サウスヴィグラス(South Vigorous)とは、1996年生まれのアメリカ生産、日本調教の競走馬・種牡馬である。栗毛の牡馬。
競走馬としては2002年から2003年にかけてダート短距離界に君臨し、種牡馬としては日本競馬史上初となる産駒5000勝達成[1]やNARリーディングサイアー8回[2]など地方競馬における歴史的大種牡馬となった。
主な勝ち鞍
2002年:根岸ステークス(GIII)、黒船賞(GIII)、かきつばた記念(GIII)、北海道スプリントカップ(GIII)、クラスターカップ(GIII)
2003年:JBCスプリント(GI)、根岸ステークス(GIII)、北海道スプリントカップ(GIII)
概要
競走馬時代
父は薄命の名種牡馬*エンドスウィープ、母*ダーケストスター、母父Star de Naskra。父は2000年に日本に輸入されているが、この馬は96年生まれのアメリカ産馬である。17万ドル(約180万円)という安値で購入された。
本馬は胴と膝下が非常に短く体高も低い馬だった。それでいて尻から太もも、胸から腹袋にかけてが筋肉でパンパンに盛り上がったゴリマッチョの筋肉ダルマで、体重は概ね500kgもあった。ファンからはボディビルダーなどと親しまれてはいたもののサラブレッドらしいスマートさとは無縁の馬体で、一般的には見栄えのしない馬という認識だった。
2歳11月にデビューし、2戦目で勝ち上がり。その後も2回だけ出走した芝レースでの惨敗を除けば複勝圏を外さない堅実なレースぶりで、4歳初戦でOP昇格。3戦して賞金を詰めず夏に降級してしまうが、再び堅実に賞金を積んで5歳春にOPに再昇格。しかしその後は、交流重賞で2着に入りOP特別2勝を挙げる一方、ダートで初めて複勝圏を外し、武蔵野S(GIII)では14着に敗れるなど不安定なレースぶり。そうこうしているうちに5歳シーズンは終わってしまう。
しかし翌2002年に本格化すると、初戦ガーネットS(GIII)の2着を挟んで根岸S(GIII)で待望の重賞初制覇を果たす。1600mのフェブラリーS(GI)は距離が長かったか6着に敗れてしまうが、1400mに戻った黒船賞(GIII)では前年のJBCスプリント覇者ノボジャックを8馬身ちぎり捨てる圧巻のレースぶり。続くかきつばた記念(GIII)、北海道スプリントC(GIII)、クラスターC(GIII)もコースレコード、日本レコード、コースレコードとレコード3連発。怒涛の交流GIII4連勝で一気にダート短距離戦線の主役に浮上した。しかし痛恨の骨折を発症し、目標としていたJBCスプリント(GI)は回避を余儀なくされてしまう。サウスヴィグラス不在で行われたJBCスプリントは4連勝の間にヴィグラスがボコボコにしていたスターリングローズ、ノボトゥルー、ノボジャック、ヤマカツスズランらが1~4着を独占してたし、出られていれば勝てただろうに……。
2003年の根岸S(GIII)で復帰し勝利。今度はマイルのフェブラリーSには目もくれず、1000mの北海道スプリントC(GIII)に出走して楽勝、これにて重賞6連勝。しかし、まーた骨折してしまい、復帰戦となった10月の東京盃(GII)で同期のハタノアドニスに4馬身切り捨てられ連勝は6でストップしてしまう。翌11月にようやく目標のJBCスプリント(GI)に出走し、マイネルセレクトをハナ差抑え込み悲願のGI勝利を達成した。「ダート馬じゃ種牡馬になって100万円で年100頭つけても年1億円程度、このまま走らせ続けた方が稼げるんじゃないか?」という計算から翌年も現役を続行するプランもあったようだが、結果としてこれにて引退となった。
通算33戦16勝。16勝はグレード制導入以降のJRA所属馬としてはホクトベガと並ぶ当時の最多勝利記録。勝ち鞍は全てダートの1400m以下で、1600mを超えるレースは一度も走ったことがなく、3回だけ走ったマイル戦ですら3歳時に2着が1回あるだけで残り2戦は着外、というわかりやすいダートのスプリンターだった。全盛期にはノボジャックとかノボトゥルーとかスターリングローズなどのダートの強豪を全く意に介さず粉砕しており、スピード能力にかけては当代屈指のものを持っていた。サウスヴィグラスが北海道スプリントCで記録したダート1000mの日本レコードは、すでに20年以上が経過した2023年8月においてもまだ破られていない。
種牡馬時代
競走馬を引退後は日高で種牡馬入り。初年度産駒から地方競馬で着々と勝ち鞍を重ね、NARのファーストシーズンリーディングサイアーを獲得。種付け料が受胎確認後50万円と安かったこともあって、毎年150頭前後は牝馬が集まる、日高では屈指の人気種牡馬となった。2012年に初めてNARリーディングサイアーに輝いて以降は、2013年と2014年こそキングカメハメハとゴールドアリュールに首位を譲ったものの、2015年から2021年まではNARサイアーランキングでトップを独走。中央ではそんなに走るわけじゃないけど、地方ではすげえ勢いで活躍馬を量産した。2018年の種付けシーズンを前に腸閉塞を発症し療養していたが、同年3月4日に死亡。享年22歳。その死後、功績を讃えこのシーズンのNARグランプリ特別表彰馬となった。
