概要(漫画)
1991年から1995年にかけて月刊少年ガンガン(当時・エニックス出版局発行)で連載されていた、主人公とその周囲の多彩なキャラクターのドタバタを描いたギャグコメディ漫画。終盤では設定を掘り下げ、ストーリー・バトル漫画にもなっていた。
少年ガンガンの看板的な存在だった人気漫画であり、ドラマCD化、アニメ化、ゲーム化などのメディアミックス展開がなされた。打ち切りなどなく無事に最終回を迎えて連載終了した後、7年経過してから『PAPUWA』という続編作品の連載も開始された。
なお、タイトルこそ「パプワくん」とはなってはいるが、ストーリー上の主人公は全編通して”シンタロー”であり、4巻終盤からは特にシンタローと青の一族、ガンマ団の秘石を巡る壮絶な戦争が展開される。そして、パプワがシンタローに対し、全作中でたった一度のある言葉を残し、物語は終了する。その後、柴田作品の大きな柱の「赤と青の秘石シリーズ」として「自由人HERO」「未来冒険チャンネル5」といった作品で、本作の拡張世界が描かれている。
しかし、秘石シリーズ第一章である南国少年~では未回収伏線がかなり遺され、特に「秘石とは一体何か?」「パプワは何者なのか?」についての明確な回答は出ないままであった。
そして7年後に開始された直接的な続編「PAPUWA」によって、それらの多くに回答がなされ、終盤ではついにパプワくんの正体そのものが明らかとなる。
1992年から1993年にかけて放映されたアニメ版は、原作漫画版4巻でシンタローが島を離れる部分に相当する話で終了している。しかし、その後の部分を映像化する計画は存在しており、パイロット版として「南国少年パプワくん2」の部分的な映像がDVDなどの特典に収録されている。「PAPUWA」も同じくコタローが島を離れる部分で中途終了してしまい、以降の部分は映像化されていない。柴田作品はギャグ要素が薄れるストーリー部分の映像化に恵まれていないようである。
ストーリー
国家とも戦争を行う程の精強な殺し屋集団、『ガンマ団』。そのガンマ団でナンバーワンの実力を持つ若者シンタローは、弟コタローと一緒に幸せな暮らしをする為にガンマ団の秘宝である『秘石』を奪い、団から逃走する。しかし、団の追っ手からの砲撃で乗っていた船を沈められ、外界から隔絶した南海の孤島『パプワ島』に漂着する。
島に住む少年パプワとその友達であるチャッピー(犬)は、シンタローのリュックから秘石を見つけアクセサリーにしてしまう。シンタローはこれを何とかして取り返そうとするが、信じられないことにパプワになすすべなく敗北してしまう。そこにパプワ島の住人である人語を解する奇怪なナマモノ達が現れ、シンタローの常識は崩壊した。
そんなこんなで、何とか秘石をパプワから取り返そうとするシンタロー、それを返り討ちにしつつシンタローを家事料理人としてこき使うパプワとチャッピーの暮らしが始まった。ガンマ団からの刺客も次々に現れるがシンタローやパプワに撃退され、シンタローだけでなくその刺客たちも島になじんでしまい住人と化してしまう。
ガンマ団の刺客を撃退するうちについにはガンマ団総帥でありシンタローの父でもあるマジックまでもがパプワ島に降り立つが、徐々に秘密が明かされていくその秘石は、シンタローが思っていたようなただの高価な宝石ではなかった。
主要キャラクター
- パプワくん:二頭身の小さな体の少年ながら、作中最強クラスの実力をもち、普段の三白眼からあまり表情を変えず大抵のことに動じない態度をとる両眼が秘石眼の謎の少年。
「室戸市名物シットロト踊り」と言う、日本の高知県に実在する伝統の踊りを得意とする(アニメでは単に「んばば踊り」と言う名称に変わっている)。 - チャッピー:パプワくんの友達である犬。パプワ島の生物では珍しく人語を話せない。パプワによりアクセサリーとして秘石を首輪につけてもらっている。「PAPUWA」では人語が話せくなった経緯が明かされている。
