先制攻撃技とは、「素早さに関わらず相手より先に攻撃できる技」の総称である。「先制技」と省略されることが多い。
概要
ポケモンの対戦において、攻撃する順番は「すばやさ」の数値の大きさによって決まり、「すばやさ」が大きいポケモンが先に攻撃を行うシステムとなっている。
しかし先制攻撃技を使った場合、相手よりも「すばやさ」が低くても先に攻撃することが可能。
厳密な定義としては技ごとに設定された「優先度」が+1以上の攻撃技で、優先度の大きさによっても攻撃順が前後する。優先度が同じ技をお互いに選択した場合は通常の技と同様に素早さの大きさで攻撃順が決まる。
確実にダメージを与えることが可能なのだが、その威力は一部を除いて総じて低めに設定されている。
そのため弱点をついたり、他の技や道具、特性と併用する戦術の一つとして組み込むなどして有効活用する局面を作り上げる工夫が必要となる。
かつては使用価値が全くといっていいほどなかったのだが、現在のポケモンの対戦においては先制攻撃技の有無がポケモンの評価に大きく影響するほどの高い需要を持つようになる。
ファストガードによって優先度を持つ技(フェイント以外)が防がれてしまうので、ダブルバトルでは注意が必要。また、特性「じょおうのいげん」「ビビッドカラー」やフィールド技「サイコフィールド」の元ではフェイントも含めて先制技が防がれる。
先制攻撃技の使い道
先述した通り、先制攻撃技は威力自体は低めなので使う局面は限定される。
以下が現在の環境における先制攻撃技の主な使い道である。
襷潰し・頑丈潰し
第4世代で登場した、ポケモンに持たせて効果を発揮する道具の一つ「きあいのタスキ」への対策。
先制攻撃技がメジャーになったのはこの道具が登場したためである。
「きあいのタスキ」は「HPが満タンのとき、一撃でひん死になるダメージを受けてもHPを1残して生き残ることができる」という効果を持つ。
これにより相手がほぼ確実に1ターンの猶予を得てしまうこととなり、耐えられた次のターンで反撃してくる恐れが出てきてしまった。
しかしこちらが先制攻撃技を覚えていればその反撃を許さず止めを刺すことができる。
第5世代では特性「がんじょう」がきあいのタスキと同様の効果を得たため、使う機会がさらに増している。
「がむしゃら」との併用
「相手のHPを自分の残りHPと同じ値になるようにダメージを与える」という技「がむしゃら」とのコンボ。
先制攻撃技の代表である「でんこうせっか」と併せて通称「がむ石火」と呼ばれている。
自分の残りHPが僅かなときに「がむしゃら」で相手のHPもギリギリにしてしまい、次のターンに自分は先制攻撃技で相手を一方的に葬るという戦術である。
登場当初は意図的にHPをギリギリにする方法が「こらえる」か「きあいのハチマキ」ぐらいしかなくまともに使うのは難しかったが、「きあいのタスキ」の登場でその点は解消された。またもタスキに助けられたというわけである。
ただしこのコンボ自体は読まれやすく、相手も先制攻撃技を覚えていれば徒労に終わってしまう。
特性「テクニシャン」との併用
威力60以下の技の威力を1.5倍にする特性「テクニシャン」とのコンボ。
「しんそく」「ふいうち」以外の先制攻撃技は全て威力40以下なので「テクニシャン」の恩恵を受けることができる。
威力40の先制攻撃技はテクニシャンの影響下では威力60になる。
「それでも低いじゃないか」と思うかもしれないが、その先制攻撃技が使用ポケモンと同じタイプであればタイプ補正がかかってさらに1.5倍され威力90になり、バカにできないダメージを叩きだせるようになる。
有名なのがテクニシャンハッサムの使う「バレットパンチ」(通称「テクバレ」)。攻撃種族値が高い上、「つるぎのまい」で攻撃力の底上げが可能で、低威力技であるにも関わらずメインウェポンとして採用されている。
また、テクニシャンエテボースの「ねこだまし」もその追加効果を併せて強力であり、「ノーマルジュエル」を持たせれば低耐久のポケモンの最大HPの半分以上をごっそり持っていくことまでできる。
先制攻撃技と優先度
ポケモンの技には「優先度」と呼ばれる、技を出す順番を決定する数値が設定されている。
ほとんどの技には優先度がないため、素早さの大きさで順番が決まるが、優先度の設定された技を使った場合はその数値で行動する順番が変わる。
以下が第6世代における優先度の順位表となっている。
優先度 | 該当する技 |
