ヤマトは死んだ。だが生きている。
|
宇宙戦艦ヤマト黎明篇とは、宇宙戦艦ヤマトシリーズの小説作品である。
概要
当初のタイトルは「アクエリアス・アルゴリズム 宇宙戦艦ヤマト復活篇 第0部」。宇宙戦艦ヤマトの公式ファンクラブ、YAMATO CREWの会報誌「ヤマトマガジン」のVol.5からVol.9にかけて掲載された。
後に書籍化され、KADOKAWAから単行本が発売。それに伴い「宇宙戦艦ヤマト黎明篇 アクエリアス・アルゴリズム」へ改題と改稿が行われた。単行本には本作の為のメカニックの設定資料も収録されている。更に続編として「宇宙戦艦ヤマト黎明篇 第2部 マリグナント・メモリー」が発売予定。
シリーズ中での位置付け
「宇宙戦艦ヤマト完結編」と「宇宙戦艦ヤマト復活篇」の間の空白の17年間の中の出来事を紡いだ物語であり、完結編の後の情勢や復活篇の状況の疑問点など、復活篇の気になる点にスポットを当てた物語となっている。
オリジナルのヤマトシリーズ(所謂「旧作」)の世界に組み込まれるエピソードとなっており、同時期に展開しているリメイクヤマトシリーズとは直接的な繋がりはない。
ヤマトマガジンに掲載された西崎彰司のメッセージによると「アクエリアス・アルゴリズム」は「黎明篇」の第一弾との事で、後に第二弾である「マリグナント・メモリー」が書籍として発表された。
小説の媒体でありながら、挿絵に描かれるキャラクター画やメカデザインなども、「完結編」までと「復活篇」の折衷のような要素を持ちながら、ギャップを感じさせない見事な塩梅に仕上げられている。
全体的なテイストとして、ヤマトシリーズ、特に「復活篇」で引っ掛かりを残した要素に切り込みながら、それらの作品で描かれた物事を否定せずに包み込むようなアプローチが試みられている。
言ってしまえば逆算的に紡いだ後付けのような位置付けではある。しかしながら、モヤモヤした印象になりがちな復活篇を宇宙戦艦ヤマトシリーズの世界観に地続きで感じられやすくなるような、ヤマトシリーズの世界の穴を埋めて新たな道筋を示してくれる作品となっている。完結編までを観ているヤマトファンなら読んでまず損はないだろう。
第一章 アクエリアス・アルゴリズム
著者は高島雄哉。更に、宇宙戦艦ヤマト2202に脚本で参加した岡秀樹がプロに加えて市井のヤマトファンを集めて結成した「アステロイド6」がブレイン集団として執筆をサポートした。メンバーはumegrafix 梅野隆児(カバーイラスト&デザイン、挿画担当)、西川伸司(メカニックデザイン、美術設定担当)、扶桑かつみ(地政学設定考証担当)、我が家の地球防衛艦隊(兵器、戦略、戦術設定担当)、さたびー(世界観・人物設定担当)、岡秀樹(制作推進担当)。
また、原作として西崎義展、著作総監修として西崎彰司がクレジットされている。
第二章 マリグナント・メモリー
著者は交代して塙龍之が担当。引き続き「アステロイド6」らの協力下で新たな世界が描かれる。
主な登場人物
- 古代進
- かつての宇宙戦艦ヤマト戦闘班長。「惑星ベルライナ事件」にて軍の命令に背いた責任を取り予備役に編入されている。今ではすっかり家事担当が板についている。
- 古代雪
- 古代の妻であり、かつての宇宙戦艦ヤマト生活班長。軍の上級幹部となっており、艦長職を目指している。
- 古代美雪
- 古代家の一人娘。生き物を愛する心を持ち、動物でもロボットでもすぐに仲良くなってしまう元気いっぱいな十一歳。その行動力は親譲りか。
- パピライザー
- 古代家の小型万能ロボットで美雪の相棒。美雪にカスタマイズされている。佐渡先生のところに居るアナライザーとは親子の関係で、アナライザーをパパと呼ぶ。
- 真田志郎
- かつての宇宙戦艦ヤマト副長兼工作班長にして天才科学者。古代らの良き理解者であり、科学局の副長官に上り詰めている。真田が特許で得た資金を用いて匿名で、戦災孤児を支援する財団法人「MIO」が運営されている。
- 折原真帆
- シュトゥットガルト工科大学大学院の才能豊かな大学院生。防衛軍専用ネットに技術士官の会員制ルーム「理論井戸」を開設している。古代らと数奇な形で関わりを持つ事になる。
- 大村耕作
- ディンギル残党軍による「ボギーニャの大虐殺」の舞台となった、開拓惑星ボギーニャの警備艦隊旗艦わだつみの艦長だった人物。ヤマトと因縁浅からぬ場所で古代らと接触する。
- 水谷英司
- かつての宇宙駆逐艦冬月艦長で、ヤマト乗組員の退艦に立ち会った人物。現在の乗艦は戦艦山城で、第一空間機動艦隊の次席指揮官を担っている。
- 沖田十三
- かつての宇宙戦艦ヤマト艦長。地球帰還を前に病没するも、ディンギル帝国と水惑星アクエリアスによる地球の危機を前に再び姿を現し、ヤマトと共に沈んだ。今、その姿は―。
あらすじ・見所
- 舞台は西暦2215年。予備役となった古代進は雪、美雪、パピライザーの四人家族で平和を取り戻した地球で穏やかな時を過ごしていた。軍を半ば退いた古代と対象的に、雪は出世した雪は多忙な日々を送る。そんなある日、真田さんが訪れ、アクエリアスの水柱に沈んだあのヤマトが見つかったと告げる。
- 銀河交叉の影響で銀河系は動乱の時代に突入している。戦争どころではなくなったガルマン・ガミラスとボラー連邦は休戦協定を結び、地球は、マゼラン星雲へ国の中枢を遷すガルマン・ガミラスから移民の支援と残留者の保護を託さる。また、惑星アマールのように新たに友好関係を結ぶ国も現れた。
だが、情勢の変化に伴う民族紛争が多発。古代が指揮する艦隊が派遣された惑星ベルライナもそうして内戦に突入してしまった惑星だった。古代は軍の命令に背き、戦闘に介入するが・・・ - 都市衛星ウルクと主力艦隊を失ったディンギル帝国の残党軍が生き延びており、復讐の機会を伺っている。
- 復活篇で古代と共に行動していた大村との邂逅と過去が明かされ、復活篇での諸々の唐突な印象が覆される。
- 新たなる旅立ちやヤマトⅢ以来の面々など、ヤマトシリーズを観てきた人ならニヤリとするような登場人物へもスポットライトが当てられる。
- 完結編での沖田艦長の誤診の真相や不思議な出来事についても、新たな視点が得られるような解釈が盛り込まれている。
- 古代にとって第二の父親のような存在、つまり美雪にとって祖父とも言える存在である沖田艦長への美雪の想いが紡がれる。
- 宇宙戦艦ヤマトの初期から登場するギミックが、そう来たかと唸るような形で応用される。
関連静画
関連項目
関連リンク
- 0
- 0pt


