ゲム・カモフ 単語


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ゲムカモフ

5.9千文字の記事

ゲム・カモフ(GM Camouf.)とは、ジムに酷似したジオン公国軍モビルスーツである。ジムドイツ語読みした「ゲム」+「カモフ」ラージュ(偽装)が由来。

概要

味方をも欺く魔弾の射手

OVA機動戦士ガンダムMS IGLOO』に登場する(はずだった)モビルスーツ。実際に登場エピソード回の脚本も作られたが、映像化されずになり、MEIMU氏が執筆した漫画版『機動戦士ガンダムMS IGLOO 603』1巻に収録された「蝙蝠ソロモンにはばたく」でようやく陽のを見たの機体。メカニックデザイン柳瀬敬之氏。ゲテモノいの『MS IGLOO』の中ではしくMSの体を成した試作兵器でもある。

ゲム・カモフの技術試験報告書の日付が12月14日になっているため時系列的には「ジャブロー海原を見た」と「光芒を越えろ」の間となる。

一年戦争末期オデッサ作戦敗北で戦線が宇宙に後退し敗色濃厚となったジオン軍は、戦線維持のため潜入工作や後方撹乱を企図した特殊作戦モビルスーツ開発に着手する。ミノフスキー粒子散布下では視確認が多い事から自軍のMSベース魔改造を施し、地球連邦軍量産型MSジムにそっくりなゲム・カモフを試作。バイザーのにはモノアイがあったり、ザクⅡのような動力パイプが見えるなど若干の差異はあれど、遠巻きに見ればジムそのもの。ゲム・カモフは味方を装って連邦軍の艦艇に接近、敵が油断したところを一気に仕留めるのである。仮に敵味方識別の信号をめられた場合は「故障」等の理由で誤魔化す。

先述の通りジオン製のMSを使っているが原を留めないほどの魔改造を受けたで元の機体を判別するのは不可能。強いて言うなら胴体や回りはヅダに近く、動力パイプらしき物が確認出来るバックパックはザクに近い。ちなみにスーパーバイザーの出渕裕は、

多分いろんなパーツを使っているんじゃないかなぁ、スマートなのでヅダがちょっと入ってるかな、ってのはありますけどね。ヅダの予備パーツみたいなものを使ったのかなとか。あ、でもわかんないですよ、これは公式の設定じゃないので。私のイメージです。(出典:ガンダムウェポンズ MS IGLOO編)

と語っている。『機動戦士ガンダム バトルオペレーション』の説明文では「特徴的な動力パイプが見えることから、ザクⅡベース機であるといわれる」とした。

連邦軍艦隊への接近や潜入、後方撹乱などを論む極めて特殊な機体のため、配備先や戦果は公式には記録される事がく、僅かに存在する資料から生産数も少なかったと予想される。またゲム・カモフの存在は戦時国際法に抵触するためか公式記録は全て破棄され、開発番号、機体登録番号、形式番号すら存在しない。『MS IGLOO』では歴史の闇に葬られた機体が多数登場するが、ゲム・カモフはその中でも念入りに抹消された存在と言えるだろう。

つまり力が衰退の一途を辿るジオン軍は、敵のを欺くだけの、このような兵器に頼らざるを得ないほど追いつめられていたのである。アルベルト・シャハト技術少将はこの機体を「子の虎」と称し、オリヴァー・マイ技術中尉は「量産される予定もないのにゲム・カモフを試験運用することにどんな意味があるのか」と懐疑的に見ていた。

ジムとの誤認率を高めるため各種武装や名称も連邦軍のものに似せ(作中では使われなかったが、設定上では120mmマシンガンハイパーバズーカに似せた280mmバズーカを持つ)、偽装の邪魔となる装甲は取り払われている。装甲を除いた事で機動力は向上したが、対弾性は正規MSよりかに劣っているため、パイロット生存率も低い。本機のパイロットには地球市民でありながらジオン軍に志願した義勇兵が充てられており、ジオン軍上層部がアースノイドを暗に蔑視しているのが分かる。機体自体の評価は極めて低く、第603技術試験体に配備された時も名上は「機体の評価試験」ではなく、高速弾を使用する特殊な携行火器(135mm対艦ライフル)のみが評価対とされていた。ちなみにチェーンマインやシュツルムファウストといったジオン製兵装も使用する。