+5 | てだすけ |
+4 | こらえる、マジックコート、まもる、みきり、よこどり、キングシールド、ニードルガード、トーチカ |
+3 | ねこだまし、ファストガード、ワイドガード、トリックガード、スポットライト |
+2 | しんそく、フェイント、であいがしら、いかりのこな、サイドチェンジ、このゆびとまれ |
+1 | 上記以外の先制攻撃技、がまん、つぶらなひとみ、プラズマシャワー、ふんじん |
0 | この表に記されていない全ての技 |
-1 | あてみなげ |
-2 | なし |
-3 | きあいパンチ、くちばしキャノン、トラップシェル |
-4 | ゆきなだれ、リベンジ |
-5 | カウンター、ミラーコート |
-6 | ともえなげ、ドラゴンテール、ふきとばし、ほえる |
-7 | トリックルーム |
例えば、素早さ種族値90のピカチュウが優先度0の「でんきショック」を、素早さ種族値72のコラッタが優先度+1の「でんこうせっか」を使ったとする(計算を簡単にするため、レベルは同じで、かつ個体値・努力値・性格などは考慮しないものとする)。
通常であれば素早さ種族値の勝るピカチュウが先に攻撃するのだが、優先度の関係によりコラッタの「でんこうせっか」が先に使われることとなる。
また、素早さ種族値100のフライゴンが優先度+1の「でんこうせっか」を、素早さ種族値80のカイリューが優先度+2の「しんそく」を使った場合、優先度が大きいカイリューの「しんそく」の方が先に処理されることとなる。
ちなみに一部の技や特性には優先度を変えてしまうもの(技「おさきにどうぞ」や特性「いたずらごころ」等)もある。
優先度が変化する特性、持ち物
あくまで、先制技を使う際の優先度の参考として述べておく。
いたずらごころ
補助技のみ、優先度が+1で使える。7世代では、あくタイプには無効化される。
はやてのつばさ
ひこうタイプの技が優先度+1で使える。7世代では、HPが満タンのときのみ効果を発揮する。
ヒーリングシフト
回復系の技(ドレインキッスやこうごうせいなど)が優先度+3で使える。
せんせいのツメ
持たせると20%の確率で先に行動できる。技自体の優先度は変わらない(先制技より後)。
イバンのみ
持たせると、HPが1/4以下になると消費して先に行動できる。技自体の優先度は変わらない(先制技より後)。
先制攻撃技一覧
でんこうせっか / ぶつり技 威力40 命中100 PP30~48
タイプ:ノーマル 優先度:+1
先制攻撃技の開祖。初代から存在する由緒正しき技。そのため覚えるポケモンは非常に多い。
その低威力から長いこと対戦の場で見ることはなかったが、先述した「きあいのタスキ」の登場でその価値が一変。
現在では攻撃力が低い特殊アタッカーであってもこの技を採用するほどにまでメジャーになっている。
ノーマルタイプ故に弱点をつくことができず、またゴーストタイプには無効化されるのが難点。
それでも襷潰しという大事な仕事をこなすためには必要とされている技である。
マッハパンチ / ぶつり技 威力40 命中100 PP30~48
タイプ:かくとう 優先度:+1
初登場は金銀。ストーリーにおいて四天王シバのエビワラーがこの技を連打したことで印象に残った人も多いはず。
威力自体は「でんこうせっか」と変わらないが、かくとうタイプは多くのタイプの弱点をつけるため相対的な攻撃性能は先制攻撃技の中では高め。
「でんこうせっか」と同様ゴーストタイプに無効化されてしまうのが欠点である。
アクアジェット / ぶつり技 威力40 命中100 PP20~32
タイプ:みず 優先度:+1
初登場はダイヤモンド・パール。第4世代での先制攻撃技の猛プッシュを象徴する技の一つ。そしてニコニコ大百科において何故か個別記事が存在している技。
序盤に野生で出現するブイゼルが早い段階で覚えるため、ブイゼルともども愛用したトレーナーも多いであろう。
みずタイプは全体的に素早さはあまり高くないので他の先制攻撃技よりも重要度は高い。
特性「ちからもち」のマリルリが放つと特に強力。
こおりのつぶて / ぶつり技 威力40 命中100 PP30~48
タイプ:こおり 優先度:+1
初登場はダイヤモンド・パール。
こおりタイプなので弱点をつけるタイプの数はマッハパンチに次いで多く、特にドラゴンタイプへの有効打として知られる。こおりタイプの攻撃性の高さを物語る技の一つ。