- シンタロー:パプワくんにこき使われ、奇怪なナマモノに惚れられて言い寄られる苦労人の青年。訓練を重ねた優秀な戦士で尚且つ特殊な一族の末裔でもあり、手から眼魔(ガンマ)砲という気弾を放つことができる。
- タンノくん:パプワ島に住む、人語を操る生物(ナマモノ)の一員。網タイツをはいた人間の脚が胴体からにょっきり生えている巨大な鯛。シンタローに惚れている。ニコニコではパプワキャラで多分一番有名。真っ先に単独記事ができた。
- イトウくん:パプワ島に住む、人語を操る生物(ナマモノ)の一員。ふっくらした唇からベロンと舌を垂らしている巨大なカタツムリ。シンタローに惚れている。登場は1話目からでタンノより早い。
- 東北ミヤギ:ガンマ団からの刺客その1。『生き字引の筆』という不思議な力を持つ筆で戦う、金髪ロングヘアの青年。トットリとはベストフレンド同士。東北弁で話す。
- 忍者トットリ:ガンマ団からの刺客その2。天候を操る『天変地異ゲタ占いの術』等の、忍術を駆使して戦う。やや大げさな鳥取弁で話す(『だっちゃわいや』と語尾につける、など)。
- 武者のコージ:ガンマ団からの刺客その5(アニメではその6)。デカイ図体で見るからに重そうな甲冑を身に着けた武将のような風貌。巨大鯉のキヌガサくんを連れているだけのキャラで、キヌガサと何か必殺技があるような様子だったが、金に目がくらんだシンタローによってアッサリと敗北。しかし、何故か南国少年終盤からPAPUWAにかけてレギュラー化。それでも地味な立ち位置はあまり変わらなかった。
- グンマ:シンタローの従兄弟。ガンマ団の科学者であり強力な兵器を作成できるほどに能力自体は高いが、甘やかされて育った馬鹿で甘ったれ。幼少時からのシンタローへの些細な恨み事を全て日記に記録し、根に持っている。
- マジック:ガンマ団の総帥。息子を模した縫いぐるみを作るほどに我が子を溺愛する親馬鹿な一面もあるが、失敗した配下は粛清しようとする非情な面も併せ持つ。秘石の力を利用した世界征服の野望を抱いている。
両目とも秘石眼であり、ガンマ団を支配するマジック一族の中でもずば抜けた力を持つ。 - サービス:マジックの弟であり、シンタローから見ての叔父。非常に整った顔立ちと洗練された佇まいを持つ美しい男性であり、マジックのような親馬鹿ではなく、若い頃のシンタローを鍛えた師匠でもあるため、シンタローからは崇拝に近い尊敬を寄せられている。相当にレベルの高い美的感覚を持ち、自身の美的感覚の下限ラインを割ってしまう存在は自動的に視界から抹消されて見えなくなるという都合の良い眼を持っている。
片目が秘石眼であったが、ある事情により作中の時点ではその眼は既に抉り取られており、もう片方の普通の目しか残っていない。 - ドクター高松:ガンマ団所属の科学者。保健の先生みたいな事もやっている模様。グンマのお目付け役兼育ての親であり、パプワ島に来襲した時もグンマと一緒であった。マジックの一族とは関係の無い人物であるが、サービスの同期かつ親友であり、サービスに暗い影を落としている過去の事件も知っているガンマ団古参の人物でもある。
サービスに学生時代に借りた4万円をまだ返していない。 - コタロー:シンタローの弟にしてマジックの次男。両眼が秘石眼であり、同じく両目が秘石眼である父マジックを遥かに超えた力を秘めている。その力を恐れたマジックにより幼少期から軟禁されおり、そのせいで善悪の区別を殆ど学ばないまま育ってしまった、精神的に非常に不安定な少年。
最初期は設定が固まっておらず、黒髪だったり、性格が違っていたり、なかなか正体が判然としなかった。 - 祇園仮面アラシヤマ:ガンマ団からの刺客その4。体から炎を発する特異体質を利用して戦う。暗い性格のせいで友達が居ないことをコンプレックスにしており、パプワ島ではコウモリなどを友達にし始める。京都弁で話す。