ゲム・カモフ自体生産数が非常に少ない機体のため、作戦機の不足を補う的で、鹵獲したジムに「ファンゲナー・ゲム(Gefangener GM)」の公式名称を与え、ゲム・カモフと小隊を組ませて協同で作戦行動を取らせている。論ゲファンゲナー・ゲムのパイロット地球市民である。

原作では宇宙でしか運用されていないが、『戦場の絆』や『バトルオペレーション2』に出演した際に宇宙・地上ともに運用可なのが判明。地上での運用も考慮されていたのだろうか?

蝙蝠はソロモンにはばたく

一年戦争も終わりに近づいた12月上旬、第603技術試験隊地球市民でありながらジオン側についた義勇軍の一団が着任。彼らを率いるのは大変しい女性パイロットエンマ・ライヒ中尉義勇兵たちは技術本部からゲム・カモフと数機のゲファンゲナー・ゲムを受領し、作戦行動を開始。

とある宙域にてルナツーから出港してきた連邦軍のコロンブス補給艦に接近。論見通り味方だと誤認・油断したコロンブス級に、すかさずゲム・カモフがチェーンマイン叩きつけて撃沈。初陣を戦果で飾る事に成功した。しかしアースノイドの彼女らに対する感情は様々で、モニク・キャディラック特務大尉が嫌悪感を示す一方、プロホノウ艦長は「軍属の自分より彼女らの方が信用できるのでは」とモニクに返している。

ジオン軍上層部も義勇兵であるエンマ中尉らを捨て駒のように扱っていた。第603技術試験隊に来る前はパプア輸送艦母艦としていたが、あてがわれた機体は整備もままならない旧ザクのみであり、整備不良が原因で2名が戦死する事態まで発生。そんな過酷な環境に身を置いていたエンマ中尉たちにゲム・カモフとゲファンゲナー・ゲムが与えられた。経緯はどうあれ、ようやく自分たち専用の機体を受領出来た事で彼女たちの士気は上がった。故にエンマ中尉は「味方からの誤射も否定できない戦場狂気そのもの」と評しながらもゲム・カモフを気に入っていた。

次の作戦はゲム・カモフとゲファンゲナー・ゲム3機を投入し、603の搭載MSであるヅダと戦うふりをしながら救難信号を発信、とも知らずに釣り出されたサラミス級を135mm対艦ライフルで撃沈するという、より危険なものだった。偽の救難信号を聞きつけたサラミス級からジム3機が出撃したところまでは良かったが、そのジムパイロットとの会話でエンマ中尉が適切な回答が出来ず、正体を暴かれてく間にゲファンゲナー・ゲム2機が撃墜されてしまう。慌ててヅダが救援に向かうが、対弾性に大きく劣るゲム・カモフではジムでも荷が重すぎる相手であった。そんな中、突如としてエンマ中尉が悲鳴を上げる。

「私はただジオン脅迫されていただけなのッ」

「こうするしか方法がかったんです」
 
そう言い放つとサラミスに近づきながら助けを乞う。元々彼女地球市民。いつ連邦軍に寝返ってもおかしくなかった。離反とも言うべきエンマ中尉行動ヨーツンヘイムの艦は凍り付く。義勇兵を信じていなかったモニクは観測機で戦場に出ていたマイ技術中尉に撃墜命を出すも、出撃前に行った会話で彼女意に触れていたマイは、撃墜をためらう。

「両の手が血で濡れたのなら 肘まで血まみれになる覚悟地球を捨てたはず」

「その時私はそう自分にめた たとえ今度は元人をこの手で撃つことになろうとも」

「次はわないわ」

ジオン人間だから」

エンマ中尉コロンブス級を撃沈した時、かつての友人だったジョアンナを図らずも殺してしまっていた。それでも地球を捨てた彼女の心は決して揺らがなかった。自分はもうジオン人間だからと…。サラミスがゲムに向けられるとエンマ中尉は対艦ライフルヅダ射撃。いよいよ実弾発射の暴挙にまで出る。もが固んで戦況を見守る中――。

