偏(へん)とは、漢字の構成要素の場所の名前の一つであり、狭義では部首に含まれ、かつ親字が左側に来るものを総称する。対になるのは旁(つくり)である。
したがって、「波」は「さんずい」に含まれる漢字だが、「酒」は「酉部」に含まれる漢字なので、「さんずい」ではない。また、巾部の「幅」は「はばへん」に含まれるが、「幕」は左側に構成されないので、「巾部」であるものの、「はばへん」ではない。
偏は一番多い部首であり、しかも漢字の総数の過半数を占める大所帯である。中でも「さんずい」「きへん」「てへん」「くちへん」あたりの多さは半端じゃなく、大漢和辞典での収載では1000字を超える。
よくバラエティ番組とかで芸能人に「さんずい」の漢字を書いてくださいとかいうクイズ企画はよく見かけるだが、さんずいの場合、常用漢字だけでも112字(全常用漢字のおよそ5%)もあったりする。
「さんずい」のように自然を示したものは多い。トリビア的なものでは「日」「月」「火」「水」「木」「金」「土」はいずれも偏に存在する。
また、人体を表した偏も多い。「てへん」「くちへん」の他にも「あしへん」「めへん」「みみへん」「はへん」、マイナーなものでは「はなへん」などもある。
概要
たとえば漢の左側の氵が偏にあたる。右側は旁(つくり)。
有名な偏に、以下のものがある。
- 亻(にんべん)
- 偏、仁、健、・・・
- 冫(にすい)
- 冷、凍、冶、・・・
- 口(くちへん)
- 味、呼、吸、・・・
- 土(つちへん)
- 城、域、場・・・
- 女(おんなへん)
- 奴、如、姉・・・
- 子(こへん)
- 孜、孤、孫、・・・
- 山(やまへん)
- 岐、峠、崎、・・・
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- 巾(はばへん)
- 帆、帳、帽、・・・
- 弓(ゆみへん)
- 引、強、張、・・・
- 彳(ぎょうにんべん)
- 後、律、従、・・・
- 忄(りっしんべん)
- 快、性、情、・・・
- 扌(てへん)
- 打、扱、技、・・・
- 氵(さんずい)
- 池、決、河、・・・
- 犭(けものへん)
- 犯、狐、独、・・・
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- ⻖(こざとへん)
- 防、降、隊、・・・
- 方(かたへん)
- 於、施、旅、・・・
- 日(ひへん)
- 昭、晴、時、・・・
- 月(つきへん)
- 服、朋、朧、・・・
- 月(にくづき)
- 肺、脳、腸、・・・
- 木(きへん)
- 札、机、村、・・・
- 歹(がつへん)
- 死、殆、殉、・・・
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- 火(ひへん)
- 灯、焼、煩、・・・
- 爿(しょうへん)
- 牀、牃、牆、・・・
- 片(かたへん)
- 版、牌、牒、・・・
- 牜(うしへん)
- 牧、物、特、・・・
- 王(たまへん)
- 珍、現、理、・・・
- 礻/示(しめすへん)
- 礼、社、祝、・・・
- 田(たへん)
- 町、略、畔、・・・
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- 白(しろ)
- 的、皎、皓、・・・
- 目(めへん)
- 眼、睫、瞬、・・・
- 矛(ほこへん)
- 矜、・・・
- 矢(やへん)
- 知、短、矮、・・・
- 石(いしへん)
- 砂、研、砲、・・・
- 禾(のぎへん)
- 秋、科、称、・・・
- 衤(ころもへん)
- 袖、裕、補、・・・
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- 立(たつへん)
- 端、靖、站、・・・
- 米(こめへん)
- 粘、粉、精、・・・
- 缶(ほとぎへん)
- 罅、罐、・・・
- 糸(いとへん)
- 紀、約、級、・・・
- 羊(ひつじへん)
- 羚、翔、羯、・・・
- 耒(すきへん)
- 耕、耗、耜、・・・
- 耳(みみへん)
- 恥、聴、聡、・・・
- 至(いたる)
- 致、臻、・・・
- 舌(した)
- 舐、甜、・・・
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- 舟(ふねへん)
- 航、般、船、・・・
- 虫(むしへん)
- 虹、蚊、蛇、・・・
- 角(つのへん)
- 解、触、觴、・・・
- 言(ごんべん)
- 話、誰、論、・・・
- (むじなへん)
- 貌、豹、貂 ・・・
- 貝(かいへん)
- 販、購、賭、・・・
- 赤(あかへん)
- 赦、赭、・・・
- 足(あしへん)
- 路、踏、蹴、・・・
- 足(あしへん)
- 路、踏、蹴、・・・
- 身(みへん)
- 躯、躾、軈 ・・・
- 車(くるまへん)
- 軽、輸、轍 ・・・
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- 酉(とりへん)
- 配、醒、酢 ・・・
- (のごめへん)
- 釈、釉 ・・・
- 金(かねへん)
- 針、鋼、鎧 ・・・
- 食(しょくへん)
- 飼、餌、餅、・・・
- 革(かわへん)
- 靴、鞄、鞭、・・・
- 馬(うまへん)
- 駅、騒、駿、・・・
- 骨(ほねへん)
- 髄、骸、髀 ・・・
- 魚(うおへん)
- 鯨、鰯、鱗 ・・・
- 歯(はへん)
- 齢、齟、齬、・・・
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などなど
なにが偏かは分かりやすいことが多いが、傾(亻+頃、化+頁ではない)のように、分かりづらい場合もある。
漢字として
- 意味
- 片寄る、不公平、片側、副、ひとえに、かたわら、という意味がある。また褊と通じて、狭量、徧と通じて、あまねく、という意味がある。〔説文解字・巻八〕に「頗(かたよ)るなり」とある。
- 字形
- 形声で声符は扁。扁は片戸の象形で、片側の意味がある。
- 音訓
- 音読みはヘン(漢音、呉音)、訓読みは、かたよる、ひとえに。
- 規格・区分
- 常用漢字である。JIS X 0213第一水準。1946年に当用漢字に採用され、1981年に常用漢字になった。
- 語彙
- 偏安・偏位・偏倚・偏移・偏奇・偏諱・偏狭・偏屈・偏見・偏向・偏光・偏好・偏差・偏在・偏執・偏将・偏食・偏重・偏頗・偏微分・偏旁
関連項目
- 偏 - 旁 - 冠 - 脚 - 構 - 垂 - 繞
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