用語
- 秘石
丸い、野球ボールくらいの大きさの宝石。シンタローがガンマ団から持ち出したものは青色だが、対になる赤色のもう一つの秘石もある。シンタローは単なる高価な宝石として持ち出したが、2つの秘石を手にした者は世界を統べるとも言われる力を秘めている。
パプワ島の奥地にある洞窟には、この秘石がぴったりと嵌る穴を2つ持つ謎の扉のようなものがあるが・・・? - 秘石眼
特定の一族にのみ発現する、特殊な能力を秘めた眼。力を発現させると眼が光り輝き、凄まじいエネルギーを放出して敵をなぎ倒す。 作中前半までで秘石眼を持つ一族である事が分かっていたのはガンマ団総帥・マジックの一族だけ。中盤でパプワが両目の秘石眼である事が判明したが、パプワはマジックと血縁関係は無いので、別の一族である。
両目のうち片目だけが秘石眼としての力を秘めるのが原則であるが、ごく稀にそうでない者も生まれる。マジックとコタローは「両目とも秘石眼だった」例外で、シンタローは「両目とも秘石眼ではなかった」例外である。
両目とも秘石眼であると、その戦闘力は一族の中でも抜きん出る事となり、マジックはその高い能力によってガンマ団総帥の座を掴んでいる。
名前の由来・設定など
主要キャラクターで、チャッピーは柴田亜美の飼い犬の名前から名付けられた物である。シンタローは作者がファンであるバンドのメンバーの名前が由来。パプワは、作品タイトルを含め当初の設定はパプアニューギニアから「パプア」とする予定だったが、諸般の問題から「パプワ」となった。尚、その際最後まで候補に残ったのは「南国少年パンツくん」だった。パプワ島の住民はエニックス出版部のスタッフ等の人名からとっている。また、ガンマ団の刺客は都道府県名から名付けられ、口調や戦闘方法などの特徴もその都道府県に沿ったものになっている。
ちなみに、柴田亜美はこの作品の連載前は、ドラゴンクエスト4コママンガ劇場で、『ニセ勇者』という三白眼で特徴のある勇者(とアニマルゾンビやらバリィドドッグやら)を主人公としたネタを描いていたため、初期のパプワくんとチャッピーはこの影響を強く受けている。
元々この作品は「読みきり」の予定で掲載されたものであった。しかし、実際には作者の勘違いであり、編集部は最初から柴田に「連載作品」として本作執筆を依頼していた。当然ながら、第一話時点で青の秘石が世界を支配する力を持つ赤の秘石と対を成す石である、などという設定は考えられていなかった。このため、最初期は画風の違いもさることながら、ギャグとしての要素の方が強く、脇に控える秘石を巡る壮大な世界観は連載を継続していくにあたって徐々に付与されていったものである。第5話「パプワ島全員集合!」からはようやく絵柄も安定してきたものの、初期とシンタローのデザインが大分変わったためか、この話で「髪が伸びたなぁ」と言わせて整合性をある程度保っていた。
当時の読者・アニメ視聴者あるある
- ガンマ団の刺客が都道府県をモチーフにしているため、作中に出てくるその都道府県の名物とお土産を覚えたこと
(例:アラシヤマ(京都) → おたべ(生八つ橋)等) - 日の丸扇子が無性に欲しくなった
- アニメ関連:当時ロッテから販売されたパプワくんガムを買い、券を集めてもらえる『パプワピアノ』プレゼントに応募した
- アニメ関連:ドラマCDを聞いて爆笑した
- アニメ関連:その前のセーラームーンから見始めた
- 4巻ぐらいの画風を元にアニメが作られたため、続編の「PAPUWA」でのシンタローその他の変化に驚く。
- アニメ版「南国少年~」とアニメ版「PAPUWA」のキャストが大幅に変更されていてガッカリ。
関連動画
(テレビ朝日のアニメーションは、大人の事情により掲載できません)
関連項目
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- 2500pt