 

「この距離なら!!」
 

ゲム・カモフのモノアイる。彼女が対艦ライフルを発射した相手はサラミスだった。至近距離から135mm弾を喰らったサラミスは一撃でスクラップと化す。なんと先ほどのやり取りはサラミスを討ち取るための「演技」で、敵も味方も彼女にまんまと騙された訳である。こうして嫌疑をらしたエンマ中尉は達成感に満たされていたが…。

宙域を切り裂く二条ビームがゲム・カモフを貫いて爆散させた。そのビームを放ったのは友軍のはずのムサイ。ゲム・カモフは敵味方識別信号を持っていなかった事、形状がジムに酷似していた事が祟り、敵だけではなく味方にまで誤認されてしまったのだ。にもエンマ中尉の懸念は的中したと言える。

特殊作戦MS ゲム・カモフ 技術試験報告書

鹵獲機体ゲファンゲナー・ゲムを含め ソロモン宙域において運用せし本機体は

連邦軍機RGM-79との誤認率が高いことを確認

故に同士討ちの危険性が高確率で発生することが予測される

このような兵器開発の意義を問う

宇宙世紀0079年12月14日 オリヴァー・マイ技術中尉

エンマ機のゲム・カモフにはコウモリをあしらったエンブレムが描かれており、「ソロモン蝙蝠ははばたく」の由来となっている。このエンブレム連邦を裏切ってジオンに加担した自分たち義勇兵をイソップ寓話の「卑怯コウモリ」に喩えた皮に由来する。

主要兵装

余談

余談だが『MS IGLOO』を映像化する際に最後まで補に残っていたのがゲム・カモフ回である。しかし惜しくも映像化は見送られてしまった。『IGLOO一の女性パイロット主人公だけあって、製作残念がっていた。

単行本2巻の巻末によると1回会議中に最初のラフを描いてそのまま大体の方向性が決定。このため一番ラフ画が少ない機体となっている。ゲムの部分はデザイン担当の出渕裕氏が、カモフの部分は今西隆志監督が名付け本編とは裏な生まれである。武装の135mm対艦ライフルドイツ軍対戦車ライフルモチーフであり柳瀬氏は今西監督からたくさん資料を貰ったらしい。

ちなみにゲム・カモフとジムの全高はそれぞれ17.9m、18mとほぼ同じであるが、機体重量は51トン、41.2トンと開きがある。余計な装甲を取り払って軽量化したはずのゲム・カモフの方が重いという怪奇現象一方、ベースになったと思われるザクⅡの機体重量は56.2トンなので5トン以上軽量化した事になる。

今のところゲーム作品への出演は『バトルオペレーション』『バトルオペレーション2』『戦場の絆』『LINE:ガンダムウォーズ』など。映像化されなかったせいか、他のIGLOO機体が参戦している『Gジェネシリーズや『ギレンの野望シリーズにも登場していない。『バトオペ』では装甲が薄い設定に反して何故かザクⅡ改以上の防御力を一時期持っていた(後に紙装甲へと修正されたが)。

戦場の絆』においては、ジオン系では大変希少なコスト200の遠距離として参戦。キャノン系のため135mm対艦ライフル兵装とする。意外にもヒートホークが強力で、遠距離の中ではある程度の格闘戦もこなせる。装甲を落として機動性を向上させた設定を反映したのか、ジャンプ面に優れるがアーマー値が低い機体性を持つ。本作には『バトオペ』における偽装伝達装置のようなものがいため、ひとたびレーダーに映れば識別されやすく、また味方からの誤射もありうる。

ガンダムウォーズ』では2023年4月1日エイプリルフールイベントジムウォーズ」にて実装ジムジム・カスタム陸戦型ジムなど多種多様なジム系統機体が、ザクⅡの群れとガンダムを蹴散らしているシュールな絵があるのだが、そのジムの中にしれっとゲム・カモフが混じっている。公式サイトには「これはジム‥ではない!」と書かれていた。

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