こおり技が4倍弱点となっているポケモンも多く、特に攻撃力の高いマンムーやマニューラの「こおりのつぶて」はそれらのポケモンを一撃で葬る場合もある。
かげうち / ぶつり技 威力40 命中100 PP30~48
タイプ:ゴースト 優先度:+1
初登場はダイヤモンド・パール。ゴーストタイプであるためか、覚えるポケモンの数が少なく、先制攻撃技の中では見かける機会が少なめ。
ゴーストタイプは物理技に乏しいため、この技がメインウェポンになる場合もある。
タイプ不一致でもエルレイドやベトベトンなど割と意外なポケモンが使ってくることがあり、それらを倒すためにゴースト・エスパータイプのポケモンを繰り出したらこの技を使われてピンチに追い込まれるなんて事態もあり得るため注意が必要。
バレットパンチ / ぶつり技 威力40 命中100 PP30~48
タイプ:はがね 優先度:+1
初登場はダイヤモンド・パール。
タイプ一致では先述したテクニシャンハッサムの他、メタグロスが使用してくるのが脅威。
他にもかくとうタイプのポケモンに「マッハパンチ」の代用として覚えさせることが多い。
「マッハパンチ」と違ってタイプ相性で無効化されることがないため、「マッハパンチ」を覚えるポケモンでもあえてこちらを選択する場合がある。
しんくうは / とくしゅ技 威力40 命中100 PP30~48
タイプ:かくとう 優先度:+1
初登場はダイヤモンド・パール。先制攻撃技では唯一の特殊攻撃。マッハパンチの特殊版である。
かくとうタイプは基本的に物理型が中心なため「マッハパンチ」を優先するが、パルシェンのように「防御が高く特防が低くて、かつ先制攻撃技をぶつける必要がある相手」を仮想敵とする場合はこちらを優先することもある。
また、プラチナ以降は教え技として多くのポケモンが覚えられるようになったため、こちらも「マッハパンチ」の代用として使えなくも無い。
特攻が高めなルカリオやゴウカザルならばこちらでもなかなかのダメージを与えられる。
ねこだまし / ぶつり技 威力40 命中100 PP10~16
タイプ:ノーマル 優先度:+3(第4世代までは+1)
先制攻撃以外の効果:100%の確率であいてをひるませる。
使用するポケモンがバトルに出た直後のターンにしか使用できない。
初登場はルビー・サファイア。
繰り出した直後のターンにしか使えないという条件付きの技。その代わり相手を確実にひるませることができる。
第5世代では優先度が+3になり、他の先制攻撃技よりも先に使うことが可能となり有用性が増した。
一度きりとはいえ、相手に反撃を許さずにダメージを与えるという性質上他の先制攻撃技よりも有効活用できる局面が多い。具体的にはかえんだま・どくどくだまを発動させて特性「こんじょう」「はやあし」の効果を得たり、ゾロアークの「イリュージョン」やカイリューの「マルチスケイル」を解除したりなど。
ダブルバトルにおいては相手の「ワイドガード」を封じて全体攻撃の補助をすることもできる。
フェイント / ぶつり技 威力30(第4世代では50) 命中100 PP10~16
タイプ:ノーマル 優先度:+2
先制攻撃以外の効果:相手が「まもる」「みきり」「ニードルガード」「キングシールド」「トーチカ」を使用していた場合はそれを無効化してダメージを与える(第4世代では「まもる」「みきり」を使っていない場合は失敗する)。
初登場はダイヤモンド・パール。プラチナでは何故かこの技を覚えるポケモンが一気に増加した(教え技ではなく通常のレベルアップ技として新たに追加されている)。
デビューの第4世代では「まもる」「みきり」を相手が使用していなければ失敗するという条件があった。相手が「まもる」「みきり」を習得している確率は低く、そのために技スペースを潰すことはまず考えられなかった。
第5世代では威力が下がった代わりに「まもる」「みきり」を使っていなくてもダメージを与えられるようになった。
ただしその威力は先制攻撃技で最も低く、テクニシャン補正を加えても45という洒落にならない低威力。襷潰し以上の効果は望めないと言っていいだろう。無論それができるだけでもありがたいので覚えられるのならば積極的に覚えさせたい。「まもる」系の技の追加効果も無効化でき、スキン系の特性でタイプを変えれば、タイプ相性の都合上無効だったギルガルドの「キングシールド」も破れる。
優先度+2なのでしんそく・ねこだまし・であいがしら以外の先制攻撃技よりも先に攻撃することができる。
