ラスカルスズカ(英:Rascal Suzuka)とは、1996年生まれの日本の競走馬である。兄がターフに散った翌年にターフに現れ、のちの世紀末覇王や99世代の菊花賞馬とともに3強と呼ばれた馬である。
血統
父 コマンダーインチーフ 母 ワキア。総じて良血と言っていい系統である。
コマンダーインチーフは80年度の欧州最強馬として名高いダンシングブレーヴ産駒で、自身も英愛2ヶ国のダービーを制し父の種牡馬としての能力を示した名馬。自身も初年度産駒からGI馬を出すなど種牡馬として成功を収めた。
母ワキアは伝説の快足馬サイレンススズカを産んだ名牝であり、ラスカルスズカはその4番目の子にあたる。なおワキアは第5子を受胎中に腸捻転で亡くなり、ラスカルスズカが最後の子となってしまった。
誕生～デビューまで
1996年4月17日に北海道流郡郡平取町にある稲原牧場で誕生。
本馬は半兄のサイレンススズカ(以降、兄と表記)と同じく永井啓弍氏の持ち馬となり、兄と同じく橋田満厩舎に預けられ、初めは「コンバットスズカ」と名付けられた。
彼が順調に成長していた1998年、半兄のサイレンススズカは武豊騎手との出会いを機に「逃げて差す」戦法を武器に宝塚記念を含む6連勝をあげ競馬界に旋風を巻き起こしていた。しかし1.2倍の圧倒的人気を背負って出走した天皇賞(秋)で左前脚を粉砕骨折し競走中止、予後不良の診断を受け天国へと駆けて行ってしまった。底を見せないまま唐突に亡くなったサイレンススズカの再来を望む声はあっても前述の通り母ワキアは既に亡く、ワキアが残した最後の産駒となった本馬にかけられた期待は並々ならぬものがあった。
やがて本馬は名を「ラスカルスズカ」へと改め、兄と同じ馬主と厩舎で、鞍上は兄の主戦・武豊という布陣でデビューを迎えることとなる。
4歳(1999年)
調整に手間取り函館競馬場でデビューを迎えたのは1999年6月、すでに春クラシックも新馬戦も終わりを迎えた時期であった。未勝利戦でのデビューとなったラスカルスズカだが、オッズ1.4倍の1番人気にこたえて上がり最速を繰り出し5馬身差つけて快勝。道中でハロン棒にモノ見をしたり周りの馬にすりよろうとフラフラ蛇行しながらの圧勝は、武豊曰く「破格」といえる内容だった。続く北洋特別(500万下)、日高特別(900万下)も古馬混合戦ながら1番人気を背負って1着。パッドクでは生えている草を食べ始めたり返し馬では最後の一頭になったことを寂しがって嘶いたりと相変わらず幼い気性を垣間見せながらも、デビューから無傷の3連勝。兄の名にすがるだけではない実力を見せつけた。
4戦目には初の重賞挑戦として兄も挑んだ菊花賞トライアルの神戸新聞杯(GII)を選択。兄同様に逃げを打ち、逃げ切りこそできなかったもののオースミブライトの3着に入り菊花賞への優先出走権を獲得した。そして距離不安から天皇賞秋へ向かった兄とは違い、ラスカルスズカは菊花賞に出走。彼はむしろ距離が伸びるほど好走するステイヤーであった。ついでにいうと逃げも得意ではなかった。
菊花賞(GI)では武豊がアドマイヤベガに騎乗するため鞍上は蛯名正義への乗り替わりがあったものの、夏の上がり馬としてアドマイヤベガ、テイエムオペラオー、ナリタトップロードの3強に次ぐ4番人気に支持された。レース本番では中団後方で待機し、直線で抜け出したナリタトップロードを猛追するも半馬身届かず、さらに外から突っ込んできたオペラオーにも差されて3着。しかしながらアドマイヤベガには先着し、GIでも好勝負できる実力があることを示した。
次走は中2週の強行軍でジャパンカップ(GI)へ挑戦、鞍上は柴田善臣に乗り替わり。道中は中団で進み、勝者のスペシャルウィークや同年の凱旋門賞馬モンジューからは大きく離されたもののステイゴールドらを抑えて5着に入着。充実の4歳秋を終えた。
5歳(2000年)
有馬記念は回避し、翌2000年は万葉ステークス(京都3000m)から始動。鞍上は武豊に戻り、得意条件であることもあって単勝1.1倍の圧倒的1番人気に応えて快勝。武豊からも「無尽蔵のスタミナとパワー」と絶賛された。
続けては再びオペラオー・ナリタトップロードと相まみえる阪神大賞典(GII)。アドマイヤベガが菊花賞から休養中（後、7月31日に引退）だったこともあり、この3頭が新たな3強と称されるようになった。レースではホットシークレットの大逃げにスタンドがどよめく展開のなかナリタトップロードとともにオペラオーをマークしながら進み、最後は3強の争いとなり、オペラオーこそ捕まえらなかったもののナリタトップロードをクビ差抑えて2着を確保した。1～3着が人気3頭で決着した結果、払い戻しは複勝もワイドも全ての組合せが1.0倍の元返しとなった。
本番の天皇賞(春)(GI)では馬群後方から進め、直線で激しく叩きあうオペラオーとナリタトップロードを大外から猛追するも再びオペラオーには届かずの2着。長距離戦でナリタトップロードに2度先着というのも大変なことではあるのだが、それでもどうしてもオペラオーには勝てない……。
次走は2年前に兄が大差勝ちを収めた金鯱賞(GII)へ出走。当日は1.3倍の1番人気。同レースに参戦する馬の中ではGI勝ちの実績を持つマチカネフクキタルとシルクジャスティスは故障もあってすでにピークを過ぎており、ようやく重賞初制覇を成し遂げられる、はずだった。しかし結果は勝ったメイショウドトウからは完全に突き放され、2番手で粘っていたジョービッグバンすら捕まえられずの3着だった。このレースを勝利したメイショウドトウは、この後1年にわたってオペラオーと激闘を繰り広げることになるのであった。
