。また、2011年より三宅きみひとアナを加えた3人体制となったことから、吉田アナの実況は1日の3分の1程度となり、加齢もあって体調次第で実況を控えるケースも目立つようになる。そんななか、2014年5月27日に「レーストラックアナウンサーとしてのキャリア世界最長」としてギネス世界記録に認定。華々しくセレモニーが実施された。一時は引き際を考えていることをインタビューで語ることもあったが、その後はできる限り実況アナウンサーとして続けていきたいと意欲を示すようになっていた。
しかし、2019年12月、2020年1月9日の園田競馬場での実況を最後に競馬実況を引退することを発表。重賞での実況もこの数年は控えており、それ以外のレースを3~4レース担当する状況が続いていた中での発表であった。名物アナウンサーの引退に競馬関係以外の地元マスコミまでが引退までの姿を追った。
当日は重賞も組まれていたが、平場である第6競走「4歳以上C2一」が最後の実況となり、特段最後の実況という雰囲気も出すことなく実況を終える。その直後からスタンド前の実況席の下のファンエリアに陣取った多くのファンから割れんばかりの拍手と感謝の声援が吉田アナに送られ、吉田アナが何度も頭を下げて応えるシーンが見られた。その後行われた吉田アナのサイン会は予定時間を大幅に超過する2時間以上に達し、その存在の大きさを改めて知らしめる形となった。
最終競走には「お疲れさま吉田勝彦アナありがとう記念」とレース名が付けられ、その後に引退セレモニーが挙行。若き日を園田で過ごしたJRAの小牧太、岩田康誠両騎手も駆けつけた。吉田アナは競馬実況は引退するが、アナウンサーとしてはまだまだ続けていく意思を表明(マスコミ向けの記者会見が行われた際も「辞めるのは競馬実況だけ」と強調)し、約8分もの長いスピーチを披露。笑顔でステージを後にした。
実況引退後も園田競馬場には顔を出し、YouTube等で配信される「そのだ(ひめじ)けいば レース展望」では引き続き司会を行うほか、姫路開催時にはトークショーも行った。
ちなみに、ネット上で「吉田神」と呼ばれていることは、当人も知っているとのこと(トークイベントでの発言より)。
吉田アナの実況引退に伴い、兵庫県競馬の実況は一旦竹之上次男アナと三宅きみひとアナの2人体制となるも、3人目として2020年に鈴木セイヤアナがダート・プロに加入。パドック解説や「レース展望」の進行、本馬場入場の担当でマイクデビュー後、2020年11月17日の第2競走で実況デビューを果たした。余談だが元々鈴木アナは決勝審判補助のアルバイトとして園田競馬場に勤務していたが、その声を聞いた吉田アナが直々に口説き落としたことで、アナウンサーに転身している。
2022年1月いっぱいで竹之上アナがダート・プロを自己都合で退職したことから、翌月からはKBS京都で競馬実況や競馬番組を担当していた木村寿伸アナウンサーが実況陣に加わり、引き続き3人体制を維持している。
なお、パドック解説の出演者紹介テロップではどの進行担当アナにも「ダートプロ」と添えられているが、ダート・プロの所属は鈴木アナのみで、三宅、木村両アナは個人事務所で活動しているフリーアナウンサーである。
関連動画
2008年11月3日 関西で初のJBCが園田競馬場で開催
園田競馬場の名物アナウンサー、吉田神こと吉田勝彦氏の名実況。
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