ダブル・トリプルバトルでは、相手のワイドガードやファストガードも潰すことができる。
しんそく / ぶつり技 威力80 命中100 PP5~8
タイプ:ノーマル 優先度:+2(第4世代までは+1)
初登場は金銀。 当時はウインディの専用技だったが、クリスタルではあるイベントでこの技を覚えたミニリュウを入手できる。
PPが低いことを除けば「でんこうせっか」の上位互換と言える。
その威力は先制攻撃技どころか全技中でも高い部類に入り、単純にサブウェポンとしても優秀。
覚えるポケモンもウインディやカイリュー、ルカリオといった攻撃力の高いポケモンがズラズラと並ぶ。
特にタイプ一致かつ高種族値のアルセウスによる「しんそく」はかなりの破壊力。「つるぎのまい」やこだわりハチマキ等を合わせれば相手を一撃で沈めることすら可能。
その反面覚えるポケモンは少なく、見せ合いの時点である程度の読みはしやすい。ノーマルタイプなのでゴーストタイプのポケモンで無効化できる。
第5世代で優先度が+2になり他の先制攻撃技よりも先に攻撃できるようになったため、さらに脅威となった。
PWTでワタルのカイリューにこの技を使われ苦しめられたトレーナーも少なくはないだろう。
ふいうち / ぶつり技 威力70(6世代までは80) 命中100 PP5~8
タイプ:あく 優先度:+1
先制攻撃以外の効果:相手が攻撃技を選択していない場合は失敗する。
初登場はダイヤモンド・パール。プラチナ・ハートゴールド・ソウルシルバーでは教え技にもなっている。
威力は「しんそく」と同じだが、相手が攻撃してこないと失敗するというデメリットがあるため読みが必要となる技。「ちょうはつ」や「みがわり」を使って確実に攻撃するように仕向けるのもいいだろう。
また、相手も先制攻撃技を使ってこちらより先に攻撃してきた場合も失敗してしまう。なかなかリスクの高い技である。
「しんそく」と違い、こちらは優先度+1のまま据え置きとなっているため、「ねこだまし」「しんそく」「フェイント」を使われれば無効となる。
教え技となっているため第4世代以前のポケモンでこの技が使えるポケモンも少なくない。ゴローニャがドサイドンに勝る数少ないポイントである。
エスパータイプに弱いはずのサワムラーやドクロッグなどが使用することでエスパーポケモンの繰り出しを躊躇させることもあったりする。
みずしゅりけん / とくしゅ技(6世代ではぶつり) 威力15*2~5 命中100 PP20~32
タイプ:みず 優先度:+1
先制攻撃以外の効果:2~5回連続で攻撃する。
初登場はX・Y。X・Yの時点ではゲッコウガの専用技だったが、オメガルビー・アルファサファイアではアギルダーも習得した。
先制攻撃技では初となる連続攻撃。「がんじょう」持ちの相手に強気に繰り出すことができる。
ただし、単発の威力は低めであり、覚えるポケモンはどちらも「テクニシャン」や「スキルリンク」といった連続攻撃技と相性のいい特性を持たないため、他の先制攻撃技と比較してそれほど大きなメリットとは言いがたい。
サトシゲッコウガが使う場合、「きずなへんげ」によって強化される。
アクセルロック / ぶつり技 威力40 命中100 PP20~32
タイプ:いわ 優先度:+1
サン・ムーンで初登場した、まひるの姿のルガルガン専用技。いわタイプであるため、ほのお複合のポケモンやひこう、むしタイプのポケモンによく効く。まよなかの姿では覚えられないので注意。
であいがしら / ぶつり技 威力90 命中100 PP10~16
タイプ:むし 優先度:+2
先制攻撃以外の効果:使用するポケモンがバトルに出た直後のターンにしか使えない
サン・ムーンで初登場した、グソクムシャ専用技。「ねこだまし」のように出た直後のターンにしか使えない代わり、先制技でトップの威力となっている。追加効果もなく、相手がむしタイプに弱点の場合引いてくるということもあるので、使う際には高度な読みが必要。弱点を突いた場合、一撃で相手を倒すことも可能。
特性「ききかいひ」で控えに戻ることで、繰り返し使ってくるということもある。
余談
余談ではあるが、「ポケモン不思議のダンジョン」では
先制攻撃技のほとんどが「2マス先まで攻撃できる」という効果に置き換えられている。
ただしあくまでも単体攻撃であるため、2マス目の前に並んでいる敵を同時には攻撃できない。
関連項目
- 1
- 0pt