伏兵に足をすくわれる形となったラスカルスズカ。今度こそとばかりに宝塚記念(GI)に臨み、またしてもメイショウドトウ、ジョービッグバン、そしてテイエムオペラオーがいた。レースでは馬場が荒れていたことにより各馬がコーナーを大きく回るなか果敢にインを突いて直線入口で早め先頭に立つ早仕掛けに打って出たが、直線半ばで力尽き、前述3頭に交わされ、加えて悲願の重賞制覇を遂げたばかりのステイゴールドにも交わされ、中2週で挑んだジャパンカップ以来となる5着に敗退した。捲土重来を期して夏の休養に入ったラスカルスズカだったが屈腱炎を発症、長期療養を余儀なくされることになった。いつの間にか3強の称号は、同年無敗にして古馬王道GI全制覇という偉業を達成したオペラオー、4歳時よりそのオペラオーと渡り合い続けたナリタトップロード、そして宝塚記念以降のGI全てで2着に入りオペラオーと互角の勝負を演じたメイショウドトウのものになっていた。
5歳以降(2001年～)
屈腱炎を期に引退する馬も多い中、本馬は1年以上の休養を経てターフに戻ってきた。復帰戦はジャパンカップ当日、第9Rキャピタルステークス。次の第10Rジャパンカップにかつてしのぎを削った3強やステイゴールドが出走する中で復活をアピールしたいところだったが、はじめて掲示板を外す6着。この結果を受けて次走に予定していた有馬記念は回避。このレースで引退したオペラオー、ドトウとの再戦は叶わなかった。
その後2003年の春まで現役を続行したが、たびたび脚部不安を繰り返し僅か4戦しか出走にこぎつけることができず、とうとう重賞制覇を成し遂げられないままターフを去った。
生涯成績は16戦4勝、2着2回3着4回。故障するまでは11戦すべてで入着を果たし2億円以上を稼ぐなど安定感は抜群であった。特に長距離戦においては4戦して1勝2着2回3着1回、先着を許した馬はテイエムオペラオー(3回)とナリタトップロード(1回)の2頭だけという抜群の安定感を誇り、なんとナリタトップロードには2度先着と勝ち越している。このようにナリタトップロードやステイゴールドらGI級相手に勝ち越していることから見ても重賞を勝てるだけの力は間違いなくあったのだろうが、2000年のテイエムオペラオー相手となると先に抜け出せば差し切られ、追い込んでも届かず、とついに1度も勝てなかった。
引退後
2004年からは種牡馬入りし、その身に流れる兄の血を伝えることが期待されたものの、自身が重賞未勝利かつ奥手のステイヤーなのが嫌われたか人気は低く、重賞勝ち馬を出すことはできなかった。
2010年を持って種牡馬を引退し、北海道にて乗馬、のちに功労馬として余生を送り、2020年8月8日に24歳で死去。母・兄・クラシックを競い合った同期が待つ天国へと駆けて行った。
サイレンススズカの弟、という言葉がどうしても頭につけられることが多い馬であり、それが人気を後押ししたことは間違いない。しかしながら兄とは違う路線を兄とは違う戦法でひたむきに走り続ける姿に魅力を感じたファンもまた多いだろう。
圧倒的な同期達の存在もあり兄のような主役にはなれなかったが、兄とはまた違う個性と魅力で中長距離路線を彩った名脇役といえる馬であった。
血統表
| *コマンダーインチーフ Commander in Chief 1990 鹿毛 |
*ダンシングブレーヴ 1983 鹿毛 |
Lyphard | Northern Dancer |
| Goofed | |||
| Navajo Princess | Drone | ||
| Olmec | |||
| Slightly Dangerous 1979 鹿毛 |
Roberto | Hail to Reason | |
| Bramalea | |||
| Where You Lead | Raise a Native | ||
| Noblesse | |||
| *ワキア Wakia 1987 鹿毛 FNo.9-a |
Miswaki 1978 栗毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
| Gold Digger | |||
| Hopespringseternal | Buckpasser | ||
| Rose Bower | |||
| Rascal Rascal 1981 黒鹿毛 |
Ack Ack | Battle Joined | |
| Fast Turn | |||
| Savage Bunny | Never Bend | ||
| Tudor Jet | |||
| 競走馬の4代血統表 | |||
クロス：Raise a Native 4×4(12.50%)、Turn-to 5×5(6.25%)、Nashua 5×5(6.25%)
関連動画
ラスカルスズカの勝ったレースは残念ながら無かったので、好走したレース&引退後より。
関連静画
アニメ「ウマ娘プリティーダービー ROAD TO THE TOP」ではラピッドビルダー名義で登場している
関連項目
親記事
子記事
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- アドマイヤベガ
- ウメノファイバー
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