地方競馬における種牡馬成績は、とにかく凄まじいの一言。産駒の年間勝利数はアジュディケーティングが2005年に記録した年間277勝のサラ系記録を上回り史上初めて年間300勝の壁を突破、2016年以降は年間400勝のペースに突入し、最終的に記録を年間432勝にまで大幅に引き上げた。産駒の年間入着賞金記録もアジュディケーティングが2004年に記録した9億2075万円を超えて史上初の年間10億円台に突入、2020年には11億1463万円を記録している[3]。通算記録においてもアジュディケーティングが持っていた3395勝の最多記録を2019年に上回り、2022年終了時点では記録を4643勝にまで伸ばしている。産駒の入着賞金額合計はついに100億円の大台に到達した[4]。
産駒は一部が距離の壁を乗り越えてマイルで勝ったりもしているが大半がスプリンターで、中央でいうと産駒の平均距離は1265.3m。馬場適性も偏っており、中央でいうと産駒は芝で通算18勝に対しダートで600勝。あまりにも露骨である。
中央重賞はナムラタイタンが勝った武蔵野Sとテイエムサウスダンが勝った根岸Sの2勝のみであるが、交流GIはラブミーチャン(笠松)とコーリンベリー(JRA)、ヒガシウィルウィン(船橋)、サブノジュニア(大井)が勝利。地方では先述のナムラタイタンが岩手へ移籍して無双、佐賀でもキングプライドが無双、南関東では川崎のモダンウーマンなど、地方競馬を席巻したのは前述の成績の通り。
中央競馬でデビューさせたり地方ダートであっても帝王賞や東京大賞典のような大レース制覇を願って付ける種牡馬ではないため、これだけの種牡馬でありながら控えめに言っても肌馬に恵まれた方ではなかった。なにしろ「これまで産駒に一頭も勝ち馬がいなかったけどサウスヴィグラスのおかげで初めて産駒が勝ちました」みたいな繁殖牝馬も多かったのである。それでいて産駒の勝ち上がり率は凡そ80%というのだから恐れ入る。まさに魔法の精子を持つ種牡馬だった。まあ、地方競馬で活躍しても後継種牡馬になかなか恵まれないのがキツいところではあるが……。
後継種牡馬としてはJBCスプリントを制したサブノジュニアが2022年から、ジャパンダートダービーを制したヒガシウィルウィンが2023年から種牡馬入りしている。あとはテイエムサウスダンが種牡馬入りできるかどうかというところ。
とにかく、中央ならオープン以下のダート短距離でサウスヴィグラス産駒が出て来たら買い、と覚えよう。ちなみに父親同様産駒も晩成馬が多いが、牝馬なら早い時期から走ることもある(全日本2歳優駿を勝ったラブミーチャン、2歳交流重賞2勝のタイニーダンサーなど)ので覚えておくといいかもしれない。
血統表
*エンドスウィープ End Sweep 1991 鹿毛 |
*フォーティナイナー 1985 栗毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | |||
File | Tom Rolfe | ||
Continue | |||
Broom Dance 1979 鹿毛 |
Dance Spell | Northern Dancer | |
Obeah | |||
Witching Hour | Thinking Cap | ||
Enchanted Eve | |||
*ダーケストスター Darkest Star 1989 黒鹿毛 FNo.5-g |
Star de Naskra 1975 黒鹿毛 |
Naskra | Nasram |
Iskra | |||
Candle Star | Clandestine | ||
Star Minstrel | |||
Minnie Riperton 1974 黒鹿毛 |
Cornish Prince | Bold Ruler | |
Teleran | |||
English Harbor | War Admiral | ||
Level Sands | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Double Jay 5×5(6.25%)、Nasrullah 5×5(6.25%)
主な産駒
2005年産
2006年産
2007年産
2008年産
2010年産
2011年産
2012年産
2013年産
2014年産
2015年産
2016年産
2017年産
関連動画
GIはあった
関連コミュニティ
関連項目
- 競馬 / JRA
- 競走馬の一覧 / 外国産馬
- 1999年クラシック世代
- 種牡馬 / リーディングサイアー
- 代表的な産駒
- 地方競馬
- アジュディケーティング - 本馬以前にNAR記録を独占していた名種牡馬
脚注
- *2021年に達成。中央・地方合計での記録。2023年時点では唯一の達成馬。
- *NARリーディングサイアー8回はアジュディケーティングと並ぶNAR最多記録。
- *同年の2位はゴールドアリュールの6億8070万円で、実に4億3393万円差のブッチギリだった。
- *次点はアジュディケーティングの82億1723万円。
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- アドマイヤベガ
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